京都移住計画での募集は終了いたしました
大小600近くのものづくり企業が集う京都市南区。地下鉄十条駅から徒歩数分の好立地に、今回ご紹介する株式会社 松本電機製作所はあります。
さまざまな施設の機械・設備をコントロールする制御盤の製作やソフトウエア開発、自動化システムの設計開発などを通じて、産業の現場の「できたらいいな」を実現させているエレクトロニクス企業です。

近い将来、四代目から五代目への事業承継を控えており、社内では次世代の採用・育成に力を入れている最中。前回の募集から約2年、今回は機器の据付や設備まわりの配線工事などを担う「電気工事士」を経験不問で募集します。
松本電機製作所とはどんな会社で、どんなふうに働ける会社なのかーー。2021年に一新された本社工場を訪ね、経営と現場の各ポジションで働く皆さんにお話を伺いました。

進取の精神で培った「技術」で期待に応え続ける
松本電機製作所は、初代・松本敏三郎氏が1907年(明治40)年に創業。海軍時代に身につけた電気技術を生かし、産業用のモーター製作を開始したのが始まりです。
その後、時代の変化に応じて電気工事や制御盤製作、自動化システム設計などへ事業を発展。2023年には、100年以上に渡って事業を継続する京都府内の優良企業を対象とした「京の老舗表彰」を受賞しています。

四代目社長の松本一志(まつもと・かずゆき)さんに事業継続の秘訣を伺ったところ、こんな答えが返ってきました。
松本社長
弊社のような技術志向の会社は、同じことを同じようにやっていては続きません。技術はすぐに古くなり、安売りせざるを得なくなるのが世の常ですから。今で言えばAIやロボット制御といった新しい技術を積極的に取り入れて、お客さんのお役に立つハードウエアやソフトウエアを適正価格で提供する。それがわが社の基本姿勢です。

そうした松本社長の考えのもと、松本電機製作所は電気設備のほぼすべての分野をカバーできるエレクトロニクス企業に。工場や事業所の設備全般に関わる大口案件も多数手がけています。
松本社長
大半が10年以上のお付き合いがあるお客さんからの依頼です。強い信頼関係の証ではあるのですが、別の見方をすると新規営業は今ひとつ、と言えます。リソースが限られる中でこの課題を解決できないものかと、1年ほど前に着手した仕組みづくりがようやく実を結びつつあります。

営業力の強化を目的とした仕組みづくりとは、資材の購入先である販売店とのパートナーシップ関係の構築を指します。販売店の営業スタッフが新設備の導入を考えている企業に松本電機製作所を紹介し、成約した場合は、松本電機製作所の販売店から資材を購入するという取り決めで契約が結ばれました。
松本社長
外部の力もお借りしながら新たなお客さんとの接点を作り、また10年20年と長く続く関係性を育んでいきたいですね。次の代へ託すまでにできるだけのことはやっておきたいと思っています。
褒めて伸ばす、次期リーダーの若手育成方針

松本社長が数年前から力を入れている若手技術者の採用・育成も、円滑な事業承継とその先の発展を見据えた取り組みの一環です。
技術部門である配電制御部のメンバーは現在8名。50代以上のベテランも活躍していますが、採用機会を増やしたことで20〜30代の層が厚くなっています。会社としてどのように彼らの成長をバックアップしているのでしょうか。

松本社長
先輩から後輩へ知識やスキルを伝えていくOJTを基本に、お取引先の三菱電機さんが主催するセミナーを案内したり、資格試験前に社内勉強会を実施したりして、業務以外のところでも学びの機会を提供しています。
資格試験の合格者やレベルアップが認められる人には昇給もしていますし、努力する人を応援する会社だということは理解されていると思います。

現場で若手技術者の育成をリードしている設計グループの主任・松本裕嗣(まつもと・ゆうじ)さんにもお話を伺いました。裕嗣さんは松本社長の長男で、いずれは会社を継ぐ立場にあります。「何年後に継ぐとか具体的なことはまだ……」とは言うものの、育成方針を語る姿から自社の将来と真剣に向き合っている様子が伝わってきました。

裕嗣さん
どの部署でもまずは現場に連れて行って仕事の全体像を把握してもらうところから始めて、先輩と一緒に作業しながら細かい部分を掘り下げていくかたちです。
教える上で特に心がけているのは、いかにやる気を出させるか。仕上がりだけで良し悪しを判断するのではなく、それまでの過程で見えた良いところをどんどん褒めて、やる気のアップにつなげています。
もしかしたら昔のスパルタ式のほうが近道なのかもしれませんが、仕事が嫌いになったら本末転倒なので、このやり方でじっくり育てていこうと考えています。

今回募集する電気工事士は、裕嗣さんらが設計・製作した装置の据付工事やその他設備の配線工事を行う技術者。いわば、松本電機製作所のものづくりをゴールへ導く“アンカー”です。工事に人手がいる場合は、現場監督として協力会社の職人さんをバックアップする役割も担うため、第一に「職人さんと仲良くなれる人柄」が求められています。
裕嗣さん
おそらく年齢も経験も職人さんのほうが上なので、甘え上手というか、わからないことを素直に聞ける人が望ましいですね。コミュニケーション力があるに越したことはありませんが、口下手でも真面目さや一生懸命さが伝われば大丈夫。協力しようと思ってもらえる人間性かどうかに懸かっています。

加えて、裕嗣さんが「持っておいたほうがいい」と勧めるのが、電気工事士の国家資格。入社時の必須条件ではありませんが、取得することで仕事の幅を広げることができるそうです。未経験からこの仕事を始める人は、資格取得を一つの目標に据えてみてはいかがでしょうか。
応用力が鍛えられる、仕事のやりがい
実際に電気工事士として働いている社員さんのお話も聞きたいところ。ご紹介いただいたのは、松本社長と松本さんが口を揃えて「職人さんに好かれるタイプ」と評価する森本詳平(もりもと・しょうへい)さんです。

京都市出身の森本さんは神戸の大学を卒業後、2022年に新卒入社。大学では経営学を専攻していた森本さんが電気工事士の道を歩むことになった経緯を伺いました。
森本さん
地元の京都で就職しようと思って、営業志望で松本電機製作所の採用試験を受けました。電気の知識は全くなかったんですけど、未経験の分野に挑戦したくて。
後日、会社のほうから連絡があり、「電気工事士としてなら採用できますが、どうなさいますか?」と聞かれました。突然のことで驚きましたが、営業よりも手に職がつきそうだし、長年野球をやっていて体力には自信があるほうだったので、お話を受けることにしました。

「入社後半年くらいで仕事にも慣れ、続けていけそうな手応えを感じました」と話す森本さん。どのような段階を踏んで自信をつけていったのか、1年目の日々を振り返ってもらいました。
森本さん
工事の部署には50代の先輩が1人いまして、その方からいろいろ教わりました。現場で電気設備のしくみや作業上の注意点などを聞いたあと、手取り足取り教わりながら線をつないだり、管に通したりする作業に挑戦していきました。
最初はやっぱり難しいなぁ、大変だなぁと思いましたね。というのも、現場によって建物の構造や環境が全く違うので、制御盤の据付一つにしても同じようにはいかなくて。応用の仕方を覚えたり、組み合わせたりするのが大変なんですけど、そこがこの仕事の面白み、やりがいでもありますね。

これまでで一番印象深かった仕事について聞くと、「一番は難しいですね。たくさんあり過ぎて……」との答え。電気業界に全く触れてこなかったぶん、入社直後は毎日が驚きと発見の連続だったようです。
森本さん
監視カメラなんかでも本体を取り付けてしまえば、あとは無線で動くんかなと簡単に考えていたんですけど、実は電源を含めいろんな線を引っ張らないといけなくて、そうやったんかーと(笑)。人感センサーのしくみとかも全く知らなかったので、自分にとっては本当に発見だらけの世界です。
そんな森本さんのモットーは「わからないことは何でも聞く」。同じ部署の先輩にとどまらず、他部署の先輩や協力会社の職人さんにも話を聞きに行くようにしているそうです。

森本さん
こう見えて結構シャイなので、勇気は出してます。それでも、聞かないより聞いたほうが絶対いいと思って。いろいろ聞いて自分がやるべきことを把握しておかないと、お客さんや周りの皆さんに迷惑をかけてしまうので。
そうやってあちこちに顔を出しているうちに、先輩たちと打ち解けて話せるようになりました。いじられていると言ったほうがいいかもしれませんが(笑)。
最近では工事の資材調達や職人さんの手配など、責任ある仕事を任されるように。先輩の「早く一人前になって俺を楽にさせてくれ」という言葉を受け止め、さらなる成長を誓ってくれました。

森本さん
今はまだ先輩とペアで動くことが多いので、一人で何でもできるようになりたいですね。先輩も喜ぶでしょうし、各自で動けたほうが会社の利益も上がるので、来年くらいにはそうなれるように、今、電気工事士の資格取得を目指して勉強しているところです。
未来の後輩に対しては「僕もわからないことがまだまだあるので、一緒に解決していけるように話していきたい。仲良くやっていきましょう!」と呼びかけてくれました。
若手社員の元気と勢いを、変革のエネルギーに
若い人がいきいきと働けるようにと2021年に全面改築された現在の社屋。そのプランニングを担当した裕嗣さんは、ハード面のみならずソフト面でも若手のフォローに尽くしています。その一つが2023年から開始した企業の垣根を超えた“同期会”です。

裕嗣さん
中小企業は大企業と違って一度に何人も採用できないので、先輩や後輩はいても同期がいない人がほとんどです。社会人になっていろいろな変化がある時期に同じ悩みを抱える仲間がいたら心強いんでしょうけど……ということを他社の社長さんたちと語り合っていた時に、じゃあ社外同期を増やせばいいんじゃない?って話になって。それぞれの会社の若手社員に呼びかけて、交流会を実施したのが始まりです。
製造業でも分野が違うのでどうかなと思いましたが、同世代だから話が合うみたいで楽しそうにやっていますね。

そう言って安堵の表情を見せる松本さん自身も、積極的に意見交流の場へ足を運んでいるそう。その目的は「いつか来るその日」のため。自社も所属する「一般社団法人 京都中小企業家同友会」の会合を通じて、企業経営の成功事例、失敗事例、事業承継、産官学金連携などについて学び、企業家としての見識を深めています。
「心構えはもうできています」と前を見据える裕嗣さんの目に、松本電機製作所はどのように映っているのでしょうか。今感じている変化と、これから期待する変化についてたずねました。

裕嗣さん
若いメンバーが増えたこともあり、社内全体に元気と勢いが出てきましたね。コミュニケーションも活発で、それぞれ意欲的に仕事に取り組んでいるのが伝わってきます。まだ目の前の仕事で精一杯という子も多いのですが、今後彼らの中に「お客さん第一」の意識が根付いていくにしたがって、今以上に新たなソリューションを生み出せる会社になるのではと期待しています。
自身の役割は「この勢いを業績に結びつけること」と位置付け、ECサイトの立ち上げなどインターネットを介した新規開拓に乗り出す意向も明かしてくれました。
裕嗣さん
110年以上続いてきたこの会社を途切れさせずにやっていくという意味では、社長を見習わなければならないと思っています。ただ、必ずしも同じやり方でなくてもいいのかなと。若手の勢いや元気さを全面に押し出して、いい意味で変わったなと認めてもらえる会社にしていきたいですね。

企業の後継者不足が叫ばれる昨今、こうして未来を語る次期リーダーがいることが松本電機製作所のストロングポイント。進化し続ける技術とノウハウ、そして若い力で切り拓かれるエレクトロニクス企業の新時代をともに歩んでいきませんか。
執筆:岡田 香絵
撮影:中田 絢子
編集:北川 由依




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