地域にとっての公民館 〜 進化し続ける雑誌の空間「MAGASINN KYOTO(マガザンキョウト)」

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京都のおもしろい場所を訪ねる「場を巡る」シリーズ。人が集いハブとなるような場や京都移住計画メンバーがよく立ち寄る場をご紹介する連載コラム記事です。一つの場から生まれるさまざまな物語をお届けします。

「場を巡る」第7弾は、二条城の近くにある『MAGASINN KYOTO(マガザンキョウト)(以下、マガザン)』。町家を改装してつくられた“泊まれる雑誌”がコンセプトになっている空間です。和を感じるゆったりとした空間を楽しめるだけでなく、スタッフのみなさんがセレクトした雑貨や企画展示を見ることができます。

今回は、マガザンが大切にしている地域との関わりについてオーナーの岩崎達也さんにお話を伺いました。

店内に並ぶ雑貨を紹介してもらう中で、何度も耳にした言葉は「つながり」。なんでもチェックイン・チェックアウトや偶然の出会いから並ぶことになった雑貨も多いとか。新しさを感じる空間ですが、「モノづくりのまちだからこそ馴染めているのかも」と岩崎さんは話します。全国各地、ときには海外からのお客さんも訪れるマガザンは、京都でお店をする上で、地域との信頼関係をどのように築いてきたのでしょうか。

地域にとっての「公民館」に

雑貨やコンセプト別の本棚を楽しむことができる店内

 

2019年5月、マガザンはオープンから3年を迎えました。今では地域のお祭りである「地蔵盆」の会場にもなるくらい地域に溶け込んでいます。はじめて参加した地蔵盆の会場は、路地裏の屋外。8月と時期的に暑く、雨が降れば足場が悪くなる会場だったために、町内会長に「よかったら、うち使いませんか?」と声をかけたことがきっかけだったそうです。

岩崎:僕たちが店を構える中書町は25世帯しかない、本当にちいさなまちなんです。高齢の方も多いので溶け込めるかどうか不安もありましたが、思い切って声をかけたところ、「是非!」と言っていただいて。その頃から徐々にまちに受け入れられるようになりました。というか、当事者として参加できるようになって、自分がまちに馴染めたと感じたのも大きいと思います。

マガザンが地蔵盆会場になったことに伴い、町内会長も経験したという岩崎さん。このエリアを好きになってくれたらいいなという思いから、近しい人に声をかけることも多いそう。2015年にオープンした宿泊型のアートスペース『Kumagusuku』を運営する矢津さん一家も引っ越してきてくれたんですよ!と楽しそうに話す姿からは、地域への愛を感じます。

京都は民泊やゲストハウス排除の傾向も強い場所。だからこそ地域に馴染むことが大切だと岩崎さんはつづけます。

岩崎:まちの人にゲストを紹介することも多いんです。アクセスがいいわけでもないこの土地までわざわざ来てくれるゲストって、コミュニケーションが得意な方も多くて。ゲストが「居心地いいですね」「いいまちですね」とまちのことを褒めてくれる。すると住人も、ここに来る人たちっていいなって思ってくれるんです。そういう積み重ねがあって、このまちに馴染めたんだと思います。

なんとこの取材も、当日たまたま宿泊されていたゲストの市橋正太郎さん(アドレスホッパー)(以下、市橋)と一緒に、ご近所で買った出汁巻きを食べながら。

市橋:歯磨きしている間に楽しめる「壁コラム」があったり、雑貨がセレクトされた背景を聞いたり。”泊まれる雑誌”と聞いて想像はしていたけど、来てやっと体験できたというか、雑誌の袋とじに触れたときみたいなわくわく感がありますね。僕のような宿泊客とってはコンセプトを体験できる場所だけど、地蔵盆の話を聞いていると、地元の人にとっては公民館のような場所なんだろうなと思いました。

また、この日の二人の会話からコラボステッカーができたそうです。実際に、チェックイン・アウトで生まれるプロジェクトに触れることができた時間となりました。(オリジナル御守ステッカー

京都でお店をやること、エリアづくりについて

宿泊部屋にはおしゃれな広告も。

 

岩崎:東京だとマガザンのコンセプトを話すだけで伝わるというか、話がすすむと思うんです。でも、ここだと伝わらない。だからまずはつくって運営する。すると、やりたいことが伝わりやすくなっていろいろと進めることができる。先日、スタッフの実家の野菜が美味しいから置いて売ってみたんです。そしたら思いの外お客さんが来てくれて。スーパーが少し離れているからか、「今日野菜置いてるの?」って電話までかけてくれる人もいました。定期的にやってほしい、という声もたくさんいただいて、開催にむけて動いています。場があって、あとは決めきらないことでセッションしながら事業やイベントを進めることができる。だからこそ地域のためにも柔軟に動けるし、還元できるんじゃないかなと思います。

市橋:あえて決めきらない、という感じですね。

岩崎:東京で働いていた頃はガチガチにビジョンや目標を決めてやってましたけど、そうじゃないことをやりたいと思っていたんだろうなと自分でも実感しています。だからここには厳格なブランドデザインとか大きなビジョンはないんです。もともとチームプレーが好きなのもあって、みんなで良くなっていくのが心地良い。

モノづくりのまち京都だからこそ、“つくって語る”ことができる。そしてその偶然から生まれていくモノが好き、と楽しそうに話す岩崎さんの姿からは、地域への愛を感じます。

(左)市橋さん、(右)岩崎さん

 

『マガザンキョウト』は、あたらしい場所。けれど地域のために動くことを惜しまないからこそ新しいものが好きな若者だけではなく、地域の老若男女にも愛されている。エリアが賑わっていく“触媒”のような存在なのかもしれません。あるときは地域にとっての公民館として、あるときはカルチャー体験空間として。

宿泊はもちろん、雑貨や企画展は宿泊しなくても楽しむことができる『マガザンキョウト』は、ブランドを確立したままで、あるときは地域のために、あるときは京都を訪れた人のために。すべてのひとにとって心地よく、マガザンならではの新しい体験ができる素敵な場所でした。

 

MAGASINN KYOTO(マガザンキョウト)
住所:京都府京都市上京区中書町685-1
Tel:075-202-7477
営業時間:月・木(16:00~20:00)、土・日(14:00~20:00)
定休日:火・水

記事の作成に関わってくれたクリエイター

  • by
    Nana Takahashi

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