CHECK IN
京都の日常を彩る食を訪ねる「食を巡る」シリーズ。京都らしい食べ物や飲み物、京都移住計画メンバーのお気に入りの一品をご紹介する連載コラム記事です。食べることは生きること、京都での暮らしに彩りを与える物語をお届けします。
インド人でもないのに、私は小さな頃からしょっちゅうカレーを食べる。あの独特のカレーの香りが漂ってくるとお腹が減っていなくても、ぐぅぅとお腹が鳴り、からだがカレーを迎え入れる準備をする。
今日いただくのは、ぴりりと生姜が効いたキーマカレー。色とりどりの副菜が添えられていて、目で見ていても楽しい。
「ぜひ、副菜と一緒に食べてみてくださいね」
そうやさしく声をかけてくれたのは、南国ジンジャーの店主・河野仁美さん。
さっそくキーマカレーと副菜のイタドリを一緒にいただく。うぅん、おいしい!イタドリのコリコリ感と生姜の効いたキーマカレーが絶妙にマッチする。カレーだけで、次は副菜と一緒に……と夢中で食べていたら、あっという間にお皿が空になってしまった。
食を巡る第21弾は、四条大宮のカレー屋「南国ジンジャー」をご紹介します。河野さんがカレーを作ろうと思った理由や、地元高知との縁ついて、お話をお伺いしました。
ひらめきとご縁が重なって、カレー屋さんに
「なぜカレー屋さんを始めようと思ったんですか?」とお聞きすると、「実は、カレー屋さんをやろう!と決めて、始めたわけではないんですよ」と河野さん。地元高知から大学の進学に伴い、京都へ。人生初のアルバイトは、大学近くにあった大手カレーチェーン店でした。
「そこはすぐ辞めちゃったんですけど、その後ネパール料理店で3年ほどアルバイトをしていました。カレーがおいしくてよく訪れていたんですが、ある日『ここで働いたら、まかないでカレー食べれるから働かない?』ってオーナーに誘われたんです。めちゃくちゃカレーが好きだった訳じゃなくて、ほんと偶然なんですよ」
大学を卒業し、就職したのはいくつもの飲食店を運営する企業。9年ほど働いたのちに退職し、いくつかの仕事を経て四条烏丸の「スパイスチャンバー」で働き始めました。
「その頃に『3スパイス&3ステップで作る はじめてのスパイスカレー』という本に出会って、自分でもカレーを作ってみたんです。それが面白くて、しばらく趣味でカレーを作っていたんですが、本の著者の水野仁輔(みずのじんすけ)さんが主宰されている『カレーの学校』がたまたま京都で開催されることを知って応募しました。2日間の講座だったんですが、カレー友達ができたりして、より興味が深まったんですよね」
ちょうどその頃、同郷の友人である中田絢子さんが、カレーを食べて夏至を祝うマイプロジェクト「夏至カレー」をスタートさせていました。
▼夏至カレーに関する記事はこちら
「中田さんは夏至好き、私はカレー好きということもあり、2人で一緒に何かしようかという話から、2018年に『カレー事情聴取』というイベントに出店したんです。一度限りのつもりでカレーを作ったんですが好評で。スパイスチャンバーさんが『せっかくオリジナルのカレーを作ったんだから、うちの定休日に間借りでカレー屋やってみたら』って言ってくださったんです。じゃあ1回やってみようかなみたいな軽いノリだったんですけど、結局5年間も間借りさせていただきました」
実はスパイスチャンバー以外にも大阪の「コンセントカフェ」での間借り営業、スーパーマーケットや先斗町の鍋屋さんなど、いくつもの仕事を掛け持ちしていたそう。
「大阪の『虹の仏』というカレー屋さんでも4年ほど働かせていただきました。落とし物が大阪の天王寺警察署に届いたことがあって、はるばる天王寺まで行くならカレー食べないとって思って。食べて美味しかったので働き始めたんです(笑)」
大切にしているのは、自分のひらめきと人とのご縁。2023年3月にオープンしたこのお店もひょんな縁からつながり、始まったのだそう。
「ここはもともと『プラス』というカレー屋さんで、私も何度か食べにきていたんです。そしたらある日、店主の方から『お店を閉めるので居抜きで使いませんか』って声をかけていただいて。それまでは大変そうやし、お店はやりたくないって思ってたんですけど、せっかくだからチャレンジしてみようかって思えたんですよね」
故郷の個性を味わえるお店
せっかくお店をオープンするならと、こだわったのは地元・高知県産のもの。一皿に20gも使用されている生姜は、高校時代の同級生から仕入れています。副菜に使用するイタドリは、ご家族が地元で仕入れたものを送ってもらっているとのこと。お米や味付けに使うゆず果汁も高知県産です。
お店で飲むことができるお酒も、もちろん高知のもの。栗を使用した焼酎「ダバダ火振」、高知のハーブを使用したクラフトジン「MAKINO」など、なかなかお目にかかれない珍しいお酒も揃っています。
「高知県に特化したWebメディア『高知家の〇〇』のライターさんが取材に来てくれたんですが、その際に大阪にいる『土佐酒アドバイザー』の方を紹介してくれたんですよ。お店で仕入れるお酒について、アドバイスをいただきました。お店にあるものはほとんど『これは〇〇さんの縁のもので〜』って紹介できるぐらい、それぞれにストーリーがあるんです」
四条大宮にお店をオープンして、およそ2ヶ月。間借り時代から通う常連さん、お店の近所の方など多くのお客様に愛され、早々に完売することも。
「お客さんに雑穀ごはんがあったら嬉しいなと言われたので、ご飯も白米と雑穀から選べるようにしました。副菜も3種類だったんですけど、あれこれと作っていたら6種類に増えてしまって。大変なんですけど、喜んでもらえたら嬉しいので、頑張ろうかなと思って。今後は日替わりカレーもやりたいですね」
人との縁を大切にし、誰かに喜んでもらいたいと何事もひたむきに取り組んでいる河野さんの想いが詰まった南国ジンジャーのカレー。だからこそ、たくさんの人が南国ジンジャーに足を運ぶのだと思います。
記事を読むうちに、河野さんの作るカレーが食べたくなってきたのではないでしょうか。今日のお昼はぜひ、高知愛たっぷりのキーマカレーを召し上がってください。一口食べたらきっと、あなたもファンになるはずですよ。
編集:北川由依
執筆:ミカミユカリ
CHECK OUT
昨年、京都移住計画でスタッフとして関わったイベント「夏至カレーナイト‼︎」で、惜しくも食べそびれてしまった南国ジンジャーさんのカレー。やっと念願叶って、食べることができました。そして、2023年6月21日に開催する「夏至カレーナイト‼︎2」でも出店していただくことが決定しました!カレー好きの方も、夏至好きの方もぜひご参加ください。お待ちしております!
お知らせ
南国ジンジャーさんにも出店いただくイベントを、夏至の日に開催します。はじめましての方も、おひとりさまも大歓迎です。ぜひ遊びに来てください。
- 日時:2023年6月21日(水)19:00〜21:00(開場:18:30)
- 会場:DAIDOKORO(京都市中京区河原町通御池下る下丸屋町390-2 QUESTION8F)
- 参加費:3500円(2種のカレーとワンドリンク付き)
- 定員:40名