2024.04.22

「着物」をもっと面白く。和装文化の未来を共につくっていくために。

京都移住計画での募集は終了いたしました

「着物」という着姿を未来に残したい。「着物って楽しい」「着物ってかっこいい」と思える世界をつくりたい。そんな思いで和装業界に携わっている人たちがいます。

京都市下京区にある和装小物の製造卸問屋、株式会社大原商店。1931(昭和6)年に帯締めの卸問屋として創業し、現在は帯締め・帯揚げ・半襟・草履・バッグ・髪飾りといった多岐にわたる小物を取り扱っています。

大原商店は今、和装文化を次の時代へとつなぐために、さまざまな挑戦をしています。今回は、大原商店の未来、そして和装業界の未来を一緒につくっていく仲間として、営業職とEC担当を募集します。

次の一歩を踏み出すため、社内の体制を一新

2021年に三代目社長に代替わりし、新たなスタートを切った大原商店。2022年に行った前回の取材では、「変わろう」「チャレンジしよう」という変革期の大きなうねりが感じられました。あれから約1年半が経ち、会社はどんなふうに変化してきたのでしょうか。代表取締役の大原康史(おおはら・やすふみ)さんはこう語ります。

大原さん

1番大きな変化は、2024年1月に組織変更を行い、「商品部」と「営業部」を設置したこと。さらに「商品部」は「商品企画部」「商品管理部」の2つに分けました。実は今までは部門が分かれておらず、全員が商品企画・管理と営業の仕事を兼任していたんですよ。全員がお客さま対応をしていて、常に来客やお問合せがあるため、出張や外出がしづらい状況でした。

社員がもっと外に出ていくためには、業務を分ける必要がある。そう考えて組織変更を行ったことで、これまでになかった動きが生まれつつあると言います。

大原さん

以前は仕入先を訪問する機会がほとんどなかったのですが、今は商品企画部のメンバーが直接訪れてやり取りするようになりました。職人さんに会いに行ったり、ギフトショーに足を運んだりして、新しい仕入先の開拓も進めています。作り手の高齢化や後継者不足が深刻な状況ですから、仕入先と関係性を築くことが重要なんです。

職人不足を解消し、ものづくりを維持していくため、自社でバッグ職人を採用して育成する計画も進んでいます

さらに大原さんは、「社員に外の世界をもっと知ってほしい」と、社外研修にも積極的に送り出しています。京都商工会議所の次世代女性リーダー育成研修には、2名の社員が参加し、こんな反応があったそうです。

大原さん

初めはあまり乗り気じゃなかったようですが(笑)、他業界の女性たちと交流して刺激を受けたようで、研修を終えた後には「行って良かったです」と言ってくれました。そうやってみんなの意識が少しずつ外へと広がっているのを感じますね。

他にも、全員にパソコンを支給したら、「パソコン講座に通いたい」と自主的に声があがるなど、「外へ出て行こう」「新しいことを学ぼう」という意識が高まっていると言います。

また、外へと気持ちが向かっているだけでなく、社内での仕事の進め方も変化しつつあります。

大原さん

組織変更をしてから、「チームで話し合える体制」ができてきましたね。今までは全員があらゆる業務に関わっていたので、何か一つやり方を変えようとしても、なかなか意見がまとまらなかった。担当を分けたことで、話が前に進むようになりました。

例えば、商品管理部を設けたことによって、業務効率化を図る取り組みがよりスムーズに。「バーコード発行機を導入しよう」「商品に付ける札の種類を整理しよう」「帯締めの房を巻く素材を変更しよう」といった提案が生まれ、これまでのやり方を改善して効率化していく動きが着々と進んでいます。

大原さん

以前は僕一人が考えて動いていたことが、今は僕と商品管理部のメンバーで話し合って、チームで解決できる。それは組織変更の成果かなと思っています。

帯締めの房が広がらないようにする「房巻き」は、和紙からライスレジン(お米由来のバイオマスプラスチック)への変更を検討中。「誰もが扱いやすい素材にしたほうが、小売店にとっても消費者にとっても良いですから」と大原さん

大好きな日本文化を世界に発信したい

商品管理部に所属し、業務効率化の一端を担っているのが、2023年1月に入社した尾上久留美(おのえ・くるみ)さんです。尾上さんは、前回の京都移住計画の記事で大原商店を知り、入社を決めたそうです。

尾上さん

日本の文化が大好きで、子どもの頃からお茶を習ったり、高校では弓道部に入ったり。大学時代は書道を専攻していました。「いつか日本文化に携わる仕事がしたい」「文化を海外に発信していきたい」という夢があったので、大原商店の記事を読んで「私にぴったり!」と思って応募しました。

出身は兵庫県で、大学の4年間は京都で暮らしていた尾上さん。卒業後は仕事の都合で福井や大阪にも住んでいましたが、いずれは京都に戻りたいという思いがありました。

尾上さん

京都は私にとって「第2の故郷」。いろんな土地で生活しましたが、やっぱり京都は古き良きものが多くて、日本の文化が身近にある地域だなと感じます。散歩するだけで楽しくて、2~3時間歩いても全然苦じゃないんです。

京都暮らしを楽しみながら、大好きな日本文化に携わる日々。普段はどんな仕事を担当しているのでしょうか。

尾上さん

商品を管理するため、一点ずつ撮影して商品情報をパソコンに入力し、バーコードを発行して貼っていく仕事をしています。商品一つひとつの加工先や素材について先輩に聞きながら作業を進めていくので、商品知識を身に付ける良い機会になっていますね。興味のあった日本の文化をより深く知れるのが楽しいです。

「アイテム数が膨大なので、一点一点管理するのは大変ですけど」と笑いつつ、コツコツと作業を進めていく中で手ごたえを感じていると言います。

尾上さん

以前はバーコードがなく、手入力や手書きで管理していたと聞いていますので、かなり効率アップにつながっているんじゃないかと思います。会社として少しずつ良くなっているのが目に見えて感じられるのはうれしいですね。

業務効率化に取り組みながら、商品の知識も蓄えつつある尾上さん。今後についてこんなふうに話してくれました。

尾上さん

日本の文化を世界に発信したり、次の世代につなげたりできるような仕事をしていきたいです。培った知識を生かして、「こんなふうにつくっているんだよ」と商品の背景にあるストーリーまでしっかりと伝えられる人になりたいですね。

営業として現場に足を運び、より良い提案を

ここからは、今回募集する営業職とEC担当の仕事について、詳しくご紹介していきます。まずは、2024年1月の組織変更で営業部の所属になった村山早苗(むらやま・さなえ)さんに、営業の仕事についてお話を伺います。

入社して約30年になるという村山さんは、これまでどんな仕事を担当してきたのでしょうか。

村山さん

入社した頃は、注文が来た商品に札を付けて出荷するのが主な仕事でした。そこから、在庫確認や発注といった商品管理、電話や来客の対応など、徐々に業務内容が広がっていきました。組織変更する前は、商品のジャンルごとに担当者が分かれていて、私は足袋や下着をメインで担当していました。

営業部の所属になってからは、来客や問合せの対応が主な業務になり、これまで担当してきたお客さまに加えて、他のメンバーからもお客さまを少しずつ引き継いでいます。さらに、催事の現場にも足を運ぶようになったそうです。

村山さん

小売店のお客さまが催事に出店する際に、商品を発送・陳列して、当日の販売のお手伝いもしています。今までは催事に行く機会がなかったので、大原商店の商品が着物や帯とトータルでコーディネートされている様子を現場で見られるのは楽しいですね。「今はこういう着物が流行っているんだな」「うちの商品をこんなふうに合わせているんだな」と勉強になります。

営業専任になってから数ヶ月。「まだ慣れないことも多くて、いっぱいいっぱい」と笑う村山さんですが、もう少し余裕ができたら積極的に外に出て行きたいと言います。

村山さん

今後は地方のお客さまのところも回れたらいいなと思いますね。今まではお客さまに来ていただくばかりで、店舗に伺う機会があまりなかったので。実際に売り場を見せていただいて、もっと提案やアドバイスができるようになっていきたいです。

20~30年以上働いている社員が多く、「もうほとんど家族みたいな雰囲気。仕事以外でも遊びに出かけたり旅行に行ったりしています」と村山さん

自社のリソースを生かして新たなチャレンジを

村山さんが話してくれたように、今回の組織変更を通して、「お客さまをもっとよく知るために、営業担当が外に出て行く機会をもっと増やしたい」と大原さんは考えています。

大原さん

今までは来客やお問合せの対応がメインで、「待ち」の姿勢に徹していたので、今後はもっと積極的にコミュニケーションを取っていきたいですね。僕自身も、この数年は商品企画・管理の仕事をすることが多かったですが、これからは営業に軸足を移したいと思っているんです。

大原さん自身も自ら関わりながら、改めて会社として営業に注力していくための、今回の営業職募集。特に、マネージャー候補として、営業経験だけでなく人材育成やチームマネジメントの経験のある人を求めていると言います。

大原さん

マネージャー候補と言っても、大手企業で部長をしていたとか、そんな経験を求めているわけではないんですよ。4~5名のチームをまとめた経験のある方なら、20代や30代の若い方でももちろん構いません。僕と一緒に営業のチームづくりをしていける人に来ていただきたいです。

大原商店の営業職には、どんな資質が求められるのでしょうか。

大原さん

明るく元気な人、小売店の方たちの立場になって考えられる人ですね。お客さまの声を聞き、ニーズをキャッチして、商品部にフィードバックしてものづくりに生かす。そうやって人の役に立つことにやりがいを感じられる人と一緒に働きたいです。それから根本にはやっぱり「着物をもっと面白くしたい」という思いを持っていてほしいですね。

さらに、今後は小売店との取引だけでなく、新たな挑戦もしていきたいと大原さんはつづけます。

大原さん

大原商店の強みは、仕入先が幅広く、日本全国の産地とつながっていること。このリソースを生かして、どんなことにチャレンジしていけるか考えるのが、営業の面白さだと思うんですよ。

例えば、和装小物を製造する工程で出る端切れを使って雑貨を製作するなど、さまざまな分野とのコラボレーションが可能ではないかと話す大原さん。部署ができてまだ数ヶ月ですが、大原商店の営業職としてチャレンジできる仕事の幅は、これからますます広がっていきそうです。

共に成長し、未来をつくっていく仲間

EC担当については、現在は専任者がいないため、これから入社する人にはECサイトの立ち上げから運用まで幅広い業務を担ってほしいと大原さんは話します。

大原さん

ECサイトに商品を登録するための撮影や説明文の作成が主な業務になります。でも、作業をお願いしたいのではなくて、自社に適したベンダーの検討や売上分析なども含め、僕や各部署のメンバーと連携しながら、サイトの運用を一緒に考えていける人に来ていただきたいんです。

さらに、EC担当の方には新規事業にも携わってほしいと言います。

大原さん

実は今、新規事業として着物の小売も始めたいと思って、準備を進めているんです。だから、本業のほうのECサイトがある程度運用できるようになったら、新規事業のECサイトも一緒につくっていきたいです。

大原さんの「一緒に考える」「一緒につくる」といった言葉から、今回募集する営業職もEC担当も、共にチャレンジしていく仲間を求めていることが感じられます。

大原さん

どちらも求めているのは「会社の未来を一緒につくっていける人」ですね。最初から完成形を求めてはいなくて、元気でやる気のある若い人と一緒に育っていきたいと思っています。

新しい仲間が加わった大原商店は、その先にどんな未来を描いていくのでしょうか。

大原さん

着物を次の時代に残していくため、商品部はものづくりの現場の課題に切り込んで改善していく。そして、ものづくりを維持していくためには売らないといけないですから、営業やEC担当と一緒に、どうすればもっと売れるか、もっとお客さまの役に立てるのかを考えていく。さらに、着物をベースにしながら、自分たちのリソースを生かしていろんなことに挑戦していく会社でありたいです。

本業である和装小物の製造卸業を軸に、ゆくゆくは着物の小売やものづくりを手がけるグループ会社をつくって業界を活性化させていきたいと、大原さんは目を輝かせて話してくれました。

和装文化の振興を目指して、社内改革を進め、和装業界全体や他の業界にも広く目を向けながら、着実に前進している大原商店の皆さん。前回の取材時よりもさらに具体的なステップへと歩みを進めていることが伝わってきました。

営業職もEC担当も、一から作りあげていく面白さや喜びが感じられる、やりがいの大きいポジション。これまでの経験を生かしながら、和装や日本の文化に携わってみたい人は、ぜひ彼らと一緒に挑戦してみませんか?

執筆:藤原 朋
撮影:小黒 恵太朗
編集:北川 由依

京都移住計画での募集は終了いたしました

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