募集終了2016.09.23

農業界の革命児。「自産自消」で耕作放棄地ゼロを目指す

約40万ヘクタールーー日本では今、東京都の2倍にあたる土地が、過去1年以上作付けされず今後も耕作の予定がない「耕作放棄地」として放置されています。農業従事者の数も、現在の200万人から2025年には90万人以下に落ち込むと言われているのです。こうした数字を目にしても、多くの人にとっては他人事かもしれません。

でも、農地が耕作放棄地になってしまう原因には、国の政策や高齢化・人口減少などのほか、私たちの暮らしに直結するさまざまな課題が見え隠れしています。そして、耕作放棄地の増加は、日本の原風景が失われるだけでなく、食料自給率の低下、洪水など災害時の被害の拡大にもつながります。

こうした危機的な状況にある日本の農業を変えようと奮闘する会社があります。京都駅から西へ徒歩15分、食のリノベーションビルで話題の「KYOCA」3階フロアに本社を構える「株式会社マイファーム」。農業に携わる人を増やし、全国の耕作放棄地を再生するため、貸し農園の運営や農業教育、流通支援などの事業を手がけています。

オフィス外観

行き詰まる農業界に革命を

「日本全国に広がる耕作放棄地を再生したい」。創業者の西辻一真さんは、そんな思いから2007年にマイファームを設立しました。創業当初から目指してきたのは、時代にあった「自産自消」の新しい農業を広め、行き詰まる農業界に革命を起こすこと。

「自分で作って自分で食べる」を意味する「自産自消」という言葉には、作物を育てる中で得られる多様な“気づき”につなげたいとの思いが込められています。「農業は複雑で奥深く、新しい発見の連続です。農業の楽しさを伝え、自然と人間の間に広がってしまった“乖離”を、もう一度近づけることこそが、マイファームの役割」と西辻さんは言います。

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マイファームの主軸事業は3つ。創業当初から始めた「農園事業」は、日本の耕作放棄地を活用して野菜づくりや食に関心のある人に貸し出し、栽培に関するサポートなども合わせて行っています。全国の耕作放棄地400件以上の飛び込み営業からスタートしたこの事業は、今や全国13都府県80カ所以上に広がり、地域の人々が気軽に農業に携われる場所として定着しつつあります。

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また、農業にかかわる人を増やすため、2011年に関西と関東、東海の3カ所で「アグリイノベーション大学校」を設立。働きながら学べる週末ビジネススクールとして、栽培技術の基礎から農場実習、就農のための基礎知識のほか、個々の事業プランや卒業後の進路まで丁寧にサポートしています。これまでに卒業した生徒は延べ670人以上で、その多くは卒業後も農業に携わっています。

そして2014年には、卒業生が栽培した野菜を買い取って販売する「新型八百屋マイファーマー」を開始。生産者と消費者を直接つなぐこの事業を通じて、関西・東海・関東の主要3エリアにおいて、マイファームが目指してきた「循環の輪」が完成したことになります。西辻さん曰く、現在は一つ一つの「点」を面的に広げていく正念場の時期であり、農産物の流通網の開拓や農園レストランの運営などにも力を注いでいます。

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こうした活動が評価され、マイファームは、水環境問題に取り組む個人や団体を表彰する「第15回日本水大賞」や、環境省・総務省主催の「エコジャパンカップ2010」、イノベーションや生産性向上に役立つ取り組みを表彰する「ハイ・サービス日本300選(第8回)」などに選ばれています。

働きながら農業を学べるビジネススクール

農業に携わる人の輪を日本全国に広げるマイファーム。そこではどんな人が、どんな思いで働いているのでしょうか。

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2015年に若くして執行役員に任命された木本一花さんは、今、アグリイノベーション大学校の運営を任されています。神奈川県生まれの彼女は、大学を卒業後、関東のIT企業などで働いていましたが、2013年に縁あってマイファームに入社。提携会社へ出向し、福井県の農家レストランや加工施設の立ち上げに携わった後、京都に赴任しました。

「都市に住む人が農や食とどう付き合っていくか、日本の農業が何を目指すのか、農を取り巻く課題を解決していくためには、まず人を育てることが大切」と強調する木本さん。そのためにもっと気軽に農業について学べる場所をつくろうと、学校事業が始まったと言います。

「社会人の方が『農業をやりたい!』と思った時、仕事を辞めたり家族ごと移住するなど大きなリスクを背負わなくても、週末に農業の技術や経営を学べる場があれば、農業はもっと身近になるはずです」

木本さん曰く、講義の特徴は、農業技術や経営の話だけでなく、6次産業化や環境保全、生物多様性など日本や世界を取り巻く現状や環境問題に関する幅広い内容が盛り込まれ、多角的な視点で農業を捉えられること。そんな講義内容に興味を持って入学してくる人も多いそうです。

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「農業を志す理由は人それぞれ異なりますが、『今の仕事をずっと続けていけるのか』と疑問を持って始める人から、『農業はこれから伸びる産業』と捉えて入学する人もいます。そのため、学んだ知識を下地に、将来どう生かしていけるかという視点を重視しています」

そう話す木本さんが紹介してくれたのは、関東校・関西校それぞれのエリアで学校の運営に携わる2人のスタッフ、久保亜由美さんと磯川麻里さんです。

大切にしているのは、「双方向」のコミュニケーション

東京の新橋にある関東校で働く久保さんは、生徒の募集から入学までのフォロー、入学後の対応、卒業後の進路支援まで、受講生に寄り添いながらのサポート業務に邁進しています。

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募集にあたっては、インターネット検索からの問い合わせが多く、久保さんは資料を送ったら「届きましたか?」と電話で問い合わせたり、事前ヒアリングや個別相談の時間をしっかり設けていると言います。

「私たちの仕事の第一歩は、関心を持ってくれる人のニーズをしっかり拾うこと。『ぜひ入って!』と一方的にアピールするより、関心を持たれた背景や希望を伺うことを大切にしています」

前職は、5歳から高校生までを対象とする子ども向けの進学塾。“教育”をキーワードに転職したという久保さんが、今、最も難しいと感じている業務は「卒業後のサポート」なのだそう。マイファームでは卒業後、農業に携わる人が増えるよう、講座終了後も多様な支援を続けていますが、受講生の年齢は20代後半~60代、それまでのキャリアも人それぞれで、“進路サポート”と言っても一筋縄ではいきません。

「各自の『就農プラン』や『起業プラン』を作成する後半半年間のゼミナールでは、『人生をかけて農業転身したい』という受講生の期待や想いをひしひしと感じます。同時に『果たして農業で生計を立てていけるだろうか』と不安も抱えています。そんな葛藤の中、どうやって農業界に入ってきてもらい、さらに農業で成功してもらうか、具体的な提案をするのは簡単ではありません」

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結果的には、受講生の4分の1が卒業後すぐに独立起業し、残りの4分の3も週末だけ農業に携わって、3~5年後に起業するというプランを選びます。様々な目標や経験を持つ受講生それぞれの思いに、しっかり向き合えるよう運営側も日々の努力が欠かせません。

そうした中、久保さんが心がけているのは、受講生とのコミュニケーションを大切にすること。

「相手は社会人で、1~2週間に1回しか会うことができません。物理的にも制約がある中、『Aさん、ちょっと元気ないな』とか『Bさん、気持ちが離れているかも』と気付いて、すぐに声をかけることで、相手が悩みを打ち明けてくれたりします。受講生の笑顔が私の元気にもつながり、的確なアドバイスにも直結していると思います」

「やりたいことを実践できる文化がある」

関西校の講師兼企画運営担当の磯川さんは、入社2年目。それまで農業と教育を軸に様々な経験を積んできました。

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「教員一家に生まれ育ち、物心ついた時には自分も教員になるものだと思っていました」という磯川さん。静岡の大学で教員免許を取得した後、生物系の教員になるか、農業の中で教育に携わるか迷ったと言います。その答えを見つけるために、半年間日本の農家で働き、その後、国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊としてアフリカ・ウガンダの農業学校で約2年間、野菜栽培の研修指導を行いました。

そして帰国後、高校教員になりましたが、しばらくすると、夢を持って卒業していく生徒を横目に「私もやりたいことをやろう!」と一念発起。仕事を辞めて畑を手に入れ、農業研修に参加して野菜栽培などの知識を学び始めます。そうした中、たまたま見つけたのが、京都のマイファーム農園の管理スタッフのアルバイトでした。

「マイファームが面白いと思ったのは、まず農園の数。それまで、農業といえば一つの場所に根付き、一度始めたら動きにくいイメージがありました。でも農園がたくさんあるマイファームなら転勤したり色々な人と出会う機会が多くて楽しそうだと思いました。今まで転々としてきましたし、これからも根っからの“動きたい”性分ですから(笑)」

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アルバイトとして入社した磯川さんは、学校事業部が立ち上がるタイミングで正社員に昇格しました。入社して2年、印象深いのは「会社のみんなで一緒に作り上げていく機会が多い」ということ

「会社とはもっとトップダウンで息苦しいところだと思っていましたが、マイファームはとてもフランクな雰囲気。入社時の面接で社長から『何がやりたい?』と聞かれて『子供たちに農の楽しさを伝えたい』と答えていたように、2年たった今でも経営陣といろんな話を自由にできます。私がやりたいと言っていたことを実際にやらせてもらえたときはとても嬉しかったですね。みんなで支え合いながら、個々がやりたいことを見つけていける文化があります」

学校事業の業務のほか、磯川さんは2016年4月から兵庫県猪名川町にある高校の農業科の講師を務めています。高校から「農業科を開設したい」という相談を受け、プログラムやカリキュラム作成などをサポートする中、「ぜひ講師をやってほしい」と指名されたそう。マイファームの「循環の輪」を通じて、磯川さんのフィールドもどんどん増えているようです。

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また、京都への“移住者”としての顔も持つ磯川さん。実はアフリカにいるときから京都へ移り住むことを考えていたそうです。「アフリカでは、いつも周囲の人が気づかってくれて随分助けられました。私も日本に帰ったら日々の暮らしの中でたくさんの外国人と触れ合いたくて、たくさんの外国人がいる京都に行こうと思い立ちました。教員の仕事が決まるまでは、京都駅で困っていそうな人をつかまえては『どこに行きたいの?』と話しかけていました(笑)」

磯川さんは、「ほどよい田舎・ほどよい都会」の京都暮らしが気に入っていると言います。自然に触れたいと思ったら嵐山があるし、情報がほしいなと思ったら四条の大きな本屋さんに行けばいい。町のサイズが合っていると感じているそうです。

「受講生の中にも移住を希望する人が多くいます。農地を得ようと思うと、都市近郊で探すのはなかなか難しいのが現状ですが、環境が許すなら積極的にすすめています。ご両親の介護やお子さんの学校の問題などそれぞれ課題はありますが、もし自分だけの問題で『行けない』と感じているとしたら、『行ってみなきゃ、わからないじゃん!』と背中を教えてあげたいですね。移住とは、いうなればゼロからコミュニティを形成していけるチャンスでもあり、ワクワクします」

こんな人に向いているマイファームの仕事

関西校では今、磯川さんとともに学校の運営をサポートしてくれる人を探しています。

磯川さん曰く、向いているのは「まず人とのコミュニケーションが好きな方」。関西校は、現在2人体制で運営していますが、2人が同じ場所にいることがほとんどありません。そうなると小さなことでも電話でやりとりしたり、困った時に講師に助けを求めるなど、積極的に人とかかわる姿勢が必要になってきます。「自分が持っているものを出すだけでなく、周囲と協力して臨機応変に目の前の課題をすぐに解決していける柔軟さが必要です」と磯川さん。

オフィス仕事風景

木本さんも「新しい仲間には、社内や講師のリソースと受講生のニーズをうまくつないでくれるコーディネーター的な役割を担ってほしい」と期待しています。

入社時点での農業系の知識や業務経験は問いませんが、入ってから勉強する意欲のある方は大歓迎とのこと。また、学校の業務は人の成長を見守る仕事でもあります。人が育つ姿やみんなで学んでいこうとする取り組みに想い入れを持てるかどうかも大切な素養。会社の枠にとらわれることなく自分の幅を広げていく意識があることも、ベンチャー気質のマイファームでは求められます。

働き方は「シフト制」。週末のイベントで土日が潰れたり、月に数日は北海道や九州・沖縄などへ出張する可能性もあります。「働く時間を自分でコントロールし、公私のバランスをとって人生を楽しむ人にはピッタリだと思います」と木本さん。

「踏ん張りどき」だからこそ、伸ばしていきたい社員の個性

 2007年の設立から来年で10周年を迎えるマイファーム。木本さんは、今後の展望についてこう語ります。

「10年というと、そろそろベンチャーとは言えず、ある程度安定した企業に成長するフェーズに入っています。だからこそ、今は踏ん張りどき。農業分野にも、ベンチャーから始まって足場を固められる会社があることを、世の中に証明したいですね」

振り返れば、マイファーム創業時は農業ブームで多くの農業系ベンチャーが立ち上がっていた頃。そのほとんどが、今はもう残っていません。マイファームという会社がこうして生き残り、成長を続けているのは、「少しでも農に触れてもらう機会を増やしたい」という創業時の想いを軸に、真摯に取り組んできた証とも言えます。

半年に1度の全社プレゼン大会

これまでは「とにかく全員で分担」「お金がかかるから今は手作業でやろう」という選択が多かったけれど、最近は効率的な働き方に大きく転換していると木本さんは言います。「1人1人の伸びしろを増やすために、『人手が足りない』『時間がない』という問題はできるだけ外に振り、各メンバーが自分の特技ややりたいことを伸ばしていく仕組みを作りたいんです」

日本の農業が置かれた現状はとても厳しいけれど、それに立ち向かう情熱を持ち続けてきたマイファームはこれからも社会の期待に大きく応えていくはずです。農業に携わる人が減る中、それでもこの業界の可能性を信じて働きたい!と手をあげてくれる人に、マイファームは全力で向き合う用意があります。農業の楽しさや厳しさを分かち合いながら、やりがいに満ちた職場で、あなたの力を試してみませんか。

社員集合写真

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