募集終了2023.05.16

一生涯のお付き合いを目指して。地域のユーザーに寄り添うカーショップ。

マイカーを持つ人にとって、車屋さん選びは車選びと同じくらい重要。購入時の手続きから、定期的なメンテナンスや車検、万が一のトラブル、保険のことまで、気軽に相談できるお店が近所にあれば……と願っている人は少なくないでしょう。

今回ご紹介する宮谷自動車工業株式会社(以下、宮谷自動車工業)は、そうした人々に選ばれている地域密着型のカーショップ。京都府南部に位置する城陽市内に本社及び工場を構え、車に関するさまざまなニーズに応えています。

府道69号線(奈良街道)に面した黄色い建物が目印

平坦ではなかった、会社運営の道のり

創業は昭和36年(1961)。周囲に家はまばらで、道路もまだ舗装されていなかった頃からこの地に根を張り、地域の発展とともに歩んできました。

宮谷社長

うちのお客さんは店の半径5km圏内にお住まいの方がほとんどです。そのぐらいの距離なら気軽にお越しいただけますし、お困り事があったときにこちらもすぐに対応できますから。地域の皆さんから頼りにされる車屋でありたいという思いは強く持っています。

このように地域密着のポリシーを語るのは、宮谷自動車工業を率いる宮谷青児社長。サラリーマン生活を経て、父である先代社長の跡を継いで20数年、「山あり谷あり」の会社運営に身を投じてきました。

宮谷社長

会社を継いだ時点でピンチでしたよ。それまで経営にノータッチだった私は、業績が悪化していることも全然知らなくて。地元の古い常連さんを相手にした訪問営業がメインだったので、無理もないのですが……。設備は古いし、従業員も無愛想だし、見るからに入りにくい店だったと思います。

そこで宮谷社長は、「まず自分が変わらなくては」と日常業務の傍ら、自動車整備士や損害保険募集人などの資格を次々に取得し、改革の準備を進めていきました。そんなあるとき目に留まったのが、自動車板金修理のフランチャイズチェーン「カーコンビニ倶楽部」の躍進ぶり。修理内容に応じたわかりやすい料金体系や事前見積の徹底など、ユーザー目線のサービスを武器に全国展開を図っていました。

「改革の起爆剤になる」。そう直感した宮谷社長は、カーコンビニ倶楽部への加盟を決断。すると途端に新規顧客が急増し、業績はV字回復へ。収益の一部を設備投資に回すことによって職場環境が改善され、人材確保もしやすくなったと言います。

それから10年余りの月日が流れた2010年代は、「再び試練の時期でした」と宮谷社長。他社が同じ料金設定で勝負を仕掛けてきたり、人口減少の影響が随所に現れたりと、次々に壁が立ちはだかったのです。

宮谷社長

一番堪えたのは人手不足ですね。若手の整備士は資金力のある大手ディーラーに流れていくので、限られた人数で仕事を回すのがやっとの状態に。それでも設備投資は続けてきました。技術の進化に対応しなければならないのもありますが、いろいろな経験ができる環境を整えておかないと余計に人が集まらなくなるので。

多種多様な人と車に向き合う仕事

宮谷社長が示す「いろいろな経験」には大きく二つあります。

一つは、さまざまな車種を取り扱えること。宮谷自動車工業では、輸入車・国産車を問わず、全メーカーの全車種を受け入れているため、車種が限定されるディーラー整備士よりもはるかに豊かな経験を積むことができます。

そしてもう一つは、業界の常識にとらわれない仕事の幅広さ。通常、整備士は整備の仕事に専念しますが、宮谷自動車工業の整備士は、整備内容の説明や見積り作成など、整備作業以外の仕事もこなします。

宮谷社長

本来、整備は整備、営業は営業と分業で進めるほうが効率的なのですが、一人で何でもできたほうが絶対にその人のためになる。将来的に独立できるくらいの経験値を高めてもらいたいと考えています。

そんな育成方針に共感し、約10年前に中途採用で入社したのが整備士のUさんです。過去にフルサービスのガソリンスタンドで働いた経験から、「お客さんと直接話せるほうが仕事にメリハリが出て楽しい」と実感していたUさんにとって、接客込みの仕事は願ったり叶ったり。今では名指しで整備依頼してくる贔屓のお客さんも複数名いるそうです。

Uさん

ご指名もうれしいですし、車をお渡しするときに「いつも助かるわ」「よう直してくれた。ありがとう」と言っていただけると、やっていてよかったなぁと思いますね。ちょっと無理なお願いをされても、この人のためなら!と自然に思えるのは、顔の見える関係性があってこそです。

対話重視の接客で、揺るぎない信頼を

Uさんの仕事のやりがいにつながっているお客さんとの関係づくりは、宮谷社長が最も重視しているポイントでもあります。価格競争に巻き込まれかけた時期、商圏の拡大よりも「地域のお客さんとの太く長いお付き合い」を優先する道を選んだのです。

その方針が鮮明に現れているのが、フロントスタッフによる接客スタイル。例えば、乗り換えを検討中の新規のお客さんが来店した場合、通常であればカタログなどを並べて早速商談に入るところですが、ここでは違います。

天気の話や世間話など他愛のないことから始まり、自然な流れで少しずつ家族構成や休日の過ごし方などプライベートな話へ。車の話を持ち出すのはそれからです。宮谷社長にその真意をたずねました。

宮谷社長

初対面でいきなり「好きです」と言う人はいないのと同じで、信頼関係も何もない間柄で「車を買ってください」は野暮ですよね。買ってくれたとしても、関係は長続きしないでしょう。一生涯あるいは世代を超えて付き合える関係になるには、対話を重ねて距離を縮めるしかありません。そのうえで、信頼できるあの人がいるあの店にすべて任せようと思っていただけるように、社員一同、対話重視の接客に努めています。

そうした日々の積み重ねと口コミにより、現在は地元のリピーターが大半を占めているそう。就職、結婚、子育てなどライフサイクルに合わせて車の相談に訪れる人も多く、車を介した人生のパートナー的存在になりつつあります。

新たな空間を設け、地域に開かれたカーショップへ

「車を通じて地域のお役に立ちたい」という宮谷社長の思いは、昨年(2022)、本社の向かいに完成したショールームでも発揮されています。テーブルやソファ、グランドピアノをゆったりと配した開放的な空間は、ショールームというよりカフェのよう。展示車両とカタログ以外、“車屋らしさ”を感じさせるものは見当たりません。

宮谷社長

ひと言で言うと、多目的スペースですね。秋の周年感謝祭のほか、ミニコンサートやワークショップなどいろいろなイベントを催して、地域の皆さんがふらりと遊びに来られる場所にしたかったんです。その中で「ついでに車も見て行こか」となればありがたいですし、最終的には「ここで車買ってん!」と誰かに自慢したくなる店に進化していきたいですね。

ショールーム2階のテナントスペースでは、犬のしつけ教室や野球教室が開かれています

地域とのつながりを深める舞台が整った今、宮谷社長が何より求めているのは新たなスタッフです。募集職種は整備士とフロントスタッフに分かれますが、「期待していることはどちらも同じ」と話します。

宮谷社長

既存のスタッフにも時々言うのですが、僕たちが相手をしているのは車ではなく、その車を持っている「人」です。自分の車だったらどうするか?という意識で、常にお相手の立場でものを考え、行動できる人になってほしいと願っています。

先ほどもお話した通り、うちでは整備士も接客スタッフの一員です。黙々と整備の仕事だけをしたい人にとっては大変かもしれませんが、お客さんを思う気持ちがあれば何とかなります。こう見えて、私も以前は人と話すのがすごく苦手だったんですよ(笑)。

現在、宮谷自動車工業には10名の社員と3名の技能実習生が在籍。キャラクターはまさに十人十色の個性派揃いだそうですが、宮谷社長にとっては全員が「家族」。「新しいスタッフも家族の一員として、みんなでフォローし合いながら成長できるように導いていきます」と力強い言葉をいただきました。

失敗を糧に、「人」に合わせた指導へ転換

接客込みの整備業務に対するやりがいを語っていたUさんは、新人整備士の指導に当たる立場。1年ほど前からはカンボジアやミャンマー出身の技能実習生に技術指導を行っています。

「言葉の壁はそれほど感じていません。実技が基本ですし、最初に彼らの母国語で挨拶をしたのがよかったのか、すぐに打ち解けられました」と、良好な関係を築けているよう。ただ、指導について一つだけ反省していることがあるのだとか。

Uさん

作業中に一度、厳しい言い方をしてしまって、実習生がすごく凹んじゃったんですよね。40代の僕からすると、若い頃はもっと酷い言い方をされていたし、このくらい平気だろうという認識でしたが、そうじゃないんだと。教える相手の世代や性格に合わせた指導方法を考えるきっかけになりました。

また、他社で経験を積んだ人が採用されるケースを想定し、次のようなアドバイスもいただきました。

Uさん

整備士の仕事はどこも同じだと思われがちですが、実は会社によって作業の方針や手順が結構違うんです。前の会社ではこうだったと主張しても、それはなかなか通用しないので、柔軟に対応してもらいたいなと思います。

お客さんとの距離が縮まる喜び

もう一方の募集職種、フロントスタッフの女性社員AさんとBさんにもお話を伺いました。Aさんは勤続約10年のベテランとあって、フロント受付のほか、車両販売、板金塗装の見積り、リース契約の手続きなど、幅広い業務を担当。Aさんら先輩社員のもとで「勉強中」という入社2年目のBさんは、接客対応や車両の受け入れなど、おもにフロント業務を担っています。

お二人とも子育てがひと段落したあと、フルタイムで働ける場を求めて転職。「通勤しやすい立地」が共通する決め手の一つで、Bさんには「接客経験を活かしたい」という動機もありました。

Bさん

もともと人と会話をするのが好きで、これまでずっと接客の仕事に携わってきました。自動車業界は初めてで不安もありましたが、コミュニケーションを重視しているこの会社なら自分の経験を活かせそうだなと思いました。

いざ入社して驚いたのは、客層の幅広さ。アパレルや音楽など、客層が定まりやすい他業界とは異なり、車という生活必需品を扱う場には10代から80代まであらゆる世代のあらゆるタイプの人が訪れます。当然、接客の難易度は高まりますが、「いろいろな方と接することができて、むしろ楽しいですね」とBさん。最近では顔見知りのお客さんも増え、着実に距離が縮まっているのを感じているそうです。

Aさんに至っては、「お互いの家族構成まで知り合う仲」に発展したお客さんも数知れず。最初はBさん同様、受付で顔を覚えてもらうところからスタートし、時には失敗もしながらお客さんとの関係性を深めてきました。

Aさん

大事なのはこちらの意見を一方的に話すのではなく、お客さんの表情や受け答えの様子から気持ちを察することでしょうか。それによって話しかけるタイミングや内容を変えて、要望などを言っていただきやすい雰囲気づくりを心がけています。未だに手探りの部分もあるのですが、ご指名をいただいたり、ご家族やお友達を紹介していただいたりすると、信頼してもらっているのかなと、うれしくなりますね。

全社員に浸透する「お客さんのために」

接客面のほかに心得ておきたいポイントをたずねると、お二人とも口を揃えて「業務全体の流れを理解すること」との答え。フロントスタッフはお客さんの依頼に応じて各部門の担当者へつなぐ役割を担っているため、全体の流れを踏まえた状況判断が求められるのです。

Bさん

覚えるのに半年くらいかかるかもしれませんね。何もわからずに整備士さんに無理なお願いをして叱られたこともありますが、そうやって覚えていくうちにコミュニケーションが密になり、連携も取りやすくなりました。

Aさん

接客と同じく、社員同士、お互いの理解が深まるにつれて仕事がしやすくなるのは確実です。持ち場は違っても「お客さんのために」という意識をみんなが持っているので、情報交換は活発なほうですね。

「どんな人が向いていると思いますか?」という質問には、それぞれ違った答えが返ってきました。

Aさん

基本的に土日出勤ができる人。友達と休みが合わないとか、土日出勤のマイナス面に目が向きがちですが、平日に休めるほうが何かと便利だとか、プラスにとらえられる人がいいですね。

Bさん

何のためにここで働きたいのか、明確な意思を持った人ですね。私のように接客の仕事が好きでもいいし、車に関わる仕事がしたいでもいい。何か芯になるものがあると、壁にぶつかっても乗り越えられるんじゃないかなと思います。

3名のスタッフのお話に共通していたのは、常にお客さんの存在を忘れない姿勢。「車ではなく、お客さんを見る」という宮谷社長の教えが隅々まで浸透している様子が見て取れました。

社内だけではありません。この日、たまたまお店に居合わせたお客さんもこう話していました。「ここの人は話しやすいし、仕事も丁寧。近くにあって助かっています」と。こうして頼られる存在が一人二人と増えるたび、お客さんの笑顔も増えていくのでしょう。

編集:北川由依
執筆:岡田香絵
撮影:清水泰人

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