2023.04.19

共に移り住む先の暮らしを考える。サイトリニューアル記念イベントレポート

CHECK IN

京都移住計画のWebサイトは公開10周年を迎え、この度「移り住む先の暮らしをつくる」コミュニティメディアとして生まれ変わりました。

2023年3月22日に開催されたイベント「京都移住計画リニューアル記念〜移り住む先の暮らしを考えよう〜」では、「移住」というキーワードを真ん中に置き、3名のゲストと共にトークセッションを行いました。また、「移住先の暮らしを楽しむためのアイデア」を考えるワークショップを開催。参加者からユニークなアイデアがたくさん飛び出しました。

京都移住計画の「これまで」の道のりを振り返り、共に歩んでくれた人たちの繋がりを改めて感じたひとときでもあり、同時に移住計画の「これから」の役割や可能性を発見した時間。

本記事では、その模様をダイジェストでご紹介します。

風から水へ、ゆるやかに移り変わる役割

京都移住計画のWebサイト公開から10周年ということで、お久しぶりな方も、初めましての方も、40名ほどの方が集まってくれました。「リアルイベントって、久しぶりだよね〜!」なんて声も。少しの緊張と高揚感の漂う会場。やはりリアルな場にしかない、独特の空気を感じます。

イベントのスタートは、京都移住計画 代表・田村 篤史の挨拶から。京都移住計画はもともと、田村の「いつか京都に帰りたい」という想いから立ち上がったマイプロジェクトでした。

当初は、都市から京都へ移住したい人に情報を提供する「移住応援メディア」としてスタート。同じようにUIターンした仲間たちと共に、移住したあとの暮らしを楽しむためのきっかけづくりを行ってきました。

▼創業までのストーリーについてはこちら

そこから10数年の月日が経ち、移住者を迎え入れる側へと立場が変化していきました。その変化を「風から水へ」と例えます。

田村

自然界で例えると、移住者の皆さんは、地域に可能性をもたらしてくれる「種」のような存在。僕らはこれまで、種の背中を押して、行きたい場所や関わりたいところまで運んでいく風のような役割を担っていたと思うんです。でもこれからは種が撒かれる土地を潤して、種を育む「水」のような存在になりたいんですよね。

種を運ぶだけでなく、芽を出し花が咲くまで。「移住したその先を支援したい」という想いは、今回リニューアルされたWebサイトのデザインにも込められています。

せっかくなので、「新しく生まれ変わったWebサイトを見てもらおう!」ということで、京都移住計画メンバーの坂井 晃人(ちい)が、リニューアルした機能や特徴について紹介。

自分の興味関心のあるワードや地域名を入れることで、関連した記事を読むことができるという検索機能も追加されました。例えば「コーヒー」と入れることで、「コラム記事」「求人」「物件」などジャンルを横断して関連した記事を読むことができます。ちなみに、ちいさんは「最高」というワードで検索したとのこと。

その後は、参加者に3人1組となってもらい、どのような言葉から記事を検索したかなどについてシェア。時間がオーバーするほど、盛り上がっていたチームもありましたよ。

「舞鶴」「コミュニティ」などの言葉でも検索されていたようです

「移り住む先の暮らしをつくる」コミュニティメディアへ

アイスブレイクを経て最初の緊張感も和らぎ、みなさんも少し打ち解けられた様子。ここからは「キートーク」の時間です。

「移住茶論」「居」「職」「住」など関連する9つのキーワードをもとに、移住計画の始まりからこれまでの歩み、これからの展望などを紹介していきます。

まずは、京都移住計画の始まりの話から。まずは「自分たちが京都へ戻るなら」ということを想定し、「居」「職」「住」の切り口から情報を発信することからスタートしました。仕事や住む場所がないわけではなく、知らないだけ。きっと情報を集めていけば、自分や同じように移住を考える人たちの助けにもなるのでは?という思いから、情報を発信し続ける日々。しかし、「これでいいのだろうか」という疑問も同時に募っていったと言います。

田村

かつての僕らのような(UIターンを考える)人にとっては必要な情報だと思って発信し続けていましたが、一方的に情報発信している感覚があったんです。僕らは発信するだけで、移り住んできた人たちの声を何一つ聞いてないなって。そこで移住してきた人たちが語らえるような、出会えるような場をつくろうと移住茶論を始めたんです。

2018年に嵐電を貸し切って開催した、京都移住茶論の様子

0回目の参加者は、たった一人。「喫茶店でお茶するだけの会(笑)」だった移住茶論も、回を追うごとに参加者が増え、ひとつのコミュニティとして成長していきました。

田村

UIターンしてきた仲間と一緒に「自分たちが楽しい!」と思えるようなイベントをたくさん開催しましたね。この後、話してくれるゲストの貴馬(近藤)さんとも嵐電を貸し切ったイベントをやらせてもらったり。やはり京都での暮らしは、誰と出会うかが大事だなぁと感じました。

2014年から始まった移住コンシェルジュ事業では、京都市以外の移住者とつながるきっかけを持つことができました。もう一人のゲスト、川渕さんは、初代移住コンシェルジュでもあります。

田村

田舎への移住は、京都の都市部に移住するよりもハードルが高い。興味関心を持っていただくところから、現場へのアテンド、先輩移住者への紹介など、最初から最後までアテンドするというミッションでやってきました。ぶっちー(川渕さん)たちが基礎を築いてくれ、現在も関わりを持つ大事な事業です。このおかげで、僕らは京都府全域にいる面白い活動をする人たちと繋がることができています。

川渕さんが移住コンシェルジュをしていた、大阪の移住相談ブース

また、「みつける」というキーワードから、「コミュニティメディア」と題することになった経緯もお話しさせていただきました。

田村

京都移住計画が発信している情報って最新の何かを追うのではなくて、僕らと繋がりのある人が持つ情報を取り上げているんですよね。ライターさんが書くコラム記事も、求人で取り上げている企業や大手が扱わないようなユニークな物件も。僕らは繋がりの中で生まれた情報を取り上げたいという想いがあります。

田村

読み手と京都とのつながりを生む情報が一つでもあるかもしれない。そんな情報を見つけたら、そこからぜひ一歩踏み出してみてほしいですね。例えば、求人にエントリーすることかもしれないし、イベントは苦手だけど行ってみたくなるとか。読んで、アクションする。発信するだけで終わらない流れを、僕らとしてはつくっていきたいと思っています。これからは、今日みたいなリアルな場をもっとやっていきたいですね。

京都移住計画との関わりから見えること

キートークの後は、ゲストを交えてのトークセッションです。3人のゲストから、これからの移住計画をみなさんと共に探ります。まずはそれぞれの京都移住計画との出会いや関わり方をお話いただきました。

近藤 貴馬さん
西喜商店 四代目・株式会社Q’s役員

2015年春に京都にUターン。京都中央卸売市場付属売店である立場を活かしつつ、産直仕入れも取り入れた多様性のある八百屋として事業に取り組んでいる。現在はQUESTION8階にてコミュニティキッチン「DAIDOKORO」の運営、「株式会社Q’s」役員としても活動中。

「僕は、京都移住計画さまさまなんです」と言う近藤さん。京都へUターンしてからは、家業の八百屋の側ら、移住計画の初期メンバーとして、移住茶論などのイベント運営などを担ってきました。

近藤

最初は「東京でサラリーマンしてた後継ぎが帰ってきて八百屋やる」って、新聞に載るぐらい注目されるんちゃう?とか思ってたんですよ(笑)。でも実際帰ってきて、よくよく周り見たら、超レッドオーシャン!八百屋めっちゃあるやんって。だから、どうやって商売を広げようかって悩むこともあった。そんなときに後継ぎというがんじがらめな環境から抜け出して、からだも心も軽くしてくれるのが、京都移住計画で過ごす時間やったんです。それだけじゃなくて、田村さんからは株式会社Q’sの運営を一緒にやらんかって声をかけてもらったりもして。だから、僕の今があるんですよね。

「田村さんの言葉でいうと僕はもともと「種」の人やったけど、今、ようやく種から芽が出たぐらいちゃうかな」とも話してくれた近藤さん。今後は、後継ぎとして頑張る若い世代のサポートもしていきたいとのこと。ご自身がその苦労を経験してきた近藤さんだからこそできるサポート、とても心強いですね。

川渕 一清さん
有限責任事業組合まちの人事企画室 代表

営業・マーケティングを経験後、地元・京丹後でまちづくりプロジェクトや京都府の移住伴走支援等に従事。現在は地域で組合や法人を設立し、ローカルでの仕事や働き方の選択肢を広げるための事業を展開している。行政や企業のコーディネート業務、人事業務の伴走支援、企画運営・デザイン等。

続いては、地元・京丹波市にUターンし、京都移住コンシェルジュとして2年半従事。以降は、地域でのまちづくりや人事業務の伴走支援など、地域と関わり続けている川渕さん。実は地元に帰ることに対して、「すごくネガティブだった」そうです。なぜなら、移住コンシェルジュをしていたときは、「移り住むってことは、ここに骨をうずめること」ぐらいの覚悟が必要だと思っていたから。

川渕

10年経って、働き方や暮らし方が多様になって、どこに住んでいても丹後と関われるようになった。そうしたときに、どこで働くとか暮らすとか居心地の良さを求めるとかっていうのは自由だなっていうことに気づいたんです。移り住むのは一つの手段であって、丹後に縛られすぎなくてもいいんじゃないか、そういうことも含めてちょっと気が楽になりましたね。

現在は、行政や企業などの伴走支援事業を行う「まちの人事企画室」を主宰しています。所属するメンバーは京都市内や東京、兵庫県など住む場所もバラバラ。リモートワークで、兼業や副業として関わっているそう。また、高校生のチャレンジや地域との交流をサポートする場「roots」を運営。地元の大人たちが手助けをし、高校生がやりたいことに挑める機会を創出しています。地域の中でも、もっとできることがあるという可能性を示す。もし外に出てしまっても「また帰ってきたい」と思える。そんな可能性を生み出すために。

川渕

この10年で京都府全域に関係ができ始めて、ここからは京都市内とローカル、ローカルとローカルとか、個人と団体……みたいな、従来にはなかった繋がり方が出てくると思います。そうした化学反応の起こり方が、学生にもいい影響を及ぼしてくれるかもしれない。それも含めて、僕はすごく楽しみですね。

菊池 映美さん
株式会社YOKOITO 取締役・うつわと雑貨のお店 minamo 店主

株式会社YOKOITO取締役。個人では京都市内にて「うつわと雑貨のお店 minamo」を運営。10年程海外にいた後帰国。東京で大手外資系やベンチャー企業を転々とし、少し疲れたので京都に移住。京都移住計画の求人からYOKOITOに入社、傍ら個人でパートナーとお店をオープンし、2足の草鞋中。”自分らしく”の精神で楽しく暮らしてます。

3人目のゲストの菊池さんは、京都移住計画を見て「株式会社YOKOITO」の求人に応募。その後、YOKOITOの取締役となり、今度は企業として求人記事の依頼をする側に。さらには、ご自身のお店「うつわと雑貨のお店 minamo」を開業され、自主企画の連載「場を巡る」でもご紹介させてもらうなど、京都移住計画とさまざまな角度から関わりをもっています。

でもそれは「たまたま、なんです」と菊池さん。

菊池

実例として私がいるので、それは素晴らしいことだなと思うんですけど、移住するきっかけって、「京都に何かしたいから来た」っていう大きな目的を持つ人ばかりじゃないと思うんです。私も京都で職を探そうと思って京都移住計画を見ていたわけじゃなくて、居・食・住などいろんな角度からの情報があったからこそ、移住計画をチェックしていて。それで、たまたまいい会社を見つけた。だから、今後もいろんな切り口の情報があるといいなと思います。

例えば、アフターヌーンティーや飲み会など、もっと単純に楽しめる企画やそのレポートがあったら読みたくなるかもと、菊池さん。

菊池

移住する、集まりに参加するハードルは低いんだよ、大きな目的を持っていなくてもいいんだよっていうことも含めて発信されているといいなと思いますね。移住計画の良いところは、関わっても関わらなくてもいい、そんな選択肢を持たせてくれるところ。戻ってきたら「久しぶり」って言ってくれる…京都移住計画って、ちょうどいい距離感なんです。

その後は一緒にやりたいことや、どんなメディアに成長して欲しいかなど、今後の移住計画についてディスカッションする時間になりました。これまで移住計画に関わっていただいたゲストだからこそのアイデアやヒントをいただくことができました。

移り住む先の暮らしを考える「アイデア会議」

ゲストトーク終了後は、参加者の皆さんからも「移住計画の関わりを通じ、参加者のみなさんのやりたいこと」を語らうワークショップを行いました。4人1組になって、まずは各自で自分のやりたいことを付箋に書き出します。その中で「実現できたらいいな!」と思うアイデアをピックアップしていただきました。各グループごとに色々なアイデアや意見が出ていたようです。

その中から、いくつかのグループにアイデアを発表していただきました。トップバッターのグループからは、「京都の市長になって、世界一面白いことが生まれるまちにしたい」という意見が。なんと発表してくれたのは、高校3年生の方。会場の皆さんから拍手喝采!

他にも「転勤族コミュニティをつくりたい」という意見も。転勤も言い方を変えたら移住。しかし準備期間もなく、いきなり住んだことのないまちへ行くということが決まってしまう。だからこそ、移住先の暮らしが見える情報が大切になります。

「転勤で移住された方など、まだまだ僕らが取りこぼしている層がいますね」と田村。他にも「市内の中心部にドッグランを作りたい」など、皆さんのユニークな視点の意見が飛び交う時間となりました。

繋いできた縁を結び直し、「これから」を共に歩く

あっという間に時間が過ぎ、楽しかったイベントもこれにて終了。最後に、田村から参加者の皆さんへの感謝の言葉をお伝えしました。

田村

移住した人、移住したい人たちの場っていうのはすごく大事だなと僕らも改めて思っていて。次の10年は皆さんと改めて縁を繋ぎ直しながら、新しい京都の可能性や魅力だったり探っていけたら嬉しいです。今日出していただいたアイデアも、ぜひ皆さんと形にさせてください。

イベント終了後は、一階の「awabar」にて懇親会。株式会社西浅さんから差し入れしていただいたお寿司に参加者も大満足!昔話で盛り上がっていたり、初めましての名刺交換があったり。イベントに参加された多くの方々に足を運んでいただき、楽しい時間を一緒に過ごしました。

これまでの歩みを振り返りながら、京都移住計画に関わる人それぞれのストーリーをお聞きできたイベント。初めてお会いする方も、長いお付き合いの方も一緒になって盛り上がり、改めて移住計画のつながりをリアルな場で体感する時間となりました。次の10年もどうぞ、よろしくお願いします!

当日の様子が動画でもご紹介しています。よろしければご覧ください。

編集:北川由依
執筆:ミカミユカリ
撮影:三輪恵大

CHECK OUT

関わる人と手を携えながらも、つかず離れず、ちょうどよい距離で。そんな風にこれからも、つながりをひろげていく移住計画。ぜひこの記事を読んだ後は、そのままページを閉じずに、あなたの気になるワードを検索してみてください。たまたま開いた記事が、あなたの暮らしに彩りを添えるヒントを与えてくれるかもしれません。

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