募集終了2022.03.11

和装とルームウェアを軸に。時代の変化をしなやかに乗り越える老舗

自宅でのんびりとリラックスする時。一日を終えて眠りにつく時。あなたはどんな衣服を身にまといますか?

コロナ禍以降、家で過ごす時間が長くなり、今までよりもルームウェアにこだわるようになった方も多いかもしれません。

今回ご紹介する荒川株式会社は、ルームウェア・パジャマをはじめとするナイトウェア全般を製造販売している会社です。1886(明治19)年に、和装小物を扱う会社として創業。現在は和装とナイトウェアの2つを軸に事業を展開しています。

今回荒川が募集するのは、ルームウェア事業のデザイナーとMD(マーチャンダイザー)。そして和装事業では、荒川のグループ会社であるコーリン株式会社で取り扱う着付け小物・コーリンベルトの営業職を募集します。営業職と言っても既存の商品を扱うだけではなく、高い技術力を生かした新規事業の立ち上げや新商品開発など、会社の未来を担っていく仲間を募っています。

時代の変化に対応し、和装からルームウェアへと事業を拡大

半襟の卸商として始まった荒川株式会社。帯締め、帯揚げ、草履、バッグなど、徐々に扱う商材が増えていき、現在では和装品全般を取り扱っています。

もう一つの事業、ルームウェア事業がスタートしたのは1957(昭和32)年。なぜ和装小物の会社がルームウェアを取り扱うようになったのでしょうか。五代目社長を務める荒川慶一(あらかわ・けいいち)さんは、事業拡大の経緯についてこう話します。

「1957年と言えば、神武景気と呼ばれる大型の好景気が終わりを迎える頃。日常的に着物を着る人もどんどん減ってきて、和装業界に携わる人たちはみんな危機感を持っていたと思います。そこで、当時社長だった私の祖父が、今後の事業のために何かヒントを得ようと欧米視察に旅立ちました。欧米の百貨店に行くと、ナイトウェアの売り場がとても大きな面積を取っていることに驚いたそうです」

いずれ日本でもナイトウェアの需要が高まっていくだろうと考えた先々代は、荒川の新規事業として取り扱うことを決意。和装から洋装へと事業を拡大することは大きな決断だったのではと問いかけると、「もともと荒川では和装肌着や寝間着を扱っていたので、隣の畑くらいの感覚だったと思いますよ。このままではいけない、何か始めようという勢いでやったんじゃないかな」と荒川社長は軽やかに答えます。

その後、ルームウェア事業も順調に成長し、和装事業と売り上げを二分するほどに。この数年は巣ごもり需要という追い風もあり、ルームウェア事業が和装の二倍ほどの売り上げになっているそうです。

和装とルームウェアの二つを軸に、時代の変化に対応しながら安定して事業を展開してきた荒川。二つの事業の根底には、どんな思いがあるのでしょうか。

「きっとすべての経営者の方がそう思っているでしょうけど、『良い会社』になりたいとは常々思っていますね。私が思う『良い会社』とは、仕事にやりがいがあって、適切な給与を払える収益力がある会社。そうなるためには、会社が営んでいる事業が価値のあるものでなくてはなりません」

和装もルームウェアも、それぞれ大きな価値がある事業だと荒川社長はつづけます。

「和装は大切な日本文化であり、織りや染めといった伝統産業とも深く結びついています。着物がなくなってしまったら、多くの伝統産業も失われてしまいます。一方ルームウェアも、人間にとって大切なオフの時間を充実させるために欠かせないものです。和装もルームウェアも、規模は決して大きくはない業界ですが、非常に価値があります。そして、どちらの業界でも弊社は大きなシェアを占める存在ですから、我々が頑張れば業界全体の発展にもつながるんです」

荒川のオリジナルブランドでは、「有松絞り」という絞り染めの技術をルームウェアに取り入れています。

会社の発展が業界の発展につながり、それが一人ひとりの仕事のやりがいにもつながっていく。だからこそ、「達成意欲のある人と一緒に働きたい」と荒川社長は語ります。

「たとえばスポーツだったら、やっぱり運動神経が良くないと、意欲だけではどうにもならない部分がありますよね。でも仕事は違います。達成したいという強い思いがあれば、ほとんどのことは実現できるんです。業界のこれからを担っていくために、目標を一つひとつ達成すること、それによって自分が成長することに、喜びを感じられる人に仲間になっていただきたいですね」

素材からこだわり、多岐にわたるブランドを手がける

ここからは、今回募集するルームウェア事業を担うお2人にお話を伺います。1人目は、デザイナーのOさんです。

荒川のオリジナルブランドからライセンスブランドまでさまざまなアイテムのデザインを担当しているOさん。手がけるブランドはヤングからミセス、シニアまで幅広く、さらにレディースだけでなくメンズも兼任しています。

「以前はアパレルメーカーで20年ほど働いていました。前職ではジャケットなど硬めのアイテムを担当することが多かったので、ナイトウェアやルームウェアといった柔らかいものをデザインしてみたいと思い、荒川に入社しました。アパレルメーカーではレディースとメンズが分かれている場合がほとんどですが、荒川では兼任するのでとても新鮮に感じましたね」

外着とルームウェアでは、さまざまな違いがあるとOさんはつづけます。

「たとえば外に出かける時、全身柄物を着る人はあまり多くないですよね。でも、普段は無地の洋服を好む人でも、ルームウェアはストライプやチェック、花柄といった柄物を選んだりしませんか?ルームウェアはプリントものが占める割合が大きく、外着よりも色柄の自由度が高いんです。ブランドの特徴やターゲット層に合わせて、プリントから考えられるのが楽しいですね」

さらに、寝る時に身に付ける衣服は、睡眠の質や健康に直結するため、素材から吟味する機会も増えたと言います。

「オーガニック素材を探し歩いたり、生地になる前の糸から研究したり。素材についてより多く考えるようになったのは、大きな変化でしたね。お風呂上りで汗をかいている時でもさらっと着られるものがいいとか、寝る時に縫い目が肌に当たるのが気になるとか、外着とはまた違ったお客さまの声があるので、そういったお悩みや要望にどうやって応えるのか考えることが、大変さでありやりがいでもありますね」

たとえば、縫い目が気になるというお悩みに対して、荒川ではホールガーメントという技術を取り入れています。専用ニットマシンで、1着丸ごと立体的に編み上げることにより、縫い目が一切ない服ができあがるというこの技術は、和歌山の会社が開発したものです。

「アパレルメーカーは東京が多いのですが、実際に生地を作っているのは関西が多いんです。私も以前は東京で働いていましたが、ニットの編み立て工場やプリントの染工場に近いところで仕事ができて、モノづくりの現場に足を運べるのが楽しいです」

荒川は京都本社のほかに東京と福岡に拠点があり、ルームウェアの企画・生産を行う洋品部は5年ほど前に東京から京都に移転しました。そのため京都へ移住することになったOさんは、こんなふうに話してくれました。

「私と同じように東京のアパレルメーカーで働いた経験があって、UターンやIターンで京都移住を考えている方にとって、とても新鮮で面白い職場だと思いますよ。手がけるブランドは多岐にわたりますし、レディースとメンズの垣根もない。生地の現場とも行き来しながら仕事ができます。好奇心を持って幅広くチャレンジしてみたいという方に、ぜひ来ていただきたいですね」

売り手の経験も生かしながら、作り手として日々邁進

つづいてお話を伺うのは、Oさんと同じ洋品部でMD(マーチャンダイザー)として働く林裕(はやし・ひろし)さん。新卒で荒川に入社して今年11年目になる林さんは、入社以来ルームウェア事業に携わってきました。

「大学時代に茶道をやっていたので、地元の京都で和装関係の仕事に携わりたいと思って、荒川を志望しました。ですが実際は、1年目から東京に配属になって、ルームウェアの営業をすることになりまして(笑)。予想外でしたが、まずはとにかくやってみようと思って取り組んでいるうちに、営業の面白さがわかってきました」

7年間営業を担当した後、MDに部署異動になった林さん。荒川ではMDとデザイナーが2人1組で1つのブランドを担当し、MDは商品企画や生産管理を担います。

「売り手から作り手へと立場が変わり、仕事内容もがらりと変わったので、初めは戸惑いました。でも、営業時代に『もっとこんな商品があれば良いのに』と売り手目線でいろいろ思うところがあったので、売り手の思いを作り手として実現したいという気持ちがモチベーションになりました」

売上目標などが明確にあった営業の仕事とは違って、わかりやすいゴールや正解がないのがMDの仕事の大変さであり面白さだと、林さんは語ります。

「MDになったばかりの頃、『どこまで突き詰めて考えたか。それによって商品の価値が変わる』と先輩から言われたことを今でもよく覚えています。作り手の仕事は、どこまで突き詰めてもゴールはないので、展示会の前は毎回、これで本当に良かったのかと自問自答を繰り返していますね。夢にまで出てきますよ(笑)」

それほど悩むからこそ、商品が店頭に並んだ時には喜びもひとしお。「きれいに並べられているなぁと、授業参観で我が子を見守るみたいな心境です」と楽しそうに笑います。

売り手と作り手、両方の立場を経験してきた林さんは、MDにとって大切なのは「聞く力」だと言います。

「営業さんがいて、販売員さんがいて、その先にお客さまがいる。だからこそ作り手は、売り手を介してお客さまの声を聞くことがとても大切です。たくさん情報を集めて、自分なりに精査して答えを出す。その繰り返しですね」

ただし、要望を聞いて形にするだけではなく、これからの時代は自分たちから能動的に発信していく姿勢も必要だと林さんはつづけます。

「昔は百貨店がものを売ってくれる時代でしたが、今は百貨店が“場所貸し”業になりつつあると言われていて、我々が自分たちで売り場を運営して売っていく時代です。この大きな転換期において、自ら発信してお客さまを惹きつけられるモノづくりが必要になってくると思います。常に好奇心旺盛にアンテナを張って、フットワーク軽く動けるような人に仲間に加わってもらって、5年、10年先を見据えて一緒にチャレンジをしていけたらいいですね」

着付けに欠かせないコーリンベルトの高いクオリティ

つづいて、荒川のグループ会社であるコーリン株式会社に移動。もともと荒川の取引先だったコーリンを子会社化することになった経緯について、まずは荒川社長にお話を伺います。

「きっかけは、2019年にコーリンの前社長からM&Aの打診があったこと。実は以前から、もしも和装事業でM&Aをするとしたらコーリンだと考えていたんです。コーリンが製造販売しているコーリンベルトは、着付け小物として品質が素晴らしく、お客さまの認知度も抜群に高いからです。前社長からお声がけをいただいた時は驚きましたが、荒川のことを評価して信頼してくださったのだと非常にうれしかったですね」

コーリンベルトとは、衿や胸まわりの着崩れを防止するために考案された着付け小物。「年間に数十万本という数を出荷していますが、壊れたというクレームがほとんどないんです」という荒川社長のお話からも品質の高さが伺えます。

営業・配達担当として20年近くコーリンベルトに携わってきた古室喜之(こむろ・よしゆき)さんは、品質管理についてこう話します。

「数ヶ所の内職スタッフを介して、手作業でつくっているため、一つひとつの工程に対して厳しく検査を行い、商品のクオリティを担保するように心がけています。商品をお届けする際にも極力ミスが起きないよう、細かくチェックするように努めていますね」

倉庫でのピッキング作業から配達や発送、工場とのやり取りや生産管理まで、幅広い業務をこなす古室さん。長年働いてきた中で、どんなことに喜びややりがいを感じているのでしょうか。

「商品の良さを理解して買っていただけるのが、やっぱり一番うれしいですね。たとえ小ロットでも、長くコンスタントに発注をいただけることが有難いなと思っています。今いるお客さまを大切に、細く長いお付き合いをこれからも続けていきたいですね」

一方でコーリンは、新たな取り組みもはじめています。古室さんが見せてくれたのは、阪神タイガースのマスクストラップ。マスクを挟むクリップの部分は、コーリンベルトのパーツを応用したものです。

「コーリンベルトに付いているクリップは、『j-senクリップ』という商品名で国際特許を取得していて、マスクストラップのほかにも携帯ストラップや医療・介護用品、ベビー用品など、さまざまな用途で使われています。阪神タイガースとのコラボ商品は、昨年に荒川社長が球団に提案して実現しました」

コーリンベルトは主に女性が対象となるため、男性にも目を向けたタイガースグッズという展開は、コーリンにとってこれまでにないアプローチと言えそうです。荒川とコーリンがグループ会社になったからこそ、新しい試みが生まれつつあるのでしょう。最後に改めて、コーリンの商品の魅力と今後の展開について荒川社長に伺うと、こんな答えが返ってきました。

衣服に穴を開けずに使用できる名札クリップや腕章など、j-senクリップの技術は多岐にわたる分野で活用されています

「j-senクリップは、金属のバネを使用せず、プラスチックの3つの部品だけでできているという、非常に優れた構造のクリップです。一度ロックすれば引っ張っても外れる心配がなく、安全性の高さから医療分野でも採用されています。この革新的なクリップの技術は、もっとさまざまな分野で応用できると考えています。技術を生かして仕事の領域を広げていくことができれば、この会社はもっと良くなるはず。ですから、好奇心を持って新しいチャレンジを楽しめる方にぜひ仲間に加わっていただきたいんです」

高い技術力と安定した収益基盤のある会社で、新規事業に思う存分チャレンジできるという今回の求人は、自ら新しい仕事を生み出していきたい人にとってはまたとない機会。そして、老舗企業を率いてきた荒川社長の経営者としての視座や姿勢を間近で感じながら共に働けるという意味でも、とても貴重で魅力的なポジションではないでしょうか。

荒川とコーリンでの取材を終えて印象に残ったのは、「これからも時代の変化を悠々と乗り越えられる会社でありたい」という荒川社長の言葉。ずっと変わらない形を守るのではなく、時代の変化に柔軟に対応しつづける。それが創業130年を超える老舗となった所以なのだと感じました。

みなさんのお話に共通して登場した「好奇心」「チャレンジ」といったキーワードも、変化を恐れないしなやかさを感じさせます。一人ひとりが柔軟なマインドで仕事に取り組んでいるからこそ、柔軟な会社でありつづけられるのでしょう。

彼らと一緒にチャレンジしてみたい。荒川やコーリンの一員として、和装業界やルームウェア業界を担っていきたい。そう感じた方は、仲間に加わってみませんか?

※本記事はBeyond Career事業にて受注・掲載した求人記事となります。Beyond Careerについてはこちら

編集:北川 由依
執筆:藤原 朋
撮影:中田 絢子

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