2024.10.14

「わたしのホーム」と呼びたくなる、古本・雑貨・立呑みの店「ba hütte.」

CHECK IN

京都のおもしろい場所を訪ねる「場を巡る」シリーズ。人が集いハブとなるような場や京都移住計画メンバーがよく立ち寄る場をご紹介する連載コラム記事です。一つの場から生まれるさまざまな物語をお届けします。

個性豊かな店が集まる京都のまち。その中で、何度も訪れたくなるホームのような場所があると、旅も暮らしも、ぐっと楽しくなるはずです。
今回ご紹介するのは、左京区修学院にある、古本・雑貨・立呑みのお店「ba hütte.(バヒュッテ)」。
緑豊かな住宅街の一角にあるこのお店には、昼間は木漏れ日のなか、夜はオレンジ色のライトの元に、さまざまなバックグラウンドの人々が集います。
オープンから5年。多くの人々がホームと慕う場の魅力を知りたくて、店主の清野郁美(せいの・いくみ)さんにお話を伺いました。

ついでで始めた立呑みが、”ba”を”場”にしてくれた

ba hütte.の”ba”は、場所の”場”。
取材の事前準備で読んだ記事に、そう書いてありました。そのことを清野さんに改めて尋ねると、意外な答えが返ってきました。

「実はそれ、違うんです。元々は音の印象で決めたんですよね。強い発話の音から始めたくて、一番しっくりきたのがbaだった。ただ取材を受ける時には、みんなの”場”になればいいなという想いで”ba”にしましたって言った方が楽なので、たまにそう言っていて(笑)。でも、結果としてそうなっているような気はしています」

狙ったわけではないけれど、自然と人が集うようになり、ba hütte.のbaは場になっていきました。その大きな役割を担っているのが、レジカウンター兼用の立呑みスペースです。

「立呑みは”ついで”に始めたことだったんです。でも、仕事前にコーヒーを1杯飲みにきてくれたり、保育園帰りのお母さんとお子さんが駄菓子を買いにきてくれたりするようになって」

放課後、駄菓子を買いに来る近所の小学生もいるのだとか

「自然と、お客さんとわたし、時にはお客さん同士のコミュニケーションが生まれるじゃないですか。普通の暮らしでは絶対出会うことはないだろうな、という組み合わせのお客さん同士が意気投合して、友情が育まれたりする。それは、古本と雑貨だけの店では見られなかった光景かもしれないなと思います。本当に、やってみないと分からないものですね」

どんなお店か気になったら、本棚を見てみてください

一方で、”話題のお洒落なお店”というイメージからか「最初入りづらかった」という声を耳にすることが意外と多いのだと言います。

「よく言われるんですよ。でも、洒落た人だけが集まるお店っていう空気感にはしたくないんですよね。近所のおっちゃんおばちゃん、子連れのお母さん、学生さん、ビジネスマン、みたいに、幅がある方が楽しいなって思っています。みなさんがそれぞれの用途で、心地よく過ごしていただけたら嬉しいですね」

「どんなお店かな、と気になる方は、本棚を見ていただくと雰囲気が少し分かるかなと思います。本のセレクトで、なんとなくその人の人柄が分かることってありませんか?ここに置いてある本は、わたしの名刺代わりのようなもの。ピンと来て店内に入ってきてくださる方とは、不思議と打ち解けるのも早くて。面白いですよね」

環境・人・自然。ぜんぶ揃った修学院の住みやすさ

元々、上京区が地元だという清野さん。修学院に引っ越して、暮らしとお店を営む中で感じているまちの魅力についてもお話を伺いました。

「まちの中心部から離れたイメージが強い修学院ですが、四条河原町や京都駅までバス1本で行けますし、不便は感じないですね。銀行やスーパー、病院など、必要なものは揃っています。公園や自然が多いので子育て世帯の方も住みやすいと思いますね。落ち着いた雰囲気で、気張らずに暮らせる感じがわたしは好きです」

「ご近所の方も本当にやさしいんですよ。このまちにきて、年齢層や職業など、関わる人の幅がぐっと広がりました。同世代の人と飲みに行くのも楽しいけれど、お母さんのように甘えさせてくれるご近所さんとの交流も楽しい。本当にありがたいです」

そんな修学院のおすすめスポットについても伺いました。

「店を出て、砂防(さぼう)ダムに向かって、川沿いの緩やかな上り坂を歩くのが好きです。夏は避暑地なので、川に足つけてぼーっとしたり、コーヒーを淹れて一服したりもします。鷺ノ森(さぎのもり)神社や赤山禅院(せきさんぜんいん)にも、散歩がてらよく行きます。自然豊かな修学院だからこそできる息抜きだと思います」

左から、マイナスイオンたっぷりの砂防ダムと、静かで厳かな雰囲気の鷺ノ森神社

いつでも帰ってこられる場所として、あり続けたい

地域に溶け込み、人々に愛され、今年で5周年を迎えたba hütte.ですが、今後の展望についてもお話を聞いてみました。

「これまで通り、お客さんとのコミュニケーションを大切にしながら、考え続けること・試行錯誤することを止めずに、より良い店にしていきたいです」

お客さんと共に、場を進化させ続けたい。そんな想いを支えるのは、お互いに刺激し合える仲間の存在も大きいのだといいます。

「元々、書店で13年ほど働いていた経験があるのですが、楽しいことは分け合って、しんどい時は一緒に踏ん張って過ごした当時の仲間たちとは、今も良い関係です。その後京都から拠点を移した仲間たちも多いのですが、彼らが京都に帰ってきた時に、実家のように訪ねてもらえる場所でありたい。この想いは、お店を始めた当初から変わりません」

「京都で素敵なお店を経営している志高い友人たちにも恵まれています。そういう大切な仲間たちに対しても、はじめましてのお客さまに対しても、フラットに開かれた心地よい店にしていきたいですね」

「ba hütte.」
京都市左京区山端壱町田町38番地
営業時間:14:00過ぎ~20:00頃
※サマータイム営業 15:00過ぎ~20:00頃
定休日 火曜日、水曜日(不定休あり)
※営業カレンダーはinstagramにてご確認ください
HP:https://bahutte.com/
instagram:https://www.instagram.com/ba_hutte/

CHECK OUT

取材を終え店内の撮影をしていると、店の前の横断歩道をひとりの男性が渡ってきました。
「彼も、先ほど話した経営者仲間のひとりです。今日は氷持ってへんし、ホットコーヒーかな」
そう呟きながらコーヒーフィルターを手に取り、笑顔で手を振る清野さんを見て、ba hütte.が多くの人に愛される理由が分かったような気がしました。
ちなみにこのコーヒーがとても美味しくて、わたしは訪れる度に豆を買っています。皆さんも左京区を訪れた際には、お散歩がてらぜひ足を運んでみてください。

執筆:佐藤 ちえみ
編集:藤原 朋

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