募集終了2021.01.27

地域で暮らし、働くって実際どうなの?「移住コンシェルジュ」として出会う”京都ローカル”

「京都」という言葉から多くの人がイメージするのは、京都市内中心部にある有名な神社やお寺、伝統工芸、和食などではないでしょうか。
しかし、「京都府」に視野を広げてみると、山あり海あり、茶畑あり。仕事をしながら、農業やサーフィン、釣りなどを楽しめる、自然豊かなエリアが広がっています。

このような、職住一体となった”京都ローカル”の魅力を伝え、移住検討者の理想の暮らしづくりに伴走するのが、今回ご紹介する「京都移住コンシェルジュ」(以下、コンシェルジュ)です。

移住支援の次をつくる官民協働プロジェクト

左から京都府農業会議・瀬野史朗さん、京都移住コンシェルジュ磯貝咲知さん、京都移住計画・藤本和志

京都移住計画は2014年の立ち上げ時より、京都府と一般社団法人京都府農業会議(以下、農業会議)と共に、コンシェルジュ事業を推進してきました。

同事業では、京都・大阪・東京にある窓口での「移住相談」、イベントなどの「情報提供」、「現地案内のコーディネート」などを通して、コンシェルジュが移住希望者をサポート。移住に対する不安を和らげ、理想のライフスタイル実現に寄り添ってきました。

事業の成り立ちや移り変わりは過去の記事でご覧いただければと思いますが、2020年4月からはそれぞれの役割を見直し、再スタートを切りました。

京都移住計画は従来の移住支援の次をつくる、職住一体のプログラムやコミュニティづくりを中心とした企画業務に専念。コンシェルジュ事業は農業会議が担うようになりました。

今回、農業会議では、コンシェルジュ事業のさらなるパワーアップのため、2021年春から働いていただくコンシェルジュを募集することになりました。

京都ローカルの生き方や暮らし方に出会う

前回の記事を見て応募し、2020年春からコンシェルジュとして活動するのが、磯貝咲知さん。「人の生き方や暮らし方に出会える仕事がしたい」と思い移住しました。

「大学生の頃は環境問題に興味があって。兵庫県のとある集落で、余っている木材を使ってログハウスを作ったり、イベントを企画して人を呼び込んだりしていました。その後、海外生活を経て、自分の知らない世界がこんなにも広がっていくことに驚きましたね。一方で、私は日本のこと、特に地方のことを何も知らないなと気づいて。きっと私のような日本人もいるだろうから、地方の面白さを伝えられるようになりたいし、いつかは海外の人にも日本の地方について紹介できるようになりたいと思いました」

現在、磯貝さんは週4日勤務。オンラインや電話での「移住相談」、移住検討者の「現地案内」、地域やUIターン者などの「情報発信」が主な業務です。

電話で移住相談を受ける磯貝さん。聞いた内容をヒアリングシートに記入しながら、必要な情報を伝えます。

「移住検討者と言っても一括りにはできなくて、フェーズはさまざまです。例えば、よくある相談が、『自然の近くがいい』。しかし、人によっては、京都市の上賀茂神社あたりを自然が多いという方もいますし、綾部市や京丹後市のように山や海に囲まれた場所を自然が多いと捉える方もいる。一つずつ具体化して、希望内容を整理しています」

移住相談を経て興味を持っていただけたら、イベントや現地訪問をご提案します。

移住検討者と地域の方の交流の機会として訪れた、綾部市・水源の里。

「移住後にどんな暮らしをしたいかイメージを掴め切れていない方には、イベントをご案内し、先輩移住者や地域の方のお話を聞いたり交流したりする機会を設けます。具体的に住みたい市町村ややりたいことが決まっている方には、一人ひとりに合わせたプランで現地をご案内します」

現地案内のコースは、オーダーメイド。家族構成や希望するライフスタイルに合わせて、一からプランを練ります。

現地案内では、地域の方のお話を聞くに止まらず、体験プランを組み込むこともあります。

「場所を巡るだけでは印象に残りづらいので、地域に暮らす人に会ってもらうことを大切にしています。例えば、子育てしやすく、移住者にオープンな地域を希望していた、関東在住のご家族がいました。南丹市に関心を持たれていたのですが、同じ市内でもエリアによって雰囲気や田舎度は異なります。そこで各エリアを訪れ、先輩移住者に暮らしぶりを聞いていただいたり、市町の担当者と連携して学校や空き家を見ていただいたりして。比較検討した上で自分たちに合う地域を見つけられるようにしました」

移住を考えるご家族の希望に合わせて、現地をアテンド。

ほかにも、移住後にカメラマンを生業にしていきたいと考える単身女性には、こんなアテンドをして、やりたいことを叶えるお手伝いをしたのだとか。

「京都市近郊をご希望だったので、車で亀岡市周辺の各駅を回りながらご案内しました。また、亀岡市でフリーランスとして活動されている同業の方のお話も聞いていただいたり、関心をお持ちだったアート系のイベントの仕掛け人などにもご紹介したりして、暮らしと仕事のイメージを持ちやすいコースを設定しました」

地域を知ることが、コンシェルジュとしての第一歩

コンシェルジュとしての活動をはじめてから、約1年。今では移住相談、情報提供、現地案内まで一人で担当する磯貝さんですが、当初は慣れない業務に戸惑いもあったそうです。

「縁もゆかりもない京都に移住したので、各市町村のことを知ること、地域プレイヤーのみなさんとのつながりを一からつくるところからスタートしました。でも、農業会議や京都移住計画の方々が培ってきたネットワークがあるので、いろんな人を紹介してもらったり、わからないところを相談したりできるので、心強かったです」

磯貝さんは、週4日勤務のうち週1.5日出社、週1.5日は府内各地へ現地案内、週1日在宅ワークのバランスで働いています。

磯貝さんの上司であり、農業会議 農村創生部移住促進課長の瀬野史朗さんは、彼女の活躍をどのように見守ってきたのでしょう。

「コンシェルジュは、地域の魅力の代弁者。入社後まずは、各地域の良さを知ってもらうことが一番と考え、あちこち足を運んでもらいました。そこで出会った面白い方や地域愛がある方をせっかくなら広く知ってもらおうと、広報という形でSNS発信や記事制作にも取り組んでもらいました。地域の方々からも評判は上々。とても助かっています」(瀬野さん)

農業会議の瀬野史朗さん

業務の核となる移住相談については、京都移住計画が担当していた時期も含め2014年〜2020年度までで約6700件の実績があります。培ってきたノウハウと経験を持つ先輩コンシェルジュもいるので、 キャリア支援や相談業務の経験がなくてもはじめやすい環境です。

コンシェルジュは、磯貝さんのほかに東京と大阪の窓口に担当者が一人ずついます。

東京の相談窓口を担当する、コンシェルジュの榎本麻里さん。

「東京や大阪の窓口にいるコンシェルジュと情報交換ができますし、京都移住コンシェルジュのグループチャットもあるので、そこで情報提供を呼びかけることもできます。『移住後に狩猟をしたいと考えている方がいるんだけど、おすすめの地域はどこ?』、『○○の仕事情報ってある?』と気軽に聞けるので、一人で抱え込むこともありません」(榎本さん)

磯貝さんは入社後、榎本さんのオンライン移住相談に同席しながら、進め方を学んだそう。今回入社される方も、榎本さんや磯貝さんなど先輩から仕事を教えてもらいながら、業務を覚えていくことになります。

コンシェルジュとして大切なのは、経験よりも人への興味や地域への思いです。

「移住相談では、人の話を聴き、思いを引き出すことが肝心です。だから、目の前にいる人に興味を持てないと難しいですね。その上で、地域が好きとか京都で何かやりたいって人に、コンシェルジュとして京都ローカルの魅力を伝えていってもらいたいです」(瀬野さん)

自らも移住検討者として、理想の暮らしを探すのもアリ!?

最後に、新たに採用されたる方が一緒に働くことになる磯貝さん、榎本さんにコンシェルジュの仕事のおもしろさを聞きました。

複業OKのため、磯貝さんはコンシェルジュ以外にもヨガインストラクターとして活躍中。仕事をミックスさせて、京都の自然豊かなエリアでのヨガリトリートを計画しているのだとか。

「もともとは祖母の家にある山口へ移住を検討している時に、コンシェルジュの仕事を見つけたんです。『いつまでに移住するか決めないとズルズルいっちゃいますよ』なんて、移住検討者さんにかけている言葉は、毎回自分にはね返ってきます(笑)でもこの仕事をする中で、山口への移住を考えていた時よりも、具体的な暮らしをイメージできるようになりました。私のように移住を考えている人にもぴったりの仕事じゃないかな」(榎本さん)

「うん、移住したい人にとってはまたとない仕事ですよね。私も地方移住を検討中なので、参考になっています。京都ローカルには、面白い活動をしている方や自分が住む地域に誇りをもっている方がたくさんいて。現地案内やインタビューで、一人ひとりの人生の一部を垣間見れるのは面白いですし、知らない生き方や考え方に出合えるのが楽しくって。
この一年で京都のあちこちへ行ったけど、それぞれのエリアごとに特色があるので、もっとたくさんのエリアを訪ねてみたいし、家族や友達も連れて行きたい。仕事も暮らしもミックスさせながら、楽しみたい人に向いている仕事だと思います」(磯貝さん)

移住検討者をサポートするコンシェルジュ自身も、移住を検討し、理想の暮らしを実現できる地域を探す当事者であることは、ちょっと意外でした。
この仕事は京都だけではなく、「地域で暮らし、働く」ことを俯瞰して知ることができるのも特徴です。京都ローカルに興味がある人、そして地方で暮らす入り口を探している人にぴったりの仕事かもしれませんね。

執筆:北川 由依
撮影:橋野 貴洋

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