北は京丹後市から、南は木津川市まで。「地域の人々の健康を支えたい」という思いのもと、ゆう薬局グループは京都で100を超える店舗を展開しています。これまで京都移住計画では、京都各地にある店舗や連携する施設を訪れ、地域でのさまざまな取り組みについて取材を重ねてきました。
今回は、薬学生向けインターンシップとして開催された「京都北部地域医療実習」に同行し、舞鶴市と京丹後市へ。薬局だけでなく福祉・行政・教育など多様な現場を訪問し、ゆう薬局の皆さん、そして共に活動している地域の人たちの思いを、薬学生と一緒に体感してきました。
未来の薬剤師たちが、京都北部を巡るフィールドワーク
2025年11月28日・29日の2日間にわたり、薬学生向けのフィールドワーク型プログラム「京都北部地域医療実習」が実施されました。このプログラムは、もともとはゆう薬局の新入社員研修として2019年に始まったもの。フィールドワーク先の幅も広がり、各施設との連携も強化されてきたことから、現在は社外向けにも拡大して開催されています。
このプログラムは薬学生向けですが、単に採用のためのインターンシップとして行われているわけではありません。「地域に根ざした薬剤師の役割を実感し、今後のキャリアを考えるきっかけを得てほしい」という思いで実施され、教育としての目的が重視されています。

今回のプログラムに参加したのは、1年生から5年生までの薬学生10名。京都や大阪だけでなく、名古屋、仙台からも集まりました。1日目は、舞鶴チームと丹後チームに分かれて行動。2日目はフィールドワークで得た学びをグループごとに発表して共有します。
【舞鶴チームの訪問先】
| ・子育てサロンほっとハウス |
| ・舞鶴市健康づくり課 |
| ・salon de RURUTEI(患者・市民との対話) |
| ・まいづるゆう薬局/Café&Bar FLAT+(ゆう薬局カフェ会場) |
| ・城北地域包括支援センター |
| ・KATALab. |
【丹後チームの訪問先】
| ・丹後保健所 |
| ・まちまち案内所 |
| ・峰山新町ゆう薬局(ケアマネージャーとの連携) |
| ・roots 京丹後市未来チャレンジ交流センター/峰山ゆう薬局 |
| ・京丹後市社会福祉協議会 |
| ・弥栄ゆう薬局(病院との薬薬連携) |
職種は違っても思いは同じ。子育て支援拠点と薬局の連携
京都移住計画の取材メンバーは、1日目午前は舞鶴チームに同行。舞鶴市の八島商店街にある「子育てサロンほっとハウス」を訪れました。ここは、市の委託を受けて2009年に開設された子育て支援拠点。自衛隊関係者など転入家庭の多い舞鶴市で、親子が集まり子育ての悩みや情報を共有できる居場所として、週4日オープンしています。
ゆう薬局との連携が始まったのは、今から10年ほど前。月1回の個別相談対応から始まり、現在は年2回、感染症やアレルギー、スキンケアなど季節に合わせたトピックでのミニ講座と、個別相談を行っています。代表の福井育美(ふくい・いくみ)さんはこれまでを振り返り、こう話してくれました。
福井さん
職種は違っても、地域の人たちを支援したいという思いが一緒だからこそ、ゆう薬局さんとの連携が長年続いているんだと思います。「今度はいつ薬剤師さんが来られますか?」と楽しみにしている利用者さんの声も多く、この10年で連携の取り組みが根付いてきた実感がありますね。


行政と民間が手を携え、多世代の健康にアプローチ
続いて、舞鶴市保健センターを訪問。舞鶴市健康づくり課の有本研(ありもと・けん)さん、管理栄養士の阿波貴子(あわ・たかこ)さん に、「まいづる健やかプロジェクト」についてお話を伺いました。
このプロジェクトは、市民の健康づくりを応援するために、行政と民間団体や企業が連携して発足したもので、noteやSNSでの情報発信や、イベントや勉強会の開催などを行っています。現在、70以上の団体が参加しており、ゆう薬局もプロジェクトメンバーとして携わっています。
このプロジェクトでは、イベントなどを通して多世代にアプローチしているというお話を聞いて、学生の1人は「地域医療というと高齢者のイメージが強かったけれど、このプロジェクトは働き世代や若年層にも働きかけているところに共感しました。誰も取りこぼさず、すべての世代にアプローチすることで、まちがもっと豊かになり、住みたいと思う人も増えるのでは」とコメント。「高齢になってからではなく、若いうちから健康習慣を身に付けることが大切」といった声も上がり、学生たちの地域医療に対する理解が深まり、視野が広がっていることが感じられました。


この後、舞鶴チームは昼食を経て、JR松尾寺駅の駅舎内にあるカフェ「salon de RURUTEI」に移動し、乳がん患者さんと対話。さらに、まいづるゆう薬局、「Café&Bar FLAT+」を訪れ、2017年から8年間継続している「ゆう薬局カフェ」の取り組みについて聞きました。
▼ゆう薬局カフェ、まいづるゆう薬局については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
さらに、高齢者とその家族を支援する「城北地域包括支援センター」、地域の高校生に向けた取り組みを行うコミュニティスペース「KATALab.」を訪問し、充実したフィールドワーク1日目を終えました。
地域の高校生と薬局との意外なつながり
一方、丹後チームは、午前中に丹後保健所、まちまち案内所の2ヶ所を訪問。昼食を経て、午後からは峰山新町ゆう薬局を訪れ、薬剤師とケアマネージャーとの連携について対話しました。
その後は、高校生のチャレンジや地域との交流をサポートする「roots 京丹後市未来チャレンジ交流センター」へ。京都移住計画の取材メンバーは、ここから丹後チームに合流しました。


▼「roots」とゆう薬局との連携については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
さらに、「roots」から徒歩5分ほどの場所にある峰山ゆう薬局へ。この薬局内に飾られている写真は、実はもともと「roots」で展示されていた地元の高校生の作品。峰山ゆう薬局のオープン時に、「roots」からの巡回展として設置され、スタッフや患者さんから好評だったため、ゆう薬局が買い取って常設展示にしたそうです。そんな一連のエピソードから、地域の若者の主体的な活動を、ゆう薬局と「roots」が共に応援していることがよくわかります。

薬局と社協は、ビジョンを共にする専門職同士
続いて丹後チームは、京丹後市社会福祉協議会を訪問。地域福祉課長の土出尉恵(どで・やすえ)さんに、社協の役割や活動内容、ゆう薬局との連携についてお話を伺いました。
住民が安心してその人らしい生活を送ることができる社会を目指しているという意味で、「薬局と社協のビジョンはほとんど同じ」であり、「協力し合って動く専門職同士」だと話す土出さん。未来の薬剤師である学生たちに向けて、穏やかな笑顔で語りかけました。
土出さん
皆さんは薬剤師を目指して多くのスキルを身に付けてきたと思います。薬剤師と患者さんでは、薬に関する知識量は圧倒的に違う。でも「自分のほうが知識を持っている」と驕ることなく、「人生の主役」として生きている一人ひとりの患者さんに対して、尊敬の念を持って接することを忘れないでほしいです。
熱心に耳を傾ける学生の皆さんの表情から、土出さんの思いをしっかりと受け止めたことが感じられました。

病院と薬局による薬薬連携の重要性
丹後チームが最後に訪れたのは、弥栄ゆう薬局。薬局長の岡田果子(おかだ・かこ)さんと、京丹後市立弥栄病院の薬剤部主任薬剤師・金森政典(かなもり・まさのり)さんが、薬薬連携の事例として、心不全患者フォローアップの取り組みについて紹介しました。
心不全患者が退院する際、病院がサマリーを作成して、入院中の薬物療法や薬の管理方法などの情報を薬局に提供。薬局は、必要に応じてテレフォンフォローなどを行いながら、トレーシングレポート(服薬情報提供書)を作成して病院に提出し、医師からのフィードバックを受けます。さらに、2ヶ月に1回のペースで薬薬連携会議を行い、複数の薬局と病院の薬剤部が合同で議論しているそうです。
薬薬連携の具体的な事例を学び、質問も積極的に行っていた薬学生の皆さん。薬薬連携によって心不全の悪化を防げること、そのためには病院薬剤師と薬局薬剤師の交流が欠かせないことについて、理解を深める貴重な時間となりました。


▼弥栄ゆう薬局の地域活動については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
1日目の最後には、舞鶴チームと丹後チームが合流し、交流会を開催。丹後エリアで働くゆう薬局のメンバーも加わり、現役薬剤師と未来の薬剤師がざっくばらんに語り合う楽しいひとときを過ごしました。


グループ発表でお互いの学びや気づきをシェア
2日目の午前中は、両チームが弥栄ゆう薬局に集合。「フィールドワークで感じた地域連携と薬局・薬剤師」をテーマに、グループ発表を行いました。特に関心を持った取り組みや、心に残った言葉など、それぞれが訪れたフィールドで感じたことを共有し合いました。


発表の後は、「丹後ひもの屋」で海鮮丼ランチ。併設する宿泊施設「水屋敷」を拠点に活動している「京丹後こども・みらいプロジェクト」について、女将の小谷奈穂(おだに・なほ)さんから紹介していただきました。
かつて医療的ケア児だった小谷さんが立ち上げた「京丹後こどもみらいプロジェクト」は、医療的ケアを必要とする子どもたちとその家族を旅館で受け入れ、多職種の専門家と協力して旅行をサポートする取り組み。プロジェクトメンバーとしてゆう薬局も携わっています。
旅行に行くことが子どもたちの日常の励みになっていること、医療的ケア児の家族同士の交流の場としての役割も果たしていることなど、小谷さんのお話を学生たちは真剣に聞き入っていました。



薬剤師のキャリアや地域医療について、共に考えた2日間
最後は、宮津市にあるコワーキングスペース「クロスワークセンターMIYAZU」に移動し、2日間の総括・まとめ。ゆう薬局全体での取り組みや、丹後・舞鶴・宮津での活動を改めて紹介する時間や、参加者全員が感想をシェアする時間が設けられました。薬学生の皆さんの言葉を一部抜粋してご紹介します。
「薬局薬剤師の仕事の魅力を再認識できた」
「薬剤師は病院や薬局にこもっているだけではない。活躍の場は広げられると感じた」
「大学や実務実習だけでは得られない学びがあった」
「地域の人たちと顔の見える関係性を築いているのが印象的だった。自分も地元で恩返しできる薬剤師になりたい」

学生のコメントにも「顔の見える関係性」という言葉があったように、制度や形式だけではなく、日々の対話の積み重ねが地域連携の基盤となっていることが、現場での体験を通して伝わってきた2日間でした。また、薬剤師は調剤や服薬指導を行う「薬の専門家」にとどまらず、地域の中で人や資源をつなぐ存在であることが、改めて実感できました。薬学生の皆さんにとっても、自身のキャリアや地域医療に対する考えを深める貴重な機会になったはずです。
今回ご紹介したゆう薬局のプログラムは、今後も継続していく予定です。より多くの人たちに参加してもらえるよう、いずれは大学のカリキュラムの一環として実施し、実務実習を終えた学生向けのアドバンスドプログラムに発展させていきたいという展望もあるそうです。この取り組みがさらに広がっていけば、地域に根ざして活動する薬剤師がもっと増えていくことでしょう。





執筆:藤原 朋
撮影:清水 泰人
編集:北川 由依



