2025.10.21

これまでもこれからも、京都のまちと共に。地域向けイベントが一堂に会する「ゆう薬局フェス」

1950(昭和25)年に京都で創業し、今年75周年を迎えた「ゆう薬局」グループ。創業時から地域活動に積極的に取り組み、福祉祭りや夏祭りといった行事に参加して地域の人たちとの交流を図ってきました。

近年は、薬剤師による「こども薬剤師体験」や、地域の専門職の人たちと連携して行う「ミニ講座」、管理栄養士がランチを提供する「ゆう薬局食堂」「ゆう薬局カフェ」といった多様な活動を通して、地域とのつながりをさらに深めています。

今年は初の試みとして、「こども薬剤師体験」や「ミニ講座」など、これまで各店舗で実施していた地域向けイベントが一堂に会する「ゆう薬局フェス2025」を開催することに。会場にお邪魔して、イベント実施の背景にある思いやこれからの展開についてお話を伺いました。

大人も子どもも楽しめる!親子向けイベント

2025年7月27日(日)、ゆう薬局による親子向けイベント「ゆう薬局フェス」が初開催されました。会場は四条烏丸にある京都産業会館ホール。夏休みが始まったばかりの子どもたちと保護者の方を中心に、600名を超える参加者が集まりました。

メインステージでは、ゆう薬局がゴールドパートナーを務めるプロバスケットボールチーム「京都ハンナリーズ」とコラボレーション。ハンナリーズが運営する「はんなりんチアスクール」によるパフォーマンスや、ラシード ファラーズ選手と長 颯斗(ちょう・はやと)トレーナー、ゆう薬局の管理栄養士による対談など、華やかなステージ企画が行われました。

(左から)長トレーナーとラシード選手

「京都ハンナリーズ×ゆう薬局」コラボお薬手帳や、ゆう薬局の薬剤師による選手・トレーナー向けの「アンチ・ドーピング講習会」など、これまでの連携事例も紹介。対談では「コンディション維持のためにどんなことを意識していますか?」「食事で気を付けていることは?」など、スポーツに携わる人もそうでない人も、みんなが気になる話題で盛り上がりました。

会場内には、縁日コーナーやフォトスポットなども。来場者の中にはハンナリーズのTシャツを着た人や浴衣姿の人もいて、ワクワクするお祭りムードが漂います。

縁日コーナーではスタッフがはっぴ姿でおもてなし

企画がどんどんふくらんで、フェス開催へ

初開催とは思えないほど大盛況の「ゆう薬局フェス」ですが、そもそもなぜ薬局がフェスを開催することになったのでしょうか。小学生の息子さんと一緒に会場を訪れていた宇野充俊(うの・みつとし)社長にお話を伺いました。

宇野社長

実はもともと「フェスをやろう」と思っていたわけではないんですよ。ゆう薬局ではこれまで、地域の取り組みの一つとして各店舗で「こども薬剤師体験」を開催していました。これを夏休みの定番イベントにして、会社全体の取り組みにしたらどうかと考えたのが、最初のきっかけでした。会社のWebサイトで告知をして、各店舗の申し込みページに誘導する仕組みを作りたいと広報部と話していたら、いつの間にか話が広がってフェスを開催することになっていました(笑)。

夏休みに「こども薬剤師体験」を開催して、自由研究などに活用してもらうことで、地域の人たちの役に立ちたい。そして、ゆう薬局のブランディングにもつなげていきたい。そんな思いからスタートして、「どうすれば集客できるか」「どんな企画があれば喜んでもらえるか」と肉付けしていくうちに、今回のフェス開催に至ったと、宇野社長は笑顔で話します。

宇野社長

もちろん薬剤師体験がメインですが、「夏だから縁日コーナーを作ろう」「京都ハンナリーズさんにも協力してもらおう」と社内からさまざまなアイデアが出て、企画がふくらんでいきました。実際に開催してみると、薬局のブランディングという当初の目的だけでなく、スタッフ間の交流や社内の一体感の醸成にもつながったと感じます。市内だけでなく京都全域から130名ほどのスタッフが集まってくれました。

ゆう薬局では、特にコロナ禍以降、社員総会や懇親会、社内サークルなど、店舗の枠を超えたコミュニケーションの活性化に取り組んでいるそうです。今回のイベント会場でも「久しぶり!」と他店舗のスタッフ同士が声を掛け合う姿が見られました。また、スタッフのご家族や、以前働いていたスタッフなど、ゆう薬局に関わりのある人たちが多く訪れていたのも印象的でした。

会場内では、移住計画の取材チームにもうれしい再会が。各地域の取り組みを紹介する「ゆう薬局アワード」のブースで、昨年に京丹後市で取材したお2人にばったり出会うことができました。

(左から)岡田果子さんと吉松友里さん

内容盛りだくさんの本格的な薬剤師体験

ここからは、多岐にわたる企画が行われている各ブースへ。まずは、今回のフェスのメインコンテンツである「こども薬剤師体験」のブースを訪ねると、中京エリア・ブロック長の片岡礼奈(かたおか・れな)さんが出迎えてくれました。

今回の「こども薬剤師体験」は、小学1~5年生向けの「こどもコース」と、小学5年生~高校3年生向けの「プロコース」の2種類。特に「こどもコース」は、予約開始から数日で枠が埋まってしまい、急きょ予約枠を拡大するほどの人気ぶりです。

各コースは、薬剤師によるミニ講義から始まり、処方せん受付、疑義照会(薬剤師が処方せんの内容について不明点があるとき、発行した医師に問い合わせること)、軟膏づくり、薬のピッキング、一包化(服用時期が同じ薬を、1回の服用分ずつ1袋にまとめること)など、これまで各店舗で行ってきた「こども薬剤師体験」の集大成とも言えるような盛りだくさんの内容です。

薬のピッキングをする子どもたちは真剣そのもの
体験の中でも特に人気が高いのは軟膏づくり

取材チームも薬のピッキングを体験させてもらいましたが、似たような名前の薬がいくつもあったり、劇薬や向精神薬といった取り扱いに注意が必要な薬があったりと、想像以上に難しい……!薬剤師の仕事には高い専門性が求められることを実感します。

片岡さん

「薬剤師さんってここまでしてくれているんですね」と業務の幅広さに驚く保護者の方が多いですね。最初は「こんなん簡単やろ」と言っていた高学年の子どもたちも、「やってみると難しい」と苦戦しながらも楽しんでくれています。担当スタッフみんなで何ヶ月もかけて準備したので、「楽しかった!」と喜ぶ子どもの姿を見るとうれしいですね。

体験の最後には、患者さん役のお母さんに薬の説明をして手渡す

ちなみに、今回のイベントの集客について尋ねると、学校給食の献立表の下に広告を出すなど、地域に根差した形での広報を行ったのだとか。「中京区認知症連携の会」の活動として小学校で認知症サポーター養成講座を行うなど、これまでも地域活動を精力的に行ってきた片岡さんのネットワークが大いに生かされているようです。

薬剤師と管理栄養士によるミニステージ

つづいて、ミニステージのブースへ。ここでは薬剤師による化学実験教室と、管理栄養士によるミニ講座が、1時間ごとに交互に開催されていました。化学実験教室のテーマは「おくすり×飲み物で何が起きる?」。薬をお茶やジュースで飲んでしまうとどうなるのか、実験をしながら薬の仕組みを学べます。

講師を担当したのは、在宅支援センターで勤務する薬剤師の大伴沙織(おおとも・さおり)さん。当日の講座を振り返って、こんなふうに手ごたえを語ってくれました。

大伴さん

薬と飲み物の組み合わせによっては効果が小さくなってしまうことを、実験でわかりやすく伝えるように意識しました。保護者の方が「ふむふむ」と頷いている様子や、隣にいるお子さんに「こういうことだよ。わかる?」と噛み砕いて説明している様子も見られて、しっかりと伝わっていることが実感できました。

管理栄養士によるミニ講座は、「やさい博士になろう!」「からだはなにでできている?」「血のひみつ」の3テーマで、各20分のレクチャーが行われました。3つのテーマはそれぞれ、隣にある測定体験コーナーの①野菜摂取量測定、②体組成(InBody)、③血管年齢測定と連動しているため、講座を聞いた上で自分自身の身体の状態をチェックして確かめることができます。

管理栄養士によるミニ講座「血のひみつ」の様子

キタオオジゆう薬局の管理栄養士・副田桃子(そえだ・ももこ)さんと、管理栄養士として七条ゆう薬局で勤務しながら認定栄養ケア・ステーションの責任者も務める今野有菜(こんの・ゆな)さんは、ミニ講座を終えて次のように話してくれました。

副田さん

人前で講義をするのは学生のとき以来だったので、少し緊張しました(笑)。でも、子どもたちが手を挙げてくれたり、質問してくれたりして、レスポンスが返ってくるのがうれしかったです。

今野さん

「子どもたちに伝わりやすいように」と考えて事前準備をしましたが、実際に話してみて質問を受けることで、「こういうふうに話すと、より伝わりやすいんだな」と勉強になりました。今後の機会に生かしていきたいです。

(左から)副田さんと今野さん。測定コーナーでは管理栄養士のアドバイスも受けられる

これからもずっと、地域に開かれた薬局として

大盛況のうち幕を閉じた、初めての「ゆう薬局フェス」。最後に、ゆう薬局の地域向けの取り組みにおける今後の展望について、宇野社長に伺いました。

宇野社長

現在、本社に模擬調剤室を設置する計画を進めています。もともとは社内研修の場所として作るつもりだったのですが、設計次第で「こども薬剤師体験」の開催場所としても使えそうだと思っていて。さらに、ゆう薬局を知ってもらう、身近に感じてもらうという意味では、薬剤師体験だけでなく栄養士の職業体験やワークショップもできるといいなと考えています。まだ計画中ではありますが、何かの形で地域の皆さんに還元できるような場になるといいですね。

今回、「こども薬剤師体験」からフェスの開催へと広がっていったように、新しい場ができれば、また社内から次々とアイデアが生まれていきそうです。地域に開かれた薬局として、どのような取り組みが作り出されていくのか、今後の展開も楽しみです。

執筆:藤原 朋
撮影:清水 泰人
編集:北川 由依

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