募集終了2019.11.25

目の前の“縁”をつなぐ。「不動産営業」が向き合う京都のまち

不動産会社でありながら、自らの事業を“まちづくり”と定義する株式会社フラットエージェンシー。『京都移住計画』では以前から、同社の中核である「賃貸」や「不動産売買」の紹介に加えて、「空き家再生」「留学生・外国人居住者の支援」「コミュニティづくり」など、さまざまな取り組みを取材してきました。

前回の取材から2年、代表取締役の吉田創一(よしだ・そういち)さんが実父の吉田光一(よしだ・こういち)さん<創業者・取締役会長>の跡を継いで約4年。今年で創業45年となるフラットエージェンシーは現在、地域の中でどのような存在になっているのでしょうか。

今回は吉田社長に、同社の現在の取り組みや、今後どんな会社にしていきたいかの想いなどを改めてインタビュー。さらに3人の社員さんも加わった座談会を開き、「どんな人だったらフラットエージェンシーに合っていそうか」など、和気あいあいと語り合っていただきました。

地域の声を、確かな“かたち”に

吉田社長にまずお聞きしたのは、直近での“まちづくり”の取り組み。新たに紹介いただいた3つの事例は、どれも賃貸や売買を通じてのご縁から声がかかり、企画提案から運営までを担った「フラットエージェンシーだからこそ」のものでした。

1つ目の実績は、この春にオープンしたばかりの『木野寮』。京都精華大学と提携した学生寮で、前回の記事で紹介したスペース『the SITE』の成功を受け、フラットエージェンシーへ再び相談されたといいます。

「元はある会社の寮だった建物を、大学の留学生寮にしたいということでした。日本と海外の学生がキャンパスの中だけでなく、ここで生活も共にすることで、広い意味での『学びの場』をつくりたいと。築50年ぐらいでしたが構造はしっかりしていたので、あるものを生かしつつ、共用部分を学生が集まりやすい雰囲気にしています。昨年末に募集を開始して、ありがたいことにすぐに満室になりました。寮の運営も、私たちでさせていただいています」

2つ目の実例は、『新大宮広場』。2018年10月、新大宮商店街の一角に誕生した「地域の居場所」です。日々さまざまなイベントで賑わいを見せているこの広場は、地主さんからの相談で生まれたといいます。

『新大宮広場』公式サイトより

「所有している土地の活用に困っていらっしゃって。できればマンションなどではなく、みんなが集えるような“地域の憩いの場”にしたい。そんな想いを受けて、約1年かけて一緒に計画から立てました。オープン直後から注目していただいて、現在も平日はほぼ出店の予約がいっぱいの状態です」

そして3つ目は、「泊まれる時代劇」をコンセプトにした宿泊施設『京都西陣ろおじ』です。路地を囲むようにつながっていた7棟の空き家のオーナーさんからご依頼を受け、企画から約2年、工事だけでも1年をかけて建物を改修。2018年末、上京区・西陣に誕生しました。

「西陣は、『千両ヶ辻』(1日千両の商いが飛び交ったことが由来)といった名前が残るほど、京都の着物や織物の中心。江戸時代に栄えたエリアへとタイムスリップするようなコンセプトにし、町家の魅力とあわせて世界に発信できれば、と考えました」

『京都西陣ろおじ』公式サイトより

不動産の管理をしている中で、「こんなことしてほしい」や「こういうのがあればいいな」という声は他にも入ってきていると、吉田社長はいいます。“まちづくり”を明確に打ち出し、いくつもの取り組みを実践してきたフラットエージェンシーは、地域の方にとっては誰よりも相談しやすい存在なのかもしれません。

「たとえば西陣も、実は同業の方同士、横のつながりがそんなにあるわけじゃないそうなんです。これから継がれる40代・50代だと、互いに知らないということも結構あって。なので私たちの方に『コミュニティをつくってほしい』と声をかけていただいて、今いろいろとご一緒させてもらってるんです。本当に少しずつですが、輪が広がってきてるのかな、とは思いますね」

目の前の物件一つひとつに向き合い、人を「つなぐ」

それぞれの地域での相談に応じ、物件をかたちにしていく。この2年での成果に手応えを感じる一方で、吉田社長は「まだまだこれからですよ。いただいた声を、さらにどうつないでいくか」と続けます。

「『この町を盛り上げたい』という想いは、みなさんずっと持ってらっしゃったと思うんです。それが今ちょっとずつ、表に出てくるようになってきた。私たちもそのサポート役をさせていただく中で、いろんな経験を積みながら、もっと成長しないとな、と思うんです」

フラットエージェンシーは、全社で100名を超えるスタッフが働いています。先に挙げたような特徴的なプロジェクトは、社内でも「営業」や「管理」など部門を横断的していくものになりますが、実際まだ多くの社員は関われていない状態とのこと。

「私としては、積極的に社員から手を上げてくれるとうれしいなと思っています。言われたことをやるのと、自分からやるのとでは、成果が全然違いますから。ただこちらも、社員がこういうことに携われて、より『仕事が楽しいな』と思ってもらえるような仕組みづくりをしていく必要があります。連携のネットワークも、もっと強固にしていかないといけませんね」

いろんな部署を経験できるようにするなど、社内の流動性も高めたいと話す吉田社長。一方で、今回募集をされている「営業」という仕事の大切さも力強く語ります。

「不動産は、とても幅の広い仕事です。中でも『営業』は、一つひとつの物件を通じてオーナーさんと入居者さんをつなぐ役割。できたら3年は、下積みをきちっとしてほしいと思っています」

「オーナーさんと入居者さん、どちらかの希望だけ聞いても成り立ちません。なぜ契約が決まるのか、決まらないのかを考えながら、現場でニーズをしっかり把握し、すり合わせていく。そのおもしろさがわかってくると、自然と学ぶようにもなって、さらにいろんな提案ができるようになると思いますよ」

部屋やテナント探しは今後、SNSでの口コミやVRなどもどんどん発達していくので、きちんと管理された物件であれば入居者が自然と集まってくる。だからこそ、どんな物件にしておけば入居してもらえるのかを考える、「ビフォアサービス」の部分がより大切になると吉田社長はいいます。

「みんな、現場でいろんな声を聞いてるはずなんです。そこから、『もっとこうした方が』と考えていくことで、結果として私たちがお預かりするこのエリアが、住みやすい場所になっていければと」

「オーナーさんたちも、いろいろと悩みを抱えてらっしゃいます。それでも自分が受け継いだ土地や物件を、簡単に手放したくはない。また次の世代に、つないでいきたいと考えているんですね。そこを一緒に考えるのが、不動産業という仕事の楽しさであり、魅力なのかなと思っています」

人が“関わり”を続ける会社

穏やかな口調ながら、フラットエージェンシーの未来へ想いを語る吉田社長。次に取材陣は、同社が2014年にオープンさせた地域の交流サロン『TAMARIBA(たまりば)』のカフェ(風良都:ふらっと)に移動し、企画・広報の村井小紅(むらい・こべに)さん、営業の早川亘(はやかわ・わたる)さん、集客対策チームの三宅花奈(みやけ・はるな)さんの3人に加わっていただきました。

実際の会社の雰囲気はどういった感じなのか、それぞれ今どんな想いで働かれているのか。ここからの後半では、4人の座談会というかたちで、リアルなフラットエージェンシーの姿をお届けしていきます。

──まずは、みなさんの入社の経緯や、これまでのお仕事についてお聞きできればと思います。村井小紅さんと早川亘さんはそれぞれ、少し変わったかたちで入社されたと聞きました。いったいどんな出会いだったんでしょうか…?

村井私は2008年の入社ですが、会社との関わりは大学に入ったときからです。当時住む家を探す中で、フラットエージェンシーが管理している寮を抽選で引き当てて。入ったあと、「アルバイトしないか」と声をかけられたのがきっかけですね。

村井初めはデータ入力の仕事をしていたんです。でも、京都造形芸術大学で学んでいたこともあって、だんだんチラシなんかも作るようになって。気づいたら引き込まれてました(笑)。就職活動のときも、『そのまま雇ってもらえませんか』って相談したら、いいよって。今は株式会社エフサポート(フラットエージェンシーの関連会社)の所属で、企画・広報をしてます。

──くじ引きからのご縁だったんですね(笑)。入社11年目とのことですが、すでに産休も3回取られていると聞きました。取りやすい環境だったんでしょうか?

村井私の前に別の女性が取られたとき、うちの常務がいろいろ制度を勉強してくれたみたいなんですよ。で、よかったらこういうのも使えるから、書類を書いてと。めっちゃスムーズに取らせてくれました。復帰するときも、時短制度があるから使ってねって。最初の方と私がつづけて産休を取ったので、その後もみんなスムーズに取って、復帰しています。

──戻りやすい雰囲気もきっとあるんでしょうね。早川さんはどうですか?

早川僕が入社したのは2013年です。出会いは、新卒の就職活動ですね。就活していても正直、あんまり何にも興味が持てなかったんですが(笑)、内定をもらった先のひとつが不動産業でした。ただ、それはフラットエージェンシーではなくて。

早川実は、うちの実家がずっとアパートを持っていて、その管理をお願いしていたのがフラットエージェンシーでした。内定の話をしたら、他の企業で不動産するくらいやったら、フラットさんの方がいいんじゃないかと。で、社長(当時専務)に話をしたら「ぜんぜんいいですよ」って、すごくソフトな感じで面接してもらいました(笑)。

──家主さんのご縁なんですね。入社されてからはずっと営業の仕事を?

早川営業ですが、ずっとじゃないんです。実は僕、一度退社していて。

──え、辞められたんですか?

早川働きはじめてから、全く違う仕事をしたくなってしまって。僕は不動産オーナーの息子でもあるので、家に帰っても仕事の話ばかりになります。長い人生の中で、一生これだけに関わるのかと考えてしまったんですね。で、不動産とは全く別の世界に挑戦してみたいこともできたので、単刀直入に会社に相談してみたんです。すると「そんなに思うんやったら、やってみたら」って言ってもらったので、飛び出しました。

──背中を押してもらったんですね。では、戻ったきっかけは…?

早川そもそも辞めてからも、人手が足りない週末とかに、お手伝いなんかをしに来てたんですよ。

村井早川くん、しばらく来てたよね?(笑)

早川そう、会社にはずっと顔を出してて。みんな「こいつ本当に辞めたんか?」って感じだったと思うんですけど(笑)、食事行こうやとか、飲み行こうやとか、変わらず良くしてくれたんですよ。そういう付き合いを続けていた中で、あるときに、家のことですごくつらいことがあったんですが、会社が助けてくれたんです。

早川「助けられた…」って思ったとき、フラットエージェンシーに帰りたくなったんですよね。ちょっと家出してたのが、優しくされて親心をわかった感覚というか(笑)。恩返しをしたくなって、今年の春に戻ってきました。

──辞めてからも続いて、戻れる関係性って素敵ですね。

吉田社長:辞めて「じゃあさよなら」ということは、あんまりないですよ。自分でやりたいことを見つけて辞めるなら、尊重もしたい。そういう人で、今も付き合いがある人はたくさんいます。産休にしても一緒ですが、やっぱり経験がある人が戻ってきてくれるのはありがたいですからね。

新しい取り組みを、現場から発信

──では次に、三宅花奈さんにお聞きします。どういったきっかけで働こうと思われたんですか?

三宅私は、もともとまち歩きや建物を見るのが好きで。大学でも、建築の勉強をしていたんです。研究をしていく中で、居住空間だけでなく、「まちの暮らし」全体の構築に関心が移って。京都の、不動産会社で働くことを考えるようになりました。

三宅「まちを知り尽くしてる」ところで修行したいなと思って、就職先も大手ではなく、できるだけ小さい会社を探してました。今思えばフラットエージェンシーは正直、考えていたよりだいぶ大きかったですね(笑)。

一同:(笑)。

──入社2年目だとお聞きしました。今は何を主にされているんですか?

三宅集客対策チームに所属していて、実務としては、Webのポータルサイトの更新とか、物件の掲載管理をしています。それ以外に、今あるサービスでは漏れている部分からの集客を狙いたいと思って、もう1人のメンバーと企画をしています。「このまちに住みたい」って視点から探す方法とか。まだまだ準備段階なんですが…。

吉田社長:やっぱり大手のサイトだと、築年数や設備とかで検索されるんですよね。でもそれだけじゃ埋もれてしまう物件もたくさんある。1件ごとにオーナーさんの想いとか、こだわりもいっぱいあるんです。そういったことも伝えられるサービスがあったらなと思っています。

三宅私がフラットエージェンシーで良かったなと思うことの1つが、物件の写真を撮るついでに、京都市内をサイクリングできることなんです(笑)。まちを走ると、「この空気感を伝えたいな」って思うんですね。そこで今チャレンジしてるのが、自転車にスマホをつけての、動画の撮影。これをいろんなまちの紹介で使えないかな、と考えてます。

早川すごい、おもしろい。その発想はなかった。

三宅でも、動画の編集機材とかがないので…。今はそこの勉強をしていて、準備ができたらちゃんと提案しなきゃなって思っています。

──こういうアイデアって、どんな経緯でかたちになるんですか?

吉田社長:それぞれの現場で、上司の許可がでれば全然OKです。

早川企業風土としても、「やったらええやん」って感じですね。以前、住み替えを検討する入居者に向けて、広告をつくろうって話になったことがあったんです。そのときの店長も「おもしろい」と言ってくれて、デザインから全部任せてもらってトントン拍子に。創意工夫して出る意見に対して、“出る杭を打つ”感じでは全くないです。

村井私は結構、社長にも直で言います(笑)。この前は、産休や育休についてあまり知らない人が多いので、申請や手当、保育園のことなんかをしゃべって共有できる場があったらいいなぁと思って、それも社長に相談したら「いいやん」って一言。正直、やれることはいっぱいあるんですよ。ただ、今は目の前の仕事でいっぱいな部分もあるので、もっと要領よくやりたいなとは思ってますね。

「営業」という仕事の、積み上げていく喜び

──最後に、今回募集される「営業」の仕事について聞かせてください。フラットエージェンシーって、新大宮や西陣などで、いろんな企画案件もされていますよね。早川さんも、そういうのに関わりたい?

早川個人的には正直、そこよりも、入居者さんとオーナーさんをつなぐ仕事をしたくて。「ちゃんと入居者が入るかどうか」の方が気になりますね。もちろん、地域を活性化をさせることでまちに住みたい人が増えて、入居者が入ってくれるのがベスト。その中の役割として、僕はとりあえず目の前のお客さんを大事にしたいかなと思ってます。

三宅早川さんの一人ひとりのお客さんへの応対メール、めっちゃていねいなんですよ。全店のメールを見られるんですけど、個人的にすごく好きで。

村井確かに。社内の連絡もマメで、分からないことは何でもすぐ聞いてくれるからありがたいなって思います。

早川何か急にはずかしくなってきた。照れますね(笑)。

──早川さんの、営業としてのやりがい、おもしろさってどこにあるんでしょう?

早川営業は、入居者さんと家主さん、お互いが納得できるところを調整して、つくれる仕事なんです。それぞれの要望って、どうしても全部は聞けない。だからこそ、どちらもが「良い」と思ってくれるバランスが取れたときは、すごくやりがいを感じます。たぶん僕自身が、一つひとつ地道に積み重ねることに、喜びを感じるタイプなんだと思いますが。

──「フラットエージェンシーならでは」だなって思う部分はありますか?

早川うちはもしかしたら、一般的な不動産営業とは少しカラーが違うかもしれませんね。あんまりガツガツしていなくて、成長を急かされる会社ではないです。成果報酬じゃないのも、ある程度のびのびやれる要因かもしれません。それよりは、「このまちが好き」みたいな気持ちがあったらいいなと思います。

三宅たくさん売り上げを…というよりは、人が求めているものをキャッチして、寄り添える感性が大事な気がしています。住環境はその人のプライベートにかかわる空間なので、そこを理解できる人。あと、私は面接のときに「個性が必要」って言われたのも、すごく響きました。実際、自分と違った発想をする人がチームにいるとアイデアの幅が何倍にもなるので、個性的な方と働きたいなって思います。

村井人の話をちゃんと聞けるというのは、営業に限らないなと思います。自分のフィルターがあるから難しいけど、とにかく聞く姿勢をとれることが最初は大事かも。その上で、それぞれの個性をどう出していくかなんですよね。最初は悩むと思うんですけど、そのうち聞いた話がすとんと入って、自分の言葉で話せるようになるんじゃないかなって思います。

吉田社長:その意味では、根本的にまじめな人が会社を支えてくれてる。それは感じるかな。

早川辞めてからつながりつづける人も、みんなまっすぐですよね。歩く道は遠回りしてても、芯の部分があるなって思います。

「自分のことも大事に。それが仕事に活かされる」

言葉の端々から、京都への、そしてフラットエージェンシーへの愛着が感じられた今回の座談会。トークのあとも、3人の社員さんたちはそれぞれに、「京都って実はミーハーで、新旧混ざり合っておもしろい」「学生時代を過ごしていて、安心感がある」「ふるさととして守りたい」など、まちへの想いを語ってくださいました。

吉田社長自身も、「暮らす人たちがまちを好きであること」が京都の特徴ではないかといいます。だからこそ、昔からたくさんのオーナーさんとつながっていることは、フラットエージェンシーという会社の大きな魅力となっているのでしょう。

「人脈が広がれば広がるほど、いろんな仕事に携わっていけるのは間違いありません。だからこそ社員のみんなには、仕事は仕事でぴったり終わって、そのあとの時間を地域に出たり、プライベートの交友に使ったりしてほしいなとも思うんです。それが仕事にも活きてきますし、個人のスキルアップにもなります。世代を超えたつながりをまちにつくっていく、そんなプラットフォームに会社がなっていければと思いますね」

インタビューの最後に、こう語ってくださった吉田社長。京都に関わり続けたいという想いを持ち、人と柔軟につながっていける──そんな社員を、同社では募集されています。

現場での営業活動は、派手ではない、地道な積み重ねです。しかし、その“縁”を一つひとつ紡いでいくことこそが、“まちづくり”となっていきます。フラットエージェンシーと共に、不動産を通じて、地域の未来を一緒につくってみてはどうでしょうか。

執筆:佐々木 将史
編集:北川 由依
撮影:岡安 いつ美

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