京都移住計画での募集は終了いたしました
今回ご紹介する株式会社八清のホームページを開くと、売買や賃貸物件がずらりと並びます。そのほとんどが京都の町並みに欠かせない京町家です。
八清は、京町家にほかにはない付加価値をつけて改修する家づくりを得意とし、経済産業省の「平成26年度先進的なリフォーム事業者表彰」を受賞するなど、大きな評価を得ています。その評価の源である、京町家改修のプロフェッショナルである建築設計職の募集です。
京町家の八清はこうして生まれた
どうして八清は京町家を中心に扱っているのでしょうか。専務の西村直己(にしむら・なおき)さんは、「創業当時から京町家に特化してきたわけではない」と語ります。
「昔、中古住宅は、故障や雨漏りが怖いから誰も手がけたくなかったんです」。
八清が中古物件を積極的に手がけるようになったきっかけは、あるとき新築で売るはずの物件が法的な規制で新築としては売れないとわかり、リノベーションして販売したこと。結果、思った以上に売れることがわかったのだとか。
八清は1999年に「リ・ストック住宅」というブランドをつくり、安心・安全・快適を求めて、厳しい条件をクリアした中古物件だけを新築物件の4分の3ほどの価格で販売していきました。
さらにその後、京町家の物件を販売したところ、今までにないような客層から多くの反響に驚いたのだとか。そこで「リ・ストック住宅」の京町家をつくるという発想が生まれ、現在の京町家の販売に特化するビジネスモデルが確立したそうです。
京町家を取り扱うノウハウやスキルが蓄積された部署が、今回募集する「暮らし企画部」です。ここでは物件を仕入れて、建物の構造レベルから工事し、売却するまでワンストップで行います。個人の建築家のように、ひとつの物件にひとりで時間をかけてつくるのではなく、さまざまな人に手伝ってもらいながらプロジェクトを遂行するディレクター、プロデューサーの役割を担っています。
「建築を志す人たちはきっと意匠設計に関わりたい人が多いと思いますが、弊社なら研修期間を終えた3ヶ月後にはすぐにそれができます。ただ、うちはあくまでプロデュース集団。外部の設計士さんやデザイナーさんたちに協力してもらいながら数字も追いかけていってもらいたいです」。
営業トークを磨くより、惚れられる物件をつくる
「現在、建築のコストが高く、コストエンジニアリングについて見直さなければいけない」と西村さんはいいます。
建築だけでなく営業もするというと、不動産営業のステレオタイプなイメージでは「営業トークでお客様を口説き落とす」ような一面をイメージするかもしれません。しかし、八清はそうではなく、「いいものをつくって一目惚れしてもらう」という考え方であるため、優れたトーク力が絶対に必要というわけではないようです。
「営業が苦手と公言する社員もいます。のちほど登場する木村は話をしてもらうとすぐにわかりますが、トークは苦手。でもつくる物件のレベルは高く、和のかっこいい空間をつくります。それで売れてゆく。だから、トークが苦手かどうかは関係ありません。お客さんに惚れてもらえるいい物件をつくってもらいたいですね」。
ここでいう「いい物件」とは、意匠的なデザインだけでなく、売れる価格でもあるということ。「そのバランス感覚が大事で難しいところでもある」と言葉を添えます。また、町家の伝統構法の構造がわかっている人は少ないので、「入社してから学んでもらいたい」と西村さんはいいます。
町家こそエコだ
「どんな人に来てもらいたいか」という話の流れで、西村さんが感じる世代間の感覚の違いについてこんな話が聞けました。
西村さんはさまざまな京都のプロジェクトで若い人たちと関わる中で、驚いていることがあるそうです。それは大学や専門学校で建築を学ぶ若い人たちが、ただ建築をしたい人だけではないということ。社会の課題に耳をすませている人が多く、「売れたらよっしゃ!」という感覚であった昭和世代のご自身からは考えられないといいます。
そういった意味では、社会の課題に対して意識をもった若い人には自分たちが構想する「八清ワールド」などは楽しんでもらえるのではないかと自信をのぞかせます。
「八清ワールドは京都に点在する様々な八清の物件を横つなぎし、お客様にお得な情報や魅力的な施設をシェアして暮らしの価値を高めるオンラインコミュニティを目指しています。物件を販売する際に、さまざまな付加価値をうまく活用してもほしいですね」
社会の課題に関心のある若い人が多いという話題の中で、町家に対して新しい見方を聞かせてもらいました。それは「町家はそもそもエコだ」という発想です。
「町家って釘と金具を使っていないんですよ。土とか木とか紙とか自然材料だけでつくる伝統構法なんです。そういう意味では町家自体がエコですね」。
組木(くみき)と呼ばれ、木の組み合わせだけで家の構造ができているため、それを外せば部品に分解されて、また組み直すことができます。八清の物件の中には、エコをテーマにした企画はすでにいくつか生まれています。
「倫理的に正しい」を意味するエシカルをテーマにしたエシカルハウス「西陣織屋建の町家」は、「暮らし企画部」の女性社員が手がけた物件です。京都府内産材を利用し、地産地消や地域貢献を図っているのだとか。
現状、毎年2%の町家が解体・消失している中、八清の社員の方たちには、「誰もが京都に移り住みたくなるような町並みを残していく」というミッションが根づいているようです。
「これは美山(京都府南丹市)の大工さんから聞いた話ですが、ヒノキの無垢材の柱は、ある程度、年を取れば取るほど含水率(水分の割合)が下がって強度が増すそうです。家が痛むのは欧米的な構法で、金物などで人工的に繋いだ部分から腐っていくようで、自然をコントロールする考え方だと寿命が短くなるのだとか。一方で、東洋建築は自然に調和する考え方なので、メンテナンスが適切にできていれば長生きすると聞きました」。
町家に対する思いは、次に紹介する「暮らし企画部」のリーダーの藤井博周(ふじい・ひろちか)さんからも聞くことができました。
「町家は京都の代名詞みたいなものですが、京都からどんどん町家がなくなり、駐車場などに変わっていくのは寂しいですよね。僕らが不動産会社として町家を住みやすく再生し、次の方にバトンを渡すという事は、京都の景観を守っているという意味でやりがいを感じています。近年リノベーションが人気ですが、ブームで終わらせずに、どう町家を維持していくのか、町家の魅力を育てていくのかをこれから入社する人といっしょに考えていきたいですね」。
京町家に付加価値をつける八清の仕事
今回採用された方は入社後、「暮らし企画部」を中心に、研修では八清の各部署を回ります。例えば、電話応対する「受付事務」では、電話対応などを通してお客さんのニーズを把握します。「アフターサービス」では自分たちが売った物件のお客さまはどういう要望をもたれているのか、どんな使い方をされているのかを確認。「メディアデザイン部」では、情報発信の要であるホームページの仕組みも学びます。
研修期間を経た後は、それまでの経験を踏まえて実務に入っていきます。
「例えば2年前に入社した藤原は、それまで大規模マンションの設計に関わっていましたが、木造建築に関しては経験がありませんでした。現場で覚えるのが一番早いので、数をこなしてもらえる環境を用意しました」。
「八清で仕入れた物件をどう扱うかもぜひ一緒に考えてほしい」と藤井さんはいいます。
「僕らは経験則から売れる物件を考えるので、お客様にどうアプローチをしていくのか、どういう道筋でいくのかをアドバイスをします。入社する方にはぜひ、僕らが考えていないことや、こういう見方や考え方もあるんじゃないですか、という意見はぜひほしいです。新しい方が来られるのは僕らにとっても刺激になります」。
八清の仕事は、自由度が高い分、マニュアル通りに進めたらできるものではありません。そのため、「次に何をしたらいいのか?」と、悩む人もいるのだとか。「はじめは苦労するかもしれませんが、そのあたりの勘どころは、物件の数をこなしていくことで自然と身につきますよ。私たちも何でも教えるので、わからないことは気軽に聞いてほしいです」。
最後に、藤井さんの考える八清の魅力を聞いてみました。
「八清の強みは不動産会社でありつつ、物件も加工できることです。いろんな不動産会社さんも建築の部門はあるとは思いますが、自社の中である程度デザインや建築に関わることができて、なおかつ販売ができる。付加価値をつけれるというところは最大の強みです。そこを楽しんでもらえそうな人にきてもらいたいですね」。
半歩先の売れる物件をつくる
最後に、その八清の強みを生かして作品をつくり続ける木村隆一(きむら・りゅういち)さんにも話を聞きます。
建築関係の専門学校で学んだ木村さんは、面接で訪れた際の八清のインパクトが大きかったといいます。
「『上下緑色のジャージのおじいちゃんがいる!』と思ったら西村専務のお祖父様の先代社長で、不動産会社らしくないという印象でした」と思い出し笑いをする木村さん。
すると、横で話を聞いていた西村さんは「祖父はマラソンランナーで、ギネスホルダーなんですよ。その話は長くなるんで割愛しますね(笑)」と笑います。
木村さんは現在の社長が「これからは京都で不動産をやっていくなら町家を改修して残していきたい」と話されていたのを聞いて、おもしろそうな会社だと感じたそうです。
2002年に入社した木村さん、最初の仕事はマンションのリフォームでした。「自分がつくりたいものがつくれるようになった」と感じたのは、入社して10年目ごろ。ちょうどその頃に所属していた工務部がなくなり、新しい所属先は「暮らし企画部」となり、営業にも着手することとなりました。
「当時から仕事がうまくいってるときも、うまくいってないときも、社内では『とにかく営業はしたくない』と言っていました」と木村さんは振り返ります。
それを聞いた西村さんは「正直に書いてもらっていいですよ。ひとつの制度で縛るのは経営者としては難しい」とぼそりとつぶやきます。
先ほど西村さんが話していたように、木村さんは営業が苦手でありながらもいい物件をつくることで販売につながっているようです。
八清のホームページには、施工事例として木村さんの直近の仕事が掲載されています。
こちらの「かくれ家」は仕入れた物件を改修し、仕入れから1年後に販売を決めたといいます。この物件は比較的早く売れたほうで、八清の物件の多くは仕入れから販売までだいたい1年半ぐらいのサイクルなのだとか。
「売れる物件は時代の半歩先のもの。先をいきすぎると売れない」と言葉少なめに語る木村さん。「かくれ家」はリピーターのお客様が購入したそうで、西村さんは「投資家さんの中で木村ファンがいるんです」と補足します。
「和の表現に独特のセンスをもつ」と西村さんが太鼓判を押す木村さんのスタイルは、「琳派」の作品を飾る京町家貸切宿「凛葩(リンパ)」の中にも表現されています。
「あるとき『数寄屋建築もやってみたらどう?』という社長の言葉で木村の世界観が広がったと思います」と西村さん。
その言葉に続けて、「凛葩」2階の茶室にあるこだわりを教えてもらいました。
「ここには光る畳があるんです。どうしてもこの資材を使いたかった。物自体が高額なので、売り物件ではなかなか試せないことが実現できました」。
「凛葩」ではほかにも、普段の住宅向けの物件ではコストがかさむため使用しないような照明もつくったといいます。
さまざまな工程がある中で、木村さんは「タイルをどれにしようか」「設備をどういうものを入れていこうか」と、仕上がりを考えるのが一番楽しいといいます。
社内やお客さんから高い評価を得る木村さんの和の表現は、どこから着想を得ているのでしょうか。
「海外のものや、昔につくられたものから着想を得ていることが多いです。雑誌に掲載されるような一見オシャレな内装の物件は、町家のような空間には適しておらず、やりたくてもできません。だから構造的に似ている昔の物件から仕上げ方や色遣いなどの着想を得ることが多いんだと思います」。
聞けば休みの日は八清のフリーバカンス休暇(入社5年経過以降5日/年)を使ってお城のスタンプラリーに出かけたりするのだとか。城のある城下町の街並みは木村さんにとって興味深く映るのだそう。
そんな木村さんは八清で働く中で、いつも大切にしている思いがあります。
「僕は手がける物件を、一軒一軒ショールームだと思ってつくっています。言い換えると、同じものはつくりたくないということ。八清ならこんな今までにない物件や、ほっと落ち着く家がつくれるんだ、というものを見せたいんです」。
商売となれば利益を求め、うまくいった同じ商品をコピーして大量展開しがちですが、八清の物件はひとつひとつが一点もの。「同じものをつくってしまうとお客様自体も飽きてしまう」と木村さんはいいます。木村さんはオープンハウスで物件案内する際は、訪れるお客様に必ず聞くことがあるそうです。
それは「ダメなところはどこですか?」。
なんてストイック! 特にダメなところを発言する方は少ないものの、「ひとつあげるとすれば掃除しにくそう」という声を聞くそうです。「確かに自分がつくる物件は掃除しにくいだろう(笑)」と木村さんはいいます。もし掃除しやすさを選ぶなら、同じ「暮らし企画部」の藤井さんがつくる物件をオススメするとつけ加えます。
暮らし企画部の中でもプロデューサーによって物件の特徴が出るようで、同僚と同じような物件をつくらないように切磋琢磨していくうちに、木村さんのスタイルができあがったようです。
現在、木村さんは自身が担当する物件のプロデュースのかたわらで、ほかの社員の手がける物件の構造建築をチェックすることもあるそう。「教える立場に立つのはいい経験だ」と木村さんは語ってくれました。
八清で働く魅力のひとつは販売物件だけでなく、「凛葩」のような自社オリジナルの物件も扱えることでしょう。販売物件であればコストとのバランスを考える必要がありますが、自社の物件であれば実験的なことに取り組むことができます。今までにない新しい発想で物件をつくってみたい方に響くエピソードなのではないでしょうか。
「ここまでワクワクしながら読んだ」という方はきっとご自身の仕事の幅を広げるチャンスです。八清に応募して、さまざまな物件に着手してみませんか?
執筆:狩野 哲也
編集;北川 由依
撮影:岡安 いつ美
京都移住計画での募集は終了いたしました