京都移住計画での募集は終了いたしました
築100年を超える旧下京図書館。閉館以来20年近く使用されていませんでしたが、現在は京都市創業・イノベーション拠点「淳風bizQ」として、オフィス兼交流施設となっています。この一階に、3Dプリンターなどのアディティブ・マニュファクチュアリングの技術を用いて「モノづくり」の可能性に挑む「YOKOITO」が入居しています。
前回の取材から2年。これまでも、3Dプリンターを中心としたデジタルファブリケーションツールの代理店業務を軸足に置きながら、モノづくりの新たな可能性を模索しつづけています。クライアントの増加や新サービスの立ち上げなど急成長中のYOKOITOは、さらに前へと進むために、新たなメンバーを募集することになりました。
2つの事業を軸に、モノづくりの可能性を探る
まずお話を聞いたのは、創業メンバーであり、代表を務める中島佑太郎さん。今年度からYOKOITOは、「Yokoito Additive Manufacturing」と「新工芸舎」の事業を2つに分け、進めていこうとしています。
「Yokoito Additive Manufacturing」ではこれまで同様、主に3Dプリンターをはじめとするアディティブマニュファクチャリング(素材を積層することで、さまざまな形状を作り出すデジタルツール)を普及させていく事業、「新工芸舎」では、それらを用いたモノづくりの可能性を模索し、研究、商品化までを行う事業を担います。
「3Dプリンターをはじめとするデジタルツールの発展で、高額で大規模な設備が持てない個人でも、モノづくりが可能な時代になりました。新工芸舎を立ち上げたのも、小規模で行うモノづくり可能性を追求し、モノづくりの未来に投資したいと考えたからです」
一方「Yokoito Additive Manufacturing」では、3Dプリンターの導入実績を着々と増やしています。2年前から参入している歯科市場では日本トップクラスの導入数となり、取引先も大手企業、有名大学とさまざまな業界に広がりました。これまでは、オンラインを通じたアプローチで市場を拡大してきましたが、この先は事業について「語れる人」も必要だと中島さんは考えています。
「今まではあえて、WEBマーケティングを中心にアプローチしてきました。他社よりも情報を多く、正確に伝えることを怠らなければ、十分に対応できていたからです。けれど扱う商品の単価が上がり、市場をさらに拡大するためには、技術面や独自の取り組みをコンテンツ化する必要が出てきました。しかもそのコンテンツをリアルに伝える人が必要なんです」
YOKOITOが考える3Dプリンターの可能性を伝え、それぞれの業界に合わせた提案をする。そのためにその市場ではどういったことが問題で、どんなことが求められているのか。未来を見据えた視野を持つ必要があります。
今回募集する職種の一つ「ビジネスデベロップメント」は、「Yokoito Additive Manufacturing」の事業拡大の全般を担う人。営業・マーケティング・広告など、あらゆる角度から事業に携わり、中島さんの右腕となって事業を進めていきます。これまで中島さんが担ってきた部分を代わりに進めていく人を置くことで、さらなる事業拡大を目指します。
デジタルツールを使った新しい工芸
つづいて「新工芸舎」について、お話を聞いていきます。
新工芸舎は、「アディティブマニュファクチャリングを活用した新しいモノづくりを研究するアカデミックな拠点を作り、そこで単純な技術論ではなくモノづくり文化を探究したい」と考えていた中島さんと、「最先端の技術を用いながらも、質感や触感を大切にした新しい工芸を生みだしたい」という役員の三田地博史さんの発想が掛け合わさり生まれました。
「新工芸舎」は、三田地さんと小坂諒さんを中心に動いています。
小坂さんは、大学でプロダクトデザインを学び、卒業後は会社員としてデザイン系のコンサルの仕事をしていました。またシェアアトリエを借り、就業後や休みの日にモノづくりを行っていたそうです。
YOKOITOのメンバーとは、そのシェアアトリエで出会いました。
「当時、オフィスにいるYOKOITOのメンバーが、自由にモノづくりに向かう様子がうらやましいなと思っていたんです。YOKOITOには、大学時代の先輩であった三田地さんもいたりと縁があって。新工芸舎を立ち上げる際に『おいでよ』と誘っていただいて、入社を決めました」
現在小坂さんが手掛けるプロジェクトの1つが、湿板カメラのデザイン。北大路にある「あかつき写房」の相談からで、プロジェクトが始まりました。
「今ではレンズも本体も手に入りにくい湿板カメラを、3Dプリンタで作れるように再設計することで、湿板写真の技術を後世に残したいというお願いがありました。昔の資料を取り寄せて構造を調べ、プロトタイプをつくり、写り具合を確認する。その工程を繰り返して、完成品をめざします。成功するまで何百個というプロトタイプを出力して、失敗を積み重ねながらつくり上げていく。デジタルツールを使っていても、そこは従来の工芸と変わらないんですよね」
3Dプリンターと聞くと近未来的なイメージを持ってしまいがちですが、あくまでモノづくりの「ツール」に過ぎないのだと小坂さんは言います。
「元のデータが何もないところにいきなり具現化するので、わりとSFチックなものだと思われてるけど、構造はだいぶアナログなんですよ。しかも気温や湿度などの環境に左右されるので、コントロールできない部分もある。陶芸のろくろのようなものです。僕らは3Dプリンターで完全なコピーを作ることや、大量生産できる製品をつくりたいのではなく、高単価で価値のあるものを提供したいと思っているんです」
新しいプリントサービス
小坂さんは新工芸舎と並行して、3Dプリントサービス「YOKOITO Printing」の立ち上げにも関わっています。現在はまだベータサービスとして稼働していますが、2021年4月に予定している正式リリース後は、専任者を置き、受注数を増やしていく予定です。今回募集する「3Dプリントオペレーター」は、この専任者にあたります。
「3Dプリントサービスが使うのは、Form 3というの光造形3Dプリンタ一。まだまだ認知度は低く、触ったことがある人は少ないと思います。けれど特別な知識が必要ではないんですよ。ただ、サービスの利用者が3Dプリンターに対する知識がある人ばかりではないため、厚みが足りない、穴が小さすぎるなど、送られてくるデータに不備があることもあります。顧客サポートも仕事の一つです」
専任者になれば、福利厚生の「まかないプリント」として、自身が作りたいものを制作することも可能なんだとか。触って、学んで、3Dプリンターの可能性を模索していくのも、面白そうですね。
急成長する事業を「最前線」で支える
最後に、YOKOITOの急成長を支えるインサイドセールス担当の上野妙子さん、相良菜穂さんにお話をお伺いします。
上野さんは、京都移住計画の記事を見て応募してくださったそう。以前は東京で働いていましたが、結婚を機に京都へ移住。正社員という形はとらず、企業や大学でバックオフィス業務など担っていました。
「そろそろ腰を据えて働こうと、ハローワークなどで仕事を探していましたが、働きたいと思えるところがあまりなくて。そんな折に、友人から京都移住計画の求人サイトをすすめられたんです。YOKOITOの記事を見たときに『モノづくり』『京都』というキーワードに惹かれて。HPを見たら事業内容やビジョンがわかりやすく、何をしたいのかが伝わってきたのでここで働きたいという気持ちが固まりました」
上野さんは入社時点では、請求書や見積書の作成などのバックオフィスとしての仕事がメインでしたが、現在は販売部門の実務をディレクターとして取り仕切っています。YOKOITOはオンラインを通じた営業が主となるため、上野さんのようにメールや電話でのお客様対応や、インサイドセールスやマーケティングが「最前線」となります。
「最近では海外とのメールでのやり取りや、社内の総務的な業務など仕事は多岐に渡りますね。扱う商材も取引先も多様になっていますし、会社の状況も常に変化しつづけています。ですから、『この仕事しかできない』という姿勢ではなく、柔軟に対応できることが大切かもしれませんね」(上野)
相良さんは、見積・請求業務や商品の発送作業を中心に担当しながら、WEBサイトの更新や名刺のデザインなどの仕事も担っています。
「経験外のことも臨機応変に対応しなければならないけれど、YOKOITOはとても働きやすい場所」と、上野さんは言います。
「チャットツールやクラウド上で仕事が進むので、発送業務以外は会社にいなくても仕事ができます。私は旅行が好きなので、空港や船の上で業務を行うことも。みんな独立性の高い人たちなので、どこで仕事をしようと生産性やモチベーションが下がることはないんです。文字だけで伝わらないときは、電話で確認したり、出社して一緒に対応したりするなど、フォローし合う風土もできているので、納得しないまま物事を進めるということがほとんどありません」(上野)
今回はお二人と一緒にインサイドでの販売や、オンラインマーケティングに関わる「インサイドセールス&マーケター」を担ってくれる人を募集します。インサイドセールスの仕事を担いながら、業界や会社の現状を把握し、市場調査、広告運用などもゆくゆくはにお任せする予定。まさにYOKOITOの「最前線」となる大切な仕事です。
「マーケターという名前ではありますが、例えばライティングや、WEBなどディレクションができる人でも構いません。その人自身の持つスキルで、会社取り組みを発信し、YOKOITOの認知を広げていってほしい。現在僕が行っている広告運用に関しても、手を貸してほしいと思っています」(中島)
モノづくりの変革の一端を担う仕事
3Dプリンターが作られて約30年。以前は試作品を短時間で作る機械を指す「ラビットプロトタイピング」と呼ばれていましたが、今では「アディティブマニュファクチャリング」。つまり、製造技術を指す言葉に変わろうとしています。これは革命的なことで、今まさに転換期をむかえているのだと中島さんは言います。
「従来のモノづくりだと、初期投資にお金がかかるため、製品を作る=量産しなければならないだという制約があったんですね。例えば、100円ショップで売っているものを1個つくって売ろうとすると、約100万円かかるとします。それを何十万個つくっているから、100円で販売できます。でも、3Dプリンターなどのデジタルツールを使ってモノづくりをすれば、1個も100個も同じ価格なんです。既存の制約にしばられて世の中に出せなかったものが、世に出せるようになったんですよ」
デジタルツールの出現によって、モノづくりが大きく変革するとき。だからこそ、3Dプリンターを普及するYOKOITOの事業は社会的にも重要なことだと中島さんは考えています。
「今回募集するインサイドセールスも、3Dプリントオペレータの仕事も、日々の業務はルーティンワークが多いかもしれないけど、モノづくりの変革の一角を担うことができる。そこに携わっていることが、自分の仕事をする意欲や、自分の成長につながると思うんです」
またYOKOITOでは、働き方もどんどん変革していきたいと考えています。
「今後は一年ごとにジョブディスクリプション、いわゆる仕事の内容を決めて、働くスタイルにしたいと考えています。基本的に入社から5年で、役員になるか業務委託なのかを決めてもらう制度にしたいなと。その根底には『給料を上げていきたい』というのがあるんですね。毎年、仕事の内容とその働きに見合った給料を出したいんです」
在籍年数に応じて昇給するのではなく、個々の成長に合わせて給与が貰える仕組みにしたい。個人の成長のためにYOKOITOが必要なら居てほしいし、そうではないなら去ってくれてもいい。
ジョブディスクリプションは、個人が試される仕組みですが、会社が成長を怠らないように、社員に試される仕組みでもあります。
学ぶ姿勢を応援するために、金銭的にもバックアップする仕組みも。語学を学ぶ、資格をとるなど勉強したいことがあれば、どんどん取り組んでほしいと中島さんは言います。
「僕自身もMBAをとるために、来年は大学院に通おうと思います。モノづくりの知識を高めたい人であれば、会社にある機械もどんどん使ってもらってOKです。YOKOITOは会社でありながらアカデミックな空間でありたいんです」
働き方も、モノづくりに対する考えもアップデートし、一歩先の未来を歩むYOKOITO。3Dプリンターを普及させることでモノづくりの可能性を広げながら、自らも研究をつづけています。売るためにどうするかということではなく、普及させるためにどうするか。常に学び、実践し、行動する。モノづくりに対する真摯な姿勢が、YOKOITOの魅力です。あなたもモノづくりの新しい未来と自分の未来を重ね合わせ、YOKOITOとともに歩いてみませんか。
執筆:ミカミ ユカリ
撮影:中田 絢子
京都移住計画での募集は終了いたしました