2023.07.07

寝具に携わりつづけて約100年。眠りとくつろぎで健康を支える仕事

京都移住計画での募集は終了いたしました

世界でもまれに見る「睡眠不足大国」。そんな言葉があるほど、日本では多くの人が「睡眠時間が足りない」「睡眠の質に満足できない」といった悩みを抱えています。アメリカのシンクタンクの算出では、寝不足による日本の経済損失額は年間15兆円とも言われています。

今回ご紹介するのは、そんな睡眠の悩みを解消するべく、「快眠とくつろぎで世界を元気にする」をミッションに掲げる大東寝具工業株式会社(以下、大東寝具)。

大正時代に京都で創業し、100年近く布団の製造・販売を生業としてきた会社です。現在は寝具だけにとどまらず、枕ひとつから空間全体まで、睡眠の環境づくりを手がけています。

大東寝具では、法人営業、接客・店舗運営、ECサイト制作の3つの職種で、新しい仲間を募集しています。

苦境を乗り越え、試行錯誤の末につかんだ転機

大東寝具は、1925(大正14)年に「大東ふとん店」として京都・壬生で創業しました。代表取締役の大東利幸(おおひがし・としゆき)さんは、会社の創業期についてこう語ります。

「当時は各家庭で布団を仕立てていた時代ですから、祖父は製綿所として事業をスタートし、布団の中に入れる綿を販売していました。時代の流れと共に、昭和初期から布団の製造を手がけるようになったと聞いています」

その頃、工場設備を構えるために、壬生から伏見へと移転。以来、工場と本社を伏見に置き、繊維街として栄えた室町の寝具問屋などと取引をしながら、京都に根ざして事業をつづけてきました。

大東さんは1988年に大東寝具に入社。亡き父から代表を引き継いだ母から「帰ってきてほしい」と頼まれて家業に入ったものの、「会社は惨憺たる状況だった」と当時を振り返ります。

「事業はいわゆるOEM、平たく言えば下請け。寝具業界の価格競争が激しくなり、海外に生産拠点を移す企業も増える中で、うちは資金力がなくてできなかった。しかも、社内にいるのは職人さんばかりで、営業担当は一人もいませんでした」

そこで、「販路開拓が急務」と考えた大東さんは、「脱下請け」を掲げ、工場の半分を取り壊して新社屋を建て、実店舗をオープン。業態転換を目指して小売業をスタートします。

小売業を始めた当初は、寝具店、雑貨店、カーテン専門店など「スクラップアンドビルドを繰り返していた」と大東さん。現在は、ねむりとくつろぎのショールーム「ねむりの蔵」として自社商品を扱っています

2001年には、インターネット通販事業を開始。業界に先駆けてECに注力したことで、事業は急成長を遂げ、5年で約3倍もの売上を達成しました。しかし、直後に大きな試練が訪れます。

「出店していた楽天市場のランディングページを、スタッフが誤って削除してしまったんです。それをきっかけに、2億3000万円あったネット売上が6000万円まで激減しました。同時期に、既存の卸事業で約束手形が不渡りに。翌期には債務超過の状態になってしまいました」

窮地に立たされる中、大東さんは「このままではダメだ。やり方を変えないといけない」と一念発起し、次々と新たな取り組みを打ち出していきます。

自社の強みを生かし、新たなチャレンジを

「自分たちの強みに気づいたんですよ。作りたいものを自社工場で作れるやんって」。そう語る大東さんが始めたのは、自社製品の開発でした。

「自分や社員の頭の中にあるアイデアを、試しに工場で形にしてみる。それをECサイトで販売して、売れなかったらどこが悪いのかお客さまの声を聞いてブラッシュアップする。こういったことができる業態が、自分たちの強みだとわかったんです」

BtoCで反応が良かった商品は、BtoBでも展開するため、展示会や商談会に出展。さらに、2010年からは上海万博など国際見本市にも出展するようになり、今では10数ヶ国の専門店と取引を行っています。

同時に、大東さんが力を入れて取り組んだのが、経営ビジョンを社員と共有すること。

「『快眠とくつろぎで世界を元気にする』という事業ドメインを定義し、この事業を通して社員の幸福を実現することをビジョンとしました。睡眠を改善するためには睡眠の知識が不可欠ですから、社員の皆さんには必ず専門教育機関で勉強して資格を取得してもらうことを制度化しました」

大東寝具では、営業・接客・製造・経理総務といった職種を問わず、睡眠健康指導士の資格を全社員が取得し、睡眠に関する知識を深めています。また、「ねむりとくつろぎ」を軸に寝具やインテリア、ホームウェアといった商品を展開するほか、2012年からは建築設計工房「素家 soya」も立ち上げ、睡眠を支える住環境全体の提案も行っています。

睡眠を改善することで、人々の健康を支えていく

再来年には創業100年を迎える大東寝具。大東さんは会社のこれからをどのように見据えているのでしょうか。

「昨年から社内でよく話しているのは、事業性と社会性の両立。事業会社なので、もちろん収益を上げて事業を継続させないといけない。でもそれだけではダメ。私たち関西の人間には、近江商人の『三方よし』や、そこから派生した『四方よし』の精神がDNAに染み込んでいると思うんですよ。この精神がなければ、小さいながらも会社を100年つづけてこられなかったと思います」

「売り手よし、買い手よし、世間よし」を表す「三方よし」。さらに、SDGsの視点「未来よし」を加えた「四方よし」。この精神こそが社会性であり、大東寝具にとっての社会性とは、「睡眠環境を改善してより健康に過ごすためのお手伝いをすること」だと大東さんは力強く語ります。

「社会起業家と呼ばれる人たちのように、社会に大きなインパクトを与える事業ではないかもしれないけれど、皆さんの健康を支える会社になりたい。それが社員のみんなと一緒に目指している目標ですね」

会社としてありたい姿を実現していくために、これから新たに仲間に加わる人にはどんなことを求めているのでしょうか。そう問いかけると、「とりあえずやってみようと思ってくれる方」と大東さんは笑顔で語ります。

「大東寝具では今、完全週休二日制や変形労働時間制の導入、人事評価制度の見直しなど、働く環境の整備を進めています。そのためには、生産性の向上が不可欠ですし、新しい製品やサービスを開発し、付加価値を高めていかなくてはいけない。そういったチャレンジに一緒に取り組めるような人だといいですね」

さらに、「真摯さや思いやりも大切」と大東さんはつづけます。

「大東寝具は長く勤めている社員が多く、アットホームな雰囲気の会社です。このアットホームさをこれからのチームビルディングに生かしていくためにも、真摯さや思いやりの心を持った方に仲間に加わっていただけるとうれしいです」

京都のものづくりを広く発信していきたい

ここからは、今回募集する各職種の方たちにもお話を伺います。1人目は、営業部の猪島敬充(いのしま・たかみつ)さん。前職は寝具の洗濯を行う会社で営業を担当していた猪島さんは、9年ほど前に大東寝具に入社しました。

「以前働いていた会社では、大東寝具から商品を仕入れていたんです。前職を辞めるタイミングで声を掛けていただいて、入社することになりました。入社以来、営業職として、法人のお客さまに対してヒアリングや提案を行い、お取引までつなげる業務を担当しています」

取引先は、百貨店や小売・専門店、通販店、宿泊施設、アパレルメーカー、官公庁など多種多様。エースホテル京都や俵屋旅館といった京都のホテル・旅館はもちろん、全国から問い合わせが絶えないそうです。

ビーズクッション「tetra」は、京都信用金庫が運営する「QUESTION」でも使われています

営業として仕事をする上で、「まずは会社を知っていただくことが大切」と猪島さんは話します。

「手がけている商品が幅広いので、『とりあえず大東寝具に声を掛けてみよう』と思っていただけるように、間口は広くしておくことを心がけています。会社をよく知っていただくために、お客さまが京都に出張で来られた時には、製造現場をご案内することも多いですね。実際に現場を見学していただくことが安心感にもつながりますし、100年近く受け継がれてきた技術力は、自信を持って提案できるものだと思っています」

商品を採用していただいた時や、お客さまから信頼してもらっていると感じた時に、大きなやりがいを感じるという猪島さん。さらに、京都で働くからこその魅力もあると語ります。

「年に1~2回は展示会に出展しているので、そこでご一緒している京都の企業さんとの横のつながりが広がりました。それは自分にとっても会社にとっても良いことだなと感じています。京都にはすごい技術を持つ会社がたくさんあると改めて知りましたし、横のつながりを通じて京都のものづくりをもっと広く伝えていけたらなと思います」

営業職としてこれから一緒に働く人に向けて、猪島さんはこんなふうに話してくれました。

「僕は前職で寝具には関わっていましたが、インテリアの知識は全くなかったので、業界未経験の方でも何も心配はいりません。人と話すのが好きで、やる気さえあれば大丈夫です。まずは、どういう思いでものづくりをしているのか、会社のビジョンをしっかりと理解していただいた上で、商品知識を身に付けていってもらえたらと思います」

接客で得たユーザー視点を商品に反映

つづいてお話を伺うのは、小売事業部の市原裕子(いちはら・ひろこ)さん。2016年に入社し、接客や店舗運営を担当しています。

「大学卒業後、販売や事務の仕事をいくつか経験してきた中で、お客さまと直接お話できることにやりがいを感じるので、販売のほうが自分に合っているなと思って。販売の仕事を探している時に、大東寝具の募集を見つけて応募しました」

大東寝具で働き始めて、今年で8年目。日々のお客さまとのやり取りの中で、仕事の喜びややりがいを感じていると、市原さんは穏やかに話します。

「睡眠で悩んでいる方がよく来店されるのですが、『寝具を変えたら睡眠の質が良くなった』と言ってくださる方がたくさんいらっしゃって。最近も『お店で枕を合わせたら、夜中に目覚めることがなくなり、ぐっすり眠れるようになった』とわざわざメールを送ってくださった方がいて、すごくうれしかったです」

市原さん自身は、寝具やインテリアの業界で働くのは初めてだったものの、知識を身に付けていくうちに興味が深まっていったといいます。

「入社してから睡眠健康指導士の資格を取得したり、自社製品を実際に使ってみたりして、知れば知るほどすごく面白く感じてきました。特にコロナ禍以降は、睡眠がメディアで取り上げられる機会が増えたので、記事などはできる限り目を通して、お客さまへのアドバイスにも生かしています」

市原さんは、店舗での接客や電話対応といった主な仕事のほかにも、商品の配達や検品など、さまざまな業務を担当。ホームウェアの商品開発にも携わったそうです。

「小さい会社なので、いろいろな経験をさせていただいています。ホームウェアの企画に関わった時には、店舗でお客さまからお聞きした意見をデザイナーさんに伝えたり、縫製屋さんを探したりもしましたね」

お客さまの声を反映して企画した、ライフスタイルブランド「chambre de D KYOTO(シャンブル ド ディー キョウト)」のホームウェア

ほかにも、布団の打ち直し(リフォーム)の際の引き取りや、布団の生地を割いて中の綿をまとめる作業などもあるのだとか。

仕事の幅広さに驚いていると、「そういう昔ながらのお布団屋さんの仕事も面白いですよ」と微笑む市原さん。「これから新しく入社する方も、いろんな仕事に興味のある方だと良いですね」と話してくれました。

「新しく入るスタッフの方は、この秋にオープンする四条烏丸の店舗で働くことになるので、布団の打ち直しといった本店のみの仕事は、新店では担当しないとは思うんですけど。でも、新店のオープンまで本店で研修をする間に、いろいろな経験をしていただけると良いですね。製造部など他の部署とのつながりも持ってもらえたら、商品企画など今後の提案にも生かせると思います」

お客さまの声が、制作のやりがいにつながる

最後にお話を伺うのは、EC担当の今江達也(いまえ・たつや)さんです。家電量販店での販売職を経て、2015年に大東寝具に入社しました。

「接客の仕事は好きだったのですが、立ちっぱなしでずっと動き回っている仕事だったので、この先長く働いていけるのかなという不安があって。パソコンのスキルを身に付けたいと思い、前職を退職した後、職業訓練校でWebデザインやコーディングを学びました。そのスキルを生かせる仕事を探していた時に、大東寝具に出会ったんです」

大東寝具のWebサイトを見て、眠りと健康が深く関わっていると知り、自社商品を通じて健康に携わる仕事に魅力を感じたという今江さん。白を基調とした清潔感のある商品の世界観にも惹かれ、入社を決めたと言います。

「入社してからは、ECサイトのページ制作を主に担当しています。新しい商品が出たら、商品を撮影して画像を編集し、ページを制作して、自社サイトと楽天サイトにデータをアップロードして商品ページを公開します。ほかにも、季節ごとの特集ページやセールのページの制作も担当しています」

サイト制作に関する幅広い業務を担当している中で、どんな時に喜びややりがいを感じているのでしょうか。

「自分が作ったページがたくさんの人に見てもらえるのは大きなやりがいですし、ページを見た方から実際に注文が入るのもうれしい瞬間ですね。お客さまからの電話やメールにも対応するので、ページを見た方の声を直接聞けるのもモチベーションにつながっています」

制作者がユーザーの声にふれられるのは、Web制作会社や大手メーカーの制作部門で働くのとは大きく異なる、大東寝具ならではの仕事の魅力なのでしょう。

「お客さまと接する機会はけっこう多いので、人と話すのが好きな人が向いているかもしれないですね。僕自身も、もともと接客をしていましたし、人と接するのが好きなので、楽しく働けていると思います。あとは、健康オタクな人かな(笑)。お客さまを健康にすることが根底にある会社なので、自分自身も健康が気になる人だと、自然に興味を持って商品を好きになってもらえるんじゃないかなと思いますね」

営業担当の猪島さんが京都のものづくり企業との横のつながりを意識していたり、小売担当の市原さんが商品企画にも携わっていたり、EC担当の今江さんがお客さまとのふれあいを大切にしていたり。

一人ひとりが会社のビジョンを共有しているからこそ、職種の枠組みにとらわれず、広い視野を持ってさまざまな仕事に挑戦できるのでしょう。大東さんが求める人物像として話してくれた「とりあえずやってみようと思ってくれる方」を、社員の皆さんがしっかりと体現していることがよくわかります。

大東寝具が掲げるビジョンや、社員の皆さんの仕事への姿勢に共感し、一緒に働いてみたいと思った方は、眠りとくつろぎから健康を支える仕事にぜひチャレンジしてみてください。

編集:北川由依
執筆:藤原朋
撮影:小黒恵太朗

京都移住計画での募集は終了いたしました

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