2019.05.21

出戻りも独立もOKです!パンの消費量一位、京都でおいしいものづくり

和食のイメージが強い京都。しかし、パンの消費量は全国一といわれるほど、パン食は京都人にとって当たり前、目を凝らさずともまちのあちこちでパン屋が目に入ります。

「京都人にパン好きが多いのは、おそらく戦前からパンをつくりつづける『進々堂』さんや戦後パン文化を広めた『志津屋』さんの影響が大きいのではないでしょうか」。

そう教えてくれたのは、京都市内に4店舗を展開するパン屋『フリアンディーズ』の代表、小川敏之(おがわ・としゆき)さんです。

パンをつくるために長崎から京都へ。そして26歳で独立。

小川さんは、長崎出身。高校まで地元で過ごした後、パンの修行のため京都に移り住みました。子どもの頃からものをつくることが好きで、高校生の時には、自宅でパンづくりに励んでいたのだとか。自然な流れで「将来はパン屋になろう」と思い、修行先を探したそうです。

「25歳までには独立したかったんです。早く技術を身につけたかったので、大きな会社よりも個人店で働こうと考えました。だけど、九州では働く先が見つからなくて。そんな時、偶然にも京都の小さな会社のベーカリー部門の職を見つけました」。

京都にやってきた後、いくつかのパン屋で修行した小川さん。そこで製パンの基本や粉の配合を学んでいきました。
そして、目標としていた25歳から遅れること1年、26歳で念願の独立を果たします。

一号店となったのは、今も本店として構える北大路店。近くには大徳寺や船岡山があり、交通量の多い北大路通りに面した立地です。

「はじめは妻と二人で細々とやっていこうと思っていましたが、意外にも飛ぶように売れたんです(笑)朝7時から夜7時の営業時間でしたが、昼過ぎには商品がなくなってしまう。午後からのアルバイトさんは、することがないと困っていましたね。なかでも食パンは予約しないと買えない状態になりました」。

嬉しい悲鳴に、オープンから1ヶ月経たずしてスタッフを雇うことに。しかし雇っても雇っても生産が追いつかず、半年後には4名体制にまでなりました。

よそ者が京都で商売をするのは難しいとよく聞きますが、『フリアンディーズ 』のパンがはじめから支持された理由はなんだったのでしょうか。詳しくお話を聞いていくと、そのヒントが隠されていました。

「飛ぶように売れたとは言いましたが、オープン直後は必死でしたよ。なにせ全財産2万円からのスタートでしたから。でも、『損をしてもいいから、あんパンにはお客さんにがトングで持てないくらいあんこを詰めよう』と決めて、通常の3倍量は入れていました。まずは町内一、次は北区一そして京都一のパン屋になるんだと意気込んでいましたね」。

また一緒に店頭に立っていた、奥様の貢献も大きかったそう。

「妻の実家は和菓子屋なので、僕よりも商売のことをよくわかっていたんでしょうね。実家からダンボールいっぱい送られてくるすだちを、パンを買ってくれたお客さまにサービスでお渡ししていました」

そうした甲斐もあって、オープン直後から人気店となった『フリアンディーズ』。噂を聞きつけ、京都市内はもちろん、大阪や神戸からもお客さまが訪れるようになっていきます。

一店舗一工房制を貫くに至った、とある失敗

北大路の本店に次いで、烏丸店、今出川店、そして二条店をオープン。一時は滋賀にも出店し、最大7店舗を展開した『フリアンディーズ』。飛ぶ鳥を落とす勢いで拡大していったお店をさらに大きくするため、小川さんは人気商品である食パンの製造工房を設け、そこから各店舗に配送する仕組みを整えました。しかし、数年のうちに工房を閉鎖するに至ったのだとか。

「工房での製造を開始してしばらくすると、少しずつ食パンが売れなくなっていきました。はじめは僕も理由がわからなかった。お客さまに話を聞いてみると、『焼きたてのパンがほしい』と。工房で焼きたての食パンを配送しているから、店舗で焼くのと味は変わらない。焼きたてなんですよ。でも、お客さまはお店で焼いた、湯気が出るようなホワホワの焼きたて食パンを求めていてると気づいたんです」。

効率良く製造し、店舗数拡大を図ろうとしていた小川さんでしたが、お客さまの反応を見て、工房を閉鎖。原点回帰し、各店舗でパンを焼き販売する一店舗一工房制を貫くことに決めます。

「真心込めてつくったパンがだんだん売れなくなっていくのは、とてもつらかった。でもあの頃があるから、複数店舗を展開しても一店舗一工房制を採る『フリアンディーズ』らしさが生まれました」。

現在は、京都市内に4店舗を展開。サンドウィッチをのぞく全てのパンを各店舗で製造しています。

「一店舗一工房制は、作り手である僕たちもお客さんの反応が直に見れるメリットがあります。自分がつくったパンをお客さんが笑顔で買っていく姿を見れたり、声をかけてもらえたりするのは、パン職人として喜ばしいことですよね。未経験で入社してくる人には、まずそうした喜びを味わってほしいです」。

あの有名店店主も、『フリアンティーズ』から独立!

創業から28年、『フリアンティーズ』から独立したスタッフは20名を超えます。その中には、こんな有名店の店主も。

ル・プチメックのオーナー西山逸成くんは、4年ほどうちで働いていました。途中、フランスへ料理の修行に行って。独立してからは、本物志向を貫いて、パンもサンドイッチも本場の味にこだわっています。その味が、フランスパンの神様と呼ばれるフィリップ・ビゴさんに認めらて、一躍有名店になりました」。

西山さん以外にも、京都や滋賀、長野などあちこちで独立したスタッフがお店を構えているそう。独立の夢を叶えていくスタッフを、小川さんはこんな風に見ています。

「僕はね、うちから育っていって、自分の店を持ち、家庭を築き、そこで子どもも生まれたとしたら、すごく嬉しいなって思うんです。だから寂しさはありますが、スタッフの独立は応援しています」。

独立を応援する一方で、じっくり腰を据えて働きたい人が安心して働ける環境づくりも、小川さんは大切にしています。

「正直パン屋って、労働時間が長いとか休みが少ないとかってイメージをみなさんお持ちだと思うんです。だからこそ、働きやすいように有給休暇をきちんと取得できるようにしたり、労働時間を少なくしたりということに取り組んでいます」。

例えば、労働時間を削減し、仕事以外の自由な時間をもてるよう二交代制を導入しているのだとか。

「基本は8時間労働です。人手不足の時もあるので、いつもできているわけではないのですが、朝5時に出勤の人は昼2時まで、10時出勤の人は夜7時までにしています」。

そうした甲斐もあり、『フリアンティーズ』には、勤続10年、20年を超えるスタッフも多数いるそうです。

三度入社した理由は、「つくりたいパンがここにあったから」

ここからは、働くスタッフの声を聞いていきましょう。

まず登場していただくのは、二条店の店長を務める馬場保行(ばば・やすゆき)さん。驚くことに、『フリアンティーズ』に3度入社しているそうです。

「一度目の入社は、専門学校を卒業して新卒で。5年ほど働いて、もともとパンと同じくらい興味のあったケーキの製造をしたいと思い、転職しました。その後、またパン業界に戻ろうと考えた時、ちょうど小川社長から『新店舗を出すから戻ってこないか?』とお誘いいただいて、二度目の入社をしました」。

二度目の入社では10年ほど働いたそう。次に辞めるきっかけとなったのは、家庭の事情でした。

「町内会の役員になったため土日休みの仕事がしたいと思い、別の仕事に転職しました。そこで数年働いたのですが、やっぱりパンづくりがしたいなと思い、長年の夢だった独立をしたんです。でも、うまくいかなくて……。そんな時、思い出したのが『フリアンディーズ 』でした」。

『フリアンディーズ 』以外にもたくさんパン屋はあります。なぜ馬場さんは、三度目の入社を決断したのでしょうか。

「独立した時につくっていたパンが、『フリアンディーズ 』のパンと似ていたんです。だから、ここに戻ってこようって。長く働いていることもあって、居心地の良い場所です」。

馬場さんは現在、二条店の店長として、パンの製造や管理を一手に任されています。

「店長としての役割はありますが、基本は実力主義の世界です。年齢や入社年次に関わらず、技術で勝負しています。だから、積極的にやりたいことを発言できる人や新商品を提案できる人は楽しめると思いますよ」。

1日150種類のパン製造を支えるチームワーク

馬場さんが店長を務める二条店に、2019年春、新卒で入社したのが、成清綺羽(なりきよ・いろは)さんです。

成清さんは専門学校を卒業後、『フリアンティーズ』に入社。パティシエのお姉さんの影響を受けて、ものづくりに関心をもち、パンの道に進みました。

『フリアンディーズ 』に入社を決めたのは、職場見学がきっかけだったそう。

「1日150種類のパンを手づくりしていると聞いて、すごいなと思いました。技術はもちろんですが、それだけの種類をつくるにはチームワークもいるんじゃないかとって。僕もそんな職人になりたいと考えたんです」。

入社前は、専門学校でそれなりに技術を身につけたから現場でも通用するだろうと思っていたそうですが、なかなかうまくできないことも多いと話します。

「学校とお店では、スピードが全然違います。学校では、みんなで和気あいあいとパンづくりをしていましたが、そんなペースでやっていたら全く追いつきません」。

パン屋の朝は早く、慣れない立ち仕事にも戸惑う成清さんですが、一つずつできることを増やしそうと努力しています。

「今は先輩の補助として、焼きあがったパンを運んだり店頭に並べたりする仕事が中心です。まだ入社1ヶ月ですが、食パンの生地を捏ねる作業もさせてもらっています。新人は一日中、食器洗いをするのだろうと思っていたので、すぐ生地を触らせてもらえて嬉しいです」。

そうそう、入社前に感じたチームワークを、成清さんはこんなシーンで実感しているのだとか。

「わからないことがあると、みなさんすぐカバーに回ったり教えたりしてくれます。みんながみんなを見ていることが伝わってきて、これぞチームワークのなせる技だなと感動しています」

毎日が運動会のように賑やかなサンドイッチづくり

右から藤谷多美(ふじたに・たみ)さん、牧野三津子(まきの・みつこ)さん、小谷佐和子(こたに・さわこ)さん

最後にお話をお伺いしたのは、サンドイッチ工房で働くみなさん。『フリアンディーズ』では、本店で製造したサンドイッチを各店舗に配送しています。

藤谷さんは勤続20年以上、アルバイトの牧野さんと小谷さんは勤続10年以上とそれぞれ豊富な経験をもつ3名。大学生やフリーターも合わせて10名以上いるサンドイッチ工房を引っ張っています。

ポテト系、たまご系、カツ系、ハム系など『フリアンティーズ』にはさまざまなサンドイッチがあり、挟む具材はなんと全て手づくり。それを各店舗の注文数に応じてつくります。

常に時間とのたたかいのサンドイッチづくり。大変そうに思えますが、3人は「そこが燃える!」と話します。

藤谷:店舗によってトラックの来る時間が決まっているから、それに載せられるようにサンドイッチをつくらないといけない。〆切と目標があるから、自然とチームワークができてくるよね。「これなんとしてでも載せるで〜!」って。

牧野:そうそう。毎日、運動会みたいな。一日の業務が終わったあと、達成感がすごいあるよね。

小谷:帰るとき、タイムカードを押しながら「あ〜よく遊んだ!」と毎回思うほど楽しい。

藤谷:サンドイッチってピクニックの定番だからか、ゆるふわなイメージをもってアルバイトに来る人もいる。だから実際の現場を見て、「全然違うやん」って驚く人もいるよね。

牧野:そうそう(笑)

藤谷:『フリアンティーズ』のたまご系サンドは、たまごがたっぷり入っているのがウリ。多い日では1日500個のゆで卵をつくることもある。一個ずつ手で向いて、潰して。レシピもないし、その日のたまごによって味も違うから、私たちの勘で味付けしてるんですよ。「昨日のたまごは味が薄かったな」と言ってくれる人もいるほど、根強いファンがいるよね。

小谷:おいしさには、私たちの和気あいあい感も味にプラスされているんじゃないかな。

牧野:そう思う!

藤谷:子どもの頃から『フリアンディーズ』のサンドを食べて育ちましたって人が大人になって自分で買いに来てくれたり、そんな人がアルバイトとして働きに来てくれたりすることもある。嬉しいよね。

小谷:うん、嬉しい!

藤谷:アルバイトの面接に来たときは、人の目を見て喋れなかった人が、職場を大好きになって1回生から大学院を卒業するまで6年間働いてくれたこともあったな。最初はなかなか馴染めなくて、飲み会のとき部屋の隅っこで本を読んでいたのに(笑)今は地元の愛媛に戻ったけど、わざわざパンを買いに京都まで来るもんね。

小谷:第二のお母ちゃんが、ここにはたくさんいるから。

藤谷:サンドOB会といって、卒業していったアルバイトの人も交えて、たまに集まることもあるくらい仲良しだよね。

藤谷:朝早く起きるのが無理だったとか、家族の転勤とかで辞める人はいるけど、小谷さんや牧野さんはじめ、長く働く人が多いよね。

牧野:うん。幼稚園児や小学生の子どもを育てるママもいるし、子育てを終えた主婦もいる。それぞれ家庭環境は違うよね。

小谷:私が長く続けられるのは、朝早い分、午後からの時間を自由に使えるからっていうのはあるかな。

牧野:サンドの仕事をしながら、趣味に力を入れたり、家族の介護をしたりしている人もいる。やりたいことと両立しながら働けるところが魅力!

藤谷:朝起きられへん人には厳しいけど、そこさえクリアすれば、みんな楽しんで働いているよね。毎日、運動会みたいにワクワクドキドキする職場で働きたい人には、ぜひご連絡してほしい!

京都人の生活に欠かせないパン。今回はその食卓を支える、パン屋の裏側をお届けしました。

『フリアンディーズ』は複数店舗を展開していますが、一店舗一工房制を採用し、働く人の顔が見えるからか、まるで個店のような雰囲気で地域に馴染んでいます。
きっとこれから何店舗に増えたとしても、地域に根ざし、焼きたてのパンをお届けする『フリアンディーズ』らしさは守り続けられていくのでしょう。

未経験からじっくり働ける職場をお探しの方も、独立をめざしている方も、まずはお店に足を運んでみてはいかがでしょう。

執筆:北川 由依
撮影:もろこし

求人募集要項

企業名・団体名有限会社フリアンディーズ
募集職種パン製造及び販売
雇用形態正社員(試用期間あり)・パート
仕事内容◆パン製造全般(窯、シーター、ミキサー、成形など)
◆販売(接客)
◆その他独立を考えてる方は、独立する為の仕事に従事していただきます。(技術、設備管理、雇用等)
給与◆月給 20万円~35万円(諸手当含む)
※経験・スキル・前給等を考慮し、面談の上決定します。
◆昇給 年1回 ※個人の実績により
◆交通費支給(月額上限の規定あり2万円まで)
◆健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険その他完備
◆パートスタッフの時給は900円~1050円
※経験等考慮
勤務地フリアンディーズ本店/京都市北区紫野雲林院町46番地
烏丸店/京都中京区車屋町通上ル少将井御旅町
今出川店/京都市左京区田中関田町16-1
二条店/京都市中京区西ノ京栂尾町1-6
サンドイッチ工房/京都市北区紫野西御所田町19-1
勤務時間パン製造/5:00~14:00と9:00~18:00の交代制
サンドイッチ工房/5:00~11:00頃まで
休日・休暇◆シフト制により様々な働き方に対応(週休2日以上のフレキシブルな働き方も可能です)
◆土・日・祝日・お盆、年末年始が繁忙期になる為、一般の休日を避けて各人休暇が決まります。
◆有給休暇
◆慶弔休暇
◆産前・産後の育児休暇
応募資格・選考基準◆学歴不問
◆パンに限らず「食べ物」を大切に考え、より良い食べ物作りを追及できる人
◆仕事を通じて全てに学びたいと謙虚に思える人
選考プロセス書類選考(写真付履歴書・職務経歴書)をお送りください。

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