2026.02.20

伝統文化を現代の暮らしの中に。和文具から広がっていく事業の一翼を担う

京都移住計画での募集は終了いたしました

渡月橋、天龍寺、竹林の小径。国内外の人々で賑わう嵐山の観光エリアから、さらに北へと進むと、愛宕山の麓にある嵯峨鳥居本(さがとりいもと)と呼ばれる地域にたどり着きます。

この地に2025年7月にオープンした「ADASHINO HOUSE(あだしのハウス)」は、1964(昭和39)年の創業以来、和紙製品を企画・販売してきた株式会社尚雅堂(しょうがどう)による初の直営店です。伝統的建造物群保存地区の一角にある、およそ築100年の町家を活用した建物で、和紙商品の展示・販売を行っています。

江戸時代には愛宕神社の門前町として栄えた愛宕街道沿いに位置する「ADASHINO HOUSE」
千灯供養で知られる「あだし野念仏寺」がすぐそばにある

京都移住計画では、2023年に尚雅堂の皆さんを取材し、これまでの歩みや新たなチャレンジについてお話を伺いました。あれから約3年。若い世代のメンバーが増え、2代目から3代目への事業承継も徐々に進む中で、今回は営業職と店舗スタッフとして働く仲間を募集します。

思いを継ぐ次世代が加わり、事業がさらに拡大

色紙短冊・和本帖の卸問屋として創業した尚雅堂。しかし、時代の流れと共に需要が減っていくことに危機感を抱いた2代目社長・松尾安浩(まつお・やすひろ)さんは、伝統的な技術や素材を生かしながら、現代の暮らしに溶け込むデザインの和文具を展開し、試行錯誤しつつ事業を拡大してきました。

その姿を見て育った長男の松尾洸太朗(まつお・こうたろう)さんは、2024年に尚雅堂に入社。営業を中心に、商品企画や事業づくりにも広く携わっています。

洸太朗さん

子どもの頃、母が用事で出かけるときに、会社に預けられる機会がよくあったんです。だから、自分にとって尚雅堂はいつも生活圏内にある身近な存在でした。祖父が創業者で、長男が父、その長男が僕なので、会社を継ぐことは生まれたときから決まっていたようなもので(笑)。祖父にも昔から言われていましたね。

大学卒業後は、東京で就職した洸太朗さん。「いずれ家業に入ったときに、掛け算になるようなスキルを身に付けたい」と、IT系企業2社で経験を積み、京都に帰ってきました。

洸太朗さん

結婚して子どもが生まれ、東京での子育ては難しいなと感じて、コロナ禍に京都に引っ越しました。その後、祖父が亡くなったのがきっかけで、家業に入ることになりました。

同じ頃、妹の菜々子さんも関東から京都に戻り、尚雅堂の仕事に深く携わるように。その前年に営業職として入社した鷲尾大輔(わしお・だいすけ)さんも含め、若い世代のメンバーが増えつつあります。

店舗内で打合せをする洸太朗さん(右)と鷲尾さん(左)

この数年、会社の業績は右肩上がりで、昨年は過去最高益を記録しました。その背景には、ブランディングを目的とした新規開拓営業と、裾野を広げるための問屋とのコミュニケーション強化があります。

洸太朗さん

僕と鷲尾の2人で、僕らが「かっこいい」と思うお店に置いてもらうための営業に力を入れています。ただ、それはブランディングが目的であって売上自体はそれほど大きくないので、町の文具店や書店に裾野を広げていくために、全国の問屋さんとのコミュニケーションも強化しています。また、父が始めたホテルや美術館からのOEMも順調で、収益につながっていますね。

2025年に「ADASHINO HOUSE」をオープンしたことも、この数年の間の大きな変化の一つ。初の直営店はどのような意図で生まれたのでしょうか。

洸太朗さん

尚雅堂には膨大なラインアップがあり、展示会やイベントに出展しても、ごく一部の商品しか並べられません。出展できるタイミングも年に数回程度です。だから、常時開設しているショールームとしてこの場所を作りました。あわせて一般向けのショップとしての機能も持たせています。

さらに、今年から新商品として友禅和紙を使ったペンダントライトを展開するなど、文具や雑貨だけでなく領域を広げつつあります。

洸太朗さん

伝統的な技術や素材を生かして、インテリアやアパレルなど新たな領域でも商品企画やコラボレーションをしていけたらと考えています。これから入社する方は、そうやって事業が広がっていくプロセスにも携わってもらえるので、きっと面白いんじゃないかなと思いますね。

伝統を未来につなぐ。その思いに共感する人と働きたい

こうして事業が拡大していく中で、今回の人材募集に至ったと話す洸太朗さん。ITインフラの整備など、テクノロジーによるリソース不足の解決も試みているものの、「人がいればもっとできるはず」と思う場面が多いと言います。

洸太朗さん

例えば問屋さんとのコネクション強化については、地方の問屋の営業担当の方に同行して一緒に店舗を回る活動を1年ほど前から始めていて。問屋さんとのコミュニケーションを増やすことで、尚雅堂の商品をお店にプッシュしてもらえる機会が増えるなど、着実に成果が出ています。だから営業のメンバーを増やして、もっと力を入れていきたいんです。

営業職に求めるスキルや経験について尋ねると、メールや電話、PC操作、資料作成といった基本的なビジネススキルがあれば、経験は問わないとのこと。

洸太朗さん

僕も鷲尾も営業経験はなかったので。苦手なことがあってもいい、失敗してもいいので、トライできる人に来てもらえるとうれしいですね。僕たちのように規模が小さい会社では、何か1つに特化するよりオールラウンド型の働き方が求められます。そこに対する拒否感がなく、何でもチャレンジする姿勢が重要だと思っています。

営業職とあわせて、店舗で接客販売を担当するアルバイトスタッフも募集しています。現在は社員のメンバーで店舗業務を分担しているため、新たにスタッフを採用することで、営業にもっとリソースを割きたいという背景があります。店舗スタッフとしてはどのような人を求めているのでしょうか。

洸太朗さん

店舗のお客さまは約9割が外国人なので、日本語+第2言語を話せる人だとありがたいです。さまざまな国の人がいるので英語以外でも構いませんし、「今は流暢に話せないけど、ここで働くことを成長の機会と捉えて頑張りたい」という人でも大丈夫です。

営業職も店舗スタッフも、商品やデザイン、伝統文化に関心を持っていることはもちろん、表層的な部分だけではなく、「尚雅堂の思いや価値観に共感する人に来てもらえたら」と洸太朗さんは続けます。

洸太朗さん

伝統文化を現代にフィットするものとして編集しなおしている尚雅堂は、昔と今をつなぐ回路のような存在です。お客さまにはあくまで「かっこいい」「かわいい」という感情で商品を手に取ってもらって、その結果として伝統文化が残っていってほしい。そうやって伝統を未来につなぐことが、尚雅堂の存在意義だと思っています。その考え方に共感してくれる人と一緒に働きたいですね。

仕事を通じて、自身の暮らしもより豊かに

ここからは、洸太朗さんと共に営業の仕事に携わっている鷲尾大輔さんにもお話を伺います。前職ではシステムエンジニアだった鷲尾さんは、京都移住計画の記事で尚雅堂を知り、2023年に入社しました。

鷲尾さん

以前はエンジニアとして、公共機関や中小企業のシステム提案などを担当していました。でも、自分が力になりたいと思う企業に入って、事業に関わりながらシステムの仕事もするほうが楽しく働けるのではないかと考え始めて。そんなときに尚雅堂を知り、「こんなかっこいい商品を作っている会社があるんだ!」と興味を持ちました。記事を読んで、どんな人たちとどんなふうに働くのか想像できたことも、応募の後押しになりました。

営業職に対して、ノルマに追われるイメージがあったという鷲尾さん。しかし、面接で松尾社長と話した際に、印象ががらりと変わったと話します。

鷲尾さん

社長から「売上も大事だけど、まずはファンを増やしてほしい。尚雅堂のファン、鷲尾くんのファンが増えたら、おのずと数字は付いてくるよ」と言われて。その考え方が素敵だなと思って入社を決めました。

現在、鷲尾さんは営業職として、取引先のバイヤーとのやり取り、OEM製品の制作進行管理などを担当しています。並行して、勤怠管理ツールやチャットツールの導入など、ITスキルを生かした業務も担っています。

鷲尾さん

営業の仕事で特に多いのは、新店やポップアップの売り場づくりです。お客さまの要望をヒアリングし、取り扱う商品のラインアップやディスプレイを提案します。一度納品して終わりではなく、売れ行きを見ながら継続的に調整も行います。

OEMに関しては、鷲尾さんは昨年、京都のプロスポーツチームのグッズ制作を担当。今までは松尾社長が主に受け持っていたOEM案件に、自ら手を挙げて挑戦したそうです。

鷲尾さん

商談会でスポーツチームのグッズ担当の方と知り合ったことがきっかけで、チームカラーを友禅和紙で表現したオリジナル御朱印帖を制作することになりました。何度も打合せを重ねて、ヒアリング、製造先の選定、サンプルづくり、製造、納品まで、商品づくりの一連の流れを初めて経験でき、とても達成感がありましたね。

尚雅堂の主力商品の1つである御朱印帖。OEMにも対応している

他にも、印象に残っている仕事として、新規開拓営業がきっかけで商品開発につながったケースも挙げてくれました。飛び込み営業をしたお店で、仕入れ担当者とコミュニケーションを取り、ポップアップなどを通して関係性を築いていくうちに、先方から商品の提案があったと言います。

鷲尾さん

ある日、担当の方から「尚雅堂さんの友禅紙でシステム手帳のインデックスを作ったらどうですか?絶対売れますよ」と言われて、端材をお渡ししたら自らサンプルまで作ってくれて。実は、社内には手帳ユーザーがいなくて、最初はみんなピンと来なかったんです(笑)。でも、そのサンプルがめっちゃかわいかったので、社内会議ですぐに商品化が決まりました。

友禅インデックスは、文具女子博などのイベントでも大人気

「伝統文化を現代の暮らしの中に」という尚雅堂の思いを、担当の方が理解した上で提案してくれたことがうれしかったと笑顔で話す鷲尾さん。お客さまとしっかりコミュニケーションを取ってきたからこそ生まれた商品であることがよくわかります。

鷲尾さん

この仕事がきっかけで、僕もシステム手帳を使い始めたんです。スポーツチームのグッズを作ってからは、そのチームの試合をよく見に行くようになりました。そうやって仕事の影響で生活が変わったり、興味の幅が広がったりするのが、すごく楽しくて。尚雅堂で働く魅力の1つだなと思いますね。

暮らしに溶け込む伝統文化を自ら体現しながらいきいきと働く鷲尾さんに、今後について尋ねると、こんなふうに思いを語ってくれました。

鷲尾さん

僕は金沢出身で、伝統文化を身近に感じて育ちました。尚雅堂で働く中で、職人の高齢化や後継者不足といった問題の深刻さを実感しています。尚雅堂のブランド力が上がり、適正な価格で販売できれば、職人さんにも還元できるし若い世代も育っていくはず。この仕事を通して、自分なりに伝統文化に貢献していけたらと思っています。

自分の得意や興味を生かしてチャレンジできる場

続いて、洸太朗さんの妹の松尾菜々子(まつお・ななこ)さんにもお話を伺います。学生の頃から尚雅堂の仕事を手伝っていたという菜々子さんは、大学卒業後、関東での約1年の会社員生活を経て京都に戻り、現在は別の仕事と掛け持ちしながら週の半分ほど尚雅堂の業務に携わっています。

菜々子さん

学生時代からずっと、商品のピッキングや展示会での接客を手伝っていて。徐々に関わりが増え、今の働き方になりました。もともと雑貨が好きで、大学生のときにアルバイトしていた雑貨店でも尚雅堂の商品を扱っていたので、いつか家業に入ろうと思っていたというより、家業に関わらない未来はあまり想像できなかったという感じですね。

現在は、週に1回ほど店舗での接客を担当しながら、商品撮影やSNSなど幅広い業務を担っている菜々子さん。「ADASHINO HOUSE」ができてからの尚雅堂の変化について、どのように感じているのでしょうか。

菜々子さん

これまでは展示会で「お店はどこにあるんですか?」と聞かれても、お取引先の文具店や書店を案内することしかできなくて。全商品を見ていただける場所ができたことで、お客さまとの関わりが広がったのが良かったなと感じています。お店のオープン日には、横浜からわざわざ来てくださった方もいたんですよ。タッチポイントを増やし、ファンづくりにつなげていくという意味でも重要な場所だと思います。

ヨーロッパの人には伝統的な柄が人気で、アメリカやアジアの人たちからはネオンカラーを用いた商品が好まれるなど、店舗での接客を通じて国や地域による違いも見えてきたのだとか。「お客さまについて知る場所でもあり、ここでの気づきは海外展開の提案にも生かせるはず」と話します。

友禅和紙をネオンカラーで染めたneonシリーズ

今回募集する店舗スタッフの主な仕事内容は、接客やレジ、品出し、ラッピングなど。基本的な業務に慣れてきたら、季節ごとの企画・ディスプレイや売上分析、お店のSNSなどにも一緒に取り組んでいきたいと考えているそうです。

菜々子さん

私も学生時代のアルバイト先で、自分が担当する棚の商品のセレクトや発注、ディスプレイ、売上分析まで行っていました。この経験は、その後の就活や仕事でも生かされたと私自身も感じているので、学生さんに楽しみながらチャレンジしてもらえるといいなと思っています。

決まった業務をただ行うのではなく、多岐にわたる挑戦ができる職場。文具や雑貨、デザイン、伝統文化に関心のある人は、きっと大きなやりがいを持って働けるはずです。

菜々子さん

京都の小さな会社だからこそ、伝統工芸の職人さんや第一線で活躍するデザイナーなど、さまざまな人と関わりを持てる可能性があるのも魅力だと思います。パートで働いている人たちの意見もどんどん取り入れているし、すごく風通しの良い会社だと思うので、これから仲間に加わる方にも自分の強みややりたいことを生かして楽しく働いてほしいですね。

伝統文化を現代の暮らしの中に。そんな松尾社長の思いが、次世代に受け継がれ、さらに発展していることがしっかりと伝わってきた今回の取材。これから仲間に加わる人が、事業成長のプロセスに主体的に関わっていける、今の事業フェーズならではの魅力も感じられました。

デザインや伝統文化に関心のある人ならきっと、尚雅堂での仕事を通して、自分自身の暮らしも豊かに彩られていくことでしょう。尚雅堂の皆さんの思いに共感した人は、ぜひチャレンジしてみてください。

執筆:藤原 朋
撮影:小黒 恵太朗
編集:北川 由依

京都移住計画での募集は終了いたしました

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