募集終了2022.07.07

企画から売却まで一気通貫で担う「暮らし企画部」。町家リノベーションを通じて、京都の街並みを守る

古い町家が立ち並ぶ京都の街並み。趣のある景観に魅せられて、この街で暮らすことを決めた人も多いのではないでしょうか。しかし建物の保存には莫大な費用がかかり、管理の難しさや、耐震性の低さなどを理由に、多くの町家が取り壊されています。

私たちの愛する「京都の姿」がなくなってしまうかもしれない。そんな危機から京都の街並みを守ろうと動いているのが、不動産・建築業を行う「株式会社八清」です。老朽化した町家や中古物件のリノベーションを手がけ、時代に即した活用方法を提案しています。

そんな八清で今回募集するのは、「暮らし企画部」の企画営業職。営業職とはいえど、建物の活用方法の企画・提案、設計から施工までを行う、いわば建築の総合プロデューサー。京都のまちを持続可能なものにするために、自分のアイデアを活かしたい。そんな想いを持つ人は、ぜひご応募ください。

(京都移住計画では過去に10回、八清の求人記事を掲載しています。ぜひ過去記事も合わせて読んでいただき、会社の成り立ちや京町家に対する想いなどを感じ取ってください。)

街並みを守るため、持続可能な企業へ進化する

最初にお話を聞かせてもらったのは、代表取締役の西村直己さん。過去2年は新型コロナウイルス感染症の影響も大きく、人の動きが制限されていた時期。不動産業を営む八清も「大きな打撃を受けたのでは?」とお聞きすると、「実は影響は少なかったんですよ」と意外な答えが返ってきました。

「市場の流通量が減っただけで、問い合わせも減らないし、八清でつくった物件も、仲介で扱っている物件も順調に売れています。コロナ前と違っていたのが、資産運用を目的として物件を購入する方が増えたことですね」

海外からも、資産運用として京町家を購入する方が増えているため、投資用物件に対応するチームや英語対応ができるチームを立ち上げるなど、社内体制を整えています。

「資産運用のために物件を購入するといえども、お客さまは以前と変わらず京町家に価値を感じて購入していただける、つまり『古い物件を生かして、面白い場づくりをしよう』という八清の理念に共感してくださっているお客さまばかりです。僕らが一貫して取り組んでいるのは『暮らしの提案』。単に物件をプロデュースするだけでなく、資産形成や投資の提案もできるようになることで、会社の幅も広がると思うんです」

それは京町家を存続させるためにも、必要なこと。

「賃貸物件の収入よりも、物件売買の収入のウエイトが大きいので、どうしても景気の波に左右されがちです。不動産投資に対して受け入れる体制を整えておくことで、景気に左右されにくい会社の基盤を作ることができる。町家のリノベーションを続けていくためにも、社員発案の新しい事業などが出てきた時に推進していける体質にしていくためにも、収益の土台を高めて基礎体力をつけておきたいと考えています」

でも原点はやっぱりお客さんを感動させるような家を作っていくこと。「賃貸投資であろうと居住用であろうと、感性をくすぐるような物件づくりを変わらず、追求していきたいですね」と話す西村さん。そんな魅力的な物件づくりを手がけるのが、八清の中核を担う「暮らし企画部」です。

「建物の構造検査など、専門的な建築の知識や経験を持って対応する建築ディレクション部もあります。一方、暮らし企画部の仕事は、まちや人の暮らしに沿った面白い物件づくり。その建物やまちにおいてどんな暮らしが似合うかを想像し、自分の持ってるアイディアや、やりたいことを物件で表現していくことを目的にしています」

八清では、社員のアイデアを尊重することで、町家の趣を活かしつつも、これまでにない京町家の形をつくることができています。

「僕たちの仕事は、同じものを大量に作るわけではありません。一つひとつの物件が唯一無二のものであればいいというスタンスです。過去には突飛なアイデアすぎて失敗したこともありますが(笑)、予測の範囲内でばかり考えていたら、魅力的な物件は作れないと思うんです。ですから、そこは前例ばかりを気にせず、自分のアイデアを存分に出していってほしいですね」

町家を最大限に活かし、魅力的な物件をプロデュース

そんな暮らし企画部で「UNKNOWN KYOTO」や「さらしや長屋」など魅力的な物件をいくつもプロデュースしているのが、落海達也(おちうみたつや)さんです。元は設計中心の業務を行っていましたが、2015年に暮らし企画部が発足してからは、物件の仕入れから売却までを一人で担っています。

「建築プランについてはこの人、お金についてはこの人…といちいち担当者が変わっていたら、お客さまもストレスになるし、人手も必要になる。だったら『建物の仕入れから売却まで、すべての流れが理解できる人材を育てよう』と立ち上がったのが、暮らし企画部です。元々設計をやっていたメンバーが営業を学び、営業は建築を学ぶというような形で発足しました」

営業経験はもちろんのこと、それまでお客さまと接する機会もなく、最初は戸惑うことも多かったという落海さん。けれど、ローンや保険、資金調達など、営業の知識を得ればえるほど、営業、設計どちらの知識も必要だと感じたそう。

「ちょうどその頃、結婚して子どもも生まれたので、町家を買おうとしていたんです。実際に町家に住んでみないと、メリットもデメリットもわからないと思って。その際に、建物の調査や重要事項の説明、ローン付けまで一通りの流れを自分で行いました。実際にお客さまの立場に立つことで気づいたことも多く、非常にいい経験となりました」

先輩の背中を見ながら、学びを得る日々。そんな中、建築ディレクションとして企画から施工までを初めて担当したのが「コーポイチハラ」です。空室の多いマンションをリノベーションによって満室にすることが目的のプロジェクトでした。

コーポイチハラの一室

「京都女子大の空き家や京町家の研究をするゼミとコラボレーションして、5室の空き部屋を女子大生と一緒にアイデアを出し合いながら進めていきました。いざ賃貸に出したら、あっという間に満室になったんですよ。それまで空き家だったものが、リノベーションによって付加価値がつくことを、初めて体感できたプロジェクトでした」

先生や学生さんなど色々な方の力添えで成功し、誰かと協力しながらプロジェクトを進める面白さも同時に感じることができたそう。2020年に菊浜エリアにオープンした「UNKNOWN KYOTO(以下、UNKNOWN)」も、鎌倉の不動産会社「株式会社エンジョイワークス」と、京都の「株式会社OND」とのコラボレーションによって始まったプロジェクトです。

エンジョイワークスのまちや建物へのアプローチに興味を持った落海さんが、代表の福田和則さんにコラボレーションを呼びかけ、そこにおもしろい物件を紹介するポータルサイト「物件ファン」の運営などを行うONDの代表近藤淳也さんが加わって、チームを結成。ご縁あって、菊浜エリア元遊郭建築の2棟を改装し、飲食店・宿・コワーキングスペースからなる複合施設「UNKNOWN KYOTO」が誕生しました。

元遊郭建築をリノベーション して作られた「UNKNOWN KYOTO」

「暮らし企画部では、基本的に個人の裁量に任されてるので、あれやこれやと指導する風習はないんです。与えられたものをどれだけ最大限効果を出せるか自分なりに考えたアイデアを提案する社風です。自分が提案した案だから愛着もあるし、それを何とか形にするためにどうするか考えて動く。その分責任も伴うけれど、すごくやりがいもあるんです」

八清イズムを継承して、さらなる飛躍を

このように単に町家をリノベーションするのではなく、他企業とのコラボレーションにより新しい事業が生まれたり、社会課題の解決に繋がるプロジェクトを手がけてきました。自由な発想の上で町家を活かし、にぎわいを創出する仕事は、八清だからできたこと。しかし、落海さんは来年、八清から独立することを決めています。

「様々な仕事をする中で、もう少し時間を割いて一人ひとりのお客さまに寄り添いたいと思ったんです。物件を購入する前にどうやって活用していけば面白いことができるだろうかと一緒に考えたり、購入後は長期的にサポートしたり。でも今は、営業担当として数値目標にも拘らないといけないため、そういったサポートまでなかなか時間を割くのが難しいんです。そこで今後は独立して、『物件コンシェルジュ』のような役割を担う事業をやっていけたらいいななど、考えている最中です」

それは海外のお客さまに対応した際に起こった出来事から、そう思うようになったそう。

「そのお客さまは、京都の町家がどんどん壊されてるという現状を知り、自分の持ってる資産を運用して、文化保護に貢献したいという想いをお持ちでした。でも、当時の僕にはそんなノウハウもないし、売り上げを求めるためには一つずつの物件に向き合う時間もない。結局は、物件紹介をして購入するまで。改修までのサポートができた物件もありますが、事業展開までは寄り添うことができなかったんです。これは大きな機会損失だったのでは、と悔しい思いをしました」

「落海さんの独立は寂しいけど、まだまだ縁は続きますから」と西村さん

それはこれまでの暮らし企画部での経験があったからこそ、新しい道を見つけられたと言う落海さん。八清で働く最大の魅力は「人がやらないことを経験できたこと」だと言います。

「パッと見た時に目新しいことに挑戦できて面白そうな会社だと感じるかもしれませんが、実は日常の仕事は細かい調整や、クレーム対応など手間のかかることばかりが多いのも事実です。ボロボロになった町家の改修は、場合によっては新築よりも高い費用がかかるし、、近隣の人と揉めることもある。でもやり続けているとリスクを回避するための対処ができるようになってくるんですよね。こういった経験は八清だからこそ、学べたことだと思っています」

独立後もUNKNOWNの運営などで、積極的に八清と関わっていきたいと考えているそう。それは「人がやらないことを開拓していく」落海さんを、会社が応援しているからこそできること。独立した落海さんとタッグを組むことで、八清の可能性がさらに広がっていきそうですね。

時代に即した町家の姿を追求する

暮らし企画部には、落海さんの他にも5名が所属しています。そのうちの一人が、福井宏泰(ひろやす)さんです。福井さんは前職のリフォーム会社で、営業や企画、現場監督までマルチに活躍していました。しかし3年で退社し、八清に入社します。

「そもそも、なぜリフォーム会社に勤めたかというと、大学のゼミで京町家の空き家について研究したことがきっかけなんです。そのときに八清に興味を持っていたんですが、新卒採用をしていなかったんですね。どうしようかなと考えた時に、少しでも建築やデザインに携われる仕事にしようと思い、リフォーム会社という道を選びました」

職種としては営業ですが、比較的小さな規模の現場ではリフォームに関するプランニングから現場監督までを任され、一通り建築に必要な知識や技術を身につけていきました。しかし町家に携わりたいという想いが消えることはなかったそう。

「京都の街並みが好きだったので、町家を、ひいては日本の文化を残す仕事につきたいという気持ちがあったんです。そんなときに、八清のホームページを見ていたら、採用募集中でした。これは何か運命だと思って申し込みさせていただいたところ、採用していただいて今に至ります」

入社してからは、前職の知識や経験があったため、あまり困ることはなかったそうですが、やはり町家は特殊な物件。周囲の助けを得ながら、プロジェクトに取り組んでいます。

「自分の知識がまだ足りていない部分は、建築ディレクション部にサポートしていただきながら進めています。町家独特の構造や施工技術に関してはまだまだ勉強中なので、場数を踏んでいるころです」

経験を積みながら手がけたのが、京都大学の近くの町家をリノベーションするプロジェクト。京大の教授が住む家をイメージし、「研究室」をテーマにリノベーションを手がけました。

「1階から2階まである大きな本棚を作ったんです。テーマと購買層がフィットしたのか、想定より、5万円高い賃料で借り手が決まってうれしかったですね。こういったプロジェクトを手がける時は、実技的な能力以外にもプレゼン能力は大事だと思います。自分の考えをきちんと言語化できるようにするのが、やりたいことをするための第一歩です」

さらにスキルアップを目指すべく、現在は、通信制の大学に通っている福井さん。仕事を終え、家に帰ってからは勉強の日々です。

同じ部内の同期も建築の専門学校に通っているそうだ。

「大学に通っているのは、資格をとるためでもありますが、確かな情報の中で建築を学ぶのが一番目的です。僕が手がけたいのは、時代に沿った和の建築。これまで日本の住居って、竪穴式住居、寝殿造、数寄屋建築と時代と共に和の建築の形は変わってきています。今の町家の形態を後世に残すことも大事だと思うのですが、令和の時代の和の形とは何かということを鑑みたうえで、町家を残していきたいと考えているんです。それが僕の命題なので、実現するためにも、積極的に学びを重ねていきたいですね」

部内で唯一の20代の福井さん。「和気あいあいと話せるような、明るく活発な人が入ってくれたら嬉しいな」

物件の企画・設計・施工・販売を一気通貫で担い、京都のまちや人の暮らしに沿った物件を手がける「暮らし企画部」。手がけた物件は、町家を、京都のまちをよりよくするために考えた、社員一人ひとりの想いが詰まっています。最後に、暮らし企画部にはどのような人を必要としているのかを西村さんにお聞きしました。

「自分が作った物件に愛情や情熱をもって、一生懸命説明できることが何よりも大切です。その建物やまちにおいてどんな暮らしが似合うかを想像して話す言葉は、どんなに口下手であっても想いが通じると思うんです。なぜこうしたいのか意思を持って、自分の持ってるアイディアや、やりたいことを物件で表現していってほしいですね」

「町家のある京都の街並みを守りたい」。その気持ちはどなたの言葉からもひしひしと伝わってきました。こうした古きを守りながらも、自由なアイデアを大切にできる八清は、とても貴重な存在なのかもしれません。長く停滞した時期を抜け、ようやく動き出した京都のまち。あなたのアイデアを建物という形にして、京都のまちの暮らしを、より豊かなものにしていきませんか。

編集:北川 由依
執筆:ミカミ ユカリ
撮影:橋野 貴洋

募集終了

オススメの記事

記事一覧へ