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「京都LWS」(京都ローカルワークステイ)は、京都府各地のユニークな企業の魅力を知り、課題解決に向けた取り組みを通して、地域との新たな関わり方を見つけていくプログラムです。
京都府・京都府農業会議とともに京都移住計画(株式会社ツナグム)が企画しています。
2023年に実施した5つのプログラム、4箇所目は綾部市・奥上林地区を訪ねました。
今回は、人口400人あまりの小さな集落を維持する試みに取り組む、地域のシェアスペース「二王の栖」での現地体験レポートです。
高齢化率65%の限界集落 綾部市・奥上林
限界集落とは、人口比率の半数以上を65歳以上の高齢者が占める集落を指します。
綾部市奥上林地区の高齢化比率は約65%。耕作放棄地の増大や、社会インフラの老朽化が進む、日本の田舎の先進地とも言える地域です。
一方で、京都府が指定する「移住促進特別区域」として、行政や自治会、企業などが積極的に移住者の受け入れや活動のサポートに取り組んでいて、UIターンが増えつつある地域でもあります。
地域活性化事業からうまれた交流拠点「二王の栖」
「二王の栖」は、京都府を中心に事業を展開する、建設機械総合商社「志摩機械株式会社」が取り組む、奥上林の地域活性化事業からうまれた地域の交流拠点です。
地域住民と交流を図りながら、カフェ運営や、耕作放棄地や空き家の利活用、農地再生、自然資源を活用した体験コンテンツづくりなどを行っています。
『山紫水明の里で地域資源を生かした、食と宿泊と体験をデザインする3日間』
京都ローカルワークステイでは、二王の栖がプロデュースする「くう・ねる・あそぶ」コンテンツを体験しながら、参加者と限界集落の維持に対する試みや、耕作放棄地活用のアイデアを考えます。
みなさんが今回のローカルワークステイに参加した理由
今回は、愛知、福井、京阪神から、フリーランスのデザイナーやWEBディレクター、ライター、楽器メーカーのエンジニアの方にご参加いただきました。
- スキルを活かしながら、今後は地域に密接に関われる仕事が出来たらと思っているので、新しい刺激や気付き、動くきっかけを見つけられたらと飛び込んでみた(デザイナー)
- あまり多くの要素がない場所で、日常から距離をとることで、新しいインスピレーションにつながりそうな気がしている(エンジニア)
- 過疎化が進む地方の都市・山村地域での、地域ブランディングの取り組みに興味がある。その地域特有の魅力を見つけて、外に向けて発信することでどのようなフィードバックがあるのか試してみたい(WEBディレクター)
- 地域の魅力を最大限に生かして、ブランド価値を高める施策に興味がある。同時に、地域経済の発展や社会的魅力の向上を目指す取り組みについても考えてみたい(UI/UXデザイナー)
- 企業の取り組みや、地域の魅力を引き出すお手伝いができればと思っている。また、これまで哲学カフェや動画講座などさまざまなイベントを開いてきたので、コンテンツの企画も考えてみたい(ライター)
<1日目>
綾部駅集合後、早速二王の栖へ向かいます。二王の栖がある奥上林地区は、綾部市の最東側、綾部駅から車で約40分のところに位置しています。福井県境に接していて、買い物などに出るには、綾部市街地よりも福井やお隣の舞鶴市の方が近いエリアです。
奥上林地区に到着し、お昼ご飯をいただいた後は、近くにある「光明寺 二王門」へ。
鎌倉時代に建立された二王門は、京都府北部の建造物で唯一国宝として指定されていて、地域の観光資源のひとつでもあります。
昆虫好き、かつ豊富な自然体験の知識を活かして、ネイチャーガイドとしても活動する山下さんに案内いただきながら、周囲を散策しました。
光明寺が建つ君尾山では、秋から冬にかけて、丹波地方の山々が海に浮かぶ島のように見える雲海を眺めることもできるそうです。
二王門を後に、続いてはスタートしたばかりの宿泊事業について、お話を伺います。
志摩機械では、奥上林地区の空き家や古民家をリノベーションし、一棟貸しの宿「二王の宿」として宿泊事業を展開。現地体験を実施した11月は、3棟の開業準備の真っ最中でした。
「綾部に来る観光客数は、コロナ禍以前に戻りつつあるものの、地域での滞在時間は短い。上林が持っているアクティビティの可能性を掘り起こして、滞在時間の延長につながるコンテンツを作ることも、この地域の活性化に取り組む僕たちの役割だと思っています」(山下さん)
また、「宿泊事業では、ハイヤーの手配や、宿泊前後の滞在コーディネートも行います。特に海外からのゲストは、地域での交流を求めている。里山でしかできない体験は、観光資源でもあるんですよね」と続けます。
「住民のみなさんの中には、観光客が生活や自然環境を脅かすことを懸念する人もいます。宿泊事業で出した収益を、地域新聞の配達や、駅やケアセンターへの送迎など、住民ファーストのサポートに回す。そういった循環を作っていきたいですね」(山下さん)
地域のみなさんとの関係性を深めながら、限界集落を維持するための試行錯誤が日々行われています。
<2日目>
この日は、「上林農泊いきいきプロジェクト委員会」が企画する「もち米の学校」に参加します。
▼工忠さんの活動は、こちらの記事でもご紹介しています
地元と移住者が共に地域を盛り上げる。綾部・上林での暮らしとなりわいを楽しむ人々の暮らしを巡る
もち米の学校は、地域のお米農家さん、住民のみなさんと共に、1年間を通して田植えから収穫・天日干し、脱穀、お餅づくりを体験するプログラムです。私たちは、第4回の脱穀の工程に参加させていただきました。
収穫して天日干しした稲の穂先から、足踏み式の脱穀機を使って籾(もみ)を外していきます。
脱穀作業の傍らで、お昼ご飯の準備。羽釜でお米を炊きます。
水源の里とも呼ばれる上林一帯は、上質で豊富な水と、肥沃な土壌を生かしながら、古くから稲作が盛んに行われてきた日本有数の米どころ。
地域のみなさんに用意していただいた、たくさんのおかずと共に、新米のおいしさを味わいました。
午後からは、籾の選別作業。脱穀した籾には、稲の葉っぱや藁が混ざっているため、唐箕(とうみ)という木製の道具を使って取り除いていきます。
今では機械で行う脱穀作業ですが、もち米の学校ではあえて、クラシックな道具を使った手作業にこだわっているそうです。「その方がみんなとたくさん話ができるでしょう」と工忠さんに教えていただきました。
来年の稲作に向けた肥料として、脱穀の後に残った藁を田んぼに撒いて、今回のもち米の学校は終了です。
夕食は、二王の栖から歩いて10分程度のところにある「拍屋」さんへ伺いました。 豊かな自然環境でのびのびと飼育された、上林鶏の鉄板焼きが名物のお店です。
綾部の惠みに、おなかも心も満たされた時間でした。
<3日目>
最終日は、現地体験を通じて感じた上林の魅力を、観光資源としてどのように活かすことができそうか、”生涯リピーターづくり”をキーワードにディスカッションしました。
「山下さんのネイチャーガイドは、自分の子どもにも、夏休みの自由研究の機会に体験させたいと思った。ファミリーを対象にしたキッズフレンドリーなコンテンツは、遠方からも参加したい人は多いのでは」(グラフィックデザイナー)
「体験の積み上げが、地域への愛着につながると思います。例えば、香川の讃岐うどん文化を自分で作りながら学ぶ、さぬきうどん英才教育キットのように、自宅でも地域の文化を体験できるような仕掛けがあれば、綾部をもっと身近に感じて、頻繁に足を運ぶきっかけになるのでは」(UI/UXデザイナー)
「耕作放棄地を含めて、上林には使える場所がたくさんある。生涯リピーターを増やす取り組みとして、廃校や田んぼ、里山一帯を使った芸術祭のようなコンテンツも考えられそうですね」(WEBディレクター)
「みなさんにお話しを伺って、綾部にはまだまだ伸びしろがあるなと感じています。地域の魅力を伝えるには、地域事業者が良き旅人であることが大切。外と中とを行き来しながら、地域資源を活かした、綾部ブランドのブラッシュアップに磨きをかけていきたいです」(山下さん)
限界集落を維持するための、試行錯誤を肌で感じた3日間。「壊す勇気を持つより残す努力を続けたい」という山下さんの言葉が、強く印象に残りました。
引き続き、奥上林とのつながりを深めていきながら、良き旅人として上林でできることを考えていきたいと思います。
プログラムのその後
意見交換で出てきたいくつかのアイデアは、プログラム終了後から山下さんと参加者とで企画会議を重ねて、今年の春に開催された二王の栖2周年祭のコンテンツとして、早速実現しています。
“外から目線”で地域資源を編集する。移住でも観光でもない多様な地域との関わりが、今後もいろいろと生まれていきそうです。
お知らせ
京都ローカルワークステイ2024 〜京都で「働く」「暮らす」をデザインするプログラム〜
「京都ローカルワークステイ」は、京都府各地でユニークな活動を行う企業と課題解決に向けたプロジェクトに取り組みながら、京都での生き方や働き方をデザインしていくプログラムです。
プログラムを通して、多様な生き方・働き方の選択や、チャレンジの実現を可能にする、京都ローカルとの継続的な関係づくりを目指します。
エントリー期間:7月1日(月)〜8月31日(土)中まで