2024.07.18

漁協の取り組みに学ぶサスティナブルな水産業〜京都LWS2023 現地体験レポート〜

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「京都LWS」(京都ローカルワークステイ)は、京都府各地のユニークな企業の魅力を知り、課題解決に向けた取り組みを通して、地域との新たな関わり方を見つけていくプログラムです。
京都府・京都府農業会議とともに京都移住計画(株式会社ツナグム)が企画しています。

2023年に実施した5つのプログラムの2つめは、京都府漁業協同組合に伺いました。

早朝から定置網船に乗って漁を見学したり、競り場からの出荷作業を体験したりと、水産の上流から下流までの流れを、3日間みっちり学んだ体験の様子をご紹介します。

浜の漁師あっての漁協。府内の漁業従事者を支える京都府漁業協同組合

京都の海は、寒流と暖流が交わることから、冷たい水を好む魚と温かい水を好む魚の両方が回遊する豊かな漁場です。

西舞鶴に本所を構える「京都府漁業協同組合」は、京都府北部エリアにて4箇所の卸売市場と、9つの支所を運営し、毎朝水揚げされる安全・安心・新鮮な水産物を全国に届けています。

多様化する漁協の役割

京都府の海に限ったことではありませんが、漁獲量の減少や、魚の消費減、漁業従事者のなり手不足など、水産業が抱える課題は少なくありません。漁協の役割も、時代を追うごとに多様化しています。

写真提供:京都府漁業協同組合

「丹後とり貝」や「京鰆」「「丹後ぐじ」など、水産物の地域ブランド化の取り組みをはじめ、活魚の販売、東南アジアへの輸出事業など。水産物の価値を高め、組合員の経営の安定を実現し、漁業の持続的な発展を目指して事業拡大を図っています。

『舞鶴の水産業の現場から、漁業の未来を考え体験する3日間』

京都ローカルワークステイ、今回のテーマは「水産業×サスティナブル」。業界における漁協の役割を学び、持続可能な水産業のためにできることを体験から考えます。

みなさんが今回のローカルワークステイに参加した理由

現地体験には、春から対馬の水産加工・養殖企業への就職を予定している若者やフリーのWEBディレクター、未利用魚を使用した商品企画の経験者など、神奈川からの参加を含む4名の方にご参加いただきました。

<1日目>

今回コーディネートを担当いただいた竹口さん(左から2番目)

JR「西舞鶴駅」集合後、車で10分ほど移動して港へ。京都府漁業協同組合の本所で、職員の川﨑さん、竹口さん、西谷さんから、漁協の役割や事業のお話を伺った後、漁協内の施設を見学しました。

漁協事業の柱は販売事業。毎朝水揚げされる水産物を、卸売市場で競りを行って販売する他、近年では、海外への輸出や、百貨店やスーパーに加工品を販売する直販事業にも力を入れているそうです。

その他にも、漁業に必要な資材や機械、漁船の燃料を供給する購買事業、漁師の技術向上のための研修や、水産資源の増殖・保護に取り組む指導事業、製氷冷蔵事業、共済事業など、様々な事業を通して、組合員が安心して漁業に従事できる仕組みを提供しています。

「漁師も担い手の不足が深刻ですが、漁協も雇用の課題を抱えています。漁協の事業は、組合員に向けたサービスがメイン。外からは、どんな仕事をしているのかなかなかイメージしづらいところがありますよね」と、竹口さん。

夜は、西舞鶴の商店街にある「漁師小屋」にて、職員のみなさんと懇親会。毎日、地元で仕入れる新鮮な魚介類をたくさんいただきました。

その後は、舞鶴で”まちを楽しむ”をテーマに活動している、一般社団法人KOKINが運営するゲストハウス「宰嘉庵」にチェックイン。これにて1日目の現地体験は終了です。

<2日目>

この日は朝3時に起床。西舞鶴から車で50分ほど走って、舞鶴市の東端、福井県との県境にある田井漁港へ。漁船に乗って、定置網漁の現場を見学しました。

船の出航は夜明け前の6時。漁師のみなさんの凛とした佇まいに、少し緊張しながら沖へ

定置網漁で水揚げされる魚は、府内漁獲量の約80%。集団操業で行う漁なので、この日も20名程の漁師さんが乗船されていました。

毛島漁場と馬建漁場の2つの漁場をまわって、カンパチ、白イカ、カツオ、カタクチイワシなどを漁獲。水揚げした魚は、寄港後すぐ漁協が運営する卸売市場へ運ばれて、競りにかけられます。

田井漁港を後にして、午後からは舞鶴市内を巡ります。

まずは西舞鶴「SEIS(セイス)」」へ。JR西舞鶴駅から、マナイ商店街を抜けてしばらく歩いた所にある六角形のシネマカフェです。セイス内のホールでは、オーナーの中嶋さんがセレクトした単館系の映画作品を楽しめる他、音楽の生演奏やライブも開催されています。

その後、東舞鶴へ移動。漁港のまち西舞鶴に対して、東は軍港として発展してきた歴史があり、現在も海上自衛隊の護衛艦などが停泊していて、見どころのひとつとなっています。

東舞鶴では、舞鶴市の職員有本さんと新村さんにアテンドいただいて、シベリアに抑留された人々の帰還に至るまでの歴史展示されている「舞鶴引揚記念館」、明治時代から残る海軍の倉庫をリノベーションした赤れんがパーク内のコワーキングスペース「Coworkation Village MAIZURU」を訪ねました。

<3日目>

3日目は、朝から競りを見学。その後出荷の箱詰め作業を手伝います。

市場の定休日を除く毎朝9時30分からはじまる競りは、魚の量が多い時には夕方までかかることも。せり人をはじめとする漁協の職員のみなさん、買い付けを行う仲介人の方とがあわただしく行き交う、活気あふれる時間です。

午後からは、全員で今回の体験の振り返りを実施。漁業従事者のなり手不足や漁獲量の減少、魚の消費減など水産業全体が抱える課題について、幅広くディスカッションしました。

「漁協=卸売り市場での業務イメージが強いですが、いろいろな仕事があること、面白さを知ってもらいたい。今の学生は本当においしい魚を知らない人も多いので、魚を食べながらの就職説明会も効果的かもしれません」(学生)

「漁協さんは、魚を獲る人と売る人との間、会社でいうところの総務的な役割をされていると思う。”Farm to Table”(畑から食卓へ)のような、水産の現場と消費者をつなぐコピーがあると、食卓からもサスティナブルな未来を考えるきっかけになるように思います」(料理家)

「日常生活で、私たちが魚の生産者と関わることはほぼない。プログラムを通して一連の流れを体験できたことで、繋がる部分が多くありました。ヒト起点で魅力が伝わることも多いので、水産業界にインフルエンサーがもっと増えればいいなと思います。ソムリエのように魚のマイスター制度がもっと整備されることで、業界全体の課題に自分ごととして向き合う人も増える気がします」(WEBディレクター)

「漁協の取り組みや、業界の役割を知ってもらう機会になってよかったです。聞かせていただいたことをプラスに実現して、水産業界の課題にアプローチしていきたいです」(川﨑さん)

「漁協として、情報を発信しきれていないと再認識しました。名前から古い体質や硬いイメージを持たれることが多いですが、働き方改革も進みつつあるので、気づきを参考にしながら、担い手となる人材の確保に取り組みたいと思います」(竹口さん)

「組合員である漁師あっての漁協」という、協同組合の精神に触れた3日間。

私たち消費者にとって、直接的な関わりが少ない為にイメージが湧きづらい漁協の活動ですが、業界における役割や、そこで働くみなさんの姿をどう伝えていくのか、引き続き私たちも一緒に考えていきたいと思います。

プログラムのその後

プログラムに参加された料理家の方の、活動拠点である亀岡市の高校にて、調理実習で食材として使用する魚を、漁協から仕入れる動きがうまれています。

「食べる前の魚の姿や顔を知らない生徒たちに、水揚げされたばかりの新鮮な魚を捌いて、そのおいしさを体験してほしい」という想いに応える形で実現。プログラムから生まれたつながりから、個々のチャレンジの幅が広がっています。

お知らせ

京都ローカルワークステイ2024 〜京都で「働く」「暮らす」をデザインするプログラム〜

「京都ローカルワークステイ」は、京都府各地でユニークな活動を行う企業と課題解決に向けたプロジェクトに取り組みながら、京都での生き方や働き方をデザインしていくプログラムです。

プログラムを通して、多様な生き方・働き方の選択や、チャレンジの実現を可能にする、京都ローカルとの継続的な関係づくりを目指します。

エントリー期間:7月1日(月)〜8月31日(土)中まで

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