募集終了2021.11.02

カフェ運営など多彩な地域活動を展開!地域と共に歩む薬局の一員になる

今回ご紹介するのは、地域に根差した薬局として京都府内に94店舗を構える「ゆう薬局」グループ。

当サイトでは以前の記事で、京都市内の店舗と在宅支援センターを取材しましたが、今回は都市部から離れた地方に焦点を当て、地域医療の取り組みについてさらに詳しくお話を伺います。

訪れたのは、京都府北部に位置する舞鶴市。京都駅から特急まいづるに乗って約1時間半、西舞鶴駅で下車して15分ほど歩くと、平野屋商店街の愛らしいゲートが見えてきます。

商店街にある「Café&Bar FLAT+」は、舞鶴で「まちを楽しむ」をテーマに活動している一般社団法人KOKINが運営するコミュニティスペースです。

ゆう薬局は地域活動の一環として、この場所で月1回「ゆう薬局カフェ」を開催しています。

薬局が主催するカフェとは、いったいどんなものなのでしょうか。

ゆう薬局カフェをはじめとする地域活動や、地域医療への取り組みについて、舞鶴エリアスタッフの皆さんにお話を伺いました。

行政や地域の人々と連携してカフェを立ち上げ

ゆう薬局の舞鶴エリアスタッフが中心となり、毎月開催しているゆう薬局カフェ。管理栄養士が監修したランチを提供するほか、薬剤師や地域の専門職の方によるミニ講座なども行い、地域の人々との交流を深めています。

カフェがスタートしたのは、2017年5月。当時、舞鶴エリアのブロック長を務めていた取締役の船戸一晴(ふなとかずはる)さんは、エリアスタッフと共にカフェの立ち上げに携わりました。

「Café&Bar FLAT+は、地域の人たちとつながって、地域の人たちに使ってもらう場にしていきたいというコンセプトで運営されているコミュニティスペースです。そのコンセプトに共感して、薬局や薬剤師もFLAT+の活動にゆるやかに自然につながっているような環境を作りたいという思いで、ゆう薬局カフェの構想がスタートしました」

ただし、単にカフェを運営することが目的ではないと船戸さんはつづけます。

「ここでカフェをすることで、地域の皆さんに薬局や薬剤師を知ってもらうきっかけにもなると考えました。これまで薬局に来る機会がなかった方たちとのつながりができれば、今後必要な時にはケアやフォローができます。薬局として行う地域の人たちのケアの質をさらに高めることができるのではないか。そう思ったのが、カフェを始めた一番の理由です」

カフェの構想が始まった段階で、地域の医療・介護・福祉に関わる人たちや、舞鶴市の健康づくり課、保健センター、地域包括支援センターといった行政の人たちに相談すると、「いいやん、ぜひやってほしい」と大きな後押しがあったと言います。

他職種の人たちとコミュニケーションを取りながら半年以上かけて準備を進め、カフェの開催がスタートしました。

ゆう薬局カフェでは、高血圧や認知症、脱水など毎回さまざまなテーマを掲げ、ミニ講座を企画。地域で活動している他職種の方をゲストに招き、薬剤師がホスト役として進行しています。

2021年10月のミニ講座の様子。舞鶴市新型コロナウイルスワクチン接種推進課の井上正彦さんをゲストに、ワクチン接種状況の現状についての報告や意見交換が行われました。

「ミニ講座では、時期ごとに必要なトピックを取り上げるようにしています。地域で活動している人を紹介したい、この人にぜひ話してほしい、と人ありきでテーマが決まることもありますね。たとえばこれまでに、アロマセラピーを学んだ子どもたちが病院や高齢者施設でケアを行うという活動をしている『まいづるアロマきっず』の方たちや、介護を経験されたご家族の方たちにお話をしていただきました」

ミニ講座では、「教える/教えられる」という関係をなるべくフラットにできるよう心掛けていると船戸さんは語ります。

「話し手と参加者の双方が教え、教えられる立場であるような場を作りたいと意識して、運営や進行をしています。防災をテーマにした回では、参加してくださった高齢の方が『この地域では昔はこうだったよ』とお話をしてくれて、僕たち薬剤師やドクターがたくさん教えてもらいました」

2017年からカフェの活動を続けてきたことで、地域の方たちとの関係が深まり、教えあい学びあう関係が自然にできているのが伝わってきます。

多職種連携の積み重ねが今につながっている

カフェの内容についてさらに詳しくお話を聞こうとすると、「中心はスタッフですから、ぜひカフェの運営メンバーに話を聞いてください」と船戸さんが紹介してくれたのは、現在入社4年目の林祐里(はやしゆり)さんです。林さんは入社2年目からカフェの運営メンバーとして活動しています。

福井県出身の林さんは新卒でゆう薬局に入社し、東舞鶴にある三安ゆう薬局に勤務。その後、異動して現在は中舞鶴ゆう薬局で働いています。入社以来、舞鶴エリアでずっと仕事をしてきた林さん。この地域で働くきっかけになったのが、ゆう薬局カフェだったと言います。

「大学生の時に、ゆう薬局カフェの第1回を見学させてもらったんです。その時に興味を持ったのがきっかけで、舞鶴エリアの勤務を希望しました。カフェを見学した時、ゆう薬局は他職種の方や行政の方、地域に住んでいる方たちとずっと交流してきたからこそ、地域活動の場をつくることができるんだなと感じました。地域との交流が盛んなところで、私も一緒に働いてみたいと思ったんです」

カフェの告知チラシの製作、当日のホール業務やドリンクの提供、時にはミニ講座のホスト役など、カフェにまつわるさまざまな仕事を担当している林さん。学生時代に興味を持った活動に実際に携わるようになり、どんなことを感じているのでしょうか。

「ゆう薬局カフェは、地域に住んでいる人たちが医療・介護・福祉といった職種の方や行政の方と接する一つのきっかけになっていると思います。私たち薬剤師にとっても、他職種の方々と交流を深められる良い機会になっていますね。カフェの時だけではなく普段の業務の中でも、他職種の方とのコミュニケーションをしっかり取っておくことで、カフェの場もより充実したものになると考えています」

林さんは、職種間の壁を越えて関係性を築くために、普段から情報共有を心がけていると語ります。

「在宅訪問の際にわかった情報があれば、ケアマネージャーの方やヘルパーの方にこまめに共有するようにしています。たとえば、薬の副作用が出る可能性がある時は、もしこういう症状が出たら病院に行ってくださいと事前に伝えておきます。こちらから情報提供をすると、他職種の方から教えていただけることも増えて、頼ってくださる機会も増えました。患者さんからも他職種の方からも、感謝の言葉をかけていただいた時にとてもやりがいを感じますね」

林さんのお話から、普段からスタッフ一人ひとりが地域の人たちとの関係を築き、積み重ねているからこそ、カフェの活動が実現し、継続されていることがよくわかりました。

栄養士目線で地域住民の健康をサポート

つづいてお話を伺うのは、管理栄養士の佐々木麻衣子(ささきまいこ)さんです。佐々木さんは林さんと同時期に入社し、カフェの運営メンバーとして一緒に活動しています。普段はゆう薬局に所属する栄養士として窓口で栄養相談に応じているほか、薬局事務の仕事も兼務しています。

「以前は給食会社で、病院や施設の給食を作る仕事をしていました。ゆう薬局カフェの活動を知って、楽しそう!と思ったのが入社のきっかけですね。薬局が栄養士を採用すること自体が、特に北部では珍しいので、それも関心を持った理由でした」

入社以来、ゆう薬局カフェのメニュー開発を担当している佐々木さん。減塩を意識して、塩分は2gまでに制限し、野菜は一日に必要な量の2分の1を摂取できるようにしています。

「カロリーや減塩、野菜の量はもちろん、季節に合わせたテーマも意識して考えています。特に私がこだわっているのは、カフェならではのおしゃれな雰囲気を表現すること。いわゆる普通の減塩食ではなく、お客さまに楽しんでもらえるようなメニュー作りを心掛けています」

疲労回復をテーマに考えた夏メニュー。疲労回復に効果的とされる豚肉をメインに、夏野菜もたっぷりで食べごたえがあります。

佐々木さんのこだわりや工夫がたくさん詰まったカフェメニュー。喜んでもらいたいという思いが強いだけに、「メニュー作りは毎回難産です」と笑います。

「考えて悩んでいる時は辛いんですけど、お客さまの『おいしかった』の一言ですべてが報われます。それが一番うれしい瞬間ですね。栄養士は献立を考える機会はあっても、実際に自分で作って提供して、目の前で食べてもらえる機会はなかなかないんです。これまでの職場ではなかったので、貴重な経験をさせてもらっていると思います」

「普段はこんなに野菜を摂らないから、月1回ここで食べられるのがうれしい」と毎回来てくれる常連さんや、「家でも野菜を食べているつもりだったけど、まだまだ足りなかったと気づいた」と言ってくれた方がいると、うれしそうに話してくれた佐々木さん。栄養士監修のランチを食べることは、地域の方たちが食事や健康について考えるきっかけづくりにもなっているようです。

今後はレシピの公開なども計画しているのだとか。佐々木さんが管理栄養士として地域の人たちの健康に貢献できる場は、ますます広がっていきそうです。

カフェがあるからこそ、患者との関係もより深まる

つづいて、カフェから徒歩2分ほどの場所にあるまいづるゆう薬局にもお邪魔しました。カフェから一番近い場所にある店舗ということもあり、薬局に通っている患者さんがカフェに来られるケースや、逆にカフェがきっかけで薬局の存在を知って来てもらうケースも多いそうです。

まいづるゆう薬局の管理薬剤師であり、舞鶴エリアのブロック長でもある布川修次(ふかわしゅうじ)さんは、こんなエピソードを聞かせてくれました。

「薬局の患者さんから、朝食後の薬をどうしても飲み忘れてしまうと相談を受けたことがありました。その薬は食事と関係なく飲んでも良い薬だったので、朝起きた時や気づいた時に飲んでもらったら良いですよとお伝えしました。しばらく経って、その患者さんとカフェで再会した時に、『言われた通りにしたら飲み忘れがなくなって、血圧が維持できるようになってお医者さんに褒められたの!』と笑顔で話してくれたんです。自分が何気なく伝えた一言が役に立ったんだなと実感できて、すごくうれしかったですね」

他にも、カフェで気軽に世間話ができるからこそ、患者さんからその後の経過や近況を教えてもらう機会が増えたと言います。

「病気が治って薬を飲まなくなったら、薬局には来られなくなるケースがほとんどですよね。でもカフェでお会いする機会があることで患者さんとの関係が続いていくし、また何か困ったことがあれば薬局で相談しに行こうと思っていただけるのかなと思います」

薬局薬剤師として地元に貢献できる喜び

以前は病院で働いていたという布川さんに、薬局薬剤師の仕事の魅力についてもお聞きしてみました。

「病院で勤めていた頃、僕が処方設計を担当していた患者さんが、退院後に薬をうまく飲めていなかったことがありました。病院と自宅では生活のリズムが違うので、入院時と同じ処方設計ではうまくいかなかったんですね。その時、病院では入院中の様子しかわからないので、点でしか見ることができていなかったと気づきました。薬局薬剤師なら点ではなく線で、退院後も継続して見ることができると思い、薬局の仕事に興味を持ちました」

そして、町の薬局に転職した布川さんは、薬局薬剤師の仕事の幅広さに驚いたと笑います。

「当時の自分は、町の薬局は薬を渡しているだけというイメージを持っていたんです。でも実際に働いてみると、医師やケアマネージャーといった他職種と連携する機会が多く、こんなにいろんな業務をやっているのかと驚きました。病院では言えなかった困りごとを薬局では気軽に話してくれる患者さんも多く、薬局薬剤師のやりがいや面白さを知りました」

その後、布川さんにさらなる転機が訪れます。ゆう薬局が協賛していた薬剤師と介護職向けの勉強会をきっかけに、当時の舞鶴ブロック長だった船戸さんと出会ったことです。

「他職種の方を招いた勉強会は他社でもよくやっているのですが、船戸さんは同業他社にも案内状を送って、他社で働いている薬剤師にも広く門戸を開いていたんです。そんな姿を見て、この人は本当に地域のために何かしたいと思っているんだなと感じ、思いに共感しました」

まいづるゆう薬局では、既製品の漢方薬だけでなく、原料となる生薬も取り扱っています。

病院や町の薬局で積み重ねてきた経験を生かして、もっといろいろなことに挑戦したい。そんな思いを抱いていた布川さんは、ゆう薬局への入社を決意。

入社後は、病院時代の後輩と連絡を取り合って情報を共有したり、当時お世話になった看護部長にカフェのミニ講座の講師派遣を依頼したりと、これまで培ってきたネットワークも生かしながら仕事に取り組んでいます。

「自分が生まれ育った場所であり、薬剤師としてずっと働いてきた場所でもある舞鶴は、とても愛着のある町です。都市部と比べると医療資源が少ない地域ですが、だからこそここでできることをやっていきたいと思っています」

地域の人々と共に考え、作り出していく

今回はゆう薬局カフェの活動を中心に取り上げてきましたが、ゆう薬局の地域活動はほかにもさまざまな形で広がっています。

たとえば福知山では、舞鶴と同じような形で2019年からコミュニティスペースでカフェを開催。長岡京では薬局内で「うたごえサロン」を開催しています。さらに今後は、東舞鶴では50~60代の現役世代の男性向けに、管理栄養士による料理教室を開催予定。京都市内でも三条商店街のウォーキングラリーを計画中です。

このように地域ごとのスタイルで活動が広がっていくのが「ゆう薬局らしさ」だと、船戸さんは語ります。

「カフェが成功したから他の地域でもカフェをやろう、とパッケージ化するよりも、それぞれの地域でコミュニケーションを取りながら、地域の人たちと一緒に必要なものを考えて作り出していくほうが、僕はゆう薬局らしいと思っています。大切なのは、地域の人たちにとって必要なもの、価値があるものかどうか。その基準を大切にして、ブラッシュアップしながら続けていきたいですね」

今回の取材で印象的だったのは、スタッフの皆さんが生き生きと楽しそうに地域の人々と関わっている姿。

コミュニティFMのラジオパーソナリティーとしての顔も持つ船戸さんを訪ねてリスナーの方がやって来たり、薬局の一般職スタッフが趣味を生かしてカフェで抹茶を点てる姿があったり。スタッフ一人ひとりのライフワークも含め、普段の仕事も地域活動も、ゆるやかにつながって循環しているのが素敵だなと感じました。

地域の人たちと一緒に何かしてみたい。健康づくりをサポートしたい。そんな思いを持つ薬剤師や管理栄養士の方は、ゆう薬局の一員としてチャレンジしてみませんか?

執筆:藤原 朋
撮影:清水 泰人

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