募集終了2020.09.09

これからの社会をつくる仕事。チームで伴走しながら目指す“あたらしい建築”

建築家の仕事と聞いて、どんな姿を思い浮かべるでしょうか。
図面を描いたり、模型を作ったり、建築現場に立ち会ったり。

今回ご紹介する建築設計事務所「STUDIO MONAKA」の仕事は、それだけではありません。建築設計をするのはもちろん、事業のブランディングや企画・運営まで深く踏み込んで関わっていきます。

こうした仕事領域の広がりに対応できるチームの体制を整えるため、建築設計職とアシスタント職として新たな仲間を募集しています。

チームで取り組むから生まれる“良い違和感”

STUDIO MONAKAは、岡山泰士さん・森田修平さん・仲本兼一郎さんの3人が共同主催する建築設計事務所。2016年に京都を拠点として始動しました。

(左から)岡山泰士さん、仲本兼一郎さん、森田修平さん。

専門学校で同じ研究室だった岡山さんと森田さん。卒業後はそれぞれが別の建築設計事務所で働きながら、2人で「mono.」というユニットを組んで活動していました。そろそろ独立をと考えていた頃、同じ専門学校出身だった仲本さんも仲間に加わり、3人で「STUDIO MONAKA」としてスタートします。

「3人とも1987年生まれで世代も一緒だし、パートナーシップを組む形で一緒にはじめたらどうかと。これからの時代、ある一人のカリスマ建築家が組織をつくるよりも、共同主催という形で何かを目指していくほうが面白いんじゃないかという思いがありました」(岡山さん)

STUDIO MONAKAの結成以前、岡山さんは保育園や養護老人ホームといった施設、森田さんは新築の住宅、仲本さんは京町家のリノベーションを得意とする事務所で経験を積んでいました。

「それぞれが学んできたことや個性があるので、お互いが補い合えるチームづくりができればと考えました」と森田さん。チームで仕事をすることで、どんな相乗効果が生まれてきたのでしょうか。

「STUDIO MONAKAとして良いものができたなって思う仕事には、良い意味での違和感がある。一人で作った時には生まれない、良い違和感。自分の感性とは違う価値が生まれる瞬間があって、そこに自分では想像しなかった豊かさがあるんです」(岡山さん)

「それをつくれるのが良い環境、良いチーム。トップダウンの組織だと、ボスが好きそうやなっていう案を作ってしまう(笑)」と仲本さんがつづけます。


「あるフォーマットに当てはめてしまうと、新しい価値は生まれないんですよね。良い違和感があることで、それが外部とのコラボレーションの許容、余白にもなるんです」(岡山さん)

STUDIO MONAKAの仕事は、ライティングデザイナーや和紙作家、庭師など、さまざまな分野のクリエイターと協働関係を作りながら取り組むことが多いといいます。事務所のメンバーだけでなく、外部スタッフとも一緒にチームを組んでプロジェクトを進めています。

対話を重ね伴走しながら、一緒に事業をつくっていく

彼らの仕事の特徴は、ただ建物を設計するだけには留まらないこと。ブランディングも含めた、事業そのものをつくるところから関わっていくケースが増えています。


「もちろん図面を描いたり現場監理をしたりもするんですけど。もう一歩踏み込んだ形で、施主さんにとって最適な答えは何なのかっていうのを考えています。依頼通り建築設計することが回答なのか、もしかしたらしないことが回答かもしれない。いろんな選択肢の中で、伴走しながら一緒につくっていく、ちょっと特殊な設計手法ですね」(森田さん)

「頂いたオーダーをつくるっていうよりは、ないオーダーからオーダーそのものを一緒につくるイメージ」と岡山さん。たとえば京町家を使った一棟貸しの宿サービスの事例では、「町家をリノベーションしてください」というオーダーに対し、彼らはブランドのコンセプトやネーミングまで提案しました。

「京町家の宿が乱立してくる時代だったので、突出した何か、強いコンテンツをつくり上げないと、すぐに埋もれてしまう。だから彼らのブランドは何なのか、この宿が何であるのか、そこまで掘り下げて提案する必要があったんです。そこで勝手にネーミングまで考えて提案して、ええやんって採用されました(笑)」(仲本さん)

STUDIO MONAKAが手掛けた京町家の宿。
伝統的な庭師とコラボレーションし、日本庭園を宿の主役にするというコンセプトを提案した事例。

さらにSTUDIO MONAKAは、宿のオペレーションの部分にも関わっていきます。一棟貸しホテルのスタイルがまた一般的でなかったため、ルールや仕組みをどうやってつくっていくのか、クライアントと議論しながら開発していきました。

たとえば町家は壁が薄いので、騒音の問題がある。この問題をどう解決するのかクライアントと協議を重ねる中で、上限を超える音量を感知するとセンターに通知されて、お部屋に電話してお客さまに伝えるという仕組みが生まれました。

ブランド立ち上げのコンセプト作りから、運営のためのオペレーションまで共に考える。どれだけ手間がかかろうとも、STUDIO MONAKAの3人はクライアントに伴走しながらコミュニケーションを重ね、一緒に事業をつくっていきます。そんなクライアントとの濃密なコミュニケーションと同様に、チーム内でも対話を重ねながら仕事をしていきたいと彼らは考えています。

スーパーマーケットの跡地をカフェにリノベーションした事例。800個以上もの段ボールを使った内装は、スタッフ総出で丸3日間作業したのだとか。

 「内も外もしっかり対話型の組織にしていきたい。もともと3人ではじめた時、そういうチームでありたいと話していました。今後新しい仲間が増えていく中でも、改めて対話を大事にしたいと考えています」(森田さん)

開かれた場が多様性を育み、新しい価値へとつながる

STUDIO MONAKAは現在、京都と沖縄の2ヶ所に拠点を構えています。主要都市ではない地方都市、とくにカルチャーの強い都市に拠点を置くことに意味があるといいます。

「京都は伝統的な文化と国際的な視点が同時に交わる街。ローカルな面がありながら、常に広がっている、共存しているのが京都だと思います。実は沖縄も一緒で、島カルチャー、アジアのハブとしての一面、さらに米軍基地もあって、文化が交じり合っている」(岡山さん)


沖縄出身であり、京都に住んで10年以上になるという仲本さんは「京都は全然飽きない。ローカルの面白い人たち、面白いお店があって、どんどん掘り下げられるし新しい発見がある」と魅力を語ります。

そんな京都の街にあるSTUDIO MONAKAのオフィスには、MONAKAの在り方を象徴するような場があります。それは、事務所内に設けられたパブリックスペース。入口に扉はなく、ビニール製の布が張られているのみで、誰でも自由に出入りできる空間です。

古い市営住宅の一角。「誰もが集える場所に」と、あえてSTUDIO MONAKAの名前は前に出していません。
今回取材を行ったパブリックスペースでは、イベントやワークショップが行われることも。

「多様な人が出入りする場所、開かれた場所をつくりたくて。入口のテントをちょっと開けておくと、近所の子どもが何だろう?という感じで入って来る。同じように反応してくるのはおじいちゃん(笑)。ふらっと入って来て、ここ使えるんか?って囲碁将棋の場所にしたりとか」(岡山さん)

 「仲良くなった子どもたちやおじいちゃんは、定期的にここに来てくれるんで。もしかしたら事務所のメンバーよりもよく会ってるかも(笑)」(森田さん)


ほかにも学生や外国人留学生など、たくさんの人が自然に出入りしているのがSTUDIO MONAKAの特徴。ふらっと訪ねて来て、そのままスタッフになった人もいるのだとか。 

「僕たちおじさんが3人いて、女性スタッフや若い学生がいて、外国人がいて、というこの環境自体がすごく面白くて。その中で関係がよりフラットになっていくしね」(仲本さん)

入口のテントを開けてステージに見立て、のど自慢大会をした時の様子。意外と通りがかりの人が歌ってくれたのだそう。

開かれた場所を設けたことで、多様性や予期せぬコミュニティが生まれる。そこに新しい可能性や発見があると3人は語ります。

 「設計事務所って社会をつくる仕事をしているのに、社会とすごく断然した世界になりがちなんです。事務所にこもって作業して、現場との往復だけになってしまって。だからオフィスに人が来る動線をつくることで、社会と接点を持てることが重要。それが新しい発想や価値を生み出すと思っています」(岡山さん)

実は現在の事務所は、建物の老朽化のため近々移転を予定しています。次のオフィスでも、社会との接点が常にあるような状況をつくりたい、今の時代に合った新しい形で再現したい、と考えているそうです。

責任と向き合いながらも好奇心旺盛に楽しむ

今回STUDIO MONAKAが募集するのは、建築設計職とアシスタント職。まずは建築設計職について詳しくお聞きしていきます。

そもそも建築設計とはどんな仕事なのでしょうか。

「一言で建築設計と言ってもいろいろな仕事があって。図面を描いたり、模型やCGを作ったりするのはもちろん、確認申請のための書類作成や役所との調整、見積もりの精査など、事務的な作業もあります。それがある程度まとまったら、次は現場監理。現場が図面通りになっているか、施主さんの要望をしっかり汲み取った上で進んでいるか、施主さんの代理者として現場に行ってチェックします」(森田さん)


指示を受けて進めるだけでなく、自らがプロジェクトマネージャーとして自立的に動いてほしいと森田さんはつづけます。

「たとえば施主さんとのやりとりも、僕らが常に同行するのではなくて。自分で施主さんとの信頼関係をしっかり築いて、施主さんの思いを僕らにフィードバックしてくれるような、自立的な関わり方をしてほしいと思っています」(森田さん)

さらに、現場スタッフのマネジメントや、協働する外部クリエイターとの調整なども必要になってきます。

「経営者から実際にものを作っている職人まで、さまざまな人と関わりながら横断的に仕事をするので、視点や方法の違いを統合していくことが求められます。あとは大工のおっちゃんをどれだけ乗せられるか、とかね(笑)。やっぱり気分が乗ってるほど良いものができるんですよ。そういう図面では表れない、細かな仕上がりのための調整、作り手とのコミュニケーションが必要なんです。和紙作家さんと一緒に工房に行って和紙を作るところまでやりますし(笑)」(岡山さん)

「興味関心を持って、好奇心旺盛に取り組んでほしいですね。これとこれを掛け合わせたらもっと面白いかも、と自分からもどんどん提案してくれたらうれしいです」(仲本さん)

常に楽しそうに仕事について話す3人ですが、同時に大変な仕事であることもしっかり伝えておきたいといいます。


「たとえば一生のうちに家を建てることってそんなに何度もない。その人の初めてに立ち会うわけです。だから真摯に向き合わないといけないし、それだけ責任のある仕事。一つひとつ扱う金額が大きいというプレッシャーもある。とっても楽しいけど同じくらい大変やと思う。それを背負ってでも一緒に楽しみたいなと思ってくれる人と仕事ができたらいいですね」(岡山さん)

「やっぱりしんどいこともいっぱいあります。でもそれ以上の感動や、建築設計をやっていることの誇らしさもある。だから自信を持って、すごく良い仕事ですよって言えます」(森田さん)

森田さんが建築設計の仕事の中で1番好きな瞬間は棟上げだと言います。棟上げとは、建物の骨組ができあがり、最後に1番上の棟木を上げること。その後は大工や設計者、施主がみんなで棟上げを祝い、ごはんを食べたり、地域によっては餅をまいたりするそうです。

「自分が頭の中で考えたものが、実際にリアルに立ち上がってきたときの感動は、一度経験すると忘れない。何回経験してもやっぱり楽しみだし好きな瞬間ですね」(森田さん)

社会をつくる仕事だからこそ、人を大事にする気持ちが不可欠

つづいて、アシスタント職についてもお聞きしていきます。

今回募集する岡山さんのアシスタント職は、建築設計職よりもさらに広い領域での仕事です。

たとえば岡山さんが現在携わっているのは、京都府内で計画中の芸術祭プロジェクトや、滋賀県大津市北部で新しくメディアを立ち上げるプロジェクト。シェア農園やマルシェの運営、社会福祉の事業にも関わっています。

滋賀県の旧志賀町エリアを拠点に、地域の小さな経済圏をつくる事を目的に立ち上がった「シガーシガ」のメンバーとして、岡山さんは活動中です。

「ほんとに何屋かわからない」と笑う岡山さんは、建築家の仕事に対する思いをこんなふうに語ります。

 「もともと建物や空間を作りたいというよりは、そこで生まれる人の営み、豊かな関係や偶然の出会い、そういうことが好きで建築をやってるんです。ただものを作るだけじゃなく、社会も含めて一緒に作っていくのが建築家。それが僕たちの領域だと思っています」(岡山さん)

 ハードだけでなくソフトも含めて作っていく。こういった新しい動きに共に関わっていくアシスタント職のメンバーには、どのようなことが求められるのでしょうか。


「仕事内容としてはコミュニティデザインの領域に近いですが、そこにハードも付いてくるので、建築が好きっていうのは重要。建築や空間が好き、デザインが好きっていう気持ちがあれば、その道のプロフェッショナルである必要はないと思っています。あとは、個人の農家さんや行政、広告代理店などさまざまな人と対話する仕事なので、人に対する好奇心を持っていることも大事ですね」

人とのつながりを大切にする気持ちが必要だと、森田さんもつづけます。 

「人を大事に思って、どれだけ相手の気持ちに寄り添えるか。それさえあれば、周りもちゃんと感じ取ってくれるし、たとえ何か間違っても関係が破綻したりプロジェクトがうまくいかなくなったりすることは絶対ない。その部分は建築設計のスタッフにも共通すると思います」(森田さん)

人を大事する気持ちがあるほど、責任やプレッシャーも大きくなるのかもしれません。それを背負いながらも、相手の気持ちに寄り添い、共に考える。楽しそうに仕事に取り組む3人の背景にある、揺るがない強さと信念を感じました。

今までの価値が崩れてくる中で、どうやって新しいものをつくるのかを求められてきた世代。それが自分たちの世代だと彼らは語ってくれました。今の時代、そしてこれからの時代に合った新しい建築家の在り方とは何か。そんな問いに向き合いつづける彼らの思いに共感したのなら、ぜひチームに加わって、建築の新たな価値、新たなスタンダードを一緒につくってみませんか。

執筆:藤原 朋
撮影:岡安 いつ美

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