2018.05.17

地元貢献への想いを叶える。Uターンキャリアとしての政治家

京都の鴨川からこんにちは!京都でライターや編集者をしている「おかん」と申します。風強い!!

以前、書籍『京都移住計画』の編集や、移住茶論のサポートなどで、京都移住計画とは関わりをもっています。

地元に戻って起業や事業承継をする人など、様々な働き方の紹介をしている京都移住計画。今回は少し変わった、仕事を紹介します。

それは……政治家!

京都市役所には、選挙活動によって市議会議員となった政治家の人々が働いています。今回は、市議会議員として京都市のアレコレのために活動している政治家にお話をききました。

お話をうかがうのは、京都のローカル政党「京都党」のおふたり、大津さんと江村さん。

【大津裕太】地域政党京都党政調会長。京都市のお隣、八幡市が生まれ育ちで、京都大学に進学。学生時代はNPOに所属、学生が運営する着物屋「ichi.man.ben」の創設に関わるなどの大学時代を過ごし、株式会社リクルートエージェントへ入社し上京。その後Uターンし、大阪での税理士法人勤務を経て2013年、京都党に入党。2015年中京区の選挙区にて当選。2児の父。

【江村理紗】京都党副代表兼幹事長。幼稚園から高校までずっと嵯峨・嵐山エリアにて育つ。同志社大学卒。学生時代は京都党代表・村山祥栄の事務所でインターンをおこなう(当時は無所属)。卒業後は東京の自動車関連の商社に入社。その後、村山の新党結成に応じてUターン。京都党の結党メンバーとなり2011年、右京区の選挙区で当選を果たす。

京都ローカルのためにつくられた地域政党「京都党」

「会議室で話聞いてもおもしろくないんで、鴨川いきましょう!鴨川!」とまくしたてたら快くOKしてくれた。という訳で青空インタビュー。京都移住計画の代表を務める田村さんと一緒にお話を聞いていきます。

ー:まずはですね……そもそものお話なんですけど「京都党」って何なんですか?

大津さん:京都党は、地域政党のひとつですね。「京都の京都による京都のための政治」をテーマに、京都という地域の暮らしを向上させるために活動しています。京都市会に4名の議員を有しています。

ー:地方政党!ああでも、東京には「都民ファーストの会」がありますもんね。

江村さん:ただ、京都党は国会に議席を有していません。党首の村山祥栄は一度、国政への参加を打診されて断った過去があるんです。国政ももちろん重要ですけど、国会がマクロであれば京都党はミクロな目線、地域の人々が本当に暮らしやすくなるために活動する政治団体だと思っていただければ。

ー:例えは変かもしれませんけど、これだけ日本全国たくさんの人がいて価値観も異なるなかで、携帯キャリアがドコモとauとソフトバンクの三社しかないより、たとえばUQとかLINEモバイルとか、格安SIMのような個人の使い方にあった携帯キャリアがあって然るべきですもんね。

江村さん:ああ、たしかに例えは言い得て妙かもしれません。国政にも議席がある政党が携帯の大手3社だとしたら、私たちは京都に焦点を当ててプランを展開する格安SIMみたいなものかもしれませんね。

大津さん:僕たちは地域に根ざしているからこそ、大きな政治団体にはできないこともできるよう心がけています。なんせ党首の村山がまだ40歳なんで。「先生」と呼ばれることも嫌いますし、候補者の年齢もめちゃくちゃ若いんですよ。

江村さん:結党時のメンバーは代表の村山以外、議員経験者はいなかったんです。民間企業に勤めていた20〜30代が中心。直近の統一地方選でも、上京区で当選した女性議員は当時25歳でした。

ー:若ッ!「先生」という呼び方を嫌うあたりもインディーズ感があって面白いですね。

東京での会社員を経て、政治の道を選んだふたり

ー:おふたりはどちらも「Uターンキャリアとして地元で政治家になった」んですよね。そのきっかけって何なんでしょう?

大津さん:僕はもともとリクルートエージェントで中途採用の仕事をしていたんです。Uターンのきっかけは……中途採用に携わるなかで「地元・関西の雇用を良くしたい」と思ったのがきっかけですね。あとは……東京が合わなくて(笑)。友達がぜんぜんできなかったんですよ。

ー:えっ、そうなんですか。

大津さん:京都ってコンパクトな街じゃないですか。だから横の繋がりがとても強固なんですけど、東京は街の規模も大きいし人も多い。まちづくりに関するイベントにも参加しても、その場で出会って終わり……というのが多くて。

ー:それだと余計に地元への思いも強くなりそうですね。

大津さん:ええ。それで関西に戻ってきて、税理士法人に就職しました。そこでコンサルタントとして働いて。雇用向上のための勉強感覚で、京都党の政治塾に入り、そこから政治家への道を選びました。

ー:大津さんの場合は「雇用」にまつわることがきっかけで京都党に入ったと。じゃあ、江村さんの場合はどうなんでしょう。学生時代から京都党代表・村山さんとはつながりがあったんですよね。

江村さん:当時は無所属だった村山の手伝いを学生時代にしていたんですよ。大学時代は政策学部にいまして、勉学の一環として現場を見ようと思って。

ー:政策学部ですか。じゃあ学生のうちから政治には関心があったんですね。

江村さん:それが政治家にはなりませんでした。私、理系に憧れてたんです。もともと理科・数学が得意だったのに、高校は文系のクラスに入ってしまって。それでずっと、就職したら理系の知識を活かしたいと思っていて、卒業後は車関係の商社で商品開発の担当をしていました。

ー:政策学部、全然関係ない方向だ。商社でのお仕事は楽しかったんですか?

江村さん:楽しかったですね〜。ありがたく社会人2年目からさっそく自分のイニシャルを入れた商品を開発させてもらったんですが、退職して数年たった現在でもその商品は売れ行き好調らしくて。

ー:おお〜、すごい。ちゃんと成功もおさめてる。だったら退職して政治の道に進まなくてもいいような……?

江村さん:ある日、村山から「京都党を立ち上げるからお前も加わらないか」って誘われたんですよ。でも政治家なんて想像もつかないし「秘書ならいいですよ」って答えていたんです。それでも村山の誘いがスゴくて……。で、よく考えて、これを断ったらこんな機会はないかも、と感じて。結局、秘書ではなく、議員として政治家を志しました。

ー:なるほど。ひょっとしたら、ちゃんと商社で成功を収めていたからこそ、やめて政治家になれたのかもしれないですね。中途半端な状態で辞めると後でモヤモヤが残りそう。

江村さん:そうかもしれませんね。

声を広く大きく届けるには、政治家が一番の近道だった

ー:最初は政治家にならずに商社に入った江村さんですけど、そもそもどうして政策を専攻したんですか?文系なら経済学部とか経営学部とか、他にもあるじゃないですか。

江村さん:政治家は目指していなかったんですけど、政治というか、行政には興味があったんです。いまは廃止されているんですが、高校入試の「総合選抜」って仕組み、ご存知ですか?

ー:居住区から学区を割り振って、高校合格者を制度下におかれた各校に平均的に振り分ける制度ですよね。

江村さん:そうですそうです。先述した「理系に憧れていた」っていうお話ですけど、私は総合選抜の結果、志望する高校に通うには特進クラスで受けるしかなくて。それで、志望校の理系だとすごく倍率が高そうだったので、やむを得ず文系を選んだんです。どれだけ頑張っても結局校区で高校が決まってしまうなんて……と不満で不満で。

ー:私の地元も、当時は総合選抜だったのでわかります。あれ、高校の不合格者はほぼいなくなるけど、学校内での学力格差が大きかったり、居住区で高校が決まるから希望してる学校に行けなかったりデメリットが大きかったんですよね。結局、いまはどの都道府県も導入してない。

江村さん:行政が敷いた制度のせいで誰かが損をするのが嫌で、理系企業への就職の次に公務員も将来の選択肢に入れていました。でも、結局のところ、公務員になっても問題の根本は解決できないんですよね。

ー:問題の根本は解決できない……?

大津さん:世の中の仕組みに直接、影響力を与えられるのは公務員ではなく政治家なんですよね。これは会社員と政治家にもいえることでして。

ー:といいますと?

大津さん:「関西の雇用を良くしたい」と思って税理士法人で働きましたけど、自分が担当できるお客さんにも限りがありますよね。志に対して自分が与えられる影響が思ったより少なかったんです。

ー:なるほどー。たしかに屋根の上から喋った方が、多くの人に声が届きますもんね。

大津さん:それに「政治が雇用に影響する」ということを実体験として知ってまして。というのも、僕の就職活動時は小泉政権下にありまして、経済がよくなって雇用が向上していた時代だったんですよね。でも、政権が変わる、つまり屋根の上から喋る人が変わると、モロに雇用に影響を与えます。僕らよりもちょっと年上の人やちょっと年下の人もとても苦労したという方も多いはず。

江村さん:公務員も、個々人で言えば、政治家の敷いた大きな方向性もとでしか動けないので、世の中の仕組みそのものを変えたり、社会の方向性を変えていけたりする、その力を最も持てるのは政治家なんですよね。

大津さん:社会をもっと良くしたいという思いや、こうしたらもっと良くなるのに……といった具体的な政策のアイデア。そんな声を広く大きく届けるには、政治家が一番の近道になる。僕はそう思いますね。

ー:なるほどー。「Uターンキャリアの選択肢に政治の道がある」っていうのが最初はいまいちピンときてなかったんですけど、すごく納得しました。そりゃあ制度そのものを作ったり変えたりできる人の方が影響力が大きいですもんね。

大津さん:そのぶん、影響を受ける人たちが辛いことや悲しいことにさらされないように常に意識しないといけませんけどね。誰かに影響を与えられる立場にいるという緊張感は常に持って行動しています。

江村さん:あ、あと、制度に不満を持つ人は市役所の窓口ではなく、我々、政党や政治家に文句を言ってください!市役所の窓口で働く公務員の皆さんは、現行のルールを変えることは立場上なかなかできないので。

意外と政治家は身近でごく普通の人間

ー:おふたりの政治家を志した理由はわかったんですけど、政治家って家が裕福だったりとか、地元の名家とか、なにかバックボーンがないとなれないんじゃないですか?

大津さん:国政に限ってはまあ……家柄は正直ありますけど、市議会議員に至ってはそんなことないですよ!僕も江村もごく普通の中流階級な家庭です。

江村さん:選挙活動にかかるお金も、皆さんが思っているよりも意外とかかりません。もちろん家族・親族のサポートなどが必要になりますが。ただ実際のところ、母親は、出馬するより見合いしてほしかったみたいですけど。

ー:笑っちゃう。

江村さん:私の場合、最初の選挙のときは400万ほどでした。結婚式と披露宴と二次会の結婚式コース一式ぶんくらいですよね。

ー:結婚費用で出馬……。でも世の中には、残業代なしボーナスなし家賃補助なしで手取り15万の人とかウジャウジャいるんですよねえ……。それでもそんな高くないって言えます〜?

大津さん:うっ、まあ、その話はまた次回……。しかし、そういう人たちの雇用を少しでも改善できるように努力して結果を出すのが僕たち政治家の仕事ですから。

江村さん:あと、家柄や経済レベルもそうですけど、政治家ってすごく堅い人物に思われますけど、中身はみなさんと変わらない、普通の人間です。人に影響力を与える立場にあるから、常に背筋を伸ばしているだけで。やっぱり支持者を含む市民の方々には常に見られていますからね。

ー:そうなんですね……!私は別に政治家も木屋町で酔っぱらっていいと思うし、オフの日にはジャージでもいいと思っちゃうんですが。

大津さん:いやいやいや、僕らの生活費は税金で賄われているんですから、そんなことできませんよ!まあでも……大らかに思っていただいてありがとうございます。

江村さん:私は実家に暮らしていて、妹が看護師なんですけど、夜勤のときにはタクシーで出勤するんです。そのタクシーを見た近所の方から、私が夜によくタクシーで出かけていくとウワサされたことも……。思っているよりも政治家は厳しい目で普段から見られています。

ー:ええーッ!?それは不憫すぎる。近所の皆さんあまり言い過ぎないであげて……。

江村さん:でも、言い過ぎるってことは興味関心をもっていただいているということなので、やっぱり細かく声をかけてくださる方々には結果で恩返しがしたいですね。

ずっと政治家を続けられるかはわからない

ー:おふたりはずっと市議会議員を続けるんですか?国政も考えてます?

大津さん:僕は全然考えてないですね。身近な人のことを考えられるのは、やっぱり国会議員ではなく市議会議員なので。

江村さん:先述したように、党首の村山は過去、国政へ誘われて断った過去があるんです。地域への愛が強い政党だからこそ、国政への進出はあまり考えられないですね。

大津さん:さらにいえば、これからもずっと政治家を続けられるかなんてわかりません。

ー:ええ!?そうなんですか?

大津さん:職業として政治家をやるのには嫌悪感しかないんですよ。志や目標や、解決したい問題がないのに、皆さんからの税金で暮らしていくのは良くないですよね。また、これは政治家になってはじめてわかったことですが、声を大きく届けられるのは政治家でも、場面によってはビジネスの方が社会問題を解決できる場合もあるんです。

江村さん:いまは転職がしやすい世の中になっているので、きちんと活動をしていたら、政治の道を退いたあとも次のキャリアは自ずと開けてきますよ。自分で商売をするという手もありますしね。実際、市議会議員はほとんど自営業みたいな働き方ですから。

「地元に貢献したい」という思いの先に、政治家の選択肢もある

いかがでしたか?

そもそも「Uターンキャリアの選択肢に政治の道がある」っていうのは、なかなか思いつかない選択肢ですよね。

でも、Uターンで地元に戻る人って「地元のためになにかしたい」という思いを持つ割合が多いと思います。まちづくりや地域を元気にしていきたい、地域の人が苦しむルールそのものを変えていきたいと思うとき、意外と身近なところ、たとえば独立起業や転職と同じような目線で、政治家になるという選択肢があるのかもしれません。

現在京都党では、来年の選挙に向けた仲間も募集中とのこと。どんなポリシーで政治活動をしているかなど、より詳しく話を聞きたい方は気軽にドアを叩いてみて下さい。もちろんUターンしてきた人でないと駄目というわけではありませんので、ご安心を。

京都党WEBサイトはこちら

執筆:おかん(ヒラヤマ)
写真:もろこし

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