京都移住計画での募集は終了いたしました
大手企業の副業解禁が話題になってから早数年。会社員として働きながらフリーランスとしても事業をつくる人、複数の場所に拠点を置き行き来しながら働く人など、多様な働き方をする人が増えています。
それに伴い、コワーキングスペースを代表に、オープンなワークプレイスを見かけることも増えました。
今回訪れたのは、オフィスのリノベーションや空間プロデュース事業を展開する株式会社ウエダ本社。「働くをプロデュースする」をテーマに、中小企業のオフィスから働き方改革を推進しています。
ウエダ本社が考える“いい会社”とは
ウエダ本社はもともと”事務機のウエダ“として、オフィスで使う文具やコピー機の商社として創業しました。その後、代表取締役に岡村充泰(おかむら・みつやす)さんが就任。事務機からの脱却をめざし、オフィスまわり全般を扱う会社へと姿を変えてきました。
現在の主力事業は、オフィスのリノベーションです。従来、経営者や総務が独断で決める会社が多かったオフィス空間を、社員一人ひとりが当事者として関われるようワークショップを開催。理想の働き方やワークプレイスをヒアリングした上で、形にしています。

オフィスを最も使うのは、そこで働く社員のみなさんです。彼らのニーズを汲み取り、心地よく働けるワークプレイスをつくるウエダ本社の仕事は、多くのお客さんから信頼されています。
時代の流れと共に事業を再編集してきたウエダ本社が、次にめざすのはどのような姿なのでしょうか。岡村さんは、このように話します。
「働くまわりのことを全て網羅できる存在になりたい。そして、我々が思う、”いい会社“を広げていきたいです」。

というと、具体的にどういうことでしょうか?
「例えば食事。働く人にとって”良い食”を提供できるなら、お弁当やケータリングでウエダが手掛けてもいいと思います。また、弁護士や税理士などの仕事でも、ウエダの価値観でいい会社づくりに向けて動いてくれる人がいれば、グループでやってもらってもいいと思っています。ほかにも、働くにまつわる仕事はたくさんあります。働くをプロデュースする中で、オフィスのリノベーションはウエダができることの一つでしかありません」。
岡村さんの言うように考えると、たしかに働くにまつわる事業を生み出す可能性はたくさんありそうです。では、それらの事業を通して広げていきたい“いい会社”とは、どんな存在なのでしょう。
「まずは、働く人を、”人材”という材料として見るのではなく、”人財”として財産と見る会社です。そして、自社の利益を目的化するのではなく、自社が存在する意味、価値から考えて、利益もあげていく会社ですね」。

「中小企業をマイナスに捉える人が多いですが、それは大企業と同じ土俵で闘おうとするからです。大企業が効率を追求し、利益を最大化することをめざすなら、中小企業は多様性や個性を大切にしたあり方を強みにしたらいい。僕はウエダという会社を大きくしたい気持ちはありません。しかし、我々と同じ価値観をもつ会社を増やし、働くまわりのプロデュースを一緒にしていける会社を広げていきたいと考えています」。
時間と場所に捉われずに働く仕組みづくり
「ウエダと近しい価値観をもつ会社を増やしていきたい」と構想を練ると同時に、時間と場所に捉われずに働ける仕組みづくりも進めています。
2018年には本社ビル2階を、「TRAFFFIC」としてオープン。京都と地方をつなぐワークスペースをつくりました。

また、京都市内から車で2時間ほどにある与謝野町では、サテライトオフィスのオープン準備を進めています。
「ウエダの仕事はパソコン一台あれば、どこでもできるわけではありません。いきなり地方へ行っても売り先がないので、仕事をつくるところからやらなければならない。そこでプロトタイプとしてはじめたのが与謝野プロジェクトです」。

与謝野では、家具から空間まで「ともにつくる」を楽しむ人をふやす「KUMIKI PROJECT」と連携して、DIYで使う機械を完備したスペースをオープン予定なのだとか。この場を起点に、地方のオフィスリノベーションや空間プロディースの仕事も増えていきそうです。
ほかにも、子会社の「utena works」では、女性の働くを応援する事業を展開。子連れシェアオフィスの運営や女性の起業サポートをしながら、妊娠や出産、子育て期などさまざまなライフスタイルに応じた柔軟な働き方を提案しています。

時間と場所に捉われずに働ける仕組みづくりをするウエダ本社。その動きを加速させようと、社内ツールのIT化や、スタッフの副業の応援なども積極的に進めています。
実際、IT導入や副業に取り組むスタッフにもお話を聞いていきます。
モノより人を大切にする会社で働きたかった
ご登場いただくのは、以前、京都移住計画で掲載した記事をきっかけにウエダ本社へ入社した森島啓太(もりしま・けいた)さんです。
前職では、電子部品のメーカーで経営企画や営業職として働いていたという森島さんが、ウエダ本社に転職したのは、自身の働き方にモヤモヤを抱えていたからだそう。

「以前は大企業で働いていたのですが、仕事が細分化されすぎていて、個人に対する期待感があまりないと感じていたんです。もっと多岐にわたる仕事をできる中小企業へ転職を考えていた時に、ウエダの記事を見つけました。”働き方をプロデュースする”会社と書かれていて、すごく興味が湧いて。読み終えた後、すぐ応募しました(笑)」
求人情報を発信する私たちにとって、それはとても嬉しい言葉です。決め手はなんだったのでしょうか。
「製造業では、機械に投資して良い製品を作ることが当たり前。人よりもモノに対して意識が強い業界でした。でも僕は、人を資本として働くあり方に、だんだん興味関心が移っていったんです」。
現在、森島さんは、経営企画室で働いています。具体的にどんな仕事をしているのですか?
「社員30名ほどの中小企業ですから、営業と設計以外のことはなんでもやっていますよ(笑)社内へのITツールの導入、今回のような採用業務、総務など多岐に渡ります」。

例えば、今回募集するITジャンルの仕事も、今は森島さんが担当しています。
「もともと顧客情報や売り上げなどは、Excelで管理していました。小さな組織にも関わらず、属人化していたから効率も良くなかったんです。そこで1年ほど前から、サイボウズが提供する業務アプリ構築クラウドサービスのkintone(キントーン)を導入し、情報共有の仕組み化を進めてきました」。
クラウドでさまざまな情報を共有できるようになったことにより、訪問先でデータを参照したり、過去の商談情報を見たりできるように。ITツール導入で、少しずつ時間と場所にとらわれない働き方ができるようになってきたそうです。
しかし、ITによる仕組み化ははじまったばかり。ITの専門性が高いわけではない森島さんが、他の業務と兼業でするには、少し荷が重いのも事実です。
また、働き方改革に欠かせないオフィスまわりのIT化を、ウエダ本社だけに留めず、オフィスリニューアルを手がけるクライアントにも提案していきたいとも考えています。
「ウエダとクライアントの関わりは、現段階ではオフィスを提案、施工して終わりになっています。でも、オフィスが完成したら、働き方の課題がなくなるわけではありません。ウエダでやっているITツールによる業務の仕組み化を、クライアントにも導入できたら、継続的に働き方のプロデュースをできるようになります」。

そこで、今回募集するのがICTコーディネーターです。ウエダ本社として、IT担当を登用するのははじめてのこと。時間と場所にとらわれない働き方を、まずは自分たちが実践するための、新たなチャレンジです。
「これまでkintoneを導入したほかにも、テレワークを推進するためにデスクトップPCからモバイルPCへ移行したり、テレビ会議を導入したりと社内のIT化を進めてきました。しかし、専門家がいないので、選んだツールや手法が正解かはわからず、手探りの状態です。ウエダを事例に、クライアントへITツールを使った働き方改革を提案するためにも、IT導入の旗振り役となる人を求めています」。
ITと一言で言っても幅広いですが、どんな人を求めているのでしょうか?
「大前提として、ウエダの方向性に共感してもらえること。その上で、一つの分野に特化したプロフェッショナルよりも、広く浅くIT業界のことを知っている方がいいですね。セキュリティやネットワークなど社内のITにまつわること全般をお任せすることになります。世の中にあるさまざまなITサービスから、ウエダにとっての最適解を示してほしいです」
求める役割は、ウエダ本社が広めたい価値観を、ITツールを駆使することによって加速していくこと。そして、その成果を、オフィスリニューアルなどのサービスと組み合わせて、ウエダ本社の新サービスまで引き上げることができたら、中小企業の働き方改革は、一気に進みそうです。
対話から理想のオフィスを形にする
過去にもウエダ本社では、自社の事例から新サービスを生み出した例があると聞き、お話を伺ったのは、つくるチームの中本はるかさん。京都市内の大学を卒業後、ウエダ本社へ入社。オフィスの設計を担当しています。

「ウエダでは、京都工芸繊維大学の仲研究室(環境デザイン経営分野)と一緒に、ワークプレイスのデザイン研究を進めています。私はもともと仲研究室のゼミ生なんです」
そうした背景もあり、入社後、中本さんは取材場所にもなった5階のカフェスペースのリニューアルを仲研究室と共に進めることとなりました。
「もともとこの場所は”THEオフィス”って感じで(笑)グレーの壁に囲まれた場所だったんです。このスペースのリニューアル事例を、お客さんにも広げることを目的にしていたので、プレッシャーはありましたが、自由にさせてもらえてとても楽しかったです」。

できあがったのは、緑と白を基調とし、木のぬくもりが感じられる温かなスペース。ウエダ本社のスタッフも、打ち合わせなどで訪れた社外の人も、心地良さを感じられるよう、コーヒーや紅茶などを淹れられる場所も設け、カフェスペースと呼ばれるようになりました。
「今では定番サービスになっていますが、オフィス設計の前に、社員向けワークショップの機会を設けるようになったのも、このリニューアルの成功体験からです」。

設計の仕事と聞くと図面をつくるシーンが思い浮かびますが、お話を聞いていると、ウエダ本社の設計は、仕事の幅が広そうです。
「そうですね。パソコンに向かって、図面を作る時間は半分くらい。残りの半分は、営業さんの打ち合わせに同行したり、ワークショップをしたり、SNSを運用したりしています」。
本当にいろいろされていますね……!
「自分で役割を見つけることが仕事だと思うんです。私の役割は、設計というよりも営業サポートの方が近いかも。SNS運用も、誰かに言われてやっているわけではありません。完成したオフィスをSNSにアップしたいと思ったから、自発的にやっているのであって、強制されたものではないんです。狙ったわけではありませんが、SNSを見た方から問い合わせをいただき、仕事につながったこともあります」。

多様な仕事に関われることは、中小企業で働くおもしろさの一つ。中本さんは、ウエダ本社で働くやりがいをこう話します。
「ワークショップを通じて働いている人の顔や社風を知った上で、提案をつくっていけるところは、ウエダならではかな。さまざまな業界の人と出会い、仕事のことはもちろん日常のことを聞いたり、働き方について対話できたりすることもおもしろいですね」。
休日は、仕事でも関わる「KUMIKI PROJECT」のDIYインストラクターとして、活動することもあるそうです。

「働き方をプロデュースする会社だから、まずは私自身がさまざまな働き方を体現していきたいです。ウエダは、1時間ごとの有給取得を可能ですし、リモートワークも積極的に導入しています。理想の働き方を相談したら、実現する方法を一緒に考えてくれる会社です」。
実際、中本さんは実家のある神奈川に1週間滞在しながら、リモートワークで働く実験もしたそう。ウエダ本社の時間と場所に捉われずに働きやすい環境づくりは、一歩ずつ着実に進んでいます。

日本の働き方改革ははじまったばかり。岡村さんが話すように、”働く”にまつわる仕事の可能性は、多方面に広がっています。時間と場所に捉われずに働きやすい環境をつくるために、まずは自社から改革を進めようとするウエダ本社。もし記事の中で何か感じるものがあったなら、改革の旗振り役となるICTコーディネーター、そして設計担当としてウエダ本社の価値観を世の中に広めていきませんか。
執筆:北川 由依
撮影:もろこし
京都移住計画での募集は終了いたしました