カウンターに並ぶクラフトビールのタップを選びながら、隣の人と自然と会話が始まる。気がつけば、初対面同士で旅の話をしたり、近所のおすすめのお店を教え合ったり——。
京都市内で4つのクラフトビール店を営むカケザンには、近所に住む常連客や国内外からの旅行者など、さまざまな人がふらりと立ち寄ります。たまたま居合わせた人同士が言葉を交わし、思いがけない出会いが生まれていく。それが、同社の日常です。
「人と人がつながるコミュニティ」をつくりたい。そんな思いから始まったカケザンでは、今後の店舗展開を見据え、店舗責任者と料理人を募集中。単なる店舗運営にとどまらず、人と人が交わる場を育てていくお仕事です。
お店を超えて、多様な“カケザン”が生まれている
京都市内でクラフトビールを取り扱う4つの店舗と、京北町の醸造所でつくる「NUDE BEER」を全国に展開するカケザン。バックパッカーだった創業者の白石拓海さんが旅を通じ、「出会いによってあらゆることが変わる」と実感したことから全てが始まりました。
白石
世代や国籍に関係なく、いろいろな人に出会って多様な価値観を知ることが、自分にとって最大の引き出しになるなと。だからヨーロッパのパブのように、さまざまな人とコミュニケーションが取れる場所を日本にもつくりたいと思いました。カフェでコーヒーを片手に横の人に話しかけたら変な目で見られるけど、ビールならそれができる。人を掛け合わせるツールとして、最適なのがビールだったわけです。

そうして2015年に1号店の「BEER PUB TAKUMIYA」が烏丸御池にオープン。来店客が増えたことから徒歩10分の距離に2号店「高野麦酒店」を、観光客が来やすいお店として七条に3号店「CRAFT HOUSE KYOTO」を、さらに角打ちをイメージした4号店「TRAM」を西院に展開しています。
4つの店舗に共通するのは、さまざまな掛け算が生まれていること。その範囲は、飲食店とのコラボや店舗イベントの実施といった自社のビジネスにとどまりません。
白石
「TAKUMIYA」で開催した学生向けのイベントで出会った学生がロンドンに行くというので現地の知り合いを紹介したり、独立したいと言っているお客さんのドクターに「この人と組んでやったら?」と別のお客さんを紹介して開業につながったり。日々人と会っているので、「この人にはどんな人が合うだろう」というのは常に考えていますね。
現在は、常連客からの紹介で大手メーカーとタッグを組み、廃棄される食材を使ったビール作りが進行中です。「さまざまな人と組んで、可能性に挑戦するのが一番のカケザンらしさ」と白石さん。「フラットなお店」を目指しているからこそ、垣根を超えた掛け算が生まれています。

白石
スタッフとお客さんがフランクに名前を呼び合って、お客さんが友達を連れてきて、輪が広がっていくような形が一番いいですね。人は会う回数を重ねて仲良くなっていくけれど、本当は1日でできることだと思うんです。プライベートなことをいきなり聞くのは失礼という考え方もありますが、気をつかわずに話せる状態が理想だなと。
人対人として付き合うからこそ、時に来店客がスタッフになることも。白石さんの右腕として共に会社経営を担う岩波才靖さんも、実は元お客さんです。「一緒に面白いことやろうよ」と白石さんから声をかけられたことをきっかけに、カケザンにジョインしました。

日々の出会いから思いがけない出来事が起きているからこそ、カケザンが求めるのは「出会いを楽しめる人」です。
白石
仕事は「どういう人と出会ってきたか」で決まると思うんです。僕らは人から影響を受けて生きていますから。スタッフにも、「あの出会いがあったおかげで今がある」とどんな出会いに対しても思える人になってほしいですね。
独立希望のスタッフに、間借り営業先を紹介
カケザンで働く上で、もう一つ大切なのが探求心です。ポジションを問わず、「関心がある分野はぜひ掘り下げてほしい」と白石さん。
白石
例えば「京都でなぜ出汁文化が発展したのか」を知れば、海外のお客さんに紹介ができますし、日本の良さを正しく後世に残していけます。なにより、昆布がどうやってできているかを知らないのに「和食が世界遺産だ」と言うのは寂しいじゃないですか。
時にはスタッフに知り合いの生産者を紹介し、生産現場を見に行く機会をつくることも。「CRAFT HOUSE KYOTO」の店舗責任者の寺阪里穂さんは、白石さんからの紹介で京都和束町のお茶農家の元を訪れたと言います。
寺阪
斜面に広がる茶畑を見たのも、作る人のこだわりを聞いたのも初めてで、すごく面白かったです。ケーキ屋やカフェなど、長く飲食の仕事をしてきましたが、ここまで密に生産者さんと関わる経験はなかったので新鮮でした。食材を大切に扱おうという気持ちがより大きくなりましたね。

寺阪さんの目標は、独立してカフェを開くこと。そのためにお酒の知識を増やし、接客の経験を積むことを目的にカケザンに転職しましたが、さらに生産者を知ることで「引き出しが増えた」と語ります。
現在は独立に向けて、休日を利用した間借り営業をスタート。場所の紹介をしたのは、なんと白石さんです。
寺阪
普通の会社だったら独立準備はこっそりやることだと思いますが、応援してくれています。すごくオープンで、変わった会社ですよね。ありがたいと思うからこそ、そこで得たものを会社に返そうという気持ちになります。
従業員の独立は、自社の退職を意味します。経営者の立場からすれば、スタッフにはできるだけ長く働いてほしいと思うもの。その気持ちはありつつも、「やりたいことをやってほしいんですよ」と白石さん。
白石
カケザンでできないことなら、それはもう仕方ないじゃないですか。それに、能力がある人が独立して、後々「一緒に新しいプロジェクトをやりたい」と言ってくれる方が、会社としては強くなるなと。だから応援しています。
やりたいことを実現するためのバックアップが得やすいからこそ、好奇心や新たなチャレンジへの意欲がある人にとって可能性が広がります。
寺阪
「CRAFT HOUSE KYOTO」は現在アルバイト5名、社員2名体制で運営しています。少人数で回すので、バランスが取れる人が向いていると思いますね。京都駅から徒歩圏内という立地もあり、観光客が多く、日によってはほぼ100%が海外のお客さまなので、海外の人と交流したい人にとって面白い職場だと思います。

常連客とプライベートで会うことも
各店舗の自由度が高いのもカケザンの特徴です。高野麦酒店の料理人・井上 一馬さんは、京都の季節の食材を使った和食を中心に、メニューの考案から調理まで、お店の料理を一手に担っています。
井上
おすすめメニューは週1〜2回、おばんざいは10種類をほぼ日替りで用意しています。特におばんざいは「今日は何があるの?」と楽しみにしてくださっている常連さんがたくさんいるので、力を入れていますね。お客さんからのリクエストを元にメニューを作ることも多く、常に新しいものを作りたい人には楽しい環境だと思います。

来店客の3割は外国人ですが、ほとんどは近所に住んでいる地元民。年齢層は40〜50代が多く、味付けも訪れる人の好みに合わせて調整しています。
井上
毎週決まった曜日に来てくださるグループの常連さんもいるので、その方々の好みを考えておばんざいを用意したりもしますね。僕より年上のお客さんが多い分、普段友達からは聞けないような話を聞けて、面白いです。
中にはお店を越えて、プライベートで会う常連客もいると井上さん。
井上
毎日来てくれるアメリカ人のおじいちゃんからかわいがってもらっていて。僕は生まれる前に祖父を亡くしているので、孫気分を満喫している感覚です。彼を通じて人間国宝の陶芸家の方に会わせてもらったり、一般公開していない由緒あるお屋敷に入れてもらったりと、貴重な経験ができています。
カケザンらしさを感じるのは、やっぱり人と人の距離の近さ。濃いつながりを持てるのが醍醐味です。
井上
お客さんはもちろん、従業員同士でも仲良くできる、明るい人が合うと思います。個人的には、後輩だからとかしこまられると逆に気をつかうので、フラットに、前向きに取り組める人と働きたいですね。


カケザンが目指す「フラット」な世界
2015年の創業から10年。従業員はアルバイトを含め約30人となり、カケザンは会社として次のフェーズに移行しようとしています。人事制度の整備も進めていますが、目指すのは「同じフィールドで一緒に試合ができる組織」。みんなが意見をぶつけられる環境を作ろうとしています。

岩波
ポジションごとの役割はありますが、あくまで上下関係ではなく一人の人間同士として、フラットに向き合える状態にしたいと思っています。だから名刺にも役職は記載していません。会社の大きな方向性はあるものの、方法やプロセスは決まっていないので、ゼロベースで一緒に考えられる人が来てくれたらうれしいですね。特に店舗責任者には、最終的にはオーナーになってほしいと思っていて。子会社か、のれん分けかはまだ分かりませんが、そのレベルで店舗経営を任せたいと考えています。
取材の中で何度も出てきたのが、「フラット」という言葉。それはスタッフと来店客、会社の上司・部下といった関係性のみならず、考え方や価値観にも通じます。
白石
レールなんかないのに、あると思っている人が多いような気がします。例えば、経験を積むために海外に長期滞在したいのであれば、「お金がないから」「仕事があるから」ではなく、実現することを本気で考えてほしい。チケット代さえあればどうにでもなりますし、仕事も相談してもらえればいいですから。それをどう店舗に還元するか、会社として最低限考えなければいけないですけど、基本的には探求心に基づくやりたいことは応援したいですし、本気で言ってくる人がいたら面白いなと思います。

来店客とのコミュニケーションを楽しみながら、自分の経験を活かし、店舗を超えた発想で幅広いチャレンジができる。それがカケザンの魅力ですが、自由と責任は表裏一体。やるべきことをきちんとやる誠実さが求められます。
岩波
白石は綺麗に言うと融通無碍、率直に言えば変人で、フラットな性格ゆえに「お客さんに対する言葉遣いではないな」と最初は驚きました(笑)。ただ、同時に厳しさも持ち合わせているんですよ。例えば、お店のクリーンネス。カジュアルなお店ほど意識しないと綺麗な状態はキープできないので、やるべきことをした上での自由さなんだなと。
「見えない部分はちゃんとやって、見える部分はふざけるぐらいでいいんじゃないかな」と白石さん。一緒に働きたいのは、自由と責任を両立できる自立した人です。
白石
自分の足で立っている人と働きたいですね。仕事は人生のメインになるからこそ、楽しむことを考えてほしいなと思います。
10年前の創業時に思い描いていた方向に進んではいるけれど、到達度はまだ半分ほど。店舗を増やすだけでなく、山に自然を体験できる場所を作ったり、海外に出店したりと、やりたいことはあるものの、歩幅やルートは今後の出会いによって変わります。
偶然の出会いから、新しい何かが生まれる。そんな瞬間を日常にしたい人にとって、カケザンはエキサイティングな場所と言えそうです。





執筆:天野 夏海
撮影:小黒 恵太朗
編集:北川 由依
求人募集要項
| 企業名・団体名 | 株式会社カケザン |
|---|---|
| 募集職種 | ①店長候補 ②料理人 |
| 雇用形態 | 試用期間1〜3ヶ月 正社員:試用期間中と終了後の給与・待遇は変更なし アルバイト:試用期間中1,122円、試用期間終了後1,200円 |
| 仕事内容 | ①店舗運営業務、数値管理(売上、原価、人件費等の管理と利益の最大化)、イベント企画の立案と実行、接客サービス、人材育成 ②複数店舗を統括するエリアマネージャーまたは料理長のポジション、新規事業の開発などに関わっていただくことを期待しております |
| 給与 | 月給¥290,000〜¥500,000 ・見込み残業(固定残業制)26時間分 (例:月給¥290,000の場合、基本給¥276,740、固定残業代¥44,200、固定深夜割増手当て¥8,840含む) ・超過分の残業時間、深夜時間に応じた手当ては別途支給 |
| 福利厚生 | ・社会保険(健康、厚生年金、労災、雇用) ・まかない(300円) ・従業員割引 ・慶弔見舞金 |
| 勤務地 | ご希望やご志向を伺い、下記のいずれかの店舗へ配属します。 BEER PUB TAKUMYA:京都府京都市中京区船屋町400−1 高野麦酒店:京都府京都市中京区蒔絵屋町255 CRAFT HOUSE KYOTO:京都府京都市下京区大宮町211 TRAM:京都府京都市中京区壬生西土居ノ内町20−1 |
| 勤務時間 | 10:00 - 25:00 ※上記時間内でシフト制 ※状況に応じて勤務時間変更あり |
| 休日・休暇 | 基本:月8日休み 所定労働時間:7.5時間/1日 ※週休2日、週休3日もスキル・経験・習熟度に応じて相談可 ※副業や勉強したい方、働き方について相談可能 |
| 応募資格 | ・素直に学び、誠実に働ける方 ・ちがいを認め、尊重しあえる方 ・探究心を持ち、挑戦を楽しめる方 ・フラットにコミュニケーションしたい方 |
| 選考プロセス | 京都移住計画の応募フォームから応募 ↓ 書類選考 ↓ 1次選考 ↓ 最終選考 ↓ 内定 ※未経験者または勤務時間の相談したい方など、職場見学、カジュアル面談実施可能 |
| 面談場所 | 1次選考はオンライン面談 最終選考は京都市近郊の方以外オンラインでの面談可能 |
| 参考リンク | nude beer Instagram 対談記事 |


