2023.07.10

日々の営みを、大切な家族と共に。上高野のセレクトショップ「陽ノ光」

CHECK IN

京都のおもしろい場所を訪ねる「場を巡る」シリーズ。人が集いハブとなるような場や京都移住計画メンバーがよく立ち寄る場をご紹介する連載コラム記事です。一つの場から生まれるさまざまな物語をお届けします。

今回の舞台は京都市左京区。比叡山の麓、川のせせらぎが聞こえる自然豊かなこの場所は、上高野と呼ばれるエリアです。

叡山本線・三宅八幡駅で下車して川の方へ歩いていくと、大きな橋の手前に白と緑のレトロなテントが目を引くお店が見えてきます。

お店の名前は、「陽ノ光(ひのひかり)」。

「伝統工芸や作品・作家さんに光を当てたいという想いでこの名前をつけました」

そう語るのは、店主の秋元岳至(あきもと・たけし)さんです。

東京出身の秋元さん。2018年に京都・西陣に移住し陽ノ光をはじめ、その4年後、ここ上高野に住まいと店舗を移しました。地元を離れ家族で移住すること、お店を持つこと、子育てなど、さまざまなお話をうかがいました。

ジャンルや国の垣根を越えて、“好き”を追求したお店

陽ノ光は、衣類や布、道具などを扱うセレクトショップです。作家がつくる一点モノの器やカトラリーをはじめ、韓国の伝統工芸品であるポジャギや、布団や敷物として使うイブル、アフリカの工芸品など、ジャンルと国の枠を越え、店主の秋元さんが惚れ込んだ素敵なアイテムが並んでいます。

「取り扱いさせていただいている商品は、僕自身が本当に好きだと思っているモノばかりです。ちょっと個性的だったり、他であまり見なかったりする商品が多いのが特徴かなと思いますね」

「経年変化が楽しめるのも、商品選びで大切にしていることのひとつです。人間が歳を重ねて変化していくように、モノも時間の経過と共に育っていくんですよね。例えば、使うほどに味わいが増す真鍮のカトラリーや、のせるものの油分で表情が変わる器など、お客さまには購入した後もご自宅でどう育っていくかを楽しんでいただけたら嬉しいです」

会社員を辞め、夫婦で京都に移住。不安よりも、わくわくが大きかった

東京生まれ、東京育ちの秋元さん。京都に移住する前はアパレル会社に勤め、店頭での接客業務をしていたそうです。

「会社員時代、商品への愛情よりも売ることが重視されることに違和感を覚えるようになって。そんな時に、先輩が独立してお店を開いた姿をみて、僕も自分のお店を持ちたいと思うようになりました」

「移住先として最初は長野あたりを検討していたんですが、良い物件と巡り合えず。そんななかで、京都に来た時にたまたま空き物件を見つけて、すぐに内覧したんです。場所は西陣で、路地の奥の奥のような立地でしたが、これは運命だと思うほど気に入って。東京に戻ってすぐ妻に相談したんです」

「妻は『いいんじゃない?』という感じで、意外とあっさり賛成してくれました(笑)。僕も不安はなく、むしろわくわくする気持ちが強かったです。内覧をしたのが2018年3月で、すぐに京都に引っ越して、4月にはお店をオープンしていましたね。妻は仕事の都合で数ヶ月遅れて移住したのですが、お店から自転車で15分ほどの場所に家も借り、夫婦ふたりでの京都生活が始まりました」

子どもの誕生をきっかけに、より心地よい暮らし方を模索

西陣で4年間過ごした後、上高野へ移り住んだ秋元さん一家。きっかけとなったのは、奥さまの妊娠と、お子さまの誕生だったのだといいます。

「2020年、コロナ禍初期に妻の妊娠が分かり、感染症対策や妻のサポートに注力するため、僕はお店を休んで家族の時間を増やすようシフトしたんです。その後、無事子どもが生まれはじめての育児に取り組むなかで、家族がより心地よく暮らせる環境をと思い、引っ越しを検討しはじめました。自然が多く、のびのびした雰囲気の場所を探していたところ、この物件に出会ったんです」

「ここは元々商店だった場所なのですが、オーナーさんのご意向が、お店をしつつ人が集うような場所にしてほしいというもので。何件か申し込みがあったようですが、ありがたいことに選んでいただきました」

子どもに見せたいのは、楽しんでいる大人の姿

移住をし、より家族の時間が増えたという秋元さん。休日には家族で近所の公園で遊び、お子さんが休みの日には、親子でお店に立つこともあるのだそうです。そんな秋元さんに、子育てで大切にしていることをうかがいました。

「好きなことを楽しんでいる姿を見せたいなと思っています。好きなことに夢中になれるって、とても素敵なことだと思うんです。僕自身も好きなモノだけに囲まれたお店をしているし、好きを追求してものづくりをしている作家さんと話す機会が多いので、よりそう感じるのかもしれません」

「僕がお店や暮らしを楽しんでいる姿を見せられたら、子どももきっと『大人って楽しそうだな』と、自分の未来に希望を持ってくれるんじゃないかと思うんです。そうした先に、子ども自身が好きなことを見つけてくれたら嬉しいです」

大切な家族と、大切な時間を、このまちで

最後に、上高野の好きなところと、今後の抱負をうかがいました。

「僕はこのまちが大好きです。近くに川が流れていて、山が見えて、梅雨のはじめには蛍が飛んでいたり、動物たちも多く見られたり、本当に自然豊かで、とても気に入っています」

「ご近所さんもとても温かく、よく声をかけてくださいます。移住前は、知人などから『京都の人は難しい』などと聞かされていたのですが、僕はそういう印象を持ったことはありません。むしろ、思ったことをストレートに言ってくださるので気持ちがいいなって」

「これからも、大切な家族と共に、このまちでお店を営んでいけたら嬉しいです。最近は海外からのお客さまも多いのですが、色々な場所から人が来て、うちのお店でモノとの一期一会の出会いを楽しんでもらえたらいいなと心から思います」

「陽ノ光」
京都府京都市左京区上高野木ノ下町17-4
営業時間:Instagramにてご確認ください
Instagram:https://www.instagram.com/hinohikari_kyoto/

編集:藤原朋
執筆:佐藤ちえみ

CHECK OUT

人生の経験を重ねるごとに、価値観や大切にしたいものが変わっていくのは自然なことだと思います。その感覚にきちんと向き合い行動するなかで、移住という選択をした秋元さん。「やってみないと分からないことが沢山ある」と話す姿はとても清々しく、生き生きしていました。日々大変なこともあるけれど、それすら楽しめたら、もっと暮らしは豊かになるはず。わたしももう一度、自分の暮らしを見つめたくなった取材となりました。

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