CHECK IN
京都のおもしろい場所を訪ねる「場を巡る」シリーズ。人が集いハブとなるような場や京都移住計画メンバーがよく立ち寄る場をご紹介する連載コラム記事です。一つの場から生まれるさまざまな物語をお届けします。
市街からちょっと足を延ばして向かった先は、大山崎町。阪急大山崎駅から歩いて7分、青い外観と真っ赤な車が目印のお店「CHOTTO COFFEE(チョット コーヒー)」。明るく気さくな店主・畑中真(はたなか まこと)さんが自宅の一角で営んでいます。
きっかけは、同じ町内のお店で「ここもおすすめですよ」と渡されたショップカード。インパクトのあるロゴに惹かれてふらっと立ち寄ってみると、ロゴとそっくりな店主畑中さんが出迎えてくれました。
店内に入って、まず目に入るのは大きなトチノキのカウンターテーブル。壁にはポップなカラーのマグカップやお皿、ロゴマークが入ったオリジナルグッズが並んでいます。店で使用し販売しているものはすべて、一度畑中さんが実生活に取り入れて使い心地を確かめ、毎日目にして心が躍るデザインであることも条件に吟味したもの。畑中さんの生活と繋がっている空間は、気心が知れた友人宅にお邪魔したような安心感があります。
コーヒーを通して「届けたいこと」の変化
「大手コーヒーチェーン店で20年働きました。さまざまな店舗に立ち続ける中で、自分が大切にしたいことが見えてきたんです。ちょっとした幸せ、ちょっとした楽しさ、ちょっとした安心感。そんなことを、ここでの会話や過ごす時間を通して、お客さんに届けたいなって」
カフェで働き始めた頃から「将来は自分でお店をやってみたい」と考えており、アルバイトから社員、店長と経験を積んできた畑中さん。コーヒーの提供だけでなく、そこから生まれる会話や時間を共有して繋がったご縁を大切にしてきました。結婚・育児を機に大山崎町に転居し、ずっと温めてきた「自分が大切にしたいこと」を実現できるお店をここで始めることにしました。
「お客さん」という共通点から広がるつながり
会話を大切にしている畑中さんだからこそ、生まれるつながりがあります。前職では、関東から京都旅行に来たお客さんと京都に詳しい常連さんを繋げて、3人で意気投合。今でも大切な関係だと話します。
「前職のお店は1日に何百人と来店されるので、お客さんのことを深く知る機会が少なく、繋げるタイミングも難しかった。でもここでお店をするようになって、一人ひとりのお客さんとより向き合えるようになりました。常に意識して、『この人とこの人が何か面白いことやれるんじゃないかな』と考えながら、お店に立っています」
店内では、居合わせたお客さん同士で盛り上がることもよくあるとか。ただ同じタイミングで訪れた「お客さん」という共通点だけで会話が弾む。会話をきっかけにして、自然に「何か一緒にやりましょう」という話になり、生まれたイベントが「CHOTTO COFFEE」にはたくさんあります。
以前「場を巡る」で紹介した「Puolukka Mill」の編み物教室とコラボした「CHOTTOニットの会」や、初心者向けのトレイルランニングやハイキングなどのイベント、町内にあるギャラリーのオーナーを招いての写真相談会、シナモンロールやタコス販売などを実施してきました。どれも「CHOTTO COFFEE」を訪れたお客さんとの会話がきっかけ。「自分自身が面白いと思えるもの」「大山崎町の魅力を感じられるもの」という畑中さんのワクワクが形になったイベントばかりです。
「やってみたい!」「やってみよう!」
大山崎町に引っ越す前は、京都市内の賃貸で暮らしていた畑中さん。どちらかというと「自分が住んでいる町」というより「寝て過ごす町」になっていたと当時を振り返ります。家を建てて、家族で暮らすうちに、町への思い入れを強く持つように。「自分のお店の個性を出すことで、大山崎の一部になれたら」と、お客さんとの会話の中で生まれた「やってみたい」を形にするようになりました。
大山崎町は、徒歩で散策できる距離にお店が点在していることも特徴です。近隣の個人店の方々とコーヒーを飲みながら「大山崎町のマップがあったら面白いね」という会話から生まれたのが、『会話で巡る、おおやまざき。』。同じ大山崎町にある「Hey!Mart」の辻󠄀本さんを中心に作成された、目的地やスポットが書かれていないこのマップは、会話を大切にしているお店が多い大山崎町だからこそ生まれました。
会話を通して、新しいワクワクを見つける畑中さんは、いつもの暮らしにちょっとした幸せなひとときを加えてくれます。
忙しい毎日に、ひと匙いかが?「ちょっと一息、ちょっと会話を、ちょっと誰かと」。
『CHOTTO COFFEE』
住所:京都府乙訓郡大山崎町大山崎尻江53-1
営業時間:9:30〜17:30
定休日:日曜・祝日・子どもとの行事日
Instagram:https://www.instagram.com/chotto.coffee/tagged/
執筆:鳥飼 鈴夏
編集:藤原 朋
CHECK OUT
畑中さんとの初めましては、今でも鮮明に覚えています。「そっくりな店主さんがいるから」と言われ、ロゴが描かれたショップカードを持って、扉を開けたあの日。テイクアウトで来店されたはずの常連さんと3人で大盛り上がり。閉店の時間を過ぎてしまったことが、とても印象に残っています。そこに居合わせたタイミングも全て必然だったのではと思わせてくれる空間は、とても楽しいです。
「ちょっと行ってみようかな」
この記事を読んでそう思ってくださったあなたのいつもの暮らしがワクワクしたものになりますように。