ほんのりと感じるスパイスの香り。ライスと共に口の中へ運ぶと、優しい味わいに思わずホッとする。この豆のカレーの名前はパリップです。

食を巡る第25弾にご登場いただくのは、左京区、京都大学吉田キャンパスから徒歩5分のところに位置する、スリランカ料理「クルンドゥ」。

店主の野間寛之さんは、高校時代をスリランカで過ごし、ゲストハウスの運営などを経て、2019年11月にお店をオープン。お店のこだわりや、おすすめメニュー、スリランカのことについてお話を伺いました。

身体に優しい家庭の味を

「クルンドゥ」は、スリランカの家庭の味を再現するレストランです。スリランカ料理は、お米の上に副菜などをのせて食べるライス・アンド・カリーのスタイル。クルンドゥでは、チキンやマトン、フィッシュなどのノンベジカレーやベジカレー、野菜たっぷりの副菜など、栄養満点のメニューが並びます。

数あるメニューのなかで特におすすめするのは、パリップとフィッシュカレーです。

パリップは、スリランカの家庭料理には必ずと言っていいほど登場する、豆を使った汁物。クルンドゥでは、レンズ豆を使用し、優しい味わいに仕上げています。絶妙なスパイス加減で、少しでも美味しくなるように試行錯誤している一品です。

もう一つのおすすめは、週替わりのカレーに登場するフィッシュカレーです。

「スリランカスタイルのフィッシュカレーは、日本のシーフードカレーとは全く違う。本場のフィッシュカレーはこんなに美味しいんやで、ということをみんなに伝えたい」

ココナッツミルクやチリパウダーなどを中心とした味付けは、魚の旨みが引き立ち、格別の美味しさです。

店内には、現地感たっぷりの仮面や置き物、絵画などが飾られています。これらは、野間さんがスリランカで購入してきたものです。美味しい料理に加えて、エキゾチックな店内の雰囲気が相まって、まるで南国に来たかのような気分を味わうことができます。

スリランカ料理を提供する思い

2009年までつづいた内戦など、国内情勢が不安定で、近年まで気軽に訪れることが難しかったスリランカ。野間さんは、両親の仕事の都合で、高校時代をスリランカで過ごしました。

「最初に行ったときはとんでもない田舎でびっくりしました。空港から自宅まで、信号が一個あったかどうか。地面も舗装されていない土のまま。それが1990年代のスリランカでした」

高校卒業後は、日本の大学に進学し、東京で就職。沖縄滞在などを経て、現在の場所で「ゲストハウス地球号 / Guest House The Earth Ship 」の運営を始めます。

スリランカ国内の情勢が悪化していたことなども重なり、しばらくスリランカとは縁のない生活を送ります。

ある日、大阪で、当時はまだ珍しかったスリランカカレー屋に入り、高校時代の記憶がフラッシュバックします。

「なんでこの味を忘れていたんだろう。ずっと食べたかったやつだ。自分も作りたい」

ゲストハウスの運営の合間をぬって、カレーの試作を繰り返した野間さん。2019年5月、多くの人に愛されたゲストハウスを閉業することになり、同年の11月に「クルンドゥ」をオープンしました。身体に優しい、現地の家庭の味を目指して営業しています。

楽しい場所と面白い人が集まる空間へ

ゲストハウスを運営していたときも、現在のクルンドゥも、根底にあるのは、楽しい場所と面白い人たちが好きだという思い。

「左京区は、京大や芸大の学生も多く、面白い人がたくさん集まる場所です。みんなが楽しい、面白いと思える場所にしていきたいです。あとはスリランカはとても素敵な国なので、興味を持つきっかけになってもらえれば嬉しいです」

大学生や教授、地域の方、子ども連れからカレーマニアまで、様々なお客さんが通うクルンドゥ。どんな方でもウェルカムな雰囲気は、野間さんをはじめとする素敵なスタッフの方々が作り出しているのだと思います。

現地の家庭の味とともに、不思議とワクワクする空間をぜひ楽しんでみてください。

執筆：山際 聡一郎
編集：藤原 朋

『クルンドゥ』
住所：〒606-8306 京都府京都市左京区吉田中阿達町33-15
営業時間：ランチ 11:30 – 14:00 LO／ディナー 17:30 – 21:00 LO
日、月曜日定休
Instagram：https://www.instagram.com/kurundu3315/