募集終了2023.05.02

もう一度、町家に息吹を!建物を愛する人が集う、建築ディレクション部。

「好きなこと」を仕事にするって難しい。好きなことが嫌いになったり、うまくいかなかったら…。でも最初から「好き」なのではなく、どんな難問にぶつかってもそれでも続けたい、乗り越えてみたいと思う仕事も「好き」なんじゃないか。

そんな想いを持たせてくれたのは、株式会社八清の建築ディレクション部のみなさん。建築ディレクション部(KD部)は、町家をはじめとした、中古物件再生の建築・施工管理がメインの部署。根底にあるのは、「町家を残したい」という想い。長きにわたって放置され、ボロボロになってしまった古い建物をどのように生まれ変わらせるのか。自分たちの持ちうる技術、知恵を総動員し、改修にあたっています。

京都移住計画で八清の求人記事を掲載するのは12回目ですが、建築ディレクション部の募集は初めて。「建築が大好き!」そんな想いを持つ方には、メンバーの想いにきっと共感していただけるはずです。

住みやすさ、住み心地まで考えて町家の改修に挑む

建築ディレクション部が立ち上がったのは、2020年7月のこと。当時、アフターメンテナンス部だった鎌田寿一(としかず)さんも初期メンバーとして選出されました。古い建物の修繕にかけてプロフェッショナルの集まりだったメンテナンス専門部隊。主な仕事は、水漏れや建具の不具合の修繕など、物件引渡し後の対応でした。

その後、「内部構造を鑑みたうえで建物のリノベーションを手がける」という目的を持ち、鎌田さんを含めたアフターメンテナンス部出身の3人を中心に発足しました。

鎌田さん

最初はメンテナンスの知見を活かして、他部署が企画した物件を一緒に企画し、施工までをサポートして進めることが目的でした。結果的に今は自分たちも主体となってリノベーションの企画をすることもメイン業務になっていますね。でもメンテナンスだけじゃなく、いつかは設計に関わりたいと思っていたので良いチャンスだったんです。

八清で働く前は、寺社仏閣などの古建築の模型をつくる仕事についていたという鎌田さん。その経験があったからこそ、設計に携わりたいと思うようになったと振り返ります。

鎌田さん

模型だとしても、図面は実物と同じ描き方。監修している先生に持っていったときに説得力が必要だと思ったので、2級建築士を取得しました。勤めているうちに博物館へ納める模型製作に区切りがついて、今度は実物をやってみたいなと思ったんですよね。

そんな中、偶然出会った八清の求人。当初希望していた設計の仕事ではありませんでしたが、「町家に関われるなら」とアフターメンテナンス部に応募することにしたそうです。しかし、そこで学んだことが今の仕事に大きく役立っていると鎌田さんは言います。

鎌田さん

町家の修繕をするうちに、建物の構造の理解も深まり、更に設備や内装に対する知識も身についていきました。せっかく町家を生まれ変わらせるなら、住みやすく、何年経っても不具合が出ないようにしたいという想いが強くあります。

現場で念入りにチェックする鎌田さん(提供:八清)

こうしたメンテナンスまで考える視点は、八清全体の物件の品質を支えています。

鎌田さん

八清が仕入れる町家は、老朽化し痛みが激しい物件も多いため、まずは建物の内部を調べて、どこにどんな損傷があるかを見るんですね。しかし、まだ知識の少ない若手や建築畑ではない人が企画する場合、『こういう物件にしたい』というデザイン面での想いが先行しすぎる時もあるんです。もちろん想いを汲み取ってあげたい部分もありますが、僕らは安心して住める建物として成立するかという視点を重視してるので、『こうした方がええんちゃう』『この方が使い勝手いいと思うよ』と投げかけるようにしています。

そうした言葉を投げかけるのも、「町家ならでは」の難しさを身に染みて感じているから。住み心地の良さだけでなく、町家の立地条件も考慮してリノベーションしなければなりません。

鎌田さん

とくに路地奥は古い住宅が密集していて、隣家との境界がはっきりと確定していない場合が多くあります。以前、境界を把握せずに工事を始めてしまい、苦い経験をしました。民家が近い分、工事の騒音トラブルが起きることも。工事を円滑に進めるために、近隣の方とのコミュニケーションは必須ですね。いまだに最初の挨拶は、緊張します(笑)。

大変な現場だからこそ、最も大切なことはチームワークだと鎌田さんは言います。暮らし企画部(売買部門)、外部パートナーの設計士や現場の職人たち……。大切なのは、みんなで「つくりあげる」ことを楽しむこと。

鎌田さん

暮らし企画部がアイデアを出したものに僕らの目線を足して企画を練り、それを設計士さんが図面に落とし込み、職人たちがつくり上げてくれる。難しい条件の中、設計士さんや職人さんが頑張ってくれて形になるので、時に意見が対立することがあってもリスペクトを持って仕事をしています。この仕事には、チームとして一緒につくっていくという感覚を持てる方が向いているでしょうね。

現場へ足を運び、職人と会話を交わしながら工事の進捗を確認する

また、販売価格に対して費用がかかりすぎないよう、予算を管理するのも仕事の一つです。

鎌田さん

現場で打ち合わせをしていると「こうした方が良くなりそう」と新たなアイデアが出てくる事もあります。でもどうするか最後に決められるのは、実際に販売する暮らし企画部の人間です。費用が嵩むほど、高く売らないといけないですから。僕らは、売る責任こそ持ってないけれど、全体の利益を鑑みて工事の施工をコントロールする役割も担っているんです。

関わる人たちの責任や想いも感じながら。KD部はまさにバランサー、調整役を担う部署なのです。もちろん調整役だけでなく、経験を積めばリノベーションの企画から担うチャンスもあります。

鎌田さん

僕はメンテナンスの視点ありきで建物を企画する癖がついていますが、新しい方が今のメンバーの感覚にないアイデアを持ってきてくれたら面白くなるんじゃないかな。もちろん耐震や構造に無理のあるものをつくることはできませんが、僕らがこれまで培ってきた知見が上手いこと合致したら、すごいもんができるんじゃないかと思います。

「町家を残す」仕事に誇りを持つ

続いてお話を伺ったのは、入社してようやく1年たったばかりという遠藤莉保さん。小柄な遠藤さんからは想像できなかったのですが、なんと前職は大工さん。そもそも、なぜ大工という道を選んだのでしょうか。

遠藤さん

父は塗装業で、母方の叔父は大工。ものづくり家系なんです。叔父がうちをリフォームしてくれたり、現場に遊びに行かせてもらったり。父も母も古い建築を見るのが好きで、家族旅行も京都が多かったんですよ。だから自然と建築に興味を持ちました。

大学で建築を学んだ後は、地元の神奈川を離れ、静岡の建築会社に就職。7年間、大工として腕を磨きました。しかし、働く中で思い描いていた仕事との違和感が大きくなっていったそう。

遠藤さん

新築の住宅や店舗を施工する仕事が多く、壊して建て直しの繰り返しに違和感を覚えるようになりました。古い建物に対する愛着もあったので、大好きな京都で建物を残す仕事をしたいなって。それで町家を再生する八清に興味を持ちました。

その想いが八清へ伝わり、就職。京都へ移住することになりました。まずは、先輩に同行し、請け負う仕事の流れを掴むことから始まりました。

「ずっと現場にいたので手を動かせないことにむず痒さもあった」という遠藤さん。しかし、KD部はいろんな部署や社外の設計士さんや職人さんと連携するため、最初に仕事を把握すること、コミュニケーションをとることも必要なことだったと振り返ります。

次に担当したのは、アフターサボート「八清サポートクラブ」。物件を購入されたお客様からの問い合わせに対応する仕事です。

遠藤さん

『蛇口の水漏れを直して欲しい』『トイレの流れが悪い』という相談を受けて、実際に現場を見に行って業者を手配したり。設備やアフターケアは未知の領域だったので、先輩に同行してもらい、どう対応していけばいいか教えていただきました。

3ヶ月ほど経つと、改装物件の仕事も担当することに。まずは暮らし企画部の担当者と一緒に物件のコンセプトやターゲットを決め、それに沿って間取りを決めます。そこから設計士、工務店などへ連絡し、工事の手配を進めます。

遠藤さん

最初は先輩についてもらいながら進められますし、設計士さんも工務店さんも八清と何度も仕事してる方たちなので、要点を伝えれば理解してくれる。胃が痛くなるようなプレッシャーはなかったですね。

「スタッフ一人ひとりが工務店」と表現する人もいるほど、それぞれの果たす役割が大きいのも八清の特徴。遠藤さんは、入社して半年ほどで1人で物件を担当することになったそうですが、「やりながら覚える」八清の風土が合っているよう。しかし、自分のアイデアを出して企画を練り上げることは、まだまだ難しいと感じているようで…。

遠藤さん

内装をどんなイメージにしたいとか、間取りをどうするかなど企画することは、今まであまりやってこなかったので、まだまだ勉強中です。雑誌やネットを調べたり、先輩たちが手掛けた過去物件を見たりして、引き出しを増やしています。

これまでは現場で職人として活躍していた遠藤さん。現場で手を動かすこととは、また違った大変さがあると言います。

ipadを使用し、図面や進捗状況を職人さんと確認(提供:八清)

遠藤さん

工事をしてると騒音や振動など、近所からクレームが入ることもあります。今まで職人だったので監督が全部対応してくれてたんですけど、今度は自分がその立場になってしんどさがわかるようになりました。あとは予算ですね。物件ごとに暮らし企画部の担当者がざっくり予算を決めて、それをもとに設計士さんや工務店さんに発注して見積もりをとってもらうんですが、だいたい予算より金額が超えてくるので……。申し訳ないなと思いながらも、予算を削れる箇所を職人さんと相談しながら確定させます。

見積書の作成や予算管理など、大工時代には経験したことのない仕事もたくさんあったそうですが、都度先輩に聞いて解決できる環境があるため、安心して働けているようです。それぞれが責任を持ち、各自の仕事をこなすスタイルではあるけれど、互いに助け合える風土がある。これが八清のベーシック、なんですね。

入社から1年が経過し仕事にも慣れてきた頃。改めてこの仕事のやりがいをお聞きすると、「町家を残すということに関われること」と遠藤さん。

遠藤さん

町家を改修する際、大工さんが伝統構法に沿った修繕をしているのを見ると、「こんな改修の方法があるんだ」と勉強になります。建物の補強を考えるうえでも新築と町家だと構造の考え方が全然違うので、その点を学べたのは大きかったです。

現場で職人の仕事を見るうちに、いつかは自分で設計した町家を自分の手で改修したいという夢を持つようになったそうです。それはただ町家を残すだけでなく、町家を残したことによってまちの印象が変わって行く様子を目の当たりにしたから。

遠藤さん

それまで路地奥で壊れかけてひっそりと佇んでいた町家が、改修して息を吹き返すことで、その路地全体も明るくなったり、行き交う人が増えたり。その場の空気が変わったなっていうような感じがあるんです。そういった側面でも、とてもやりがいがありますね。

自分の想いを建築物として形にしたい

最後にお話を伺った岡田直子さんは、なんと八清歴26年目の大ベテラン。前回の取材でお話を伺った時は、新規事業として宿泊施設の立ち上げを担当されていました。しかしコロナの影響により、新規事業を中止することに。その後、新しく発足したKD部のメンバーとして鎌田さんと共に選出されました。

これまで6つの部署を渡り歩いてきた

岡田さん

建築の仕事が大好きで、新規事業部に異動するときも、まだまだ建築に携わりたいという気持ちがあったんです。でも、「もう建築には戻ってこれへんやろうな」って自分の気持ちに区切りをつけて手元の書類とかを処分してしまっていたんです。だからKD部への異動が決まった時には、じゃあすぐに戻りますという気持ちにはなれませんでしたね。

創設メンバーは、岡田さんを含めて4名。岡田さん以外はアフターメンテナンスの出身者でした。

岡田さん

私以外のメンバーは自分で建物を修繕することができるんですが、私にはそのスキルはないんですね。その代わり、建築企画やインテリアコーディネーターとしての知見があるので、その部分を私が中心に対応する形でスタートしました。

チーム内できっちりとしたすみ分けはありませんが、現在は主に、鎌田さんと遠藤さんが八清が所有している物件のリノベーション、岡田さんは顧客が所有している物件のリノベーションに関わることが多いそう。さらに岡田さんは、自らが発案した「sumica」というプロジェクトも進めています。

sumicaのコンセプトは、暮らす人にフォーカスを当てた「住まうための家」(提供:八清)

岡田さん

インテリアコーディネートや照明プラン、内装も自分でアイデアを出したいしたいという想いがあるので、sumicaを始めました。コンセプトに合うような物件が出てきたときには、自分の色を持つ物件もつくりつつ、鎌田や遠藤と同じように暮らし企画部の想いを形にする物件も手掛けています。

現在施行中の物件について確認するメンバー

岡田さんのように、自分の想いを建築物として形にしたい。そんな仕事に憧れを持つ人も多そうです。やりたいことを叶えるために、岡田さんはどのような心持ちで働いているのでしょうか。

岡田さん

やっぱり諦めない気持ちでしょうか。入社するときに面接で「建築がやりたいです」と言いましたが、2年間は営業事務でした。けれど、その間に夜間に建築の専門学校へ行ったり、努力の積み重ねをしていて、それに気づいてくれた人が声をかけてくれた。八清は何かしら努力していたら、気づいてくれる環境ではあるし、巡ってきたチャンスをつかめるかは、準備次第じゃないかな。

やりたいことができる場所ではありつつも、2度の妊娠・出産、そして心血を注いでいた新規事業の終了など、多忙を極める仕事から離れたいと思うタイミングはあったはず。しかしそれでも、長年八清を続けて来られた理由について、岡田さんは「こんなにも自由に建築ができる会社は、八清以外にないと思うから」と話します。

岡田さん

入社する以前は、ハウスメーカーでインテリアコーディネーターを目指していました。きっとそこで働き続けていたら、建築の一部しか経験できなかった。今、0から10までこんなにも幅広く仕事ができていることを思えば、八清に来て正解だったなと思います。

岡田さんは八清初の産休・育休取得者。会社と共に、子育てしながら働きやすい環境をつくってきた立役者でもあります

26年目の今、まだまだ仕事の面白さに魅了されているという岡田さん。最近では整理収納アドバイザーの資格を取得し、資格を活かして新たなサービスをつくってみたいと考えているそう。

岡田さん

不動産が値上がりしていていて、購入できる層が限られてしまいつつあるので、もっと多くの人がよりよい住まいのために利用できるサービスを提供したいなと考えていて。それで「収納の方法を変えただけで、暮らしが豊かになる」提案ができたら面白そうだなって。これから発信をしていきたいなって思ってるところなんです。

最後に、どんな人が向いているか聞いてみると、「建築が大好きな人ですね!」と素敵な笑顔で答えてくれました。

岡田さん

この前、鎌田がKD部って書いてある文字の上に「建築大好き部」って書いてたんですよ。私はそれがすごく好きで。部署のメンバーと話をするときも、それぞれ好きなポイントが違うんですけど、共通してるのは建築が好きっていうところ。近隣の方から怒られたりして落ち込むこともあるんですけど、それを乗り越えられるのって「好きやから」なんですね。だから建築が好きっていうことが絶対条件かな。

建築ディレクション部(KD部)=建築大好き。これ以上に、この仕事を表す言葉はありません。この取材を受けていただいているほんの少しの合間でも、現場の状況や困りごとなどを時には真剣に、時には笑顔でお話されていました。我こそは建築が好きだ!という想いがある方はぜひ、ご応募ください。きっと同じ目線で、同じ熱量でこのメンバーと建築に向き合うことができるはずです。

編集:北川由依
執筆:ミカミユカリ
撮影:進士三紗

募集終了

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