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「京都LWS」(京都ローカルワークステイ)は、京都府各地のユニークな企業の魅力を知り、課題解決に向けた取り組みを通して、地域との新たな関わり方を見つけていくプログラムです。
京都府・京都府農業会議とともに京都移住計画(株式会社ツナグム)が企画しています。
2023年に実施した5つのプログラムから、丹後地域の与謝野町で地元産のお米を使った寿司製品を作る、「加悦ファーマーズライス」での現地体験の様子をご紹介します。
京都の米どころで地域の農家と稲作文化を守る「加悦ファーマーズライス」とは
美しい田園風景が広がる、丹後半島の付け根にあるまち与謝野町。「加悦ファーマーズライス」は、豊かな土と四方の山々から流入する良質な水で育つ、与謝野町産米を100%使用したお寿司を、全国各地の道の駅やサービスエリア、京都市内の百貨店などで販売しています。
寿司製品の製造・販売を通して、お米の販路を広げ地域の農家と稲作文化を守る役割も担っています。
より与謝野町らしく
近年は京都を飛び出して、大阪市内の百貨店での催事や、出店の相談も増えてきているとのこと。また、より多くの方においしいお寿司を食べてもらえるようにと、新たにオンラインショップをオープン。順調に販路を拡大しています。
次のフェーズへ進む一方で、与謝野町および丹後の農産物や地域文化を活かした、商品開発、PRに課題を感じているとの声がありました。
外からの目線で、社内の取り組みに触れて地域を眺めてもらうことで、新たな価値を引き出せるのではないか。
お話を伺う中で、京都ローカルワークステイでご一緒する、プログラムの構想が生まれていきました。
『与謝野町のお米や食材を活かした、地域の新たな価値づくりを考える3日間』
加悦ファーマーズライスの取り組み、地域で担う役割を学ぶとともに、与謝野のまちを巡ります。社内のソフト・ハードと地域の資源を組み合わせた、新たな価値づくりを考える3日間です。
みなさんが今回のローカルワークステイに参加した理由
今回は、IT会社の役員、料理家、フリーランスのマーケター、コミュニティキッチンの運営者、学生など、京都市内・大阪から5名の方に参加いただきました。
- 地域性を活かした商品開発やマーケティングに興味があり、プログラムを通して解像度を深めたい(マーケター)
- 自身のスキルやこれまでの経験、および自分のルーツである丹後地方への想いが、課題解決の役に立てるのではと思い参加した(IT会社役員)
- 現在の仕事で、ストーリー性のある食材を仕入れたり、紹介したりすることが多いので、地域に飛び込んで、自分がまだ知らない新たな食に出会いたい(コミュニティキッチン運営者)
- お米や野菜の知らない世界を知り、作り手の想いに触れる事で、まず私自身が与謝野町のファンになりたい(料理家)
- 地域や企業の課題に対して、自分は何が出来るのかを考えるきっかけになればと思っている(学生)
<1日目>
初日にまず訪れたのは、京都市内の百貨店「大丸」。加悦ファーマーズライスの直営店「京の加悦寿司」が入っています。
ここには、与謝野町の工場から毎朝出荷する鯖寿司や丹後巻、穴子巻などの巻寿司が並びます。また、売り場の奥に調理スペースが設置されていて、作りたての丹後地方の郷土寿司「丹後のばら寿司」を購入することができます。
「大丸店の利用者は40代以上の女性が大半。百貨店は日々のおつかいやお土産として購入されるお客さんが多く、週に何度も寄ってくれるリピーターもいます」と営業担当の三浦さんに教えていただきました。
お店を見学したあとは、与謝野町に移動して加悦ファーマーズライスの本社へ。
常務の戸田さん、現地体験のコーディネートを担当いただいた業務部部長の千賀さんから、百貨店への出店、オンライン強化の今後の展望や、まち全体の高齢化や人口流出による人手の不足、繁閑の売り方などの課題を伺いました。
<2日目>
朝から、お米の貯蔵庫と商品の製造ラインを見学。
現在、お米を買い付けている地元の農家さんは45軒ほど。与謝野町産の、主に「コシヒカリ」「どんとこい」「日本晴」の3種類を商品ごとにブレンドし、生産計画に合わせて精米し使うのだそうです。
見学の後は、お寿司をいただきながら商品開発についてお話を伺いました。
できるだけ地域の農産物を使いたいと考えながらも「安定した収穫量の確保と、流通にのせるための保存法を考える必要があります」と、開発担当の浪江さん。
食材の仕込みに、保存効果が高いお酢などの発酵食品を使ったり、燻製の技法を取り入れたりと、細部にわたって“おいしい”を安全に届ける工夫が凝らされていることを知りました。
「商品開発は材料作りから」制限は多いけれど、よりおいしいお寿司を食べてもらいたいという思いで、日々試行錯誤を重ねているそうです。
午後からは、社屋を出て与謝野のまちへ。
お米農家の「あつい夢ファーム」→「あつえ夢ファーム」を訪問。お話を伺ったあとは、与謝野町の特産品が集まる道の駅「シルクのまち かや」、農業と並ぶまちの基幹産業である繊維業のミュージアム「丹後ちりめん歴史館」、丹後地域の郷土資料館「ふるさとミュージアム丹後」など、千賀さんに案内していただいて、いろいろな角度から地域の魅力に触れることができました。
2日目の夜は、今回宿泊しているレストラン兼宿泊施設「かや山の家」にて、与謝野町の農作物やジビエを使ったお料理を囲んで、社員のみなさんとの交流会を開催。
参加者からは「今日食べたサーモン巻き、めちゃくちゃおいしかったです!」という感想や、「鹿肉を使ったお寿司とかどうですか?」「加悦さんのお寿司を、もっと京都市内のみなさんに食べてもらいたいです!イベントやりましょう!」といった提案もうまれ、賑やかな夜となりました。
<3日目>
最終日は、菅野社長にも参加いただいて、滞在の振り返りをシェアしながら、これからどんなことができそうかを話し合いました。
「商品パッケージに、加悦さんのお寿司だと一目でわかるロゴマークが入れば、社員のみなさんの想いや努力が、価値として消費者のイメージの中にプールされていくような気がしています」(IT会社役員)
「オンラインショップとSNSの運用はセットな気がします。WEBを運営しているだけでは、情報は届かない。みなさんが無理なく続けられる仕組みづくりや、発信する情報の整理に取り組めたらと思っています」(フリーランス)
「若い世代が、企業や商品に触れる機会をつくりたいです。一緒にお寿司をつくるワークショップは、商品のファンづくり、きっかけづくりになるように思います」(コミュニティキッチン運営者)
「社員一同、参加者のみなさんとのコミュニケーションが大きな刺激となりました。今日からがスタート。つながりが生まれたことをチャンスと捉えて、次の一歩が踏み出せたら幸いです」(千賀さん)
「会社として次の5年、10年に向けて、新しいステージへ進む時。同時に、社会の中で弊社はどの位置を目指すのか、目的整理が必要と感じている。みなさんの知恵やお力を借りながら、ひとつひとつ前へ進めていきたいと思っています」(菅野社長)
食、農、産業のさまざまな視点から、与謝野町らしさを体験した3日間。
地域の稲作文化を守り活かすための試行錯誤と、製品に込められた工夫や想いに触れて、全員が加悦ファーマーズライスの大ファンになりました。
プログラムからうまれた関わりをきっかけに、「与謝野町らしさ」や「ものづくりのこだわり」を軸にした、ファンの輪を広げる試みがはじまっていきそうです。
プログラムのその後
現地体験での意見交換を経て、加悦ファーマーズライスブランドの、再構築プロジェクトがスタートしました。まずは、ブランドを象徴するシンボルマークの完成を目指して、社員のみなさんと共に取り組みが進んでいます。
また3月には、京都市内のコミュニティキッチン(DAIDOKORO)にて、新しい「丹後のばら寿司」をつくる、食の交流会を開催。食の体験を通して、丹後地域や企業の魅力を知り、関わりへの関心が広がる時間となりました。
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お知らせ
京都ローカルワークステイ2024 〜京都で「働く」「暮らす」をデザインするプログラム〜
「京都ローカルワークステイ」は、京都府各地でユニークな活動を行う企業と課題解決に向けたプロジェクトに取り組みながら、京都での生き方や働き方をデザインしていくプログラムです。
プログラムを通して、多様な生き方・働き方の選択や、チャレンジの実現を可能にする、京都ローカルとの継続的な関係づくりを目指します。
エントリー期間:7月1日(月)〜8月31日(土)中まで