2024.03.20

04 春分 – 憧れの京都暮らし1年目。日常の延長で京都の春を味わう。

CHECK IN

京都には、季節ごとの行事やならわし、風物詩がたくさん存在しています。このコラムでは、1年を春夏秋冬の4つに分け、さらにそれぞれを6つに分けた「二十四節気(にじゅうしせっき)」にあわせて、京都移住計画に関わる人たちの等身大の京都暮らしをお伝えします。

京都が大好きでたまらなくて、京都暮らしをはじめた。そんな私にとって、春夏秋冬の移り変わりを京都にいながら感じられるのは、何よりも幸せなことだ。とくに春という季節は、お寺や神社、鴨川、至るところで浮き立つような桜の美しさを味わえる、とっておきのシーズン。京都暮らし1年目。私は京都の街がピンクに染まっていくのを今か今かと心待ちにしていた。

初めは「京都の桜の名所を巡ろう」と思っていたけれど、春が近づくにつれて「せっかく京都で暮らし始めたのだから、もっと暮らしの延長で春の訪れを体感したい」と思って。まずは、家の半径2キロメートル以内のいつもの散歩コースを巡ろうと思い立った。

いつも何気なく歩いている道、その道中にある神社やお寺には知らずのうちに春が訪れていた。本満寺、水火天満宮、建勲神社、妙顕寺、本法寺、京都御苑、京都府立植物園、上賀茂神社、鴨川、賀茂川。バスや電車さえも使わずに、私は京都で暮らせている嬉しさを噛みしめながら、春を求めてひたすらに歩いた。

特に私が驚いたのは、当時の家から歩いて10分足らずの場所にあった、本満寺。いつも散歩中に横切るのに、こんなにも大きなしだれ桜の木があるなんて、本当に気づかなかった。改めて、京都にはさりげなくお寺や神社が点在していて、そのどれもが魅力を持って地域に根付いているのだと痛感させられる。

そのまま足を進めると、ひときわ空が高い賀茂川へたどり着く。のびやかで自由な川の雰囲気に溶け込むピンク色の木々が、気持ちを華やかにさせてくれる。近くのお店でパンとコーヒーを購入して、レジャーシートを敷いて、桜を眺めてみる。桜の名所をスタンプラリーのように巡らないと、という焦りもなく、ただ目の前の景色に目を向けようと思える余裕を感じて。憧れだった京都の街が、いつのまにか日常になり、暮らしの中に溶け込んでいく感覚を覚える。

これまで何度も旅行で訪れていた大好きな京都の春。けれど、京都で暮らし始め、散歩がてら巡った桜の美しさと日常の愛おしさには、今まで訪れたどのスポットも勝ることはなかった。この先、春が訪れるたびに、京都暮らし1年目で見たピンクの景色を思い出すだろう。

暮らしのすぐそばに、こんなにも素敵な場所がある。日常の延長で見た、京都の春の景色は「京都で暮らすことができてよかったな」という気持ちをじんわりと思い出させてくれた。

執筆:髙橋 美咲
編集:藤原 朋

髙橋 美咲

岐阜県生まれ。名古屋で旅行会社勤務、その後1年間の家を持たない多拠点生活を経て、2022年に憧れの京都に移住。フリーランスのライター・編集者として活動する傍ら、個人でエッセイ本を執筆。趣味は散歩で、休日には京都のお気に入りの場所をひたすら巡ることが多い。

オススメの記事

記事一覧へ