募集終了2015.07.15

自分ごとではじめる。与謝野町の新しい観光のかたち

自分ごとを、この町でかたちにしたい人を募集します。

日本三景の天橋立から車で15分。京都府北部の丹後半島に位置し、あちこちで職人のつくってきた文化が息づく町、与謝野町。

出迎えてくれたのは、町役場の職員の園田さんと大江さん。高級織物の産地として長らく隆盛を極めた「ちりめん街道」を散歩がてら案内してもらうことに。

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そんな歴史ある街道近くに今回の職場である与謝野町観光協会はある。お話をお伺いしたのは門田さん。旅行関連の広告の仕事をした後、独立。福岡を拠点に会社を経営しながら、今年の4月より観光協会の事務局長に就任。

どんな経緯があったのだろう?

過去2年間に渡り、与謝野町の観光系のワークショップで関わりを持つにつれ、「事を成すには人が軸」「主役は地域の人」と考える門田さんにとって、月1回訪れるだけでは継続性が保たれないというジレンマを抱えていたという。

「ワークショップの時点で「よーし、やろうぜ!」となっても、後日連絡すると、まだ動いてなくて…という繰り返し。お金を投下して一発花火でポッとなるけど、そんなのは正直いらなくて、ちっちゃい線香花火でもいいんです」

「線香花火はまた火薬を持った人が近づいたらまた大きくなって増えていく。そんな燃え続ける状態を小さくてもいいから作るのが、地方の観光産業にとっては軸になってくるんじゃないのかなと」

福岡で会社経営しながらも与謝野町に飛び込む決断をした門田さん。町としても定住に近い形で関わって欲しいというニーズがあり、門田さんにとっても観光や地域に関わる事業で実績をつくりたいという思いが重なり、布団を積み込んだ軽自動車に乗って8時間半、妻子と離れて単身移住。

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「商工課の課長さんという人の存在が一番大きかったです。とにかくやるんだという決意と情熱ですよね。この兄貴を支えなかったら男が廃るみたいのがありました。本気の行政マンという方と手を組みたいなというのがありました」

4月に移り住んで見えてきたのは、そんな「何かをしたい」と孤軍奮闘する人たちの存在。それらを目の当たりにするにつれ門田さんの情熱に火が着いた。

「一人で抱えなくていいです、一緒にやりましょう」とアプローチしたという。

そういう火種を燃え上がらせる外からの風のような存在が門田さんなのかもしれない、と思う一方で、どんな地域でも火を着ける人もいれば、その火を消そうとする人もいる。

そういう存在についても門田さんらしい答えを聞かせてくれた。

「『天の岩戸』という言葉を最近使ってるんですけど、反対派の人たちのドアをグーって開けようとしても、向こうはその分グーっと閉めてるんですよ。だから踊るって決めた人で面白い踊りをして、どんちゃん騒ぎをして、なんだろう?って中から開けてもらうしかない」

今までのやり方は「みなさん開けて下さい」「皆で踊りましょう」と言うやり方。まずは踊れる人で踊ってみて、少しでもドアが内側から開いたら、一気に引きずり出すというようなことをしていかないと、スピード感が出ない。

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ゆくゆくこうしていきたいビジョンみたいなものは?

「観光協会の組織うんぬんではなく、3年後この町をどうしていきたいのか?から議論を重ねているところです」

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どんな観光協会をつくっていきたいですか?

アクションに対して、指示待ちの組織は絶対に作りたくないです。大きなビジョンのもと、各自が独自にアクションしてる状態。私はこうだからやったんだっていうことを一人一人が語れる。そんな組織になればいい」

観光という仕事への取り組み方や、お客さんは誰なのか?という姿勢について。

「こういう地方の観光って、背伸びしてディズニーランドを作ることではなく、町の人たちが今の生活に無理をしない形で観光という接点をもっていくが大事だと思います

主人公は地域の人たち。観光協会は、そんな地域の人たちが活躍できる場を作り、手助けることが大切だと思っています

加悦谷祭り_野田川町

そんな風にして地域の人たちと協働することで、借り物でない観光産業をつくっていきたいという意志は、門田さん自身が住まうことで体現している。

住まうことで見えてきた与謝野町の暮らしぶりはどうですか?

「人の距離が近い。引っ越してきたのが3月30日。で4月1日か2日には、家の目の前の建築屋さんが、僕の家のドアを叩いて、神輿を担がないかと誘ってくれました」

神輿を一緒に担いで以来、一気に地域との人付き合いが濃くなったそう。

「飲み会の誘いの電話もバンバンもらって。区長さんや近所の人から野菜をもらったり、都会では味わえない幸せな日々です

人との付き合いだけではく、お酒の味も良いらしい。

「日本酒が本当にうまい!もう何升飲んだか。ものすごい飲んでますよ」

一字観(大内一字観公園から阿蘇海)

続いてお話を聞いたのは、安田さん。大学卒業後、Uターンして地元で働くことに。今は町役場の商工観光課の担当として観光協会に出向のようなかたちでお仕事をしている。

地元に帰ってから結婚を機に町役場への転職を決めた安田さん。当時を振り返ってみて門田さんの言うような熱い行政マンだったのかというと、そうではなかったそう。

「町のために、と思っていたけれど具体的に何をしたいかはなかったです。役場という会社に就職するイメージですね

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農林課で5年ほど勤めた後、商工観光課へ異動になり3〜4年。それまでの仕事を通じて見えてきた与謝野町の良さや感じたことを聞いた。

「農林課では農家の方と関わり、若い人でも積極的にやってる人がいますし、そういう人と企みをしたいというのはありつつ、自分がやってもいいかなぁって思うぐらい現場の仕事は、面白そうだなぁって思ってました」

商工観光課では、観光施設、公園だとか、キャンプ場だとかの施設管理の仕事をしつつ、イベントでの観光PR、物産展などで外に出て与謝野町を発信する仕事をしていたそう。

「いざ自分の口から町を発信するとなると、何が魅力的なんだろうって思いました。与謝野町を説明できなかったです。自然があるんですよと言っても、どこでも自然ってあるし、お米が美味しいのは分かるんですけど、なぜなんだろうって思ったり…」

その説明できない状態はどうなっていくんですか?

「とにかく事業者さんとお話しして、こういう想いで作ってるんだとか聞くにつれて、ああそういうことなんだなってことは何となくわかってきました」

田植え体験1

与謝野町の課題というか直面してるものってどんなふうに見えてたんですか?

「僕は観光ばっかりだったので、ここを観光地化して人が多く来ればいいんだなって思ってた時期もありました。でも仕事するうちにそうじゃないと気づき、皆はここの土地が観光地化することを望んでいない 」

観光地化するのを望んでいない?

「人は来て欲しいんですけど、観光地にはならない。人が来る前に地域の人が楽しく元気に何かやっていてほしい。毎週小さいイベントやったりして、寺社仏閣とか見所があるから来るのではなく、何か楽しいことしてることを見に来る人が増えてほしい」

今回募集する地域おこし協力隊で入られる方と安田さんとの関わりは?

「観光協会のこともそうですし、道の駅のエリアのリニューアルなどの担当も任されてるので入ってこられる地域おこし協力隊の方とは、密でやっていかなきゃいけないところです」

安田さんが上司という形になるんですか?

「僕の指示で動くのではなくて、感性で動いてほしい。協力隊は地域に入ってプロジェクトを立ち上げて、地域の人とやりたいことやってもらう環境づくりをしたり、地域にこういう人がいるんだけど、手伝ってあげてよ。という人をつなぎ合わしたりはしたいな」

ひまわり15万本2 (1)

地域の課題である人口減少にいて、何か思うことはありますか?

「人口が減ることは止められないとは思ってますが、人の取り合いをしたくないです。門田さんが来てくれた、バンザイ!でも福岡では一人減ってるんですよね」

パイの取り合いではなく、地方に戻るパイを如何にして増やしていくか。

「だから子どもたちに与謝野町の良い所をもっと知って誇りを持ってほしい。ここは大学がないので、一旦はどうしても外にでるんですよ。だけど就職の選択肢になることや、地元に帰っても何かやれるという環境は作ってあげたい」

少し遠い未来かもしれないけれど、今いる子供達が帰りたくなるような誇りある地元づくりをしていきたいという熱い想いが安田さんにはある。

しかしながら現実的には、家業を継いでるか、公務員になるか。学校の先生になるか。といった田舎の典型的みたいな働き方をしている同年代が多いという。

じゃあ将来的にそうなる子どもたちを今から育てていきたいけれど、親は仕事がないから帰って来なくていいって、墓のお守りさえしてくれればいい。と言う」

そんな声に対しても、異論を唱える。地元に帰ってくることを親が消してしまうのは寂しいし、この町はいいんだよって、まずは自分の家の子供達への啓蒙しているとのこと。

今企んでるのが、そこ(観光協会の入り口)に中学生がすごい溜まっているんですね。この間初めて「君たちちょっと中入ってくれ」て声かけてイベントの景品何がいいんだろうなって悩んでたから、知恵ちょうだいって」

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「そういった町とか関心がない中高生を、まちづくりというか、まちの楽しいとこに関わりをもたせてあげたい。何かミッションでも与えて、達成感を味わってほしい。子供のやりたいことの意見は否定せずに、よしやってみろと言えるような大人になりたいなぁと」

どんな人に来て欲しいですか?

「当たり前ですけど、最後までやりきってくれる人。そして自分ごとに置き換えて、地域のためじゃなくて、自分のためにやってほしい

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最後にお話を聞いたの原田さん。先だって地域起こし協力隊として、今年の6月に移住してきたばかり。着任してから2週間とまだ間もない状況。取材当日も農家にお手伝いをしに行ってたらしく、採れたてのバジルをお土産に頂きました。

どんな経緯で与謝野町に来たのか、その足跡を見ていこう。

芸術系の大学院を卒業後、インテリアの仕事を経て、彫刻家のアシスタントを経験。世界を放浪しつつ、次の住まいを探していた折に、Xキャンプという学生主体の地域活性化活動の社会人サポーターとして誘われるかたちで、与謝野町に関わりはじめたという。

その時から繊維関係やカーテンを作る仕事をしたいというのは決まっていたので、それに一番いい条件であれば、住む所は日本であっても海外であってもいいなぁっていう風に考ていたそうだ。

「私がカーテン関係のことをやりたいって言ったら、与謝野町は繊維の町だからということで、織元とか糸の状態から携わったものづくりにしたかったので、地域起こしの仕事を頑張ったら、そういう繊維業界と繋がれるのでは?っていうところが大きいです」と原田さん。

「タイミング良く地域おこし協力隊を募集ってなったので。これは絶好の機会だと思って。ひたむきに頑張るXキャンプの学生のサポートも引き続きできるし、自分の将来やりたいこともにも近づけると思いました」

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安田さんの話に出ていた「自分ごと」をまさに実現すべく、この地に来たといっても過言ではない。さらに、来てまだ間もないものの、自分ごとの暮らしをつくりはじめている。

「今はアパートを借りてるんですけど、また来月に引っ越します。それも空き家をリノベーションしようというのをプロジェクト化してもらっていて、明日から大工さんが現場に入るんです。私も自分でデザインとかしながらつくります」と嬉しそうに語る。

原田さんの協力隊としてのミッションは、与謝野町の観光資源の一つである千年椿という樹齢千年を超える椿に関わるプロジェクトだそうだが、どんなものなのだろう?

「そこに千年間続いた暮らしの姿を、きちっとした形で残すということを、地域の人の声を聞きながら、本になるのかビジュアルになるのか分からないんですけれども、千年も続いたものをまとめる作業に自分も携わるっていうのは、すごい面白いだろうなって思っています」

「今の仕事はXキャンプのことがほとんど。夏に彼らがキャンプでやってくるのと、実験的に農林の方から委託事業で農作業があったり、椿のことは来年の春ということもあり、これから打ち合わせをして、どうしていくのか考えるというところです」

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今回の募集となる地域起こし協力隊。最初のメンバーである原田さんの印象を、門田さんに伺った。

良い意味で言ってますけど、繊細じゃない人だなっと思ったんですよ。図太くないと生きていけないし、今まで自分には関わりがなかった場所で、確固たる自分があり、野望があり、で物怖じしないというパワフルさというのはすごい持ってるなぁと

逆に原田さんには、職場を共にする門田さんや安田さんはどう映っているのだろう?

「3人とも30代ていうこともあって、すごいフランクに接してくださるので、雰囲気も良い意味でイージーというか、風通しもよくてリラックスできてるので助かっています」

「でも隣で安田さんを見てると、行政って話を通したりするのが、何に関しても大変だなぁって思ってるけど、私は知らんぷりをしています。いちいちそれに戸惑ってたら進まないし、外者としてここに来た意味がないので」

図太さをまさに発揮してる発言ですね。

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生活面での苦労はありませんか?

「欲しいものがあればネットで何でも買えるし。野菜はおいしいし、朝ランニングするにも景色が良いし。自分がやりたいこととか、好きなことが決まっていれば別にそれはどこでも出来るので、何も変わりはないなぁと思ってます」

3年間でこれだけはやり遂げたいことってありますか?

「繊維業界や布を扱う人たちと、つながりが生まれればいいなぁと思います。」と自分ごとのプロジェクトへの意気込みを掲げてくれた原田さん。

実は既に個人事業としての開業をして、ロゴを作ったり、名刺を作ったりといったデザイン業務をする傍ら、カーテン作りを行う準備も始めているそう。

「リノベーションする家も半分工房というかスタジオにしたくて、住み開きみたいな形で、自分で作ったカーテンがあって、(見に来た人が)これ作って欲しいってなるかもしれない。そんな事がしたいなぁって思っています」

3人にどんな人と働きたいか?という質問をしていたが、最後に原田さんが言ってくれたことが、なるほどそうだなぁと思えたので、そのまま拝借。

「自分の夢とかやりたいこととか好きなことを話し出すと、すっごい嬉しそう。私はそれが3人が繋がってる、共通点だと思ってます」

自分のやりたいことを、この町の人たちとかたちにしてみる。

そんな機会を自らつくり出せる人にとっては、とても可能性のある町と仕事だと思います。

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