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京都には、季節ごとの行事やならわし、風物詩がたくさん存在しています。このコラムでは、1年を春夏秋冬の4つに分け、さらにそれぞれを6つに分けた「二十四節気(にじゅうしせっき)」にあわせて、京都移住計画に関わる人たちの等身大の京都暮らしをお伝えします。
年間50回京都に行くぞ!と決めて2009年から2023年まで15年間それを達成した私には、このコラムの依頼がどれほど心躍ったか、容易に想像できるだろう。
そして、今回のコラムのテーマは『八十八夜』。
家業が「製茶問屋・小売茶舗」であるにも関わらずいまだ正式には跡を継がず外部の会社で働いている私には、これまた打ってつけのテーマだ。
京都とお茶の“外”にいる私が書く京都とお茶のお話、少しお付き合いください。
夏も近づく八十八夜
八十八夜といえばお茶の歳時記のこと。立春から数えて八十八日目あたりがちょうどお茶の摘み取り期にあたり、数字の8の末広がりもあり、縁起の良い日とされてきた。ここで摘まれたお茶が一般に”新茶”と言われる。いわゆるお茶の初物だ。
お茶屋にとってこの時期は特別で、農家は早朝から深夜までお茶をつくるし、お茶を仕上げる人や販売する人もハツラツとしている。お客さんもどこかうれしそうにお茶を買いにきてくれる。つくり手も売り手も買い手も、とにかくにぎやかな季節だ。(ちなみにこの繁忙期がちょうどGWと重なるため、私はこどもの頃からGWに旅行に行ったことは一度もない。もっと言えば父の「GWはグリーンウィーク、お茶週間なんだぞ」という言葉を小学校高学年まで信じていた。お茶屋の倅にとってGWはゴールデンではなくグリーンなのである)
今や京都にもあまたのお茶屋・お茶カフェがあるが、ちょうどこの時期は新茶を活かした新商品がたくさん登場する。京都のカフェめぐりの際は、コーヒーや紅茶の合間にぜひ新茶メニューも味わってみてほしい。
ちょっとお勉強 お茶の流通工程
ここで、第一章でも少し触れたお茶の流通工程についてお伝えしたい。お茶の流通には、農家、製茶問屋、小売・カフェという三段階がある。それぞれの役割は、ざっくり以下の通りだ。
- 農家:茶葉を摘み、乾燥させる。
- 製茶問屋:茶葉を乾燥させ、ゴミを取り、時にはブレンドをして仕上げていく。※このブレンドを合組(ごうぐみ)と言う。
- 小売店・カフェ:仕上がった茶葉をそのまま、または微調整して販売する。
茶畑に生えているお茶の葉がみなさんのご家庭に届くまでには、このような長い旅路を経てくる。お茶への愛しさも増すでしょう。
通常小売店やカフェのある“消費地”は、畑のある“生産地”と離れているものだが、京都は消費地と生産地が近いため、農家・製茶問屋・小売店やカフェの三段階それぞれの楽しみ方ができる。詳しくみていこう。
お茶から楽しむ京都生活
八十八夜の季節、お茶屋さんがたくさんある京都の活気も頂点に達する。生産地としては言わずと知れた宇治や和束、南山城がある。市内から1時間もかからずに絶景の茶畑産地を訪問できる。やってみてほしいのが「お茶摘み体験」だ。京都・お茶摘みと検索すれば多様なお茶摘みイベントが出てくるのでぜひ参加してほしい。※農家さんはこれで生計を立てている。敬意をもって、くれぐれも茶畑ではしゃいでお茶の木を痛めたりしないように。
お茶を摘んだ後の工程は、そう、「製茶」だ。
京都の町中には製茶問屋もたくさんある。すべてではないが、名前に「〇〇製茶」とついているところが製茶をしているお茶屋さん。味の好みや、「こんなお茶がほしい」というイメージを店主に伝えてみてほしい。自分ならではのお茶を買う経験は、ちょっとドキドキしながらも誇らしい。
そして最後は小売店やカフェ。
自分で淹れるのとはまた全く違う味で出してくるカフェでは、プロのこだわりを味わってみよう。おススメのカフェもたくさんあるが、ここでは書ききれなかった。気になる方はぜひ直接ご連絡ください。
お茶業界も、そしてお茶のある景色がたくさんある京都も活気づく八十八夜。
今年のGWはぜひ京都でお茶まみれになりましょう。
執筆:松澤 康之
編集:藤原 朋
松澤 康之
埼玉県ふじみ野市の茶舗『松澤園』生まれ。関西の百貨店に就職し、主に企画畑を歩む。2012年、独学で日本茶インストラクター資格を取得後は、地域や企業を巻き込んだお茶イベントを多数開催。近年は「会社員×個人事業」「複業」「パラレルキャリア」としての側面からも注目を集めている。好きな京都の季節は5月、好きな場所は祇園白川の飛び石と賀茂川にかかる葵橋からの眺め。昔付き合っていた彼女に振られた哲学の道には今も近づけないでいる。