2024.06.21

10 夏至 – では、よい夏至を

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京都には、季節ごとの行事やならわし、風物詩がたくさん存在しています。このコラムでは、1年を春夏秋冬の4つに分け、さらにそれぞれを6つに分けた「二十四節気(にじゅうしせっき)」にあわせて、京都移住計画に関わる人たちの等身大の京都暮らしをお伝えします。

毎年毎年性懲りもなく、夏至をカレーで祝う「夏至カレー」という文化を提唱し続けている。

わたしはカレー屋ではない。(本業はフォトグラファーである。)
カレーマニアでもない。(近くのカレー屋にばかり行く。)
カレー屋から頼まれたわけでもない。(企業の陰謀と疑われることがある。)
カレーに縁も所縁もないわたしを、世間はどうにかしてカレーと繋げようとする。
カレーの持つ巨大なパワーには逆らえない。

カレーは好きだし、おいしいから、カレーの持つ巨大なパワーにあやかって、夏至に似合いそうな食べものとしてお勧めしている。
祝祭にはおいしい料理が欠かせないしな。
でも、夏至にも注目してみてほしい。
わたしは夏至を祝いたい。

一年の中で存在の薄い月・第1位なんじゃないかと思う。6月は。
祝日がないことと梅雨であることのせいで、なんとなく嫌がられている感すらある。
そんな月に、二十四節気の四天王のひとつ、「夏至」があることを知らない人も多い。
夏っぽくなる前に夏に至ってしまう。

わたしが夏至カレーを始めるまでには、こどもの頃からの夏に対するセンチメンタルの積み重ねがあった。

無限に感じられた夏休みが残り半分になる。
「暑中お見舞い」じゃなくて「残暑お見舞い」に言葉が変わる。
蝉の死骸を10匹見つけたら夏が終わる、というマイルール。
ツクツクボウシが鳴いて、スズムシが鳴いた。
入道雲が出なくなった。

梅雨が明けて、夏休みが始まって、さあこれから!みたいな雰囲気から1ヶ月も経たない内に、終わりの合図をいちいち見つけてしまうことが嫌だった。

社会人になって、写真館に勤めていた。
基本的に外光の入らない建物に籠っているので、屋外の様子は逐一はわからない。
定時になって外に出たとき、まだ明るいとホッとしている自分に気付いた。
仕事の後にも自分の余暇が残されている気がして嬉しくなるのだ。
それで少し寄り道をして帰宅する。
そうこうしているうちにまた夏を迎え、またあの悲しい寂しい感じが来る。

不意に死を垣間見る感じが苦手なのである。
だったら心構えをしよう。
陽から陰に転じる夏至を意識する。陽のエネルギーに満ちた夏至を真正面で迎える。
目を逸らさないように。

なくなりそうになってから惜しむんじゃなくて、あるうちにあることを十分楽しみたい。
死ぬことは仕方ないから、身体が動くうちにできることをやっておくしかない。

19時前、部屋の北窓に夕陽が差し込む。
今年も夏至が来た。
半年お疲れさま。おいしいカレー食べて、残り半年も楽しくがんばろうな。

執筆・撮影:中田 絢子
編集:藤原 朋

中田 絢子

フォトグラファー

高知県生まれ。京都伏見をえこひいきする「伏見の写真館これから」館主。および夏至をカレーで祝う行事「夏至カレー」の大使。時代に沿った写真館の在り方を模索しながら、地域の人々への貢献、地域の魅力を発信する活動を展開している。地図と鉄道と商店街と城下町に興味津々。好きな言葉は、無用の用。

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