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京都には、季節ごとの行事やならわし、風物詩がたくさん存在しています。このコラムでは、1年を春夏秋冬の4つに分け、さらにそれぞれを6つに分けた「二十四節気(にじゅうしせっき)」にあわせて、京都移住計画に関わる人たちの等身大の京都暮らしをお伝えします。
二十四節気の一つ「寒露」には、草木に冷たい露が宿る頃という意味があるそうだ。
猛烈な夏の暑さがようやく和らいできた今日この頃。
ここからの季節にぴったりなのが「銭湯」だ。
ひとっ風呂浴びて、少し火照った身体を包んでくれるように優しい風が吹く。
ちなみに、日付の語呂合わせなどから10月10日は「銭湯の日」と定められ、全国各地で銭湯にまつわるイベントも行われているようだ。
銭湯に通い始めたのは、今から5年ほど前。
当時シェアハウスに住んでいたのだが、住人が10名に対しお風呂が一か所しか無かったのだ。
自分が入りたいタイミングで別の住人が入っていることも多く、待っている住人のことを思うと中々ゆっくり入ることも難しかった。
そんな時に、たまたま徒歩数分の場所に銭湯を見つけたのだった。
実家を離れて以来、ほぼ毎日シャワーだった僕にとって、大きな湯船に浸かる瞬間はそれはもう最高に気持ちよかった。
そこで虜になってしまい、時に一人で、時にシェアハウスの皆で。
足しげく銭湯に通うようになった。
数年前、コロナに感染し数日間ホテルでの隔離生活となった私が、シェアハウスに戻ることが出来たその日。
帰りを待ってくれていたシェアハウスの皆と銭湯に行き、風呂上りに「帰還祝いに」と乾杯したビールの味は今でも忘れられない。
このコラムを書くにあたり、改めて自分は銭湯の何に魅了されているかを考えてみた。
その答えは、「人との繋がりを感じながら、時に究極に自分と向き合える空間であること」だ。
銭湯は「繋がり」であふれている。
番台さんとの挨拶から始まり、浴室内は言葉は無くとも皆で一つの空間を気持ちよく使えるようにとの思いで繋がっている。
そして、お風呂上りに共有スペースで子供たちがキンキンに冷えたコーヒー牛乳を飲んでいる姿を見ると、なんだかほっこりする。
一方で、スマホなどから離れ、ただ自分と向き合い物思いにふけるのも銭湯の大きな魅力だ。
湯船に浸かっていると、しばらく悩んでいたモヤモヤが消えたり、ずーっと考えていたことへのアイデアが突然湧いてきたりすることがある。
あらゆる場所に「情報」が溢れる現代において、「自分と真っすぐ向き合うこと」って意外と難しい。
ただ身体を洗い、疲れを癒すためだけに銭湯に行くのではない。
「人との繋がり」と「自分と真っすぐ向き合うこと」を感じ、ココロも身体もほっこりしているのだ。
ともすれば忘れてしまいがちな大切なものが銭湯には詰まっている。
だから私は、銭湯が大好きだ。
三輪 浩朔
2020年10月京都市上京区に自家焙煎コーヒー店「Laughter」を開業。21歳までコーヒーを飲んだことがなかったが、タイ北部の農園に直接足を運んだことでその魅力にほれ込む。コーヒーを通じて生産者の思いやストーリーも届け、一杯から笑顔溢れる空間を紡ぐことを目指している。趣味は野球観戦、旅行、鉄道、文章を書くこと。
執筆:三輪 浩朔
編集:藤原 朋