寺町三条から聞こえる世界の音。 楽しむための楽器と「民族楽器コイズミ」

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京都のおもしろい場所を訪ねる「場を巡る」シリーズ。人が集いハブとなるような場や京都移住計画メンバーがよく立ち寄る場をご紹介する連載コラム記事です。一つの場から生まれるさまざまな物語をお届けします。

音の世界への入り口がここに。

寺町三条から少し北に上がったところにある楽器屋さん。実はここ、多種多様な民族楽器を扱う全国にも類を見ない有名店なんです。今回は、こちらの「民族楽器コイズミ」店主の小泉雅喜(こいずみまさき)さんにお話をお伺いして、不思議な民族楽器の世界を紹介してもらいました。

戦後すぐから寺町を見つめる楽器屋さん

店内は見渡す限りの楽器、楽器、楽器……

「民族楽器コイズミ」は、一見すると玄人向けの入りにくいお店ですが、実は玄人はもちろん初心者やライトユーザーも多く訪れています。最近は楽器演奏者だけでなく、音楽療法やヒーリングに使うために楽器を買いに来る人も多いのだとか。取材中にも、これぞ玄人!という雰囲気の方から、ちょっと気になって店内に入ってみたという感じの方まで、さまざまなお客さんがひっきりなしに来店していました。

創業は第二次世界大戦の終戦から3年後の1948年。現店長の小泉雅喜さんの祖父にあたる方がはじめられたお店で、その頃はまだ寺町通りの商店街にもアーケードがなかったそうです。元は学校に楽器を納入していたり、和楽器の取り扱いが多かったとのこと。

戦後すぐのコイズミの姿(写真提供:民族楽器コイズミ)

雅喜さんが物心ついた頃にはペルーやアフリカの楽器が置いてありましたが、まだまだ数は少なかったようです。「中学生くらいの時には蛇の皮とかようさん並んでいて、気持ち悪いなぁーと思ってたんです」と雅喜さんは回想します。蛇の皮……三線(沖縄の三味線)の材料だったのでしょうか。この頃から既に今のコイズミの雰囲気の鱗片が伺えます。

楽器の世界、さらなる深みへ。

時は流れて1998年、一般企業に勤めていた雅喜さんがコイズミの改装を機にお店の経営に参加。今まで楽器は主に国内業者から仕入れていましたが、国外に買い付けに行くことにしました。

「お店に来てくれる演奏者さんに『もっとハイレベルなモデルがあるよ』と言うてもらったから、今のままではあかんわ、となってね」

店内には太鼓だけでもこんなに種類があります

以前からお付き合いのあったタブラ(北インドの太鼓の一種)奏者の方に紹介してもらったインドの工房で仕入れをおこなったところから、オーストラリア、ベトナム、トルコ等、各国を飛び回って現地のレベルの高い楽器を探求していきます。

「GOMAさん(※1)がライブでクラブミュージックとディジュリドゥを合わせてるのを見たらハマって、その影響でディジュリドゥとかジャンベをよく仕入れたときもあったね。一緒にオーストラリアのダーウィンに買い付けにも行ったし……」

※1:GOMAさん
オーストラリア先住民族の伝統楽器「ディジュリドゥ」の奏者で、現在は画家としても活動。2020年東京パラリンピック開会式でひかりのトラック入場曲とトラックの声を担当するなどその活動は多岐にわたる。

今では数えきれない数の国の楽器が店内に所狭しと並んでいます。これだけの種類の楽器をネット販売ではなく現物を置いて売る意味は、個体差のある楽器を実際触ってみて、プレイヤーに合ったものを選んでほしいという想いからだそう。

その時どきによって在庫は変動するので、いつ行っても新しい発見がありそうですね。

京都のみならず、全国的に見ても類を見ないお店ですが、お話をお伺いしているときは終始謙虚な姿勢だった雅喜さん。「僕もまだまだですよ、いまだに職人さんに怒られたりします」と笑います。

曰く、お世話になっているある職人さんに修理する楽器を持ち込んだりするときは毎回修行するような気持ちだとか。

「コイズミがあるのは僕らだけの力だけじゃなくて、関わってくれた楽器の先生方とかお世話になってる職人さん、もちろんお客さんやちょっと立ち寄ってくれた人のおかげやからね」

店主の雅喜さん。

トリッキーかつステキな楽器たち

普段触れることのない楽器たちはその演奏方法はもちろん、管理の仕方、作られ方も我々の予想を裏切る楽しいアイテムです。ちょっとここらで不思議な楽器の世界を垣間見てみましょう。

これはカンジーラという南インドのタンバリンの一種で、タラ等の白身魚の皮や、ナマズなど淡水魚の皮を張っています。濡れ雑巾で打面の皮を濡らして弛ませることで、やわらかな低音が出るそう。

楽器が作られた国と日本とでは環境も大きく違います。湿度の低い国で作られた太鼓は打面に張った皮が湿度に敏感で、じっとりとした梅雨の日本では水分を含んでいい音が出なかったりするので調整も大変だとか。

こちらは壺……ではなくウドゥというインドの楽器です。指で弾いたり掌で叩いたりすることで打楽器として使います。ちなみに写真のウドゥは作家さんが作られた備前焼のもの。

これらの楽器の大半は大量生産の工業製品ではなく、工房で手作りされているため個体差があり、調整も必要だとのこと。

「僕らもいい音を鳴らしてるプレイヤーさんの音を聴いたりしてるから耳も肥えてくるから、輸入したものをそのまま売るんじゃなくて僕らでプラスアルファ、よりいい音にできるならそうしてあげたいね」

北インドにルーツを持つシタールという楽器。たくさん弦が張られていますが、実際に弾くのは7本です。残りの10本を超える弦は「共鳴弦」と呼ばれ、音に深みを与える効果があるとのこと。

環境だけでなく文化の違いもあります。お国柄的におおらかな性格の人が多いところでは、楽器の作りもアバウトな場合があり、コイズミさんで調整してからお店に出すことも少なくないそうです。

指ピアノとも呼ばれ、鳴らすと優しい音の鳴るアフリカの楽器、カリンバ。

例えばこちらのカリンバという楽器。輸入されてきた時点では鍵盤の部分が金属の切りっぱなしになっているので、コイズミさんで削って弾きやすいように整えたり、音階の調整をしたりしています。試しに琉球音階に整えられたカリンバを弾いてみると、ちょっと音を出してみただけで沖縄民謡のようなメロディになりました。

楽器のことを知り尽くした演奏者だけでなく、初心者でも扱えるように調整した状態で販売してくれるコイズミの心配りが光ります。これならふと思い立って手に入れてみよう!と思ったときも手を伸ばしやすいですね。

アサラトを演奏される雅喜さん。う、上手い……

「楽器は楽しむもんやしね」

コイズミの二階では音楽教室も開講されており、各国の民族楽器はもちろん雅楽に用いられる伝統的な楽器など、その範囲は多岐に渡ります。日本ではあまり知られていなくても、その楽器の本場では現地のトッププレイヤーと勝るとも劣らない活躍をしている方が講師として教えておられることも。楽器を始めてみたいけど演奏方法がわからない……なんて方にも嬉しい万全の体制です。

知る人ぞ知る、名だたるプレイヤーたちの集まるラインナップ。

「楽器は楽しむもんやし、うまくなくても楽しめるのが楽器やから自由にしてもらったらええな、と思います。楽しんでくれてはるってのが大切」

ここで楽器を買って、天気のいい日は鴨川でちょっと一曲練習してみる、なんて日があっていいかもしれません。店主の雅喜さんをはじめ、親切なスタッフのみなさんが優しく教えてくれることでしょう。

民族楽器コイズミ
京都市中京区寺町通り姉小路上る 下本能寺前町518番地
TEL:075-231-3052
営業時間:午前12時から午後8時
休業日 :毎週火曜日(祝日等はオ-プン)
ホームページ
http://www.koizumigakki.com/
Instagram
https://instagram.com/koizumi_gakki?igshid=YmMyMTA2M2Y=

記事の作成に関わってくれたクリエイター

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