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「京都LWS」(京都ローカルワークステイ)は、京都府各地のユニークな企業の魅力を知り、課題解決に向けた取り組みを通して、地域との新たな関わり方を見つけていくプログラムです。
京都府・京都府農業会議とともに京都移住計画(株式会社ツナグム)が企画しています。
2023年に実施した5つのプログラムから、今回は、保険薬局「ゆう薬局」グループの、京丹後市エリアでの取り組みに密着した現地体験のレポートです。
地域医療の明日をつなぐ「ゆう薬局」グループとは
京都府に103店舗、滋賀県に4店舗を構え、京都で最多の店舗数を誇る「ゆう薬局」グループ。
1950(昭和25)年に京都で創業して以来、地域に根付いた薬局として、保険薬局の枠組みを超えて、地域医療や在宅医療に関わるさまざまな取り組みを行い、薬局の新たな可能性を追求し続けています。
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カフェ運営など多彩な地域活動を展開!地域と共に歩む薬局の一員になる
地域医療連携の最前線を歩く京丹後市
「ゆう薬局」グループでは創業以来、地域の医療・介護・福祉に関わる人たちや、行政機関、地域資源と積極的に連携しながら、地域包括ケアを実現するためのネットワークを築いてきました。
中でも、京丹後市をはじめとする京都北部エリアは、医療資源が少ないながらも、人と人との距離感が近い地域ならではの、質の高い地域医療連携が進んでいます。
人材と資材が不足しがちなローカルエリアにおいて、ゆう薬局は、一見すると医療・介護と関係ないような場や、地域で活動するプレイヤーともつながりを育みながら、地域医療を支えてきました。
『薬局からはじまる、地域の輪づくりを考える3日間』
京都ローカルワークステイでは、地域に根付いたゆう薬局の取り組みに密着。薬局とまちとのつながりを学びながら、地域に寄り添うコミュニティのあり方を考えます。
みなさんが今回のローカルワークステイに参加した理由
現地体験には、UI/UXデザイナー、フリーランスライター、製薬企業勤務の傍らMBA取得を目指して大学院に通う方など、個性豊かな3名に参加いただきました。
- これからの薬局のあり方と、地域共生社会に対する取り組みに興味がある(製薬企業勤務)
- UXデザインを本業としているので、地域住民の生活の質が向上するような今後の施策(薬局の複合施設化など)を、一緒に考えていきたい(UI/UXデザイナー)
- 地域薬局の魅力やストーリーをお伝えする、お手助けができればと思っている(ライター)
<1日目>
1日目、まずは京丹後コミュニティ放送「FMたんご」へ。2004年10月、丹後地方を襲った台風23号の教訓をもとに2009年に放送をスタートした、地域の防災や健康情報を発信するラジオ局です。
FMたんごでは、今回の現地体験をコーディネートいただいた船戸さんが、”キャッチー船戸”として番組パーソナリティを担当。地域と薬局とをつなぐ、ひとつのメディアにもなっています。
その後FMたんご近くの丹後保健所にて、丹後地域の人口動態や、多職種連携で取り組む地域包括ケアについて、お話を伺いました。
次に訪れたのは、京丹後市未来チャレンジ交流センター「roots」。
大学がなく、若者の人口流出が進む京丹後市に2020年にオープンした、高校生のチャレンジや地域との交流をサポートするスペースです。rootsで働くコーディネーターは、近隣の高校にて探究学習の伴走支援も行っています。
地域全体で学生の成長を支援する取り組みが進む中、ゆう薬局も若年層を対象にしたヘルスケア講座や、探求授業をサポートしていて、FMたんごで船戸さんが担当する番組に、ラジオの仕事に興味がある高校生が出演したこともあるそうです。
1日目の最後は、2022年に開局した「弥栄ゆう薬局」へ。京丹後市ではじめてのドライブスルー対応薬局で、車に乗ったまま薬を受け取ることができます。
薬剤師の吉松さんから、弥栄ゆう薬局の特徴や、地域での取り組みについてお話を伺いました。
「京丹後市は、人口5万人に対して高齢者率が35%、若い人の減少も課題。人口動態的に日本全体の20年先を先取りしている先進地域です。弥栄ゆう薬局では、高齢者のフォローはもちろんのこと、若年者支援にも力を入れています。高校生が、健康相談に訪ねてきてくれることもありますね」(吉松さん)
開放的なオープンテラスの設置や、キッチンカーでのクレープ販売、アートの展示など、弥栄ゆう薬局は地域の誰もがふらりと立ち寄ることができる、開かれた場という印象を受けました。
「店舗のデザインについて、ガイドラインが決まっている訳ではなく、まちに溶け込む薬局づくりを意識しています。こうした活動の積み重ねにより、地域医療とまちとの関係性が深まって、質の高い地域包括ケアに繋がると考えています」と、船戸さん。
<2日目>
この日は朝から「河辺ゆう薬局」へ。ここは、京丹後市で唯一の健康サポート薬局です。
処方箋による調剤だけでなく、市販薬や健康食品のアドバイスや専門家の紹介などを通して、地域住民の健康維持をサポートしています。コロナ禍では、コロナウィルスに関する情報発信の拠点にもなりました。
最近では、近隣の施設や自宅への出前講座も増えているそうで、地域のニーズに合わせてできることを、薬剤師のみなさんが考えて仕事をしていると伺いました。
午後からは、道の駅「丹後王国『食のみやこ』」へ移動。
この日は、丹後の高校生が企画・運営するSDGsのイベント「丹後万博2023」の開催中。イベントに参加しつつ、地域コーディネーターとして探求授業をサポートする岡部さんから、地域と高校生、高校生と薬局との関わりについて教えていただきました。
その後は船戸さんにアテンドいただいて、丹後エリアを巡ります。
オーガニックファームSORA農園の野菜を使った、スイーツやランチがいただける「キコリ谷テラス」、「与謝野町立 古墳公園」を巡って、与謝野町のブルワリー&ビアバー「TANGOYA」へ。
ゆう薬局グループがパートナー企業として応援するプロバスケットボールチーム「京都ハンナリーズ」の試合を、パブリックビューイングで観戦しました。
2日目の夜は、今回の現地体験で宿泊している、美味しく泊まれるスパイスカレー屋さん「HATAYA」にて交流会を開催。船戸さんご一家や、rootsのコーディネーターにも参加いただいて、賑やかなひとときになりました。
<3日目>
現地体験の最終日は、3日間の振り返りをしました。
しかも、振り返りを船戸さんのラジオ番組で配信いただくことに。その上、「せっかくなので薬局で収録しましょう!」と。定休日の「峰山新町ゆう薬局」にラジオブースをつくり収録するという、貴重な体験をさせていただきました。
「丹後は地元なのですが、暗い未来をなんとかしてあげないといけないという謎の”上から目線”を持っていました。プログラム参加を通じて、地域のみなさんが前向きに楽しく新しい未来を作っている姿を見て、自分も一緒に何かしたいという目線へと変わりました」(UI/UXデザイナー)
「rootsで、探求のフィールドワークを見学させていただいて、高校生の学びに、学校の先生だけでなく、コーディネーターのみなさんや地域の多くの大人が関わっていることに感動しました。この地域ならではの熱心な取り組みに触れて、ここで自分も活動したいと思うようになりました。定期的に丹後に通いたいです!」(製薬企業勤務)
「薬局は地域の人に必要とされる、身近で大切な街のインフラだと感じました。ゆう薬局は、女性にとって重要な婦人科の症状についてや、病院を選ぶ相談もできるということを知り、近くにそのような場所があることは、とても心強いと思います」(ライター)
「薬局として地域として、理想的な連携の形が作れている感触はみんな持っているけれど、リソースやノウハウの課題もあって外向けに情報発信できていない現状がある。みなさんに取り組みについてたくさん言語化していただいて、本当にありがたかったですし、自信につながりました」(船戸さん)
3日間かけて薬局の中と外を行き来しながら、ゆう薬局が育んできた、地域医療とまちとのゆるやかで強い繋がりを実感しました。地域包括ケアシステムの実現は簡単なことではないですが、まちのみなさんと無理せず楽しく関係を深めながら、連携に取り組まれている船戸さんの姿が印象的でした。
プログラムのその後
プログラム終了後、参加者の3名が現地体験の記録と学びを綴った冊子「はーとふるTANGO」を作成し、ゆう薬局のみなさんをはじめ、丹後で出会った方々のもとへ届けています。
加えて、将来的な移住を見据えた地域の移住ツアーへの参加や、丹後を舞台に日本酒で地域を盛り上げる取り組みなど、京都ローカルワークステイへの参加がきっかけとなり、個々のマイプロジェクトも始動しています。こちらもまた、別の機会でご紹介できればと思いますので、どうぞお楽しみに!
▼冊子「はーとふるTANGO」はこちらからご一読ください
はーとふるTANGO 京都ローカルワークステイを通じて見えたもの
お知らせ
京都ローカルワークステイ2024 〜京都で「働く」「暮らす」をデザインするプログラム〜
「京都ローカルワークステイ」は、京都府各地でユニークな活動を行う企業と課題解決に向けたプロジェクトに取り組みながら、京都での生き方や働き方をデザインしていくプログラムです。
プログラムを通して、多様な生き方・働き方の選択や、チャレンジの実現を可能にする、京都ローカルとの継続的な関係づくりを目指します。
エントリー期間:7月1日(月)〜8月31日(土)中まで