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京都には、季節ごとの行事やならわし、風物詩がたくさん存在しています。このコラムでは、1年を春夏秋冬の4つに分け、さらにそれぞれを6つに分けた「二十四節気(にじゅうしせっき)」にあわせて、京都移住計画に関わる人たちの等身大の京都暮らしをお伝えします。
惰性で引きずってきた残暑が、近年は10月頭まで夏の盛り上がりが続く。正月まで続くのではと思われる日中の蒸し暑さは無かったことのように、ショッピングモールの服屋は完膚なきまで秋冬の装いに変わり、モデルさんが映った広告の背景には落ち葉が舞っている。そしてその前を、汗を浮かべたTシャツ姿の私が通ります。
進学のために京都へ来て8年目。特に音楽を志してからのここ3〜4年は、バイト先と自宅の往復に勤しみ、季節に触れる余裕があまりない。なかなか思うように回らない自分の音楽活動と、この時期京都で開かれる大きな音楽イベントの盛り上がりは、残念ながらはっきりとしたコントラストを映し出し、同年代が着々と活躍の場を広げていく様に焦らずにはいられない。柄にもなく、霜降の頃は毎年ちょっぴり凹んだりする。
先日、久しぶりに美容室へ行った。伸ばした髪を綺麗にしてもらい、ちょうど12時頃に外へ出ると、空は高く、積乱雲ではない小ぶりな秋の雲たちが点々と浮いている。北大路通りを東に自転車で進めば、通りを行く人の格好に夏の気配はなく、サラサラになった髪を梳かす風に蒸すようなわびしさを感じなかった。秋になったかな、、?
私が所属するバンド“日の出”には、夏が苦手な私が秋を待望する「秋になったら」という曲がある。この曲を作ったのは2020年のちょうど今頃。コロナに散々振り回され、秋の入り口がなかなか掴めない残暑に疲れたときで、周りの同級生は当然のように就活を終えていた。当の私はというと、就職せず音楽に専念しようと思い込むも、心の隅のビビった声に惑わされるダサい毎日。外にも出れず湿った自室で1人悶々とのたうち回った。「秋になったら」は、2020年夏のそんな自分と世界の状況が、秋になったらよくなっているよね(よくなってくれぇ……)という怨念とも言える切実な願望を織り織り織り込んだ曲である。
春巻かれて、焦るよりも堅い末路
凝り過ぎは肩だけに留めてよ
煽られたって、もうこれより踏み込めぬアクセル
追い越していいから当たらないでね
寝すぎた日々を追い越した寝不足
迫る締切が少し伸びたら
夏、もう終わりそう 秋がやってくるよ
淡い先を選んだ僕を報えるか
(「秋になったら」2番より)
この曲を歌い始めて早4年。全然まだまだ報えていない。曲に記した焦燥は落ち着くことなくめちゃくちゃに熱い。もっと燃やす必要がある。急かされることのない京都の町で、自分の尻を叩きながら日の出はアルバム制作に乗り出しました。完成したあかつきにはぜひお聴きください。完成を先延ばしにしないよう、ここに宣誓致します。
今日も新しいメロディーを探しながら、高野川のほとり、家までのカントリーロードをぼちぼち歩く。
「秋になったら」にいつか必ず報いたい。
綿引 佑太
高野川沿いを縄張りに活動するバンド、日の出のメンバー。
ここ数年はK-POPにのめり込み、韓国語も勉強中です。
京都移住計画が配信するPodcast番組『かもラジオ』の音楽も実は担当してます。
執筆:綿引 佑太
編集:藤原 朋