春夏秋冬。季節ごとにさまざまな表情を見せてくれる京都。はるか昔から、人々はたくさんの行事やならわし、風物詩を生み出してきました。
今、この土地に住む人は、どんなふうに季節と関わり、日々の暮らしをつくっているのだろうか。
京都移住計画では、2024年2月の立春から1年に渡り、二十四節気にあわせたコラム連載「京都と暦と私」を制作してきました。
学生、会社員、経営者、鍼灸師、通訳者、カメラマン、アーティストなど、京都で生活する十人十色のメンバーが、それぞれの言葉で綴った“私の暮らし”。
連載を終えた今、編集部で振り返ります。
季節がもたらす気持ちの変化
企画を進めるために、何ヶ月も先の二十四節気を意識する必要があったし、かなり季節を意識した一年になったのではないでしょうか。
これまでは夏至・冬至や春分・秋分といった大きな節目しか意識してこなかったけれど、連載を始めてから、雨水や啓蟄など一つひとつ気に留めるようになり、新鮮でした。
執筆してくれたみなさんの文章にも、大暑(一年でもっとも暑さが厳しく感じられる頃)だったらアツい気持ちがのっていたり、小満(あらゆる生命が満ち満ちていく頃)だったら、ゆったりと健やかな気持ちが投影されていたりと、季節の影響があったように感じました。

自由に綴る“私の暮らし”
今回の連載では、執筆にあたり、内容、文体に決まりを設けず、自由に書いていただきました。硬い文体だったり、日記やエッセイ風だったり。だからこそ個性溢れる記事が誕生したように思います。
タイトルや画像含め、衝撃を受けたのは、09 芒種 – エキストラバージンオリーブオイルでした。連載の2本目に登場した02 雨水 – 京大生的百万遍生活「みんなが狂ってる」も、タイトルの「みんなが狂ってる」に少しためらいましたが、思い切ってそのままいきました(笑)。
秋分の日に登場した、16 秋分 – 「こってり」と書くだけでわかるアレの話では、ひたすら天下一品への情熱を綴っていただきましたね。この時期は天一のラーメンが食べたくなりました。
連載当初は方向性が定まらず不安もありましたが、こうして終えてみると、制限を設けずそれぞれのスタイルで書いてもらえてよかったと思います。

みんなの京都論
京都で生活していると、名前は聞いたことがあるけど、どんな活動をしているのか詳しくは知らない人も多いですよね。こうして一度にいろいろな活動や思いに触れられるのはよかったです。
たしかに。コーヒー屋さんが銭湯愛を綴ってくれた17 寒露 – 私が銭湯を愛するワケのように、本業とは違う切り口で書いてもらったものも面白かったです。その一方で、専門家の視点で書いてくれた15 白露 – 秋の本番を楽しみに、菊の酒を呑みましょうなど、独自の考察も読んでいて楽しかったです。
校了後のやりとりの中で「振り返る機会になってよかった」「書けて楽しかった」といったコメントを多くの執筆者からもらいました。書く側にとっても、自分と向き合うきっかけになったのかなと思います。

みんなの“京都論”とか“京都移住論”がありましたよね。なぜ京都を選んだのか、どこが好きなのか。職業や暮らし方によって見えている景色が違っていました。みなさん日々の暮らしの中で、自分なりの京都を見つけてるんでしょうね。
そうですね。京都に住んでいる人や移住を考えている人だけでなく、もっと多くの人に京都の魅力を感じてもらいたいです。連載は1年でいったん終了しましたが、記事はこれからもサイト内で読めるので、末長く楽しんでもらえると嬉しいです。

肩書きにとらわれず、京都に暮らす一人の“私”として綴られたからこそ、自由で等身大の暮らしが詰まった素敵な連載になったのかもしれません。
巡る季節のなかで、いろいろな出来事を経験しながら、今日も”私の暮らし”をつくるーー。
「京都と暦と私」を楽しみに読んでくださった読者の皆さま、ありがとうございました。