募集終了2019.12.22

多世代に渡る市民活動をサポート。地域の「困った」から生まれるまちづくり

自分の住んでいる地域で何か困ったことがあったときに、気兼ねなく相談ができたり、市民活動のサポートを受けられたり、そうした場所があると心強いですよね。こうした地域の困りごとや課題に耳を傾け、市民の活動をサポートしてくれる場所が「いきいき市民活動センター(以下 いきセン)」です。

京都市内には全13カ所のいきセンがありますが、その中でも学生や高齢者など幅広い世代と積極的に連携を行い、地域づくりに力を注いでいるのが、今回ご紹介する「伏見いきいき市民活動センター(以下、伏見いきセン)」です。

例えば、龍谷大学との連携はすでに8年目に入り、政策学部の学生とともに地域の課題解決に取り組む「Ryu-SEI GAP」では、地域の子どもたちに勉強を教える「放課後学習室フリスク」や、孤立しがちな高齢者同士が交流できるシニアの交流拠点「きょういく基地」など、さまざまなプロジェクトを実施しています。

また現役の大学生に施設のスタッフとして活動してもらう学生事業化「KUWADATE」も運営。さらに京都府立の商業高校と連携し、地域連携のコンソーシアムの一員として高校生の地域連携のコーディネートを行うなど、学生と地域との関わりも積極的にサポートしています。

伏見いきセンの地域活動については、前回の紹介記事でも詳しくご紹介させていただきました。今回は、伏見いきセンの中心的な業務である「指定管理業務」についてもより詳しくご紹介しながら、施設と活動の魅力をさらに深く掘り下げていきたいと思います。

お硬い管理業務と自由な地域活動のバランスが大切

伏見いきセンは市民活動や公益活動を幅広く支援するために、京都市から運営を委託されている指定管理施設です。その指定管理者として「まちとしごと総合研究所(以下、まちごと)」が管理・運営を担っています。

まちごとは、約20年に渡りNPOのサポートなどを行ってきた「きょうとNPOセンター」から生まれた新しい組織。NPOという側面から街を見るだけでなく、地域の自治会や中小企業など様々なみなさんとの課題解決に向けて、市民や学生との連携へと裾野を広げ、さらなるまちづくりを実現するために2015年に開設されました。

まちごとの共同代表でもあり、伏見いきセンのセンター長を務める三木俊和(みき・としかず)さんはこう語ります。

「伏見いきセンの業務には大きく2つの柱があります。1つは京都市の指定管理施設である伏見いきセンの“管理業務”、もう1つは、地域の困りごとの解決に向けて市民に伴走する“支援活動”です。どちらも大切な業務ですが、京都市の施設を運営させていただくことの地域からの信頼と、強みを活かした支援の2つがあるからこそ地域に寄り添った活動ができる、そんな関係でもあります」

三木さんのいう施設の管理業務とは、貸し会議室の管理・運営や施設の利用者へのサポートなど、いわゆる城を守る業務です。一方で、地域活動は実際に街へと足を運び、地域の方々とコミュニケーションを取る中で地域の困りごとや「こんなことしたい!」を掘り起こす対外的な業務になります。

「我々のお給料は、伏見いきセンの施設管理として出ていて、まちづくりのための活動は私たちの独自の展開です。また、公共の施設なので営利活動はできません。なので、僕たちが街に出て行ける回数にも限界があります。限られた機会の中で最大限にまちの人たちの役に立つんだという思いで動いています」

伏見いきせんでは市から委託されている重要な施設の管理業務をしっかりと行ながら、効率的に業務を行うことで時間や予算を調整し、街にどんどん出かけていこうと尽力されています。

開設10年目を迎え新たな極面へ

こうした地域への熱い思いから始まった伏見いきセンも2020年で設立10年目を迎え、新しい施設のあり方を模索する時期に入りました。

「今回、新しく来られる方には次のセンターのあり方について『このセンターをどうしていくのか』など、ある意味でセンターの中心的なことも一緒に考えていただきたいと思っています」

また、取り組むプロジェクトにも新しい課題も見えてきました。

「今、さまざまな地域で自治会のあり方を考えるワークショップを運営していますが、その中で必ず出てくるのが『担い手不足』です。若い人が関わってくれない、分かってくれないなどの悩みがどの地域にも共通してあります。だからこそ、若手をいかに育てていくのかが問われていて、伏見いきセンも地域の若手、地域の担い手の育成に力を入れています」

2019年からは、市営住宅の自治会の担い手不足を解消するプロジェクトとして、学生が伏見いきセン近隣の市営住宅に居住しながら自治会に参加する「3L APARTMENT」プロジェクトもはじまりました。

ただ単に活動として自治会をサポートするだけでなく、そこに実際に住むからこそ見えてくるものやご近所さんとのやりとりから生まれる人付き合いの難しさなど、そうした実体験を通して得られる経験が、これからの地域づくりに大いに役立つと、三木さんは考えています。

「“こんな素晴らしい経験ができた”みたいな成功体験は学校の既存のプログラムでもできますが、誰かに用意してもらったレールではないところを走ると“うまくいかない”ということを知れるんですね。こうした強みが就職したあとにもすごく生かされると学生からも聞いています」

若者と一緒にしんどくなれる存在に

今回の求人で募集しているのは、さまざまなプロジェクトの進行や管理、サポートなどの業務を担う“事業コーディネーター”です。三木さんは今回の求人で、どのような人材を求めているのでしょうか? 

「人や地域が好きなのはもちろん、まちへの眼差しと若い人たちへの眼差しの両方を持っていてほしいなと思います。さらにいうなれば、『やってあげたい』だけではなくて、若者が失敗して謝りに行かなければならないことも時にはあります。そういった部分も含めて一緒に成長を喜び楽しめるような、若い人たちへの共感性を持ち合わせていたらいいですね」

「地域に関わる仕事はセンターに座っている間の時間では解決しないことも多いので、勤務以外の時間に起こる様々な活動にも積極的に参加できるような人だと嬉しいです。伏見LOVEでなくてもいいので、まちを掘り起こしていく活動や、地域とのコミュニケーションを楽しめる方に来てほしいです」

施設を守ることから見えるこの先の未来

今回の求人で募集している、事業コーディネーターとして勤務されている藤本美智乃(ふじもと・みちの)さんにもお話を聴きます。普段は施設の管理・運営だけでなく、学生スタッフのサポートやコンサルテーション、対外的な事業の運営やサポートといったトータルコーディネートも行っているそうです。

「伏見いきセンには、何かしたいと思ったときに自分から提案できる環境やそれを受け入れてくれる環境があります。もちろん施設の管理業務をしっかりと行っているから地域に出ていけるということはありますが、自分たちの提案次第では外に出ていく余地はたくさんあると思います」

学生と一緒に働いたり、学生が地域で活動したりすることをサポートすることにとてもやりがいを感じるという藤本さん。「地域がもっと良くなったらいいな」、「自分ならどんなことができるかな」と考えて活動を広げていくうちに、学生スタッフと一緒に行う事業から近隣の大学との連携事業、高齢者ふれあいサロンなど、いまでは10を超えるプロジェクトを担当するまでになりました。

2019年11月には地域の人に新しい活動を始めるキッカケを作ろうと、約6年ぶりとなるセンターを挙げての一大イベント「マチコトハジメ」も開催しました。

イベントの企画から利用者とのやりとり、スケジュール管理、実際の運営までセンターの学生スタッフが中心となって進めていきましたが、まだ社会経験のない学生なので足りない部分や見えていない部分ももちろんあります。そういった部分で相談に乗ったりサポートしてあげたりというのも、事業コーディネーターの重要な役割です。

提供:伏見いきセン

どれだけの人が来てくれるだろうかと不安もある中、当日は150人を超える来場を記録し、イベントとしては大成功を収めました。しかし藤本さんは先の展開を見据えています。

「今回のイベントでは来場者の方に利用団体の活動を知ってもらい、新たなメンバーになってもらう目的がありました。しかし、実際にはその仕組みを用意できていなかった。イベントとしては盛り上がったんですけど、めざしていた目的のためにはもう少し仕掛けができたかなと。イベントをやることが目的ではなくて、そのあとどれだけ目標に近づけたか、どれだけ地域がよくなったかということを常に頭において事業を進めていきたいね、とスタッフみんなで話しています」

伏見いきセンにはセンターを利用した地域づくりや外に出て行う地域づくりに加えて、スタッフ同士で士気を高めていける地盤もあります。地域に関わっていくという作業は興味や関心がなければできないことですが、そういった思いを持って挑める人には、その熱い思いを受け止めてくれるだけの懐の深さがあるようです。

社会のレールに乗らない環境がある

伏見いきセンでは運営面での実践的な役割を担う、施設の副センター長を大学生から公募する「MIGIUDE」という制度を2015年から採用しています。2018年度のMIGIUDEとして副センター長を務めた山川勝也(やまかわ・まさや)さんは当時をこう振り返ります。

「大学4年生の就活の時期にこれから働く人達と話している中で、『仕事はお金稼ぐことだよね』とか『組織の歯車ですけど何か?』みたいな人たちが多くて、そういう考え方が自分には合わなかったんですね。大学のゼミの先生に、「みんなで同じ方向を向いてそれに向けて頑張ろう」みたいな暑苦しいところはないのかと相談したところ、京都で面白いことしている人がいるから会ってみないかと三木さんを紹介していただきました」

三木さんと話をする中で、社会が引いた既存のレールに乗らず、自らの思いに素直に生きる姿に影響を受けた山川さん。ここの人たちとなら一緒にがんばっていけそうだと伏見いきセンに入る決意をしました。

山川さんがまず取り組んだのは施設を守る仕事。窓口の受付業務や施設の管理業務といった事務作業です。それから徐々に学生スタッフの管理や業務改善といった仕事へと幅を広げていき、仕事にも慣れてきた2年目の年に自ら副センター長に立候補しました。

「三木さんと藤本さんにできるだけセンターの外に出てもらっていろいろな仕事をしていただいた方がセンターのパフォーマンスも高いので。『僕がいればセンターは大丈夫』と言ってもらえるような環境をつくることに専念しました」

自分の本当の強みに気付ける場所

副センター長に就いた山川さんは、少しでもスタッフに自由な時間が生まれるようにと業務の効率化を進めていきました。無駄な作業を省いたり、必要な書類を作ったり、普段みんなが働いている中で感じたちょっとした改善点をクラウド上で共有し、約1年半の間になんと140を超える項目を改善したそうです。

「僕はここに入るまで自分がこんなに守備力が高いとは意識したことがありませんでした。もともと自分は攻撃力の高い側の人間だと思っていたので。この求人を見て来られる方も、最初から自分はこれができると思っていることが実はそうでもないと気づくかもしれません。自分では見えていない自分の良さや、自分が知らなかった自分の強みを見つけることができるのが伏見いきセンで働く魅力なのかなと思います」

山川さんは伏見いきセンでの経験によって、自分の人生の価値観や生き方が大きく変わったといいます。

「三木さんは事業主としてしっかり稼がれています。組織に属して歯車になって稼ぐのではなく、自分で稼ぎ出しているというやり方だったので、会社員以外の稼ぎ方もあるということをすぐ側で体感することができました。自分がめざす方向に向かってもチャンスがあり、幸せになれる可能性があるということに気づかせてもらえたことが、自分にとっては一番大きなことでした」

「伏見いきセンにはやりたいことに挑戦できる環境もあるけれど、世の中に求められていることをやらなければいけないという義務もあります。

 自分のやりたいことが明確な人はそのやりたいことと地域の課題をマッチングさせていくことで自分自身も成長していける職場だと思うし、もしまだやりたいことが見つかっていない人でも三木さんやチームのメンバーとコミュニケーションを取る中で、やりたいことや自分にできることが自ずとクリアになってくると思います。

ここに来ることによって、自分のやりたいこととやれることと求められていることのバランスが取れていって自分自身も成長していけると思うので、成長したい人、成長志向のある人にはすごく良い環境ですよ」

伏見いきセンでの仕事を通して自分の真の強みを見つけることができたなら、それはきっとここだけでなく将来のキャリアにも繋がっていくでしょう。逆に自分の弱みを知ることができたなら、その弱みを働く中で克服していくチャンスも多くあります。伏見いきセンには“お金を稼ぐ”ということだけではない、自分の思いを大切にし、自分を高めていけるプラスαの環境がありました。

執筆:持田 博行
編集:北川 由依
撮影:橋野 貴洋

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