募集終了2021.12.02

言葉にならない願いに寄り添う。地域の「やりたい!」を形にする市民活動センター

(2019/02/19公開、2021/12/2更新)

あなたが今住んでいる地域で「何かしたい」と思った時、気軽に相談できる人はいますか?

「ふらっと遊びに行ける場所がほしい」
「地域のお祭りを復活させたい」
「子どもからシニアまで集えるスペースをつくりたい」

地域住民の願いに寄り添って伴走するのが、今回ご紹介する事業コーディネーターと地域コミュニケーターの仕事です。

訪れたのは、「京都市伏見いきいき活動市民センター(以下、伏見いきセン)」。指定管理者である「まちとしごと総合研究所(以下、まちごと)」のみなさんが出迎えてくれました。

市民がのぞむ地域を、市民とつくる仕事

まちごとは、2015年に設立された会社。20年以上に渡りNPO支援活動を行う「きょうとNPOセンター」で働いていたメンバーが、NPOをはじめ市民や企業、学生など多様なセクターとの関わりあいの中で、地域の「やりたい!」を応援するために立ち上げました。

リユース食器を導入した「祇園祭ごみゼロ大作戦」や”みんなごと”のまちづくり推進事業「活動進化プログラム」など、NPOや行政の声から事業づくりに取り組むほか、今回ご紹介する市民活動センターの運営などを手がけています。

”みんなごと”のまちづくり推進事業「活動進化プログラム」の様子(提供:まちごと)

まずお話をお伺いしたのは、代表組合員の東信史(ひがし・のぶふみ)さんと伏見いきセンのセンター長である三木俊和(みき・としかず)さん。

左:東さん、右:三木さん

三木:今日の取材場所になっている「伏見いきセン」は、2015年まで僕たちの前職である「きょうとNPOセンター」が管理していました。僕は2011年から働いています。

:「まちごと」では伏見に加え、東山のいきセンも運営しています。また「下京いきいき市民活動センター(以下、下京いきセン)」の指定候補者にもなっていて、2019年4月からは3ヶ所のいきセンを運営する予定です。

いち京都市民として、いきセンは会議室やホールを借りられたり、時には地域のイベントが開催されたりしているところ…というイメージを持っていましたが、どうやら「まちごと」が運営するいきセンはそれだけではないよう。

:いきセンの仕事は、貸館としての管理運営業務が基本にあります。しかし誤解を恐れずにいうと、僕たちは運営をやりたくて、この指定管理業者に手を挙げているわけではなくて。市民の方々がのぞむ地域をつくるために、一緒に考えて、取り組んでいくところがやりたいんです。

三木:「伏見いきセン」は、日本初となる公設民民運営。通常、運営する民間業者は1社ですが、ここは龍谷大学と、前運営者の「きょうとNPOセンター」の共同運営として立ち上がりました。だから施設管理業務に留まらず、大学と地域、NPOと地域の連携がとても盛んです。

「伏見いきセン」がめざすのは、コミュニティ・ラーニング・センター。地域内での“学び”と“気づき”をキーワードに ​、市民活動によって地域が変化し続けるためのサイクルを生み出したいと活動しています。

言葉にならない願いを叶えることで、地域が変わる

大学と地域、NPOと地域の連携とは、具体的にどのようなものでしょうか?

三木:大学と地域の連携でいうと、まちづくりに関心のある学生や地域で活動したい学生の活動支援をしています。「伏見いきセン」には学生事業課「KUWADATE」があり、施設運営の仕事やイベントの企画運営などさまざまな仕事に関わる機会があります。

ボランティアや有給スタッフのアルバイトとして関わるほか、副センター長も学生に任せているんですよ。

ほかにも、不法投棄が多くて困っているとの声から生まれた「伏見グリーンシティ構想」や子どもたちに伏見の魅力を再発見してもらう「Local ship Education」など、地域に根ざしたプロジェクトを展開。

「伏見いきセン」の運営を通して、まちづくりを学び、働くフィールドとして、機能しているようです。

学生向けワークショップの様子(提供:まちごと)

なかでも、龍谷大学政策学部と連携した、課題解決プログラム「Ryu-SEI GAP」から生まれた、環境による学習格差を解消する「放課後学習室フリスク」は、8年目の長期プロジェクトになりました。

三木:「子ども食堂」を通じて、子どもの貧困が課題と言われていますが、「Ryu-SEI GAP」の学生たちは地域の声から気づいて、子どもたちに勉強を教える時間を設けていました。

かつて小学生だった子どもが今や中学生や高校生になり、教えられる立場から教える立場になって。もともと進学を考えていなかった子どもが「大学に行きたい」と話す姿を見ると、すごく大切な活動が生まれたんだなと感じますね。

:「伏見いきセン」の経験から、起業した学生もいて。卒業したあとも、OBOGネットワークを通じて同窓会をしたり、顔を出したりしてくれるのは嬉しいですね。夢は「KUWADATE」などの学生プログラムのメンバーから、京都市長を輩出することです!

また、NPOと地域の連携では、こんな取り組みが生まれたのだとか。

三木:とある市営住宅の自治会から、「団地を盛り上げたいけれど、どうしたらいいかわからない」と相談がありました。じっくりお話をお伺いすると、「市営住宅で育つ子どもたちに、さまざまな体験をさせてあげたい」、「地域のお祭りを知らないまま大人になってほしくない」という思いがあることがわかって。
そこでNPOを紹介して、20年ぶりに盆踊りを復活するにはどうしたらいいかを一緒に考え、実行までを伴走しました。その後も継続して盆踊りは開催されていて、地域の方にも好評なようです!

市民、学生、NPOなど多様なセクターが集い、学び、気づき、高めあえる場。それが「まちごと」の運営するいきセンの姿です。

これからの時代に必要な新しい市民活動センターのあり方を模索し、チャレンジし続ける東さんと三木さん。仕事をする上で大切にしていることを聞くと、こんな答えが返ってきました。

三木:一番大切にしているのは、地域の人たちがどうしたいかです。僕たちも伴走しますが、プロジェクトの主体はあくまで地域の人たち。望んでいないことを外から持ち込んでも、うまくいかないですから。

三木:地域の人たちが「こういう仕組みがあったらいいのに」と思うことを、実現していくのが僕たちの役割です。ただ、地域の人が言うことにそのまま答えるのではダメだと思っていて。みんな言葉にできるんだったら、アンケートを取って実行すれば地域はうまく回っているはずなので(笑)
地域の人たちが言葉にできないけれど、本当に望んでいる願いを察知しつつ、それを形にするプロセスをつくることが大切です。

:僕も地域の人と、一緒につくるプロセスを大切にしています。「まちごと」は、地域に住んでいる人たちがどうしたいか粘り強く対話していて。彼らだけで見つけられていなかったことや、実現する方法を一緒に探していくところが特徴的だと思います。

期待される、京都の玄関口としての役割

地域で暮らし、学び、働く多様な人々をつなぎ、課題を解決する仕組みをつくってきた「伏見いきセン」。2019年4月からは「下京いきセン」の指定候補者に選ばれました。

「まちごと」として、3ヶ所目となるいきセン運営。センター長には、長年「伏見いきセン」で働いてきた田辺尊史(たなべ・たかし)さんが就任予定です。

シニアの多世代交流拠点「きょういく基地」には、年間6000人ものシニアが集います

田辺:僕はかれこれ30年、NPO業界にいます。「きょうとNPOセンター」や「あしやNPOセンター」などの立ち上げに関わったあと、「伏見いきセン」では初代センター長を務めました。今度は「下京いきセン」の立ち上げとのことで、立ち上げ部隊として腕の見せ所だなと思っています(笑)

「伏見いきセン」のコンセプトは、コミュニティ・ラーニング・センターでしたが、「下京いきセン」ではどのようなコンセプトのもと、運営予定なのでしょうか。

田辺:コンセプトは、ダイバーシチズン・センターです。「下京いきセン」は、地元の人がつくりあげてきた施設。障がい者、LGBT、子育てママなど、社会が問われている多様な人とのつながりや、多様なまちの力を生み出していける拠点にしていけたらと思います。

いきセンの窓口業務の様子。田辺さんは「まちごと」のスタッフであり、実家のお寺の住職さんでもあります

また「下京いきセン」は京都駅から徒歩10分ほどの距離にあることから、京都駅に玄関口としての役割も期待されています。

田辺:下京区には、京都駅や京都中央卸売市場などさまざまなスポットがあります。集まる人だけではなく、場としてもダイバーシティな地域。いろいろな業種、地域の人、そういうものがもっとグニャっとなっていったら、新しく生まれるものもあるんじゃないかな。4月以降は、まだ目に見えない可能性を探っていきたいですね。

地域に入り込むことで気づいた、いきセンの価値

最後にご紹介するのは、「伏見いきセン」で事業コーディネーターとして働く藤本美智乃(ふじもと・みちの)さん。大学生の頃からまちづくりやNPOの仕事に関心があった藤本さんは、大学の先生の紹介で今の仕事に就きました。
現在は事業コーディネーターとして、シニアの多世代交流拠点「きょういく基地」の運営やいきセンに出入りする学生の活動サポートなどを担っています。

入社4年目。目標としていた仕事をする今、藤本さんの目に地域はどのように映っているのでしょうか。

藤本:ありがたいことに、入社前後でギャップを感じることなく、楽しく働いています。憧れの仕事に就かせてもらって、幸せです。

仕事に手応えを感じる一方で、入社してすぐの頃は戸惑いもあったことを教えてくれました。

藤本:大きな組織ではないので、自分で判断しないといけないことも多々あります。ときには判断が正しかったかどうか、不安になることもあって。もちろん一緒に働くみなさんに相談はしますが、私が担当しているプロジェクトは私が最終的に決断しなければならないので…。入社すぐから仕事を任せてもらえる喜びがある一方で、経験がないまま雇ってもらっているので、難しいこともありました。

一方で、地域に密着して働くからこそのやりがいも感じているそう。

藤本:いきセンでは、子どもからシニアまで多様な人と関わるので、地域を歩くと声をかけてもらえることがよくあります。地域の人と距離の近さを感じられるのは、この仕事ならではですよね。

戸惑いもありつつ、まちづくりの仕事に真摯に向き合ってきた藤本さん。経験ゼロから足を踏み入れた仕事でしたが、今ではすっかり「伏見いきセン」の顔に!自ら地域に足を運び、プロジェクトを企画できるようになりました。

市民向けワークショップで企画、進行をする藤本さん(提供:まちごと)

藤本:私たちが地域の人から頼られ、さまざまなプロジェクトをサポートさせていただけるのは、ハードとソフトの両方があるから。施設管理をしていつもここにいるからこそ安心してもらえますし、地域に出て困った人や課題を抱えている人を見つけて解決しようとするときに地域の人から応援していただけるのだと思います。
やるべきことが決まっている管理業務にばかり目が行ってしまうこともありますが、一歩外に出ると地域に寄り添うことの大切さを思い出せる。そのバランスを大切にしながら、地域で頼りにされる存在になれるようがんばりたいです。

今回募集するのは事業コーディネーターと地域コミュニケーターの仕事ですが、東さんは「少しでも僕たちに興味があったら、気軽に連絡してほしい」と話します。いきセンのスタッフとして働くほかにも、今あなたが持っているスキル、例えばライティングや撮影、ファシリーテーターとしての能力を掛け算して「まちごと」のプロジェクトに関わることもできるそうです。

:世の中には、いろいろな働き方があっていいと思うんです。パソコンが使えないなら、使えるように練習したらいい。障がいがあるならその特性を活かして働ける環境をつくればいい。「まちごと」はそうした考えから立ち上げた組織なので、多様な人からのご連絡をお待ちしています。

三木:公共施設の運営が主ですから、ハラハラ、ドキドキすることは少ないかもしれません。でも「まちごと」なら管理業務をきっちり押さえつつ、事業コーディネーターや地域コミュニケーターとして地域の人のアイデアを形にしていくところを楽しめると思います。あなたに合った働き方や関わり方を、一緒に見つけるところからお手伝いできたら嬉しいです。

地域の「やりたい!」気持ちを言語化し、寄り添い、作り上げるところまで伴走する「まちごと」のみなさん。目の前にいる人のありのままを見つめ、ありのままを受け入れる。彼らの強くしなやかな姿勢から生み出されるプロジェクトは、どれも人間らしい暖かさを感じるものばかりです。

少しでもいきセンの仕事や「まちごと」のみなさんに興味を持ったら、ぜひ気軽に連絡をしてください。あなたが勇気を出して送ったメッセージを、「まちごと」のみなさんはあたたかい心で受け取ってくれるはずです。

▼いきセンの仕事については、こちらの記事でもご紹介しています。よろしければご覧ください。

執筆:北川 由依
撮影:もろこし

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