2021.05.21

旅をしながら学び、はたらく。地域との関わりを見つけるワーケーション

CHECK IN

「はんぶん旅、半分仕事。(以下、はん旅)」は、私たち京都移住計画のメンバーとともに京都ローカルを訪ねる、旅と仕事のあいだのような企画です。

コロナ禍においてリモートワークやテレワークが推奨され、ワーク(仕事)+バケーション(休暇)を意味する「ワーケーション」という言葉を耳にする機会が増えた昨今。せっかくローカルに滞在するなら、その地ならではの文化や人との出会いから、新しいプロジェクトや関わりの種を見つけていくような、訪れる側(都市側)・受入れ側(地域側)の双方にとってより良い関係性が生まれる「ワーケーション」のあり方を考えたいと思い、京都移住計画(ツナグム)の藤本・並河を中心にプログラムの企画をはじめました。

今回訪れたのは、SDGs未来都市に選定され「かめおか霧の芸術祭」をはじめとする環境×アートのまちづくりを進めている亀岡市。JR京都駅から快速電車でおおよそ20分の立地にあり、長期滞在だけでなく、日帰りリトリートのような滞在も検討できる場所です。

現地コーディネーターと旅のしおりについて

現地コーディネーター

並河杏奈 / 一般社団法人Fogin(フォグイン)・株式会社ツナグム(京都移住計画)
2020年に、コミュニケーションデザインを行う(一社)Foginを立ち上げ、コミュニティ・ツーリズム「Harvest Journey Kameoka」や「かめおか霧の芸術祭」等にも現地コーディネーターとして携わっている。株式会社ツナグム(京都移住計画)にも所属。京都府亀岡市出身。大学卒業後、地元の商店街活性化事業や、田舎暮らしに興味がある学生・若者向けのイベント企画、WEBメディアを中心に取材・執筆などを行う。2018年4月より京都移住コンシェルジュとして、移住促進事業に従事。
一般社団法人Fogin:https://fogin.jp/

旅のしおり

亀岡市は、「プラスチックごみゼロ宣言」をはじめとする環境への取り組み、「かめおか霧の芸術祭」「Harvest Journey Kameoka」など、地域コミュニティや人をベースに組み立てられるアートや観光のプロジェクトが官民連携で進んでいます。そうした、まちづくり現場を知り、ソフト・ハードを活用しながらどのようなワーケーションや滞在が可能かを考える1日のプログラムを企画しました。

・10:30 JR亀岡駅北口(スタジアム側)集合
・亀岡市役所地下1F「開かれたアトリエ」訪問
市の基幹事業「かめおか霧の芸術祭」「開かれたアトリエ」についてお話を伺う
・環境×アートの取り組みを見学
「川の駅・亀岡水辺公園」「KIRI CAFE」を訪問し、取り組みについてお話を伺う
・「かめおか霧のテラス」にてチェックアウト
・18:00 JR亀岡駅解散


※企画協力:亀岡市SDGs創生課

みなさんが今回の「はん旅」に参加した理由

今回は、京都市内や首都圏で働く5名の方に参加いただきました。

・地域をフィールドにしたPBLのプログラムに興味がある。普段はオフィス勤めだが、自分自身も少し場所を変えてみたいと思った。(教育・人材開発系)
・「ワーケーション」に興味があり、会社も推奨しているが、サラリーマンとして実践することにハードルを感じている。(メーカー・クリエイティブ系)
・亀岡のまち、環境やアートの取り組みに興味があった。(行政・サービス系)
・企業としての関わりしろを探してみたい。京都市出身で、ゆくゆくは京都に関わる仕事をしたい。(メーカー・商品開発職)
・スタディケーションや〇〇ケーションなど、地域をフィールドにどんなことができそうか可能性を考えたい。(小売業・人事職)

環境×アートで持続可能なまちづくりを目指すSDGs未来都市亀岡

こちらのモニュメントは、亀岡市在住の彫刻家・西野康造さんが寄贈した作品です。

この日の集合は亀岡駅。駅の北口周辺は現在、京都府内唯一の球技専用複合型スタジアムで、京都サンガF.C.のホームスタジアムとして活用されている「SANGA STADIUM by KYOCERA」をはじめ、公園整備や宅地開発が進んでいます。

まずはじめに、まちづくりの主幹となる亀岡市役所を訪れました。市役所は、JR亀岡駅から車で4分、徒歩13分のアクセスです。エントランスホールには“ともに生きる”というメッセージが添えられた「プラスチックごみゼロ宣言」のロゴマークが飾られています。亀岡市では、2021年1月からプラスチック製レジ袋の提供禁止条例が施行され、まちぐるみの取り組みを進めています。

亀岡市は、2020年7月に内閣府より「SDGs未来都市」に選定され、それまで利用頻度が低かった地下1Fのレストラン空間をリノベーションし「開かれたアトリエ(以下、アトリエ)」と名づけられたオープンスペースに。フリーWi-Fiが設置されており、平日・土日問わず9:00〜17:00は利用可能となっているので(カフェは土日祝定休)、ワーケーションにもおすすめです。

空間内には資材循環コーナー、情報コーナー、図書コーナー、キッズコーナーなどがあり、それぞれのコーナーの企画・運営を「かめおか霧の芸術祭」に関わるアーティストが担当しています。

施設内を見学した後、アトリエの整備に携わった文化国際課の小塩課長からSDGs未来都市事業や「かめおか霧の芸術祭」の取り組みについて1時間ほどお話を伺いました。

「私たちは、経済・環境・社会の3点から持続可能なまちづくりを目指して芸術祭を運営しています。このアトリエが芸術祭のイノベーションハブとなれるように、アーティストの方々とともにプロジェクトを進めているのが特徴です。課を横断した形でのプロジェクト進行は市役所の事業としてもめずらしく、より良い運営や企画のあり方を模索しています」(小塩さん)

昼食は、アトリエのオープンとともにリニューアルした「ATLR CAFE」で。オーガニック野菜を使ったメニュー開発に取り組んでおり、一部のメニューは地元の陶芸家とつくった器で提供しています。せっかく来たので地元のものが食べたい!と「亀岡牛ハンバーグランチ」を注文する参加者も。

スポーツとまちの関わりを考える「SANGA STADIUM by KYOCERA」

サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールなどの専用球技場で、収容人数は21,600人。

午後は、環境やアートを軸にしたまちづくりや観光施設の見学。昼食時に「SANGA STADIUM by KYOCERA」の運営をしている合同会社ビバ&サンガの中澤登紀子さんに出会い、スタジアムの外観を案内してもらえることになりました。

「4FのSKY-FIELDには、VRフィットネスゾーン、eスポーツゾーンが今春オープンし、夏にはコワーキングゾーンが新たにオープンする予定です。 今後は、訪問者が自由に出入りできる外部コンコースや広場を活用してスタジアムの魅力がまちに広がるようなイベント企画ができたらいいなと考えています」(中澤さん)

自然資源を活用したアクティビティ開発「川の駅・亀岡水辺公園」

次に訪れたのは、スタジアムから車で13分のところにある「川の駅・亀岡水辺公園」。JR千代川駅から徒歩8分の桂川堤防に整備され、これから活用がはじまる施設です。保津川の歴史にまつわる展示室を予定しているほか、更衣室やシャワー室などがあり、観光やレジャー利用も見込んでいます。

本プログラムに同行していただいた亀岡市SDGs創生課の橋本係長は、2021年3月まで商工観光課で「川の駅」の整備に携わっていたそう。

「オープン日は未定ですが、河川敷でのBBQや穏やかな川面での水上アクティビティなど、さまざまな活用方法が考えられると思います。シャワーや更衣室もあるので、レジャーや自然学習にも良いですね」(橋本さん)

アクセスの良さや川の真横にあるロケーションを活かして、「駅が近いので手ぶらでBBQが楽しめたら良いね」「中洲で音楽イベントなどができたら楽しそう!」といったアイデアが参加者からも出ていました。

アートの発信拠点「KIRI CAFE」とアップサイクルブランド「HOZUBAG」

続いて訪れたのは、川の駅から車で9分のところにあるアートの発信拠点「KIRI CAFE」。カフェの店長であり、アップサイクルブランド「HOZUBAG」の制作に携わる武田幸子さんにお話を伺いました。

「2018年のオープン当初は、京都市内やアートに関心のある方が訪れていたのですが、最近はまちの人たちも足を運んでくれるようになりました。地元の方にとって『アート』がどう受け入れられるかわからない部分もあったのですが、契機になったのは地元の人たちと一緒に展覧会をつくるようになったことだと思います。ご家族や近所の方に声をかけて遊びに来てくれるようになって」(武田さん)

HOZUBAG」ECサイトより

「HOZUBAGは、役目を終えたパラグライダー生地をアップサイクルしたエコバックです。もともとは、かめおか霧の芸術祭で開催したイベント『FLY BAG Project』から製品化されたものですね。ECサイトや東京、パリでの販売が主で、亀岡の工場では最初の解体・裁断作業を担っています。少しずつですが、地元の雇用にもつながっています」(武田さん)

芸術祭の一環として、環境×アートのイベントをきっかけにはじまったHOZUBAGは、行政とファッションブランドによるコラボレーションから生まれたプロダクト。単発のアートイベントを開催するだけではなく、アートをきっかけに商品開発を進めていくことで、地元の雇用促進や経済の活性化にも寄与できる協業モデルをめざしています。

現地側のコーディネートも兼ねていた京都移住計画の並河から、当日巡った場所や地域の資源・課題のおさらいをさせていただき、現在、まちの人たちと取り組みを進めている観光プロジェクト「Harvest Journey Kameoka」とも重ねながら、どのようなテーマや企画内容だったら亀岡で魅力的な体験・滞在が可能になりそうか、参加者も交えてディスカッションの時間を設けました。

参加者のみなさんからは、それぞれの視点からアイデアや感想をいただきました。

・地域の資源や課題を巡りながら企業の新入社員研修などを受け入れてみるのはどうか。
・「川の駅」でテントサウナやバーベキューができたら嬉しい。
・まずは金曜日にKIRI CAFEでリモートワークからはじめてみたい。
・週末は亀岡に行こう!という選択肢ができた。
・坐禅やヨガも気持ちが良さそう。
・アートプロジェクトなどは、コモディティ化するとおもしろい人から抜けてしまうので、密度の濃いコミュニケーションが持続できるよう、場合によっては開きすぎないことも大切だと思う。
・農作業やHOZUBAG制作など、労働力と参加費を交換できるようなプログラムもおもしろそう。
・デザイン性も高いので、小学校の家庭科の授業にHOZUBAGのようなアップサイクル資源が使えたらいいのでは?
・HOZUBAGの素材で傘やジャンパーがあったらいいな!

旅の締めくくりは、亀岡市内を一望できる「かめおか霧のテラス」にて1日の感想をシェアしました。

働く場所を変えることで新たなアイデアや気づきを得たり、その地ならではの食や風景、体験で心身ともにリフレッシュできたりすることは、企業や個人が「ワーケーション」を導入する大きなメリットです。

それに加えて、滞在を通して地域が抱えている課題や活用しきれていない資源と出会い、学び、企業のリソースや個人のスキルを掛け合わせながら新たなプロジェクトやビジネスが生まれていくことで、双方向性のある、より良い「ワーケーション」の可能性が見つかるのではないかと私たちは考えています。

最後はみんなでKIRIKIRIポーズ。

私たち京都移住計画としても、初の試みだった今回の企画。

今回のはん旅は、プログラムを1日にまとめて開催しましたが、途中オンライン会議が入っている方がいらっしゃったこともあり、仕事をする時間やフリータイムを行程に挟むなど、仕事も進めながら心地よい滞在ができるような工夫も必要だと感じました。

まだまだ実験的な試みではありますが、私たち自身も日頃から多様な働き方や暮らし方を考え・実践しているなかで、はん旅で京都のローカルエリアを旅しながら、仕事や関わりのきっかけをつくっていけるような「ワーケーション」のあり方を探っていけたらと思っています。

京都のローカルエリアでワーケーションを試してみたいとお考えの企業のみなさま、受け入れを検討されている自治体や地域のみなさまも、ぜひお気軽にご相談ください。

次回は、京丹後市にて、6月4日(金)- 5日(土)に【はんぶん旅、半分仕事。vol.2 】の開催を予定していますので、興味のある方はぜひご参加いただけたらうれしいです。

「はんぶん旅、半分仕事。」vol.2 海 × 環境のまち、京丹市を旅する

「稲作発祥の地」や「丹後ちりめん」の生産をはじめ、日本海側の玄関口として文化交流が盛んに行われてきた丹後半島。現在は、海岸に流れ着くプラスチックごみを活用したプロジェクトや、豊かな海・里で育まれる食を軸としたコミュニティが生まれています。そんな京丹後市で、現地コーディネーターとともに地域で挑戦するプレイヤーや場所を巡り、関わりしろを見つけていただく2日間のプログラムです。

\ こんな人におすすめです!/
・海・環境の分野で地域との関わりを見つけたい方
・今まさに動いているローカルプレイヤーを応援したい方
・地域をフィールドにした学び・発見と企画の接点を見つけたい方
・会社のリソースや個人のスキルを活かして関わりを考えてみたい方

●日時:2021年6月4日(金)〜 6月5日(土)
●集合:京都丹後鉄道「網野駅」集合
●定員:6名(※残席2名です)
●参加費:1500円+現地滞在実費分 おおよそ12,000円
(昼食2回・夕食・朝食・体験・温泉・宿泊費など)
●持ち物:宿泊に必要なもの、汚れてもいい服装・動きやすい服装
▼プログラム詳細はこちら
https://hantabi-hanshigoto-kyotango210604.peatix.com/

■企画・運営
株式会社ツナグム(京都移住計画)
担当:藤本・並河 info@tunagum.com

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