人と繋がり、良いサービスを届けるために。 京都リサーチパーク入居企業にきく、“ここ”で事業をする意義

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「京都からの新ビジネス・新産業の創出に貢献する」をミッションに掲げる京都リサーチパーク(通称:KRP)に、さまざまな角度から活動を捉えてお話を伺っています。

1記事目では、シェアオフィスや実験・研究スペースなど一人ひとりの働く環境に適した“ハード”と、さまざまな角度から交流を促しイノベーションを創発する“ソフト”の2面からKRPの全貌を紹介しました。

2記事目では、オープンイノベーション推進やピッチコンテストなど、よりイノベーターに近い場所で支援をする「イノベーションデザイン部」の方々に根底の想いを伺いました。

現在KRPでは、500の企業・団体、6,400人のプレイヤーが集い、それぞれの目的にそって活動をしています。たとえば、本拠点は東京だが活動を広めるため、ともにシナジーを生み出せる企業を探している方たち。また、創業から京都に根ざして事業を展開し、KRPでの出会いがきっかけで協業に至る方たちなど、さまざまです。

3記事目となる今回は、3名の入居企業さまになぜKRPに入居しようと思ったのか、また、KRPでどのようなシナジーが生まれたかを伺いました。

左から株式会社ラックの高橋亮さん、emol株式会社の武川大輝さん、株式会社シーズの西垣孝浩さん

西垣孝浩さん(株式会社シーズ代表取締役)
「インターネットの活用提案を通じ、人と社会の進歩発展に貢献する」をミッションに、Webサイト構築、クラウドソリューション、印刷業界向けWebソリューションの3つの事業を展開。創業した2004年からKRPにオフィスをかまえ、従業員の増加とともに移転、または増床。現在は、32名の従業員とともに6号館に入居している。

武川大輝さん(emol株式会社Co-founder&COO)
「自立した強い心を育む」をビジョンに、メンタルケアAIアプリ「emol」と企業向けサービス「emol work」を提供。2019年3月に東京でemol株式会社を設立。2020年11月に、プロダクトの開発に集中するフェーズで京都に拠点移転。現在、ASTEM棟の7階を利用。

高橋亮さん(株式会社ラック新規事業開発部 SmartX事業室長)
東京を拠点に、セキュリティソリューションサービスとシステムインテグレーションサービスを提供。街全体を見守る総合的なセキュリティ・セーフティサービス「town/SmartX」を地域に展開するため、2019年からKRPを利用。現在は、サービスオフィス「KRP BIZ NEXT」を利用。オフィスは東京であるが、月1~2回の頻度で京都を訪れている。

KRPを活用する、それぞれの理由

今回お話を伺ったのは、ジャンルは異なるものの、IT事業を展開する3名です。いわば、“どこでも”仕事ができるIT事業ですが、なぜ京都で事業展開し、なぜKRPを拠点にしようと思ったのでしょうか。

西垣:私は京都の大学に通った後、京都の印刷会社でWEB制作やシステム開発の経験を積みました。当時の人とのつながりを活かすために、京都で創業しました。

KRPの賃貸オフィスを選んだ理由は、KRPにデータセンターがあったからです。データセンターは、インターネット接続回線やサーバ機器やデータを預かってくれるため、事業で活用できるなと。

また、私たちの仕事は、インフラの設計構築・運用・メンテナンスも実施しています。そのため、データセンターに入っている回線業者と情報を交換できるのもメリットに感じていました。

創業から約18年、株式会社シーズの従業員は32名まで増えました。それと同時にオフィスも増床。こちらの記事では、KRP内で従業員がどのように働いているかを伺いました。

一方、武川さんは2020年に東京から京都に拠点を移したタイミングで、KRPに入居。なぜ、東京から京都に拠点をわざわざ移したのでしょうか。

武川:私は関西出身で、東京でemol株式会社を創業しました。現在は、感情を記録してAIロボと会話するアプリ「emol」や企業向けサービス「emol work」を提供しています。

京都に拠点を移した理由は、プロダクトを作り込む段階になり、もっと集中できる環境に移りたかったからです。でも、京都のビジネスを全く知らなかったため、まずは京都でつながりをもちたいなと。そこで、関西の友人がKRPを紹介してくれて入居しました。

また、高橋さんは関東から、月1~2回の頻度で京都に通いつつ企業とのつながりを作っています。

高橋:私は株式会社ラックの新規事業開発部に所属していて、弊部ではスマートシティ・スーパーシティにおけるデータ担保のプラットフォーム構築を目指しています。プラットフォームは全国共通ではなく、地域ごとに必要とされるIOTサービスを構築しなければいけません。京都には京都にとって最適なサービスを展開していけたらと思ったんです。

そもそも株式会社ラックのメイン事業は、東京の中央省庁やメガバンクがお客様です。なので、京都とのつながりはゼロでした。そこで、京都市役所に相談したところ、「京都の企業とつながりをもちたいならKRP」と紹介され、入居しました。

KRPにいたからこそ繋がれた、影響をうけた

それぞれ入居した経緯が異なる3社ですが、KRPをどのように活用しているのでしょうか。東京に拠点をおきつつ、月1~2回京都を訪れている高橋さんは「KRPで行われている活動を積極的に利用している」と語ります。

高橋:事業連携や事業シナジーを生み出すために弊社はKRPにいます。そのため、自分自身でゼロから何かをするよりも、KRPで行われている活動に参加して協業を目指すのが早いなと考えています。

2020年からは、企業と学生の共創プログラム「MOVE ON」に参加。2021年開催の回では「地域課題を解決する2030年のスマートシティをデザインする」をテーマとして、学生を中心に事業アイデアを考えました。

ディスカッションをするなかで、「京都の課題はなんだろう」「自分たちの住む場所ってどんな場所だろう」と、住む地域をベースに事業を考える学生が多いなと感じました。まだまだ具体的な協業は決まっていませんが、何かできそうな予感はあります。

また同様に2020年から、起業を目指す人たちで活動する「miyako起業部@KRP」の年間サポーターも務めています。去年は、部内で実施されたコンテスト「LAC杯」にて、弊社が魅力的に感じたビジネスモデルを発表した部員にLAC賞を授与。受賞した部員と共に、現在弊社の社員とテストマーケティングを実施しています。これらの活動は、私たちだけでは成し遂げられなかったことですね。

「MOVE ON」で学生にアドバイスする高橋さん

株式会社シーズは、現在京都で唯一AWSが認定するAPNアドバンストコンサルティングパートナー企業でもあり、クラウド・サーバー構築を得意とします。その得意領域をもつゆえに、KRPでの出会いがきっかけで協業に至ったと言います。

西垣:KRP入居者限定の交流イベント「つながらナイトで亀岡電子株式会社さまと出会ったことがきっかけで、協業に至ることができました。亀岡電子さんは、アンダーパスや道路の冠水など、内水氾濫による浸水を検知する「浸水検知センサ」を開発しており、今後も災害対策としてセンサ技術を全国に提供するために、弊社にてクラウド支援を行っています。

また、私は基本的にオフィシャルなイベントにしか参加しませんが、社員メンバーがエンジニア同士の情報交換を目的とした「Kyoto.LT」を主催しています。「Kyoto.LT」では、外部講師を招いて、ライトニングトークを実施。KRPの地区内外から、毎回20〜30人程参加してくれています。東京に比べると関西のエンジニアはまだまだ数が少ないため、「Kyoto.LT」のような情報交換の場は貴重ですね。

「たまり場」で開催された「Kyoto.LT」

2021年7月、ヘルスケアスタートアップが集まる「HVC KYOTO 2021」(以下、HVC)に武川さんは参加。国内および世界からも企業が集まり、全編英語のピッチイベントに「ヘルスケア領域で改革を起こそうとしている人たちに刺激をうけた」と言います。

武川:HVCは、今までに参加したピッチイベントとは全く雰囲気が違いました。その理由の1つが、審査員や参加者たちの視点です。東京にいた頃は、売上や事業の成長を重視されることが多かったです。しかし、HVCは「どのくらい新しい技術か」など技術開発にフォーカスする人たちばかりだったなと。

HVCが転換期となり、事業の注力ポイントが少し変わりました。ユーザーを増やすことよりも、技術開発に注力。今では、「臨床研究」「研究開発」といった言葉が社内で飛び交い、良いプロダクト作りに励んでいます。

HVCでピッチする武川さん

京都で働くからわかる、“ここ”で働く魅力

最後に、京都での活動期間や関わり方が異なるなか、それぞれの京都で事業を展開する魅力を語りました。

西垣:京都は非常にバランスがとれた街で、田舎と都会のハイブリッドを実現した場所だと思います。少し歩けば世界遺産があり気晴らしがしやすいですし、伝統を守りながらもイノベーションに挑戦する風土があります。また最近は、新型コロナウイルスの影響で、フルリモートで働ける会社も多いですし、仕事とプライベートの両方を丁度よく充実できる環境として、京都を選ぶ人が増えているように感じますね。

武川:京都がリラックスして仕事ができる環境なのは、ノイズの少なさもありますね。みなさん知っての通り京都府景観条例があるため、東京に比べると景観の制限が厳しいです。なので、余計な情報が入ってこなくて、じっくり仕事に集中できる。

また、仕事に疲れたり、大変なことがあっても、鴨川にくると一気にリラックスモードに入れる。プロダクトを集中的につくっていく段階の企業には、京都はとてもいい環境だと思いますね。

高橋さんは事業作りに関して、京都の魅力を語ります。

高橋:ほかの街と比べて、京都は地域の課題が明確ですね。東京は情報・人・モノが多いため、それらに埋もれて地域の課題が見えづらくなっていたり、課題が特定できても実装できるかがわかりづらいです。

東京に比べると京都は課題も発見しやすく、それを解決できるくらいのマーケット規模もあります。案外、そのバランスが事業をつくるのにも大事だったりします。

東京から京都に拠点を移した武川さんは、「全てのスタートアップが京都が適しているかといえば、そうではない」と京都の課題も言及してくれました。

武川:東京に比べると、京都はまだまだベンチャーキャピタルの数が少ないです。これから億単位の資金調達を考えている人などは、東京に拠点を置いて人脈をつくったほうがいい場合もあるかなと思います。

しかし、ヘルスケアのように分野によっては、先進的な技術を持つ企業や研究室が関西に集まっています。今後、関西のスタートアップを盛り上げるために、まずは関西で強い分野の成功事例を増やしていければと思っています。

京都で創業時から拠点をおく人たち、京都に拠点を移した人たち、二拠点で活動する人たち。さまざまな関わり方を受け入れ、入居企業さまの意向を丁寧に汲み取っているからこそ、コラボレーションや事業発展の促進がKRPでは生まれているのだと感じました。

KRP連載4本目となる次回記事では、どのような企業が連携し、京都という地域の魅力を引き出していこうとしているのかを伺います。公開まで、どうぞ楽しみにお待ちください。

記事の作成に関わってくれたクリエイター

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