2023.05.26

京都からロマンの風を。どこか懐かしくて愛おしいバンド「浪漫革命」

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京都のおもしろい人を訪ねる「人を巡る」シリーズ。京都に移住した人の体験談や京都の企業で働く人をご紹介する連載コラム記事です。移住するに至った苦労や決め手、京都の企業ならではの魅力など、ひとりの「人」が語る物語をお届けします。

大人になったって忘れてたまるものか。僕らの熱がずっと騒いでいるーー。

浪漫革命の代表曲の一つ「青い春」の始まりの一節。未来への期待と一抹の不安を抱えながら今を必死に生きていたあの頃を思い出す、そんな一曲です。

市の人口の10人に1人(約150,000人)が大学生であり、まち全体に学生を受け入れる雰囲気がある京都には昔から「京都の大学生」という文化が根付いています。

そこにはいつの時代も変わらない、どこか懐かしくて愛おしい青春があるのです。

浪漫革命は、「京都の大学生」だった5人が結成し、ロック、ファンク、ソウルなどのジャンルを横断しながら、歌心のある演奏と等身大の歌詞で新たな音楽シーンを作り出しているバンドです。

最近は、すき家のCMソングに楽曲が起用されたり、ドラマに出演したりするなど、お茶の間に登場することもしばしば。また、お笑い芸人との企画を展開するなど、異業種とのコラボレーションも特徴の一つです。

今回はギター担当の大池奏太さんと後藤潤一さんにお話を伺いました。

「もう大丈夫。オレたちが来た!!」

取材場所は、たくさんの大学生が集う鴨川デルタ。そんな風景を眺めながら、「俺らも混ぜてもらおうか」「いや、それは一番さぶいやつやん」と談笑しながら始まりました。

「浪漫革命」は2017年5月5日、こどもの日に結成。その年に「SUMMER SONIC」や「RISING SUN ROCK FESTIVAL」などの有名フェスに出演し、ニューカマーとして瞬く間にその名を轟かせ、活動の幅を広げていきました。

コロナ禍ではライブ活動を自粛することになりましたが、その中で制作されたサードアルバムは、次なる挑戦に向けた決意を感じ取れる一枚です。

(提供:浪漫革命)

新旧問わずいろいろなカルチャーが存在し、東京のような大手産業とは一線を画している京都では、自分たちが良いと思った音楽を独自の視点で解釈していくバンドが多いと感じます。

浪漫革命が持っている京都のバンドっぽさは、現行のシティポップと、昭和歌謡のような親しみやすさを絶妙に保ちながら、遊び心溢れるサウンドを作るところではないでしょうか。

曲によっては、森見登美彦や万城目学の小説に出てくるような、ノスタルジックでゆったりとした京都らしい世界感を体験することもできます。

2020年にSNSでバズった「あんなつぁ」のMVには、出町柳商店街、鴨川デルタ、六曜社、同志社大学など、京都各地が登場する。浪漫革命の曲は、大学生の目線で書かれた歌詞も多い

しかし、楽曲制作にあたって京都らしさというものをそれほど意識したことはないそう。

「雰囲気とか人間性から京都感が滲み出ているんじゃないかな」と大池さん。

メンバーから京都らしさを感じるのはなぜでしょうか。

京都の大学生だった。

2017年当時、浪漫革命のメンバーは同志社大学に通う大学生でした。全員が軽音サークルに所属し、音楽をしたり、誰かの下宿先に集まったり、木屋町の飲み屋に行ったり……いわゆるどこにでもいる京都の大学生だったのです。

左)大池奏太さん 右)後藤潤一さん

ちょうど取材をしたこの場所は、軽音サークルの新歓イベントに参加した1回生の後藤さんと3回生の大池さんが、音楽の話で盛り上がった場所だそう。

後藤さんは、当時の様子を懐かしいまなざしで振り返ります。

「友達といる時間がとても長かった。六畳一間に10人くらいが集まって、映画見たり、お酒飲んだり。今思えば異常な空間ですけど、それが京都の大学生の特徴なのかな」

浪漫革命が持つ京都らしさは、京都で大学生活を過ごしたメンバーの暮らしや思い出から来ているのかもしれません。

取材当日も三日連続で会っているというお二人

また、2人の関係について「メンバーであり、友達」だと語る後藤さん。学生のときは毎日のように会っていたそうです。

当時行きつけの場所だった西陣周辺のお店

そうして、集まるようになった友達から「浪漫革命」は結成されました。

着々と力をつける。

最近はYouTubeポッドキャスト、モデル活動などもしている二人ですが、メインの仕事はやはり楽曲の制作。

楽曲作りに関して後藤さんは「メンバー5人でカラオケに行くイメージ」だと言います。

「カラオケに行ったら、どんな曲を歌うか、どの順番で歌うか、メンバーのノリも含めて考えますよね。例えば、ブルースは好きだけど歌わないなみたいな。楽曲作りもその感覚に近くて、5人でどんな曲を作りたいかということを一番に考えます」

個人の技術や思想だけに頼らない。メンバーの仲がいいからこそ為せるわざなのかもしれません。

(提供:浪漫革命)

一方で、楽曲制作だけではバンドは成り立たないと大池さんは言います。

「バンドって、小さい会社のイメージ。バンドマンがしたいことって開発部の仕事だけど、実際は、広報も会計も営業も必要なんです」

ライブの見せ方、スケジュール調整、SNSの運用、企画立案まで多角的な視点が求められるバンド活動。コロナ禍の制限や、厳しい音楽業界のなかで、メンバーはいろいろな役割を担いながら成長しているようでした。

東京で「京都」を魅せる。

京都で活動する浪漫革命は、次なるフィールド「東京」を目指しています。

拠点を移す理由については、「東京」に染まるようなイメージではなく「京都を東京に持ち込む」という意味合いが強いと言います。

大池さんは語ります。

「東京のライブで京都を感じてもらえるようにしたい」

提灯やのれんなどを持ち込んだり、篠笛や能管奏者とコラボしたりして京都を演出する(提供:浪漫革命)

最後に、京都の若者たちに向けて後藤さんはこのように話してくれました。

「浪漫革命を始めたときって、全員がこわいもの知らずだった。柄シャツで、サングラスをかけて登場するとか。京都は、出る杭も打たれない風土があるから、そういう雰囲気を生み出しやすいのだと思う」

続けて大池さんも「だから、もし京都で学生生活を過ごしているなら、京都に身を任せて、流れるように楽しんでほしい」と語ります。

京都からロマンの風を。浪漫革命のこれからを応援しています。

『浪漫革命』
HP:https://romankakumei.com
Twitter:https://twitter.com/romankakumei
Instagram:https://www.instagram.com/romankakumei

編集:藤原朋
執筆:山際聡一郎

CHECK OUT

筆者にとって、大学の先輩にあたる浪漫革命。後藤潤一さんは同じ軽音サークルの先輩です。先日、磔磔で行われたライブに久しぶりに訪れましたが、一曲目の「KYOTO」から多幸感のあるサウンドで鳥肌がたちました。

浪漫革命の良さは、周りを巻き込み、共につくりあげていこうとする意識が強いところだと思います。まさにこれからの時代に求められていることを音楽で表現しているようです。ぜひライブでその世界感を体験してみてください。

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