みなさんが「京都で暮らす」ことをイメージしたとき、仕事やコミュニティはもちろんのこと、「どんな空間に住むか」というのは期待がふくらむ大切な要素ではありませんか。
京都移住計画では、web上で物件紹介もしていますが、どこにでもあるような物件や不動産の情報ではなく、大家さんのお話を聞いたり、住まいの作り手のこだわりを伝えたり、その土地のもっている個性や魅力を感じてもらったり、なるべく生きた情報を提供したいと思っています。
「空き家や古民家などを活用(リノベーション)して、自分らしい京都暮らしを実現したい」あるいは「親戚が京都に空き家をもっているがどう活用したらいいかわからない」そんな方々に参考にしてもらえるように、実際に移住して暮らしを実現した事例から京都市の空き家活用の補助金などの制度まで、多面的な京都のリノベーション事情を知っていただける機会を作りました。
本イベントは、京都市まち再生・創造推進室という空き家活用の政策などを取り組む部署を主催、京都移住計画が企画運営を行わせて頂き、12月18日(土)に東京にてイベントを開催しました。場所は渋谷・並木橋からほど近いロケーションにある、築80年以上の古民家を改修して再生した『並木橋OLD HAUS』。今回は約30名の方に集まっていただいたイベントの様子をお伝えします。
昭和初期の薫りを残す建築は伝統的な和の雰囲気と西洋のモダンな様式が混在しています。
玄関も、まるで京都の路地裏にある町家のような趣です。
敷地内には石灯籠のある庭もあります。
「移り住む上で大事な3つのこと」
まず司会進行として京都移住計画の代表である田村から、当日のイベントの流れについて説明がありました。
続いて京都市都市計画局 まち再生・創造推進室空き家対策課長の矢田部衛さんから、同推進室が、空き家対策をはじめ、密集市街地の対策や地域のまちづくり支援などを総合的に展開することで、京都らしい町並みや風情など、京都の魅力を最大限に生かしたまちづくりに取り組むために創設された組織であることが紹介されました。
その後、3人1組になり、自己紹介や今の状態、今日のイベントで持ち帰りたいことなどを話し合いました。その結果、今回の参加の目的が「京都に住みたい」という希望者が約半数、「イベントに興味があった」が多数、またすでにさまざまなエリアで「何かはじめている」人も3人ほど参加されていることがわかりました。
田村から、移り住むために必要なこととして大事なのは「居・職・住」の3つであること。それぞれに対する京都移住計画の取り組みが紹介されました。また移り住むためのキーワードとして、以下の6つの視点があると説明がありました。
- こだわり、モノ(小商い)
- スローライフ(農的な暮らし)
- 教育・福祉(子育て・介護)
- 地域コミュニティ(人とのつながり)
- スタートアップ(独立・起業、事業継承)
- 地域や地元への貢献
「移住は手段であって目的ではありません。移住することで自分たちのしたい暮らしや仕事ができることが大切です」と田村は話します。
「リノベーションで始める京都暮らし」
今日のイベントのゲスト講師である岸本千佳さん
滋賀県立大学環境建築デザイン学科卒業後、東京の不動産ベンチャーに入社しシェアハウス事業・DIY事業の立ち上げに従事。 2014年京都にUターン、京都移住計画の「住」部門を担当。2015年よりaddSPICE創業、物件のオーナーから不動産の企画、仲介、管理まで一括で引き受ける。改装可能な賃貸サイト「DIYP KYOTO」の運営、不動産に関する執筆などでも活躍。NHK Eテレの「人生デザインU-29」にも出演。「もし京都が東京だったらマップ くらべて楽しむ『街の見方』」出版
まず会場である『並木橋OLD HAUS』の説明がありました。岸本さんが東京にいたころの仕事の仲間がリノベーションで作った空間だそうです。渋谷の一等地にこんな場所があったというのは感動もので、あえて今回のテーマに合うとこの場所を選んだそうです。
岸本さんは、京都で自分の思い通りの物件に出会い、自分のしたいことを実現するために大切なのは、下記の「京都プロジェクト実現五箇条」だと話してくれました。
1.地域性は歩いて会得せよ
→京都でも地域によって特色が違う。自分に合った場所は足で歩いて探すのがベスト
2.大家との交渉はロマンとソロバン
→京都では資金だけではなく熱意が必要、大家さんの心を動かす誠意と企画力が必要
3.物件の探し方はできるだけ多く
→サイトに載っている物件はごく一部、顔の広い人と知り合ってクチコミで情報を得る
4.業種関係なく合う人との横のつながり
→不動産業だけでなく、飲食業や出版業といった異業種の人が持っている情報が大切
5.補助金、助成金、融資をうまく利用する
→創業補助など、行政などのサポートは活用したほうがいい
岸本さんが最近上梓した「もし京都が東京だったらマップ くらべて楽しむ『街の見方』」の中でも、実際に足を運んで、その街の魅力を知ることが大切だと話しています。物件のオーナーさんから相談を受け、建物や環境、資産状況に応じて活用方法を提案し、使う人を募り、その後の運営までを一括で実施している岸本さんならではの実体験に基づいたアドバイスを聞くことができました。
次に京都に移住してきて、自分たちのしたいことを実現している人達の事例が紹介。3つのケーススタディを通じて移住や空き家活用のイメージをしてもらう時間になりました。
その後、アーティストが住みながらリノベーションしていくプロジェクトの紹介や計画されている物件がゲストハウスやシェアハウス、複合施設など特殊な活用が出来るか否か、法的な見地から調査するサービス「カフカリサーチ」などの紹介もありました。
「空き家で何をしてゆく?」ミニワークショップ
3人1組で、「空き家で何をしていくか」について話し合いました。
その後、全体共有と質疑応答の時間が設けられました。具体的な物件情報が欲しいという方やコワーキング施設についてなどの情報が欲しいという方からも質問がありました。
なかには「失敗の法則はある?」との質問も。それに対して岸本さんからは「通常の物件サイトにないとあきらめてしまわず、ネバリが大切です。また、ある程度の期間のサダメがあった方がいいですね。思いが途切れてしまうこともありますから」と回答しました。
「京都市の空き家活用」に関する制度紹介
まち再生・創造推進室担当係長の刑部多恵子さんから、具体的な京都市による制度が紹介されました。さまざまな空き家活用のための補助金制度や「住むなら京都」と題し、総合相談窓口が京都と東京にも用意されていることなどが説明されました。
イベント終了後も、建築に対する興味の高い方が多く、リノベーションされた会場を、見学される方がたくさんいました。
次回は、2月12日に京都に会場を移し、実際に活用を検討中の物件オーナーとの「空き家マッチングイベント」を開催。京都への移住はもちろん、空き家(古民家)の活用などをお考えの方は、直接物件のオーナーと知り合える貴重な機会になりますので、ご興味がある方は是非お越しください。