京都移住計画での募集は終了いたしました
音楽や映画を中心に、さまざまなジャンルで展開されているサブスクリプション形式のサービス。近年では家具や家電、車、ファッション、飲食といった多岐にわたる分野に広がっています。
今回ご紹介する株式会社Casie(かしえ)が手がけるのは、アートのサブスク。1万3000点もの絵画の中から気に入った作品を選んで、定額でレンタルできるサービスです。2019年1月にWebサービスをローンチし、年々ユーザー数を増やしているCasieは、「アートのある暮らし」をより多くの人に届けていくため、新たに仲間に加わるメンバーを募っています。
Casieで働いているのは、アートの専門知識を持った人ばかりではありません。アートが好き、人が好き。そんな人はぜひ最後まで読んでみてください。あなたが活躍できるフィールドが、Casieで見つかるかもしれません。
アーティストを支える、新しいアートの流通エンジンを
Casieが展開するアートのサブスクという事業は、どのようにして生まれたのでしょうか。その背景には、代表取締役の藤本翔(ふじもと・しょう)さんの家庭環境が深く関わっています。
「僕自身はアーティストでも美大出身でもないですが、僕の父親が画家だったんです。よく個人で展示販売会を行っていましたが、作品が売れることはほとんどありませんでした。創作活動だけで生計を立てることができず、生活のためにイラストなどの受託仕事をする日々。仕事としては本人も楽しんでやっていたけど、父自身が本当に描きたいものではなかったと思います」
父親が34歳の若さでこの世を去ったのは、藤本さんが小学5年生の時。苦労をそばでずっと見てきた藤本さんは、中学生になる頃には「将来はアーティストのためになるような仕事がしたい」と決意していました。
「父と同じように、せっかく作り上げた作品を流通するチャンスがなく、悔しい思いをしているアーティストがたくさんいるはず。彼らのために、新しいアートの流通エンジンを作りたい。そんな思いを持ちつづけてきました」
藤本さんは大学卒業後、総合商社、経営コンサルティング会社を経て、父親が亡くなった年齢と同じ34歳を迎えた2017年にCasieを創業。新しいアートの流通エンジンとして、サブスク事業を立ち上げます。
「9年間コンサルに勤めていたので、新しい事業をはじめる時の成功確度はある程度わかります。アートのサブスクはかなり難易度が高い事業だと、自分でもよくわかっていましたし、周りからも『ビジョンや思いだけではマネタイズできないよ』と言われました。でも、日本国内でこの事業を本気でやれるのは自分しかいないと思ったんです」
確固とした信念のもとで、難易度の高い事業に乗り出した藤本さん。アートのサブスクにおいては、これまで大手企業が参入し撤退していった事例も見られますが、Casieは順調に事業を拡大してきました。その違いはどこにあるのでしょうか。
「最初の頃は僕らも失敗の連続でしたよ。でも、Casieの仕組みには一つ大きな特徴があって、それは作品をアーティスト本人から直接預かっていること。これまでは作品を買い付けて保有する、もしくはギャラリーと提携して作品を流通させるというやり方が主流でしたが、僕たちは作品の現物を預かっている。この仕組みはかなり斬新だったと思います」
大量のストックで溢れ、ドアが開かないような状態だった父親のアトリエを子どもの頃から見てきた藤本さんは、「作品を無料で預かるだけで、画家が抱えている課題は一つ解消されるはず」と考え、この仕組みを生み出しました。また、現物を預かることで、撮影のクオリティやトーン&マナーを揃えられる、Webサイト上で季節ごとに特集を組めるといった利点もあると言います。
届けたいのは作品ではなく「アートのある暮らし」
Casieのサービスは月額2200円から利用できるほか、2022年3月からはアート診断の結果をもとにお任せで作品が届く「初回お試しプラン」550円も登場し、より気軽にはじめられるようになっています。
「アート作品って値段を聞くのが正直怖いじゃないですか。でもこの金額なら、『携帯代より安いし、とりあえず試してみるか』って始められますよね。アートのある暮らしをいかにカジュアルにはじめてもらえるかを大切にしています」
借りてみて気に入った作品は、購入も可能。Webサイトのマイページに「作品購入のご相談」というボタンがあり、そこから購入相談ができる仕組みです。現在、月に200件ほどの購入相談があり、多い月には50~60作品が購入されています。藤本さんは、このRent to own(購入選択付きレンタル)の流れを、より加速させていきたいと考えています。
「Casieでは、アーティストの生い立ちや作品に込めた思いなどが書かれたプロフィールシートと、アートについて学べるマガジン『FUMUFUMU』を、作品と一緒に毎月お届けしています。ユーザーさんがそれを読んで、アーティストや作品に対するリスペクトを持っているので、価値に見合った金額だと納得して購入してくれる。サブスクならではの新しいアートの購入体験を作っているという手ごたえを感じていますね」
単に作品を送るのではなく、プロフィールやマガジンと共に届けることは、創業時からつづけている取り組みです。
「僕らが届けているのは絵画ではなく、アートがある暮らしという体験なんです。作品が届くだけではただ飾って終わりですが、こういった読み物でサポートすることで、意識の変化や家族との会話が生まれる。FUMUFUMUを読みながらお母さんと息子が『これは抽象画でしょうか、具象画でしょうか?』『画材はアクリルか油彩か、どっちでしょう?』と楽しみながら学んでいるという声もいただいています」
楽しそうな親子の姿を思い浮かべながら話を聞いていると、「僕にはユーザー体験で壮大な夢があるんです」と藤本さん。
「よくニュースで見かける悲しい事件があるじゃないですか。親が子どもを殺してしまったとか、その逆とか。僕はこういう出来事をゼロにしたい。アートにはそれができると思っているんです。家庭の問題はコミュニケーションがなくなる状況からはじまるとしたら、アートのある暮らしを届けることで、家族の会話が生まれることに意味があると思っています」
アートのある暮らしがもっと広がり、当たり前になっていけば、今よりもっと豊かで温かな世界になるはず。アートの力を信じる藤本さんの強い思いが伝わってきます。
アーティストとユーザーの橋渡しを
つづいてお話を伺うのは、藤本さんと共にCasieを初期から支えてきた執行役員の河野晃大(こうの・あきひろ)さんです。河野さんは、藤本さんの前職であるコンサルティング会社に新卒で入社し、部下として約2年間働いていました。
「藤本が起業してからも定期的に連絡を取り合っていて、Casieのイベントなどにも顔を出していました。徐々に手伝うことも増えてきたので、お互いに『そろそろかな』という感じで(笑)。約1年後にCasieのメンバーに加わりました」
入社当時はまだメンバーも少なかったため、これまでにCasieのほぼすべてのポジションを経験してきたという河野さん。現在は執行役員として、ASチームとCSチームのマネージャーを兼任しています。ASとはアーティストサポート/サクセス、CSとはカスタマーサポート/サクセスの略称で、河野さんは昨年1年間ASを担当したのち、今年からはCSも併せて担当しています。
「ASチームは、Casieに登録してくれたアーティストさんの成功体験をどうやって作り出していくかを考えて動いている部署です。作品審査や登録のためのサポート、報酬管理といったベースの業務に加えて、どういう作品が人気なのかをまとめたレポートを還元したり、困りごとについて話す座談会をしたりと、アーティストさんの成功体験のために一人ひとりとコミュニケーションを取っていく仕事ですね」
さらに、CSチームとの連携も欠かせないと河野さんはつづけます。
「CSチームではユーザーさんにインタビューをする機会があるので、その内容をアーティストに還元しています。ユーザーさんの実際の声によって自分の絵がどんなふうに社会とつながっているのかを知ることは、アーティストにとって大きな価値がありますから。今年からASとCSを兼任するようになったことで、アーティストとユーザーとの橋渡し役として、連携がより滑らかになったと思います」
CSチームは、カスタマーサポートとカスタマーサクセスという2つの側面を持つものの、これまではサポートの比重が大きかったと言います。
「お客さまの問合せへの対応などサポートの側面が大きかったので、これからはもっとこちらからアートの楽しみ方を提案して、サクセスの文脈でのお手伝いをしていきたいと考えています。ユーザーさんの声を聞く機会をもっと増やして、アートの世界に興味を持ってもらうためのイベントやレクチャーなどの取り組みを広げていきたいですね」
ユーザーの作品選びのお手伝いをするアートコンシェルジュも、CSチームの役割の一つ。ユーザーとコンシェルジュが長期的に関係を築いていけることも、サブスクならではの魅力としてさらに価値を高めていきたいと語ります。
「例えるなら、コンシェルジュは行きつけの美容師さんみたいなイメージ。時にはお任せにしたり、仕事や家族の話をしたり。そんなふうに何でも相談できる美容師さんみたいな存在にコンシェルジュがなれたら、定期的にやりとりをするサブスクならではの価値が生まれるはずだと思っています。初期の頃はまだユーザーさんも少なかったので、コミュニケーションもかなり密に取れていましたが、これから増えていくユーザーさんたちに対しても、同じくらい深いアプローチができるような関係性を一人ひとりと築いていくのが理想ですね」
エンジニアとして、チームで課題解決を担う
つづいて、エンジニアの横山尚久(よこやま・なおひさ)さんにお話を伺います。もともとは大手企業向けのシステム導入を手がけていた横山さんは、前職をつづけながら2020年の春から副業メンバーとしてCasieに関わるようになり、夏頃には社員としてメンバーに加わりました。
「前職では要件定義や設計には携わっていたのですが、開発はオフショアのメンバーに任せることが多く、自分で手を動かす機会があまりありませんでした。最後まで自分で手を動かして開発できる仕事がしたいと思い、転職を考えていた時にCasieに出会いました」
副業メンバーとしてスタートした理由を尋ねると、「大きい会社からCasieのような規模の会社にいきなり転職するのは、ちょっと勇気が出なくて」と笑う横山さん。まずは一緒に仕事をしながら、自分がやっていけそうか判断しようと考え、数ヶ月働いてから入社を決意したと言います。その後、Casieではどんな仕事を担当してきたのでしょうか。
「最近リリースしたアート診断のようなユーザー向けの新しい機能や、社内のメンバーが使う作品管理のシステムなどを開発しています。頼まれたものを作るというよりは、ユーザーさんやアーティストさん、社内のメンバーの声を聞きながら、どうやって課題を解決するかというところから、デザイナーやマネージャーと一緒にチームで考えていくことが多いですね」
前職との大きな違いは、自分で手を動かせることはもちろん、実際にシステムを使ったフィードバックを得られることだと、横山さんは語ります。
「前職では新卒から3年くらい働いていたんですけど、プロジェクトが予定より長引いたこともあって、一度もリリースしないまま辞めてしまい、実際に使った感想を聞く機会が全くなかったんです。Casieでは、これまでの約1年半の間に数えきれないほどリリースして、感想もたくさんもらっているので、フィードバックを得られるやりがいを感じていますね」
一緒に働く人たちとの関係や職場の雰囲気にも、変化を感じているのでしょうか。
「今は全員僕より先輩なんですけど、良い意味であんまり上司という感じがしなくて、フラットな感覚がありますね。一緒に仕事をする仲間という関係性で、働いていてすごく楽しいなと思います」
最後に、今回募集するエンジニア職として仲間に加わるメンバーに求めることは?と尋ねると、「ものごとを本質的に考えられる人」と横山さん。
「今までやったことがないことをやることが多いので、アプローチを間違っちゃうこともあるんですよね。そういう時、ずっと考えてつくってきたものを思い切って捨てて、全く違うアプローチを考えられる人。いったん立ち止まって本質に向き合えるような仲間がいると心強いですね」
京都で暮らし、京都で働く楽しさ
最後にお話を伺うのは、2021年10月から広報としてCasieに関わっているオギユカさんです。オギさんは、2021年春に家族の都合で東京から京都へ移住。初めは東京の仕事をフルリモートでつづけていましたが、「京都の人とのつながりがないまま、フルリモートの生活をするのが個人的にしんどくて」と京都でできる仕事を探していた時に、Casieに出会いました。
「アートのサブスクは日本では他にあまりないので、事業として面白そうだなと思いました。今はフリーランスの広報として、週4日の業務委託でCasieの仕事に携わっています」
藤本さんの創業ストーリーをnoteで発信するなど、一人でも多くの人にCasieを知ってもらえるように取り組んでいるオギさん。
「これまでも広報やマーケティングの仕事をしてきたのですが、どちらかというと取材の問合せに対応することが多かったので、こちらからアクションを起こしていかないといけないことに悪戦苦闘中です(笑)。世の中の出来事とCasieの取り組みをうまくリンクさせて、ニュースをつくっていきたいと考えているところですね」
京都で暮らし、京都の企業で働くようになって、感じている変化はあるのでしょうか。
「京都は学生のまちという印象を持っていたのですが、実際に住んでみると、まちがコンパクトにまとまっていて、小さい面白いお店もたくさんあるので、大人が住んでも楽しいまちですね。仕事の上でも、京都の美大・芸大、藤本の母校である龍谷大学との連携など、地域との関わりが多いのですごく楽しいです」
移住支援やアート体験など、独自の福利厚生も
オギさんのように他府県から京都に移住してくる人のために、Casieでは移住サポート制度を用意しています。その一つが、移住支援金。転居を伴う転職の場合、引っ越し費用などに自由に使えるようにと一律50万円を給付しています。さらに、京都移住計画と連携し、住まい探しのサポートも行います。
「新しい働き方が当たり前に許容されるようになってきた世の中で、たとえば『これまで東京で働いてきたけど、もう住む場所は東京じゃなくてもいいよね』って思っている人はたくさんいると思うんです。移住を検討しているけど一歩踏み出せなかったという方に、制度を使ってもらえたらうれしいですね」(藤本さん)
移住後にCasieに出会ったオギさんは、「引っ越してきたばかりの頃は、新しい場所で人とのつながりをつくっていけるか不安でした。Casieで働くことで、会社という一つのコミュニティに属せるのは良いなと思いますね」と移住当初を振り返ります。
「住まい探しのサポートがあるのも、すごく魅力的だと思います。京都に住むことになった時、どのエリアに住んだら良いのか全然見当がつかなくて。どんな雰囲気のまちに住みたいかなどを伝えて、相談に乗ってもらえるのは心強いですね」(オギさん)
さらに、移住支援だけでなくもう一つ、Casieならではの福利厚生があります。それは、Casieのユーザー体験ができること。スタッフ全員が、ユーザーと同じように毎月1枚の絵を借りることができます。
「Casieに入社したら、アートのある暮らしが付いてきます。アートのサブスクという新しい市場を作っていく上ですごく大事なのが、自分たちが提供するサービスに自信を持つことなんです。自信を持つためには、まず自分がユーザーとして体験してみないと」(藤本さん)
実際にユーザー体験をしてみて、Casieの皆さんはどんなことを感じているのでしょうか。
「僕は人生で初めて家に絵を飾ったのが、Casieで働くようになってからなんです。いざ絵を1枚選ぼうとすると、何時間もめちゃくちゃ真剣に悩んで、これって自分と向き合う時間、自分の“好き”を追求する時間だなと感じました。アートは決して難しいものじゃなくて、自分の心を豊かにする一つのツールなのかなと思います。アートに詳しくなくても絵を楽しめると実感できたので、それをもっといろんな人に届けていきたいですね」(河野さん)
スタッフのみなさんが借りた絵は、slackに福利厚生をシェアするチャンネルをつくって、共有できるようにしているそうです。この人がこういう絵を借りるんだ! と意外に思うこともありますか? と尋ねると「この人っぽいなって思うことが多いですね」と笑うオギさん。選んだ絵をシェアすることで、お互いの理解も深まっていくのかもしれません。
職種・キャリアにこだわらずチャレンジを
今回Casieで募集している職種は、エンジニアとCSマネージャー。そして、職種を問わずオープンポジションとしてもメンバーを募っています。最後に改めて藤本さんに、今回の募集に対する思いを伺いました。
「職種や過去のキャリアに関係なく、Casieで働きたい、こんなふうに貢献したいという志のある方がいれば、一度全方位にお会いしてみたいなと思って、オープンポジションの枠を作りました。Casieでどんなことが一緒にできそうか話し合いながら、新しいポジションを作っていけたらと考えています。Casieに興味があるからまずは話を聞いてみたいという人が、一人でも多くいたらうれしいですね」
昨年の1年間でユーザーを増やしていくための土壌をしっかりと作ったCasieは、今年からは成長角度を上げていくグロース期に入ると言います。
「これからのグロースを支え、楽しめるようなメンバーを集めていきたいですね。今、日本でアートのサブスクをここまでやっているのは僕らしかいない。市場規模も検索ボリュームも競合も存在しないところで、市場をイチから作っている感覚が、体感レベルでめっちゃある。だから面白いですよ。何もない砂漠に水をまいて苗を植えて、すごいヘクタールまでいったな、みたいな(笑)。今は会社としての組織づくりも一緒にやっていけるフェーズなので、そういう意味でも面白いと思います」
取材を通して、Casieの皆さんが本当に楽しそうに働いている姿が伝わってくるので、こちらまでわくわくした気持ちになります。働く人たちの魅力、そしてアートのサブスクという事業の面白さはもちろん、多様な働き方を受容する柔軟さ、フラットで風通しの良い環境、移住への手厚いサポートなど、働きやすさの面でもとても魅力的だと感じました。
アートのサブスクという新しい市場を、Casieの皆さんと一緒につくっていきたい。そう思った方は、職種やキャリア、今住んでいる場所にとらわれず、一度話を聞いてみませんか?
編集:北川 由依
執筆:藤原 朋
撮影:中田 絢子
京都移住計画での募集は終了いたしました