三方を山に囲まれた京都盆地。その地下には約211億トンという、琵琶湖に匹敵する地下水が蓄えられているといわれ、茶道や京友禅、酒造りといった京都の伝統的な文化や産業を育んできました。
そうした水と共にある京都の営みを下支えしているのが、今回ご紹介する「株式会社大宮ポンプ製作所」。水の汲み上げや移送などに欠かせないポンプの専門会社として、さまざまな分野のインフラ整備に貢献しています。
今日まで積み上げた信頼と対応力を次世代へつなぎ、これまで以上に頼られる存在となるために、今回、技術と営業の2職種で新たな人材を募集することに。社長をはじめ3名の在職者の方から詳しいお話を伺いました。
代替わりを機に、工事も手がけるポンプ屋に
京都市南区十条通に程近いまちに本社を構える株式会社大宮ポンプ製作所。現社長の大井祥吾(おおい・しょうご)さんの祖父が1957(昭和32)年に創業し、3代にわたってポンプやファンの卸売業を営んできました。
製作所の名が付くのは、創業当時、別々に作られていたポンプとモーターを仕入れ、自社でつないだ完成品を販売していた頃の名残だそう。やがて一体型の製品が主流となり、ものづくりの色合いは薄れていったものの、2020年の代替わりを機に復活の兆しを見せています。
大井社長
この業界では、販売は販売だけ、工事は工事だけというふうに棲み分けがずっとされていたのですが、工事会社の廃業や職人さんの高齢化が進むにつれて、販売だけでなく工事もやってほしいという要望がわが社に多く寄せられるようになりました。
そこで、長年お付き合いのあったベテランの職人さんの力を借り、ポンプの取替工事などを手がける技術チームを立ち上げたんです。
従来の販売業務に加え、ポンプの取替工事、点検、修繕・修理の業務が加わって守備範囲が大幅に広がった大宮ポンプ製作所。以前にも増して頼りにされる“ポンプ屋さん”となった現在、おもにどのような場所で活動しているのでしょうか。
大井社長
大体3つのパターンに分かれまして、1つは工場設備、2つ目はビルやマンション、そして3つ目が公共入札による官公庁案件、具体的には浄水場や下水処理場などの公共施設ですね。このほかに、お豆腐屋さんや染め物屋さん、銭湯といった地下水を用いてお商売されている方々からもご依頼をいただいています。
ポンプの用途や規模はそれぞれ異なりますが、どこもポンプが止まれば仕事や生活が立ち行かなくなるのは同じ。「自分たちがインフラの一端を担っているという覚悟と責任を持って業務に当たっています」と、大井社長は表情を引き締めます。
ポンプの困り事を解決する、技術と営業の連携プレー
年間のポンプの販売台数は約1000台、工事件数は約150件となり、収益はほぼ同じ水準に達しているそう。「選ばれている理由」をたずねると、次のような答えが返ってきました。
大井社長
「京都で60年以上も続けている会社なら」と、業歴の面で信頼を得られているのを感じますね。また、呼ばれた時はなるべく早く伺うよう心がけているので、その辺りもご評価いただけているのではないかと。「すぐ来てくれて助かった」「工事までしてくれる会社が見つかってよかった」というお声をよく頂戴します。
こうした評価を生み出しているのが、営業スタッフと技術スタッフの連携体制です。
たとえば、営業スタッフのもとに顧客から「ポンプの調子が悪い」という連絡が入った場合、すみやかに現場へ向かって状況を確認し、その報告を受けて技術スタッフも現場へ。部品交換で一件落着することもあれば、ポンプ本体の交換が必要となるケースもあります。そのような場合は、営業スタッフがポンプの選定や見積り、日程調整などを行なった上、技術スタッフとともに取替工事に臨むという流れに。この一例からもわかる通り、大宮ポンプ製作所の事業は、営業と技術の両輪で成り立っています。
現在は、京都本社・滋賀支店合わせて営業7名、技術4名が在籍し、案件ごとにコンビを組んで活動中。今後もこの体制を維持・発展させるために、主力の中堅〜ベテランのあとを継ぐ世代の育成が急務となっています。
大井社長
営業も技術も40代以上が大半を占めていて、特に技術のほうは78歳の大ベテランの方を筆頭に高齢化が進んでいます。技術承継には年単位の時間がかかるので、今から手を打っておかないと間に合わないという危機感を持っています。
人材を幅広く募り、技術承継をいち早く
後進の育成方法は、技術・営業ともにOJTが基本。入社後の社内研修を経て、各部門の先輩スタッフの指導を受けながら実践的に学んでいくスタイルです。
意外だったのは、いずれの職種も「経験不問」であること。技術職なら機械いじりやDIYが好きな方、営業職なら一定のコミュニケーション力があればOKという間口の広さです。
大井社長
そもそもポンプ業界の経験者自体、少ないですからね。面白そうだなという興味から入って、経験を積みながら長く勤めていただける方を歓迎したいです。
とはいえ、ポンプに触れたことさえない人が挑戦できる世界なのでしょうか?素朴な疑問に対する答えもまた意外なものでした。
大井社長
文系理系問わず、どなたでも大丈夫ですよ。ポンプにも大小さまざまな種類がありますが、モーターの力でシャフトを回し、水や液体を飛ばすという基本的な構造は似ていますし、昔と今で大きく変わっていないので、仕組みを理解するのはそれほど難しくありません。初心者でも1年もすれば、消耗部品の交換くらいは1人でできるようになります。
大井社長によると、ポンプは耐久性第一の機械であることから、この先もアナログ構造のまま、ポンプ本体にコンピューター機器が組み込まれることは、考えにくいとのこと。進化スピードが比較的緩やかだからこそ、ベテランから若手への技術承継もしやすいのだそうです。
ただし、ポンプの音を聞いただけで不具合箇所を把握したり、0コンマ数mmの調整をさらりとやってのけたりする“職人技”を短期間で身につけるのは容易ではありません。大井社長は5年後10年後を見据え、ベテランと若手の技術力の差をできる限り縮めようと考えています。
ポンプを生かした、製作所らしい事業展開も
大井社長自身は、銀行員時代の営業経験を生かし、それまで手薄だった新規開拓に力を入れているそう。ポンプ会社が属する設備業界では、飛び込み営業など積極的な営業活動を行わないのが通例でしたが、大井社長は「やってみなくてはわからない」と自ら動き出したのです。
大井社長
門前払い覚悟で訪ねてみると、「ポンプ屋さんが来た!」と喜んでくれるお客さんばかりで、銀行時代とのギャップに驚きました(笑)。京都で長く続いている会社ならと、その後仕事を任せてくださるところも多いですね。
そうした営業活動の中で改めて気付かされたのが、「自社とポンプの可能性」。最近では、とある公立高校の野球部から「グラウンドに水を撒くための散水機がほしい。それ、ポンプで作れませんか?」という相談を受け、技術スタッフとの連携によりポンプ改造型の散水機を完成させています。
大井社長
私たちよりもお客さんのほうが発想力豊かで、いつもハッとさせられます。そのおかげで、「ポンプの力をもっと世に役立てたい」という目標ができました。将来的には、ポンプを使った機器類を製作したり、井戸水の温度を活用した空調機器を作ったりする、ポンプ屋ならではのものづくりに挑みたいと考えています。
まずはポンプについて広く知ってもらおうと、Youtubeでの動画配信を目論んでいる大井社長ですが、「私も含め、社内に詳しい人がいなくて……」と苦笑い。というわけで、動画撮影&編集に自信がある方は面接時に一言アピールをお忘れなく。
「面白そう」から始まった、充実感に満ちた10年
ここからは、現場でタッグを組む営業と技術の先輩スタッフにお話を伺います。1人目は、勤続10年の営業課長、河合さんです。「全く知らない業界で働いてみたい」と思い立ち、以前勤めていた物流会社から営業志望で大宮ポンプ製作所へ転職しました。
河合さん
ポンプについては何も知らなかったんですけど、昔からプラモデルや機械モノが好きだったので、なんとなく面白そうだなと感じました。営業職でありながら、工事の現場監督をする時に作業をちょっと手伝えたりして、業務内容が変化に富んでいるのも魅力でしたね。
入社当時は現在のような研修期間がなく、「ポンプの勉強も得意先回りも自己流でやりました」という河合さん。水=ポンプを用いる公共施設に目を向け、社内で初めて官公庁案件の道を切り開きました。京都市や大津市の上下水道施設から、自衛隊の駐屯地施設、さらには京都御所の関連施設まで、取引実績は多岐にわたります。
河合さん
最初からすんなり仕事を取れたわけではなくて、何度も通って顔と名前を覚えてもらうところからです。1年ほどかけて担当者の方と打ち解けて話せる間柄になって、ようやく仕事の話という感じでしょうか。入札に関する書類の揃え方も、親しくなった担当者さんから教わりました。一つの工事をやり遂げ、認められると次につながりやすいですね。
しかし、「取引関係が築けたからといって、待っているだけではダメ」と河合さんは言います。呼ばれた時はすぐに行く、呼ばれなくても月に1回は顔を出すーー。河合さんは誠意を行動で示し続けることで、多くの信頼を勝ち取ってきました。
仕事の8割を占めるという入札関連のデスクワークのほか、工事の立ち合いや得意先回りなどで多忙な日々を送る河合さんにとって、「家族と過ごす週末」は絶好の充電時間。「土日・祝日はほぼ休めるので、オンとオフの切り替えがしやすいですね」と、安堵の表情を浮かべます。
河合さん
営業スタッフ1人あたりの担当件数は20〜30社ほどですが、毎月依頼が来るケースは限られていますし、自分の裁量で日程調整もできますから、毎日遅くまで残業ってことはまずないですね。仕事もプライベートも充実させたいという希望を叶えやすい会社だと思います。
河合さん自身の充実感をたずねると、「僕も結構充実しているんでしょうね。この10年、本当にあっという間でしたから」と感慨深げ。そして、「まだまだやりたいこと、やるべきことがたくさんあります」と今後の抱負を語ってくれました。
河合さん
今取りかかっているのは、官公庁案件のノウハウの共有。自分の強みを組織の強みに変えていけるように、後輩の一人に入札時の細かなルールや手順を教えているところです。それから、販売に関して言うと、メーカーから直接仕入れる製品・部品の数をもっと増やして、価格面やサービス面でお客さんのメリットを大きくしたいですね。
凄腕の“師匠”のもとで、研鑽を積む
2人目は、技術チームのリーダーを務める村田遼司(むらた・りょうじ)さんです。村田さんは、金属製の手すりなどを製作・施工する会社での勤務を経て2022年に入社。勤務歴は浅いものの、「作業のコツを掴むのが上手い」と大井社長からも一目置かれています。
前職ではおもに手すりの施工業務を担当していた村田さん。ポンプに対するイメージは「いろいろな場所で使われている、用途もさまざまな機械」という漠然としたものでした。そこからどのようにして専門の知識や技術を習得していったのでしょうか。
村田さん
僕らが師匠と呼んでいるベテランの職人さんがいらっしゃるので、その方に付いてポンプの仕組みや工具の使い方といった初歩的なことから教わってきました。現場に同行する時は、事前の準備も含めて「こういう時はこうするんやで」と状況に応じたやり方を聞き、少しずつ自分にできることを増やしていった感じです。
ひと通りの仕事をマスターし、現場作業を一任されるようになった今でも「師匠に比べたらまだまだです」と謙虚な姿勢。時間を見つけては、不要になった古いポンプを分解し、師匠から整備技術を学んでいます。
村田さん
ポンプの整備は奥が深いです。現場によってポンプの設置状況が全く違うので、ポンプの状態を見てどういうふうに作業するか、その場で判断するのが難しいですね。営業担当者から事前に写真や情報をもらっていても、現場に行ってみるまでわからないこともあって。判断力と技術力とスピードを、もっと磨いていかなければなりません。
そう話す村田さんですが、「ちょっとだけお師匠さんに近づけた」と手応えを感じる瞬間もあるそう。
村田さん
ポンプの音で不具合箇所の見当がついたり、部品の調整具合が感覚的にわかったりすることが増えました。ミスが減ったぶん、多少スピードも上がったのではないかと思います。
そんな成長を後押ししているのは、お客さんからの「元通り直って助かったわ」「これで安心して動かせる」といった喜びの声です。「ほっとすると同時に、また頑張ろうという気になりますね」と顔をほころばせます。
尊敬する師匠の背中を追いつつ、あとに続く後輩たちの成長を支える立場。新しいスタッフには「自分がしてもらったように、一つひとつ丁寧に教えよう」と決めています。反対に、教わる際に心がけてほしいことをたずねました。
村田さん
何かわらかないことがあったら進んで質問できる人ですね。僕自身も最初はわからないことだらけで質問しまくっていました。自分で動けるようになると楽しくなってくると思うので、まずはそこを目指して頑張ってほしいです。
より明確な目標を持って仕事に取り組みたいという人には、資格取得がおすすめとのこと。技術スタッフなら電気工事士、営業スタッフなら給水装置工事主任技術者の資格を得ることで仕事の幅が広がるそうです。
今回の記事を通じて、初めてポンプの存在に気づいた方も少なくないでしょう。そのぐらい目立たない場所に置かれながら、とてつもなく重要な働きをしているポンプを支えているのが、大宮ポンプ製作所の皆さんです。「なんとなく面白そう」が「面白い」に変わる瞬間を、ここで味わってみませんか?
執筆:岡田 香絵
撮影:清水 泰人
編集:北川 由依
求人募集要項
企業名・団体名 | 株式会社大宮ポンプ製作所 |
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募集職種 | ①ポンプ整備の技術者候補 ②ポンプ製品の営業・施工管理 |
雇用形態 | 正社員(試用期間:3ヶ月。試用期間の前後で、給与面等の条件に変わりはありません) |
仕事内容 | ①入社からしばらくは、現場にて別の技術者の補助を行う他、現場作業が無い日は社内の工房内にて、練習用ポンプの分解練習を行います。ポンプの取扱いに慣れてきましたら、基本的に2名一組で現場にて、ポンプの整備を行います。 ②ポンプの販売や工事に関する見積書作成、ポンプ等機器の仕入、現場では工事の監督や技術者の作業支援を行います。 |
給与 | 基本給:170,000円 昼食手当:3,000円 固定残業代:32,000円 ※時間外手当は、時間外動労の有無にかかわらず、固定残業代として支給し、20時間を超える時間外労働は追加で支給。 ※他に該当者には、世帯手当10,000円 |
福利厚生 | 雇用保険、健康保険(協会けんぽ)、厚生年金、労災保険(上乗せも加入)、退職金共済(入社1年後から)、昼食は弁当支給(一部自己負担)。 他にスポーツジムのチョコザップが無料で使い放題のサブスクにも加入しています。 |
勤務地 | 基本的に京都本社(京都府京都市南区西九条豊田町4)勤務となります。 滋賀県野洲市にも営業所がありますので、ご希望ありましたら、野洲市勤務も相談可能です。 |
勤務時間 | 9:00~17:00勤務(昼休憩1時間) |
休日・休暇 | 完全週休2日制(年間休日120日)、お盆休み、年末年始休暇 |
応募資格 | 応募資格は特にありません。 機械が好きな方、DIYが好きな方、水遊びが好きな方など、特に興味を持って仕事にあたって頂くことが出来るのではないかと思います。 |
選考プロセス | 京都移住計画の応募フォームから応募 ↓ 書類選考 ↓ 面接 ↓ 内定 ※事前の職場見学、ぜひご連絡ください。 |
面談場所 | オンラインでの面談が可能です。 |
参考リンク | Webサイト |