京都移住計画での募集は終了いたしました
パソコンの画面に映し出されているのは、とある美術館の展示室。天井、壁、そして作品と、見る方向を360°自由に変えることができ、展示空間に入り込んだような臨場感を味わえます。
このような360°映像をはじめとし、映像や写真などのデジタルメディアを活用したプロジェクトを得意とするアクチュアル株式会社。企業のブランディングから映像・WEBサイトの制作、新規事業の立ち上げまで、幅広い事業を手がけています。
最先端のデジタル技術を用いながらも、実際に手がけていることは「質感のあるもの」だとCEOの辻勇樹(つじ ゆうき)さんは言います。専門性の高い業界に見えますが、未経験からスタートしたメンバーも。どうやら表からみる印象とは大きな違いがありそうです。そのギャップを埋めるべく、じっくりとお話を伺いました。
「記憶」を残す事業から始まったアクチュアル
アクチュアル株式会社を起業する前は、フリーランスのデザイナーとして活躍していた辻さん。そもそも会社をつくる気はなかったのだそう。
「デザイナーとして単にロゴやチラシをデザインするだけでなく、コンセプトメイキングから関わる仕事をしていました。クライアントからプロジェクトについてしっかりと聞き取り、それをビジュアル化してデザインに落とすまでが仕事。はじめは個人事業主やアーティストからの依頼が多かったのですが、だんだんと長期で関わるお仕事が入るようになり、1人ではお客様の要望に応えられないようになっていきました」
その頃、以前からお仕事をさせていただいていた公益財団法人 西枝財団から委託を受け、「ART360°」というプロジェクトを立ち上げます。
「過去に展示マネジメントに携わったとき、自分が関わった展示が短期間で無くなってしまうことに言葉にならない喪失感をおぼえました。それから単なる記録ではなく、追体験できる記憶として展示を残す方法はないかと考えていました」
解決の糸口となったのは「ベネチアビエンナーレ2017」の展示を360°カメラで記録した映像でした。辻さんは、360°映像という記録手法に大きな可能性を見出します。
そこから、美術展を360°映像で記録しアーカイブしていくART360°事業がスタート。このプロジェクトをチームで継続的に手がけていくため「アクチュアル株式会社」が設立されました。
バーチャルに文化を記録し、リアルに伝える
ART360°事業をきっかけに始まったアクチュアルですが、その後はさまざまな分野へ事業を展開。現在はアートにとどまらず、文化、科学、教育、工業など幅広い領域で、デジタルメディアを駆使したプロジェクトを進行中です。
その中でも、能や茶道など、日本の伝統文化に関するプロジェクトを多く手がけているのがアクチュアルの特徴のひとつ。普通に生活していたら入れない舞台裏を見ることができるのも、この仕事の面白さなのだそう。
「2022年に行った『はじめての日本文化』は、日本の伝統文化と私たちの日常をつなぐプロジェクトです。着物を着る、お茶をたてるなど日本人でも触れることが少なくなった文化をもっと身近に感じてもらえることを目的に、コンセプトの立案から映像制作、WEBサイト制作まで、プロジェクト全体を包括的にサポートさせていただきました」
舞台となったのは、京都市内にある「有斐斎弘道館」という歴史ある建物。江戸時代は学問所であったというこの場所の歴史にヒントを得て、さまざまな切り口で伝統文化の“はじめて”の体験を提供する事業が始まったそうです。
「WEBサイトでは、ひとりの女性が『はじめてのお茶会』に参加する様子を360°カメラで撮影し、紹介しています。馴染みがない方にとって、お茶会はハードルが高いもの。そこでお茶会に訪れるところから茶道を体験するまでの流れを360°カメラで撮影し、所作や場の雰囲気などをわかりやすく伝えています」
他にも「うつわ」や「茶室」など茶道のポイントをわかりやすく教える解説動画など、日本文化をもっと身近に感じてもらえるコンテンツを制作しました。
お客様と二人三脚でプロジェクトを進める
仕事をするうえで辻さんが大切にしているのは、クライアント伴走型のスタイル。優れたデザインとは、お客様とともに日々形を変えながら、課題に対するソリューションを提供するものだと考えているからです。
「京都大学とのプロジェクト『桂の庭』は、『大学で研究しているテーマを広く発信したい』と、WEBサイト制作の依頼をいただいたところから始まりました。しかし、テキストだけで専門的な内容を伝えるのは難しいのではないかと感じ、360°映像でインタビューを記録することを提案したんです」
限られた予算内で企画を実現するため、撮影はクライアント自身で行うことに。大学側と定期的なミーティングを行って密に連携し、常に新しい映像を追加していけるような制作フローを組み、二人三脚で進めたそう。
「映像やWEBサイトなどのコンテンツ制作は課題を解決するひとつの手段にすぎません。凝った映像やスタイリッシュなデザインを目指すのではなく、クライアントの立場に立ち、その後の運用性までを含めて提案できるかが重要なんです。作った後にコンテンツがどう使われていき、どのような利益をもたらすのかまでお客様と一緒に考えるようにしています」
“伴走型”の姿勢が評価され、アクチュアルには長く関係が続いているクライアントが多いそうです。
「現在は、360°映像を用いた教育向けコンテンツ制作などの新たなご要望も増えてきています。これから、事業の幅はさらに広がっていくと思います」
自ら学び、立ち位置を見つけていく
次にお話をお聞きしたのは、プロジェクトマネージャーの桐惇史(きりあつし)さん。前職は人材紹介会社という、アクチュアルでは異例の経歴をお持ちです。これまでの仕事とは大きく違うアクチュアルの仕事を選んだ理由は何だったのでしょうか。
「学生時代から教育に携わりたいと考えていたので、最初は学習塾に就職しました。仕事をする中で、学校教育に必要なのは芸術なんじゃないかという考えに行き着いてからは、アートの仕事に興味が湧いてきて」
しかし、アート業界は専門職が多く、未経験では難しい。自分が入れるとしたらオークションハウスなどの営業職ではないかと考えた桐さんは、まずは高いビジネススキルや交渉力などを身に着けるため、人材業界に就職することにしました。
人材紹介会社に就業している間もアート領域への転職チャンスを探し続け、ART360°のプロジェクトマネージャーの求人にたどり着きました。
「ART360°のHPに書かれていた『アートの記憶を保存する』という言葉に惹かれました。そこからアートの記録について調べ、考えるうちに、残すべきものを創造的に記録していく、<記録者>として関わりたいと思い始めました」
辻さんの10年、20年後の社会を見据えた考え方にも共感し、入社の意志を固めた桐さん。プロジェクトにおいて、これまでの経験から何ができるのかということをレジュメにまとめて、辻さんに伝えたそうです。その甲斐あって見事に採用。念願のアートに深く関わる仕事に就くことができました。
現在は、ART360°でアーカイブする展覧会の候補を選定するところから、美術館との交渉、撮影の進行管理、WEBサイトの管理までを担います。また、桐さんはART360°のサテライトメディアである『+5』の編集長も務めています。
+5は、アートと社会の橋渡しを行う「アートネイバー」を取材し、その役割や活動を伝える教育メディアです。記事の企画やアート関係者への取材、編集や広報業務などメディア運営の仕事のほか、イベントの開催やインターンプログラムの実施など、幅広い仕事を担当しています。
「念願のアート関連の仕事だけでなく、教育にも関われる。そういう意味でも、アクチュアルの仕事は天職だと感謝しています」
現在の仕事は非常に充実していると話す桐さん。一方で課題も感じているそう。
「アクチュアルに必要なITの知識やプログラミングなどのスキルを持って入社したわけでないので、Adobeのソフトを勉強するなどスキルを自分で育てていかないといけないと思っています。『身体性を残したままデジタルで記録する』取り組みも、デジタル技術に疎いままでは実践できません。これから、ITの知識やプログラミングなどを貪欲に学んでいきたいです」
自分の好きな領域だけでなく、その課題に合わせて領域を積極的に広げていく。それはある種、アクチュアルのカルチャーだと感じているそう。
「社会での自分の立ち位置を見つけていくために、視野を主体的に広げていく風土があります。会社からこれを身につけてくださいということはあまりなく、各自が仕事をする中で必要なことを感じ取り、スキルを高める努力をしているように思います」
手触りのあるアクチュアルな世界で仕事をする
今回アクチュアルで募集するのは、WEBディレクター。WEBデザインをベースとして、クライアントとのコミュニケーションやプロジェクトの進行管理、ディレクションまで、一連の流れを横断的に担当できる人を探しています。
アクチュアルの魅力は、リサーチやコンセプトメイキング、制作、運用まで、プロジェクト全体に携われること。WEBサイトの制作がゴールではなく、クライアントが抱えている課題を理解し、必要なソリューションを提示することが仕事です。継続案件も多く、クライアントと長期にわたって信頼関係を築いていくためにも、自身で考えて提案していく力が求められています。
「単発のWEB制作ではなく、もっと広い事業づくりからプロジェクトに携わる経験ができると思います。物事の境界をつくらずに何でもやっていきたいという自然体の人が向いているのではないでしょうか」
HTML・CSSなどの知識は最低限必要だけれど、入社後にスキルを取得することも可能。また、現在は、ノーコード・ローコード開発に力を入れているため、英語の読解力や基礎的なプログラミング言語の知識もあるとなお良いとのこと。英語、プログラミング言語、デザインなど、あらゆる面に対して好奇心を持って挑む姿勢が大切です。
また、働く環境には柔軟性を持たせたいと、アクチュアルではフレックス制を導入。お子さんの送迎や、自分の学びの時間など、スタッフそれぞれが自らのライフスタイルに合わせて仕事に取り組む環境ができています。
「働く人には、手触りのあるアクチュアルな世界で仕事をしてほしい」と辻さんは言います。
「会社を仕事と割り切るのではなく、いまの社会とあなたの人生の接点として捉えてほしい。より良い社会が何かを考え、その答えに近づけそうな気がしたら、ここで働くことを選んで欲しいと思います。新しい領域にチャレンジしてみたい人、積極的にキャリアを切り拓いていきたい人を歓迎します」
仕事を通して成長していくためには、自分と世界をつなげる文脈に触れる必要がある。アクチュアルに目指したいものがあると感じたならば、ぜひ扉を叩いてみてください。
京都移住計画での募集は終了いたしました