募集中2024.10.28

肉のプロフェッショナルとして、食と農と人をつなぐ

安心・安全で本当に自信のあるものだけを食べてほしい。農家さんの思いや生産背景を正しく伝えたい。そんな強い信念のもと、生産者から牛を一頭買いで仕入れ、職人が丁寧にさばき、おいしいお肉を提供しているお店が京都・北山にあります。

緑豊かな北山通に面して建つ「南山本店」は、1971年創業の株式会社きたやま南山(以下、南山)が運営する焼肉店。京都移住計画では2018年の記事で、これまでの歩みやここで働く人たちの思いを取材しました。

あれから約6年。取締役会長の楠本貞愛(くすもと・ていあい)さんの息子である楠本公平(くすもと・こうへい)さんが代表取締役社長に就任し、母の思いを引き継ぎながら新たなチャレンジに取り組んでいます。

南山では現在、肉職人、キッチン・マネジメント、ホールの3つの職種でスタッフを募集中。公平さんと社員のお二人に、南山の現在地とこれからについて、お話を伺います。

代替わりを経て、事業も働き方も改革中

子どもの頃から南山の取り組みを見て育った公平さん。社会に出てからは、精肉店や焼肉店、レストラン、牧場などで働いたほか、フランスの精肉店での修行も経験し、お肉に関する知識や技術を深めてきました。帰国後は、南山が運営する研修施設「ミートカレッジ・ギューテロワール」の立ち上げに携わり、2020年4月に取締役社長に就任します。

しかし就任の直後に、最初の緊急事態宣言が発令され、コロナ禍の真っ只中に。この時期の事業承継は大変だったのでは?と問いかけると、「今思うと、このタイミングに会社を継いだのはすごく良かった」と公平さんは笑顔で振り返ります。

公平さん

日常の中で代替わりしていたら、何か良い変化を見せなきゃいけないというプレッシャーがあったと思うんです。でも、コロナ禍で何をしたら良いのか誰にもわからない状況だったからこそ、自分たちがやりたいことにチャレンジできました。

当時、公平さんが感じていたのは、外部から見えている南山と、地域の人や社員から見た南山に、ギャップが生じているのではないかという課題でした。

公平さん

南山の取り組みや考え方が、外部にはすごく伝わっているのに、一番近くにいる人たち、つまり地域の人やここで働くスタッフにはあまり伝わっていないんじゃないかと思ったんです。だから、もっと地域との関わりを増やしたい、職人がもっと誇りを持って仕事ができるようにしたいと考えました。

そこで、まず着手したのは、南山本店のリニューアルでした。いったん店を閉めて、店内を大幅に改装。以前は奥にあった肉場を店の中央に配置し、取り囲むようにカウンター席を設置しました。肉職人が仕事をする様子が、食事をする人たちから常に見え、コミュニケーションが生まれるようにしたのです。

さらに、地下にはテイクアウト専門店「ヒトヨシストア」をオープン。南山のお肉や弁当、総菜などはもちろん、野菜やお米、調味料、ワイン、コーヒーといったこだわりの食材を並べました。

公平さん

農家さんや八百屋さん、ワインショップなど、良いものを厳選して取り扱っている人たちが地域にたくさんいたので、彼らの商品と南山のお肉を一緒に並べたら、同じような温度感で受け入れてもらえるんじゃないかと考えました。コロナ禍でも食の流れと雇用を止めないことを目指して、近隣のレストランで余っている食材を総菜にして販売するなど、さまざまな形で協力し合いましたね。地域のお店との関わりもお客さまとのコミュニケーションも、ストアを通じてぐんと深まったと思います。

本店でこうした取り組みを進める一方で、2階にあった宴会場や京都駅の店舗は閉めることに。事業や組織を改革し、より働きやすい環境づくりを進めていきます。

公平さん

スタッフを1ヶ所に集めて人員に余裕が生まれたことで、全員が週休2日で勤務できるようになりました。また、ランチからディナーまでの通し営業をやめて、営業時間を短縮しました。飲食店は勤務時間が長く、休みも少ないことが多い業界ですが、これを機に働き方も変えていきたかったんです。

主役は牛と生産者。つなぎ手としての役割

新たな取り組みを次々と進めてきた公平さんですが、これらは「変化と言うよりもブラッシュアップ」だと語ります。

公平さん

安心・安全なものだけを提供すること、牛と農家さんが主役であることは、母の代から変わらず大切にしています。農家さんとお客さまの間をつなぐのが僕たちの役割ですから、農家さんの思いや生産背景を、これからもしっかりと伝えていきたいですね。

大きな骨付きの肉が地下の冷蔵庫で熟成されている様子

事業承継をするにあたり、南山が大切にしたい考え方や価値観について、母の貞愛さんと話し合って共有したのでしょうか。そう尋ねると、「そういう話をしたことは一切ないですね」と公平さんは笑います。

公平さん

例えば僕たちは、短角牛という高タンパクの赤身肉を扱っていますが、ただおいしいから扱うわけではなくて。その農家さんが取り組んでいることや、考え方、人間性を知って「この人が好きだな」と思うからこそ熱量を持って仕事ができるんです。母がそうやって仕事をしているのをずっと見てきたので、僕もそこが基準になっているなと思います。これまで南山がやってきたことをさらにブラッシュアップして、しっかり言葉にして発信していくのが僕の代の役目かなと考えています。

貞愛さんや公平さんが大切にしてきた南山の価値観は、店内やWebサイトに掲げられている「5つの約束」にも表されています。

公平さん

「5つの約束」を読んでもらったときに、すっと腑に落ちるような感性の人が南山に向いているのかなと思います。ただ「お金を稼ぎたい」「肉のさばき方を勉強したい」という気持ちだけだと、「牛と農家さんが主役」であることを見失った仕事をしてしまうので。常に一歩引いて周りを引き立てられるような人に来てもらいたいですね。

南山の価値観に惹かれ、ゼロから肉職人に

ここからは、南山の価値観に共感し、同じ思いを持って働いている社員の皆さんにもお話を伺います。1人目は、入社して約2年の石浦穣二(いしうら・じょうじ)さんです。石浦さんは、京都市内のラーメン店での勤務を経て、南山に入社しました。

石浦さん

いつか独立して自分の店を持つと決めて、飲食業界に入りました。南山に入社したのは、南山の食材に対する考えや取り組みを知って興味を持ち、実際に働きながら南山の価値観に触れてみたいと思ったから。飲食店にとって、味や価格やサービスはもちろん大事ですが、食材に対する価値観も同じくらい大切だと思ったんです。

入社当初はホールでの接客を担当。数ヶ月後には、少しずつ肉場にも入るようになり、さばき方や調理も身に付けていきました。飲食店の経験はあったものの、お肉を取り扱うのは初めてだったそうですが、どうやって仕事を覚えていったのでしょうか。

石浦さん

前職で使っていた包丁とは種類も違いますし、握り方や使い方、立ち方も違うので、本当に初めてのことばかりでした。先輩の手技を見せてもらったり、そばに付いて教えてもらったりしながら、一つずつ覚えていきましたね。技術だけでなく、どんな農家さんから仕入れているのかなど、生産背景も知ることができて、自分にとってすべてが学びになっています。

南山ではお店の中央に肉場が設けられているため、お客さまの視線も意識するようになったと言います。

石浦さん

お客さまに良い印象を持っていただけるような、きれいな仕事、きれいな立ち振る舞いを常に心がけるようになりました。実はもともと整理整頓があまり得意ではなかったんですが、調理場を美しく保つ意識が身に付いたと思います。

在庫を管理し、その日に出すお肉のメニューを組むのも肉職人の仕事

お肉のカットや調理のほか、在庫管理や接客も担当している石浦さん。どんなときに仕事のやりがいを感じているのでしょうか。

石浦さん

カウンター席との距離感が近いので、ケースに吊られているお肉について質問をいただくなど、お客さまとコミュニケーションを取る機会も多いんです。自分が提供したものや、お話する中で提案したことが、お客さまに喜んでいただけたときはやっぱりうれしいですね。

石浦さんは、将来的には独立して自分の店を始めるのが目標。食材に対する考え方や価値観、常にきれいな仕事をする意識など、南山での学びや経験を生かしていきたいと話してくれました。

石浦さん

将来自分の店を持ちたい人や、食材の生産背景に興味のある人にとって、学べることがたくさんありますし、ここで働く価値は大きいと思います。主体性を持って前向きに仕事に取り組めるような人に来てもらえたらうれしいですね。

学生時代から変わらない、南山への共感

つづいてお話を伺うのは、ベテラン社員の山内麻衣(やまうち・まい)さん。山内さんが南山で働きはじめたのは、高校1年生のときでした。

山内さん

私が小学生の頃に、母が南山で働きはじめたんです。その後、姉もアルバイトをするようになって。私も高校生の頃から、長期休暇中にアルバイトを始めて、大学が決まってからはレギュラーで入るようになり、卒業と同時に就職しました。

家族3人が南山で働いていたとは!と驚きつつ、アルバイトだけでなく就職しようとまで思ったのはどうしてだったのか尋ねると、山内さんは当時を振り返ってこう話します。

山内さん

私はBSE(狂牛病)問題が起こる前から、南山でアルバイトをしていました。BSEをきっかけに、安心・安全なものを提供するために、生産背景がわからない輸入牛の仕入れをやめたり、国産牛の一頭仕入れを始めたりと、南山が新しい挑戦をしていくのを見ていて、その考え方がすごくいいなと思って。貞愛さんに「就職したい」とお話をして、入社することになりました。

入社後も、アルバイトのときと同じようにホールを担当していましたが、やがてお店のチラシやメニューのデザインも手がけるようになります。ちなみに、デザインの知識や技術があったわけではなく、独学で始めたそうです。

店内にあるメニュー表などは、すべて山内さんがデザインしたもの

山内さん

もともと外部の人が制作物をデザインしていたのですが、必要なときにすぐ社内で作れたほうが良いので、見よう見まねで手伝いはじめて。少しずつ私がデザインを担当するようになりました。

さらに、1ヶ月ほど前からは、シャルキュトリ担当の欠員をきっかけに、ソーセージ、ハム、ベーコンなどの製造の仕事も始めたという山内さん。全く違う職種に次々と挑戦していくバイタリティに驚かされますが、「私は保守的なタイプなので、転職は考えないんですけど、会社の中で新しいことにチャレンジできるならやってみたいなっていう感じですね」と軽やかに話します。

ホールのアルバイトをしていた人が、得意を生かしてデザート製造にも挑戦するなど、山内さんのほかにも多職種を経験している人がいるのだとか。やりたい仕事があれば手を挙げやすい、チャレンジが受け入れられる環境であることが伝わってきます。

「放牧豚」や「さんさん豚」を使用する、南山のシャルキュトリ。肉職人と相談しながら、どの商品にどのお肉を使用するのかを決めています

南山でいろいろな職種を経験してきた山内さんですが、どんなときに仕事の魅力ややりがいを感じているのでしょうか。

山内さん

生産者さんとお客さまをつなぐのが私たちの仕事なので、それができたと感じられるときは、やっぱりやりがいがありますね。「このお肉、おいしいね」と言ってもらえると、紹介して良かったなとうれしくなります。南山ではみんながお客さまのことを考えて動いているので、誰かを喜ばせることが好きな人はすごく向いているんじゃないかなと思います。

肉のプロとして、環境や食の問題にアプローチ

石浦さん、山内さんのように、思いを同じくするメンバーと共に歩んできた南山。最後に、これからの展望について、公平さんにお聞きしました。

公平さん

放牧や自給飼料で大切に育てられた牛の魅力や、持続可能な食肉文化を、これからも発信していきたいですね。肉屋がしっかりと勉強して、熟成やカット、調理の技術によって、肉の価値を最大限に引き出して、一頭をちゃんと使い切る。そういう職人を育てて、コツコツと続けていきたいです。そして、僕たちの思いに共感してチャレンジしてくれるお肉屋さんやスーパーが増えていったら最高ですね。

ちなみに南山では、牛一頭をより良い形で使い切るために、ランプやイチボといった部位はレストランに卸し、レストランではあまり使わないような部位を焼肉として提供しているそうです。「みんなが使いたがらない部位を、薄く切ったり隠し包丁を入れたりして、おいしく提供できるのが焼肉屋の強み」という公平さんの言葉から、南山が焼肉店だからこそできることだと改めて実感できました。

肉のプロフェッショナルを目指せるのはもちろん、持続可能な農業や食文化、地域コミュニティといったさまざまな角度から学び、経験を積むことができるのは、南山ならではの魅力ではないでしょうか。彼らの思いや取り組みに共感した人は、ぜひ一緒にチャレンジしてみませんか。

執筆:藤原 朋
撮影:小椋 雄太(あかつき写房)
編集:北川 由依

求人募集要項

企業名・団体名株式会社きたやま南山
募集職種①肉職人
②ホール担当
③キッチン担当
※ご経験やご志向に合わせて配属します。
雇用形態正社員(試用期間 2週間~1カ月、試用期間前後での勤務条件の変更なし)
仕事内容お客様の接客から始まり、肉の職人としての技術、作法を身につけ、想いあるお肉の伝え手として活躍できます。
給与・月給:24万円(基本給181,650円+奨励手当58,350(うち時間外手当40時間分58,350円を含む))〜30万円
・残業代の支払い方:固定残業代制(40時間分を固定で支給、超過分は残業時間に応じて支給)
福利厚生健康保険、厚生年金保険、雇用保険の適用有り
社員割引あり(お食事20%引き、地下ストア精肉10%引き)
勤務地・南山本店(京都市左京区下鴨北野々神町31 北山通ノートルダム小前)
・ヒトヨシストア(京都市左京区下鴨北野々神町31 地下1階)
勤務時間・9時から23時の間で実働週40時間(時間外や休日出勤が発生する場合が有ります。休日出勤が発生した場合は代休を取得いただきます)
・休憩(勤務時間が8時間以上の場合は60分、6時間から8時間の勤務は休憩45分)
休日・休暇週休2日制(勤務シフトにより休日は明示する)
年次有休休暇(労働基準法)どおり
応募資格記事を読んで南山が大切にしていることに興味を持たれた方、共感された方(必須のスキルは特にありません)
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面談場所きたやま南山本社
参考リンク焼肉南山サイト
南山50周年記念動画
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